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Posted by ブクログ
2013年はジュゼッペ・ヴェルディとリヒャルト・ヴァーグナーの生誕200周年にあたることから、再読しました。ヴェルディのオペラはイタリア統一運動(リソルジメント)の精神的支柱のひとつとされ、「Viva! VERDI!(ヴェルディ万歳!)」に「イタリア国王ヴィットリオ・エマヌエレ(II世)万歳!」の頭文字を重ねていた、という記述は、例えば中公文庫旧版の『世界の歴史』にも描かれていた有名なエピソードでしたが、同じ中公文庫に収められた新版『世界の歴史22近代ヨーロッパの情熱と苦悩』では、そうした記述は見当たりません。また、比較的新しいヴェルディの評伝小畑恒夫『作曲家◎人と作品 ヴェルディ』(音楽の友社、2004年)でも、そうしたヴェルディとリソルジメントとの直接的な関係は注意深く疑問が出されています。本書第四章「「国民オペラ」という神話」ではこうした疑問に納得ある回答を示しています(実際、小畑氏の本はこの部分を参照しているとのこと)。現在でもこうした指摘がある一方で、「ヴェルディ神話」は健在のようではありますが。。。
本書全体については、著者は前書きでオペラの定義を、1)絶対王政(バロック)時代が始まる十七世紀に、2)中欧ヨーロッパのカトリック文化圏において、3)宮廷文化として誕生し、4)フランス革命以後は、新しく台頭してきたブルジョア階級と結合し、5)十九世紀にその黄金時代を迎え、6)第一次世界大戦後の二十世紀大衆社会の到来とともに歴史的使命をおえたところの、7)音楽劇の一ジャンル、と明示しています。
そのうえで、オペラとその受容の歴史をたどる本書は、単なる音楽史の領域を超えて、ヨーロッパ社会文化史のコアの部分を照射する刺激的な論考となっています。巻末の参考文献やディスク紹介も参考になります。
Posted by ブクログ
現・京都大学人文科学研究所准教授の岡田暁生による、西洋オペラ通史。2001年度サントリー学芸賞(芸術・文化部門)授賞。
【構成】
はじめに 「オペラ」の定義を兼ねて
第一章 バロック・オペラへの一瞥、または、オペラを見る前に
1 オペラ芸術の土台としてのバロック・オペラ
2 「モーツァルト以前のオペラ史」のあら筋
3 オペラの三つの根本性格
第二章 モーツァルトと音楽喜劇、または、オペラの近代ここに始まる
1 オペラ・ブッファの勃興
2 モーツァルトとオペラの「人間化」
3 女、女、女-モーツァルトとエロス
第三章 グランド・オペラ、または、ブルジョアたちのヴェルサイユ
1 革命・ナポレオン・王政復古の時代
2 七月王政とグランド・オペラ
3 グランド・オペラの経営戦略
第四章 「国民オペラ」という神話
1 国民オペラの成立
2 「国民オペラ」のいかがわしき正体
3 そしてオペラは海を行く
第五章 あらゆる価値の反転、または、ワーグナー以降
1 リヒャルト・ワーグナーの欺瞞と偉大さ
2 オペラの芸術作品化
本書は、著者が冒頭に述べているように、オペラ作品を年代毎に解説するようなものではない。評者である私自身、オペラ作品に接することがほとんど無いため、作品の内容を説明されても、それが具体的な楽曲と結びつくことはほとんど無い。しかし、それでもオペラ作品ではなく、オペラ作品を受容する文化的・歴史的背景に目を向ける本書では全く苦にならないのである。
バロックに源を発するオペラは、王侯貴族からの莫大な出資を背景にした絢爛豪華な消費スペクタクルであった。型どおりの筋に型どおりの音楽がつけられた作品が数多く制作され、オペラを楽しむ貴族階級にとっては、作品の内容そのものよりも、劇場内で「社交」を展開することにこそ意味のあったのである。
18世紀末にフランスで起こった劇的な革命の前後から、オペラとオペラ劇場の歴史は転回する。革命以前から著しい衰退を見せていた封建的権威者達は、もはやかつて絶対主義王政の時代のごとき享楽に大金を投じる力を持たなくなった。そして、モーツァルトという人間劇としてオペラを描く天才が現れた頃から、オペラ劇場の主役が貴族階級から市民階級とりわけブルジョワ階級に移り変わっていく。
革命以後のフランスで人気を博した「グランド・オペラ」では興業的側面が強調されるようになったが、それでも新たな成金ブルジョワがかつての貴族階級のまねごとをするための社交場であることには変わりがなかった。
このブルジョワ的オペラが、19世紀半ばの「国民国家」形成期の「国民オペラ」の成立を経て、さらに観客の裾野を広げていく。ここにおよんでオペラ劇場にはかつてのような「社交場」としての雰囲気は大きく薄れ、一般市民が作品を楽しむ場としての性格が強くなった。そして、ワーグナーが出るに及んで、バイロイトに象徴されるような襟を正して作品鑑賞をする場としての劇場、私語など挟まずに作曲者の作り上げた音響を静かに聞き入れる観客が成立したのであった。
ある種のスノビズムが漂うオペラ劇場という場に焦点を充てた本書の視点は、オペラ作品を知らなくても18~19世紀のヨーロッパ文化の一端を垣間見ることができる
Posted by ブクログ
「オペラ」という空間が、それぞれの時代の人たちによってどういう使われ方をしていたか、どういう場だったかについて焦点をあてている本。したがって作品集ではなく、逆にオペラを知らない私のような人間でも楽しく読み進めることが出来た。
「オペラ」、あるいは舞台・演劇の類は、舞台の前面に客席があって、俳優と観客が向かい合う…という構図をイメージしがちだが、初期のオペラには実はそういうものはなく、側面のボックス席こそが貴賓席であったという。つまり、貴族にとってはオペラは鑑賞するものでなく、社交の場であったということらしい。
こういう視座というのは、「当時の人が実際にどう使っていたか」を理解しないと得られない知見だと思われる。得てして歴史というのは過去を過度に美化するか、逆に現在の視点から見下ろすように批難するかに分かれがちだが、この本はその辺がクールで好感が持てる。なかなか面白い。
万事、背景や歴史を知っておくと正当さや深みが醸し出せるのではないでしょうか。
Posted by ブクログ
歌つきの演劇なら、ミュージカルもあるいは能なんかもそうなのに、オペラをオペラだと言い切る要素ってなんだろう? と以前から思ってました。能とはさすがに違うだろうとは思えるけれど、オペレッタなんてものもあるし、オペラの定義がわからない。
そんな無知な私に親切な手引書でした。
オペラの個々の作品を解説したものではなく、オペラがいつごろどうした状況で生まれて発展し、現在はどんなふうに落ち着いているかという、一種の歴史書。
その歴史についても、作品の作り方や特徴だけではなく、オペラが生まれ上演された時代の空気を中心に書いてくれているので、私のようなオペラの素養がない人ばかりじゃなくて、オペラ愛好家の方にとっても新鮮な知識を提供してくれる本ではないかなと思います。
とりあえず、オペラってこんなものという雰囲気はつかみました。
映画や小説に出てくるオペラ劇場の貴賓席やボックス席ってなんであんな舞台の見づらい場所にあるんだ?という疑問が解決されたのが個人的には一番嬉しかったポイントですね。
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ビジネス・実用
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