岡田暁生のレビュー一覧
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思っていた感じとは全く違っていたけれども,これは良書。
裏表紙に書かれている解説や,「はじめに」の前書きに書いてある著者のコメント内容から,てっきりクラシック音楽について,初心者が抱きがちな質問に答えることで,音楽理論や脳科学的な見地から,クラシック音楽を分析・解説する本なのかと思っていたが,実際は,クラシック音楽がいかに西洋の歴史,つまり世界史(主にヨーロッパ史)と密接に関わっているのかについて,初心者向きな内容なので,ざっくりとではあるが,優しく説明して教えてくれる本だった。
ただ,そのような感じなので,何を期待してこの本を読み始めたかによって,だいぶ評価や好き嫌いが分かれそうな内容では -
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ホームズと並行して読んでいた一冊。
実はこのところにわか趣味でクラシックにハマっておりまして、名曲をたくさん聴く中で、これらを体系的に知っておきたい……と手に取ったのが本書です。
クラシック音楽の知識といえば音楽の授業レベルしかない私ですが、そんな自分でも数百年の西洋音楽史を見通せたような、実にわかりやすい良書でした!
『グレゴリオ聖歌』から始まる中世音楽はどちらかというと歴史の授業を聞いている感じでしたが、やはりバッハが現れてからは抜群の面白さに。
「バロック音楽=バッハ」と考えがちですが、彼は当時にしては異質な存在だったこと。さらに、そのバッハがメンデルスゾーンによって「再発見」され、「 -
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バッハからストラビンスキーに至る(諸説あり)クラシック音楽を中心に、音楽と社会の関わり、時代時代で主流となった音楽と社会体制との関連と、その変遷について碩学2人が語り尽くした本。
改めて提示されてみると、思想同様にいろいろな束縛から自由なはずの音楽が、時々の社会体制と密接に関わっていることに驚かされる。
バッハが活動したライプツィヒはカソリックと対立したルター派の総本山であり、バッハは神の秩序を自ら音楽に表現しようとしたプロテスタンティズムの象徴。
貴族に庇護されサロン中心に演奏したヘンデル、ハイドンと異なり、ナポレオンの出現により国民国家が生まれ育つ中で交響曲や協奏曲などの形式を確立し「 -
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ネタバレ面白かった!!!きちんと音楽史として眺めることで、自分の中にある諸々の言語化を突き付けられ、そうですよね、ハイ…となっていました笑
序章 バッハ以前の一千年はどこに行ったのか
ポスト・ヒューマン時代には…
(片山)そうなると、ベートーヴェン的な音楽は「虚偽」に聴こえてくると思うんです。だって、かつては≪第九≫一曲に「世界」のすべてが入っていて、それを聴いたり演奏したりすればユートピアに至るーというつもりで聴いてこそだった。…しかし幻滅する。ベートーヴェンを聴くこと自体が、バカバカしくなってくる…。(p.36)
(岡田)環境音楽ーたとえば、ひたすらサラサラと流れるせせらぎの音を聴いても、それで -
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クラシック、特にオケ曲関係の記事が、詳しく、読みやすく、そして、とても面白く書かれている。冒頭から、いかに、一般の方との距離感を自覚できていないかに気付かされる。なんで一つの曲なのに四つも曲(楽章のこと)があるのかとか、作曲者、曲目、演奏者(演奏団体、指揮者、録音年)など、さまざまなパラメータがあって一つ違えば別物だし、それぞれの名称がどのパラメータになるのか知っておく必要がある。自分が初心者だったころにもそんなこと思ったなとか、また、以前、出演したコンサートを聴きに来てくれた知人に「演奏後、指揮者が何度も出たり入ったりするの、なんで?」とあとから聞かれたことを思い出した。
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ネタバレ西洋音楽史をベースとしたクラシック音楽の楽しみ方が主題にはなっていますが、特にクラシック音楽にこだわる必要は無く、芸術全般の楽しみ方を学べる良書。
西洋音楽史に余り興味が無いのでやや退屈な章もありましたが、特に「はじめに」と「第5章」は秀逸!!素晴らしいコンサートや美術館に行った後(もしくは最高に面白かった本や映画、マンガでも良いと思います)、共通の価値観を持つ友人とそれらについて語り合う時間が最高に楽しい。ただ、その時に「面白かったね」の一言しか語る言葉が無かったらその楽しい時間は一瞬で終わり。でも、「あの部分はこう思ったんだけどあなたはどう思う?」「この部分はちょっと分からなかったんだけ -
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ネタバレヨーロッパ音楽史の概要書を求めていたので読んだ。大まかな歴史は理解できた。
気になった点:ストラヴィンスキーやシェーンベルクが音楽には新しい方法や技術がもう無いという認識、つまり「音楽の終焉」を予感した上で活動していたという指摘。また、哲学者のテオドール・アドルノはポピュラー音楽を「常に新しく見えるが常に同じもの」という意味で常緑樹、エヴァーグリーンと呼んだという。我々現代人が日常的に聞いている音楽は19世紀ロマン主義音楽を継承している。そこには新しいものなど無い。音楽学、音楽理論上はそうなのだろう。ただそういった指摘があるからso what?としか聴衆は思わないだろうし、自分もなにか問題でも