岡田暁生のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
普段僕たちは、テレビや、ラジオや、喫茶店や、いろいろなところで音楽に触れている。しかしそうした音楽の目的は、その音楽について考えたり、語ったりすることではない。ただ音楽によって得られる感情を提供することが目的になっている。そこでの音楽は、ある種のサプリメントとしての役割しかない。
しかし筆者は、そのような受動的な聞き方だけでは不十分であり、音楽を言葉にする、という能動的な聞き方が必要であるという。
たしかに音楽を言葉で説明し尽くすのは不可能かもしれない。しかし、音楽を言葉にしようという努力を放棄してしまっては、単なる動物と同じになってしまう。
人として音楽をより深く理解し、より深い喜びを得るためには、たとえ不可能であろうとも、音楽について語り続けることが不可欠なのだ。
このような、筆者の音楽にかける熱い思いにあふれた一冊である。 -
Posted by ブクログ
歌つきの演劇なら、ミュージカルもあるいは能なんかもそうなのに、オペラをオペラだと言い切る要素ってなんだろう? と以前から思ってました。能とはさすがに違うだろうとは思えるけれど、オペレッタなんてものもあるし、オペラの定義がわからない。
そんな無知な私に親切な手引書でした。
オペラの個々の作品を解説したものではなく、オペラがいつごろどうした状況で生まれて発展し、現在はどんなふうに落ち着いているかという、一種の歴史書。
その歴史についても、作品の作り方や特徴だけではなく、オペラが生まれ上演された時代の空気を中心に書いてくれているので、私のようなオペラの素養がない人ばかりじゃなくて、オペラ愛好家の方にとっても新鮮な知識を提供してくれる本ではないかなと思います。
とりあえず、オペラってこんなものという雰囲気はつかみました。
映画や小説に出てくるオペラ劇場の貴賓席やボックス席ってなんであんな舞台の見づらい場所にあるんだ?という疑問が解決されたのが個人的には一番嬉しかったポイントですね。 -
Posted by ブクログ
読書録「西洋音楽史」3
著者 岡田暁生
出版 中公新書
pviiiより引用
“「いつどこでどう聴いてもいい音楽」など
というものは存在しないのであって、「音
楽」と「音楽の聴き方」は常にセットなのだ。
”
目次より抜粋引用
“謎めいた中世音楽
ルネサンスと「音楽」の始まり
ウィーン古典派と啓蒙のユートピア
ロマン派音楽の偉大さと矛盾
二〇世紀に何が起きたのか”
文学博士である著者による、古代から流れ
る西洋芸術音楽の歴史を物語のように記した
一冊。
芸術音楽の誕生から現代に到るまでの発展
と変化について、楽譜の原型や演奏会を描い
た絵画などの貴重な資料をもとに書かれてい
ます。
上記の引用は、著者の音楽の聴き方に対す
る考え方を記した一文。
なんとも納得のいく意見だと思われます。
昔、ニコニコ動画にあった、BGMの大切さが
分かるといった題名の、時代劇に色んなBGM
を合わせたMAD動画を思い出してしまいまし
た。
私はゲーム音楽が好きなのですが、そのプレイ
や場面を楽しむ、盛り上げる為に作られて
いるからなのかも知れません。
クラシック音楽が、思っていた以上に新し
く、江戸時代辺りというのがイメージとズレ
があるなと思わざるを得ません。
もっとずっと古くからあるような感じですが。
音楽が本当に好き、または音楽の歴史をあ
る程度知っている人向け。
音楽に対する好奇心が強くないと、前提知識
なしで読んでも楽しくないかも知れないなと
思われます。
ーーーーー -
Posted by ブクログ
中世から現代に至るまで、音楽がその時代の人々にとってどのようなものだったか、どのように変化していったかをわかりやすく書いていて、面白かった。
音楽が人々にとってどのようなものか、距離をとって考えてみたことなんてなかったし、前の時代から受け継いだり変化していった価値観を俯瞰して眺めることが、高校生の頃世界史を勉強してとても楽しかった気持ちを思い出させてくれた。
バッハやベートーヴェンなど有名な音楽家のイメージも、ほぼゼロ知識からなんとなくつかめた。
特にベートーヴェンが一番音楽と向き合い働いた、というのが印象に残った。天賦の才ではなく、労働によって圧倒的な音楽を作り上げた、という見方は以外だった。
できれば文中に登場する音楽を聴きながら読めたらよかったんだけど…中世音楽の和音を意識しない感じとか、ずっと低音がある感じとか、現代音楽の不協和音とか…
いつかちゃんと聞いてみようと思う… -
Posted by ブクログ
帯や紹介文には「最強の入門書」と銘打っているが、全く入門書ではない。切り口は、岡田史観と片山思想。この2人が書いた本を、何冊か読んでいない人にとっては敷居が高そうな内容だった。
私は岡田氏の本は数冊、片山氏の本は多く読んでいる。それらと比べると、落としどころやまとめ方が弱い。それは対談だからだ。対談では意見が異なる場合でも、自説を強く主張せず、双方の意見の中間点でまとめる傾向がある。
互いに主張をぶつけ合えば討論会のような面白さは生まれるが、その分、議論は収拾がつかなくなる。テレビ番組であればそれでもよいが、本では結論をまとめる必要がある。結果として強く言い切れず、妥協的な結論に落ち着き、全体的に歯切れの悪さが残る。
対談は岡田氏がリード役である。片山氏の得意分野である前衛音楽の部分が一番面白く読めた。 -
Posted by ブクログ
現在のコロナ渦にあって、3密のより被っているクラシック音楽のダメージを分籍すると共に、3密を逆手に利用して新たな音楽ないしは芸術を創造できない物かという提案が書かれている。提案にはなかなか興味深い点はあるのだが、現代音楽の紹介的な側面も持っていることは否定できない。
我々は、今まで聴いてきた音楽では無く、新たな音楽を望むばかりではない。これからも、ベートーヴェンやバッハやシューベルトやワーグナーが聴きたいのだ。そのための3密防止下での演奏可能・鑑賞可能な方法論の提案を本書に期待していたのだが、どうも演奏空間の問題として論じられていて現実性に乏しい感があったことは否定できない、ちょっと残念な一冊であった。