あらすじ
一八世紀後半から二〇世紀前半にいたる西洋音楽史は、芸術音楽と娯楽音楽の分裂のプロセスであった。この時期の音楽が一般に「クラシック音楽」の歴史と呼ばれている。本書は、「クラシック」音楽の歴史と、その前史である中世、ルネサンス、バロックで何が用意されたのか、そして、「クラシック後」には何がどう変質したのかを大胆に位置づける試みである。音楽史という大河を一望の下に眺めわたす。
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Posted by ブクログ
ホームズと並行して読んでいた一冊。
実はこのところにわか趣味でクラシックにハマっておりまして、名曲をたくさん聴く中で、これらを体系的に知っておきたい……と手に取ったのが本書です。
クラシック音楽の知識といえば音楽の授業レベルしかない私ですが、そんな自分でも数百年の西洋音楽史を見通せたような、実にわかりやすい良書でした!
『グレゴリオ聖歌』から始まる中世音楽はどちらかというと歴史の授業を聞いている感じでしたが、やはりバッハが現れてからは抜群の面白さに。
「バロック音楽=バッハ」と考えがちですが、彼は当時にしては異質な存在だったこと。さらに、そのバッハがメンデルスゾーンによって「再発見」され、「軽薄なフランス・イタリア音楽」vs.「世界に冠たるドイツ音楽」の錦の御旗として使われたというのも面白い。
また、ベートーヴェンが残した偉業のあまりの大きさから、それに続いて爆発する百花繚乱の「個性」などなど……何気なく聴いていたクラシック音楽に縦糸が通り、ますますクラシック欲が増しました。
個人的に疑問だった、「現代に新しいクラシック楽曲は生まれないのか?」についてもなんとなく答えがつかめて納得。18-20世紀にかけて数え切れないほどの名曲が生まれたことに感謝、ですね。
芸術が生まれる背景には、必ず作者および社会の影響があります。また西洋の場合、背景に宗教があることも忘れてはなりません。
それらを知ることで鑑賞がますます楽しくなるし、回り回って私の偏愛する海外古典ミステリーの解像度も上がってくるわけですね〜。
作中にたくさんのCDが紹介されますし、巻末の文献ガイドも興味深い。
神戸大学で通史の授業をされていた先生による著書なだけあって、私のようなクラシック初心者にも非常にわかりやすく、知的好奇心をくすぐられる一冊でした(*^^*)
Posted by ブクログ
クラシック音楽が辿ってきた道を、時代背景も含めて俯瞰して見られる名著。文中に登場する数々の曲をYouTube再生しながら読み進めると、格段に理解も深まり最高に面白いのでオススメ。
大好きなバッハについての言及が少なかったことだけが寂しかったですが、、素晴らしい本に出会えました。
Posted by ブクログ
分かりやすいだけでなく、文章が巧い。内容もよくまとまっており、地に足の着いた議論が展開されている。ありきたりの解説にもシニカルに歪んだ奇説にもなることなく、中道的ながらフレッシュな論理展開がなされていて好感。軽く要約もして、大いに勉強させて頂いた。再読の価値あり。
Posted by ブクログ
作曲された当時と今とでは、聴き手の対象や聴く環境が異なることを、時代背景とともに知ることができました。
また、現在の音楽史を把握できない理由として、音楽史の主役が作曲家でなく、いわゆる名演と言われる巨匠たちに移っている点に納得させられました。
取り上げられた音楽を実際に聴きながら、再度読み返したいと思いました。
2021,3/18-3/19
Posted by ブクログ
ヨーロッパ音楽史の概要書を求めていたので読んだ。大まかな歴史は理解できた。
気になった点:ストラヴィンスキーやシェーンベルクが音楽には新しい方法や技術がもう無いという認識、つまり「音楽の終焉」を予感した上で活動していたという指摘。また、哲学者のテオドール・アドルノはポピュラー音楽を「常に新しく見えるが常に同じもの」という意味で常緑樹、エヴァーグリーンと呼んだという。我々現代人が日常的に聞いている音楽は19世紀ロマン主義音楽を継承している。そこには新しいものなど無い。音楽学、音楽理論上はそうなのだろう。ただそういった指摘があるからso what?としか聴衆は思わないだろうし、自分もなにか問題でも?と思ってしまう。
Posted by ブクログ
西洋音楽史を学ぶと同時に、西洋の歴史も学べる。学生時代、単に中世期、ルネサンス期、バロック期、古典期、ロマン主義期などを時系列だけで学んできたが、背景にある歴史、文化、宗教、神への信仰心、革命や戦争と音楽は深く交わっていることが、楽しく理解できた。
Posted by ブクログ
率直な感想として、音楽史を俯瞰できる立場にある現代人は本当に幸せだと思う。
中世の時代にバッハを聴くことは出来ないし、バロック時代にモーツァルトを聴くことも出来ない。そんな中、我々は好きな時代の好きな曲が聴き放題という贅沢な時代に生きている。これを享受しない人生とは勿体ないと思う。
以前にパウル・ベッカーの『西洋音楽史』を読んだが、全然理解できなかった反面、こちらは非常に分かりやすい解説。
パウル・ベッカー並びに文学含め、ドイツ人は気難しいなぁと個人的に思っていたが、まさしく本書でもその気質について言及されている。
今″クラシック″が指す音楽はドイツで生まれたもので、コンサートホールで目を閉じて聴き入るという姿勢が定着したのもドイツ人の気質に由来するのだそう。
交響曲もピアノ・ソナタもその気質ありきのものだったというのは驚いた。
ドイツのロマン派が音楽に具象を超えるものを求めたが、その後に音楽は音楽でしかないと反論されたという話は笑ってしまった。
初学者の僕にとっても理解し易い内容と構成になっているので、少しでも音楽に興味があれば是非読んでみるといいかも!
Posted by ブクログ
クラシック名盤ガイドを探している時に名著として出てきて読んでみました。確かに名著だ。一気に読ませる熱量がある。文章は華麗でいて平明、歴史の中で鳴っていた音、現代人には聴き取れない音があったのだと遥かな想いになる。グレゴリオ聖歌から態度を正して改めて聴きたくなる。これが新書ですよ、一冊でわかった気にさせてくれる、もちろん幻想と知りつつ、巻末にはブックガイド。扉を開いてくれたら大成功、が新書の使命(2020-01-09)
Posted by ブクログ
”「事実」に「意味」を与えるのは、結局のところ「私」の主観以外ではありえない。”というコンセプトで書かれた西洋クラシック音楽の歴史は、ある程度クラシック音楽の歴史を知っている人にも、新たな発見をもたらしてくれる。
音楽のことだけでなく、その音楽の生まれた社会的な背景や、建築・美術・文学との関わりにも言及されていて、筆者の幅広い教養の深さが伺われる。名著である。
Posted by ブクログ
youtubeやapple musicで、文章に登場する曲を聞きながら読んでいくのが楽しかった。
バロック~古典派は耳馴染みがあったのだけど、それ以前やそれ以後の時代の音楽に触れることができて刺激的だった。
Posted by ブクログ
通史として非常にわかりやすい。各時代の曲の特徴を社会状況から説明してくれることも非常におもしろかった。特に古典派とロマン派の章がすばらしい(ソナタ形式が啓蒙的思想に裏打ちされているという話と、ロマン派が公衆という市場により登場したのだという話)。
あと著者の知識や表現能力が高く、かつあとがきにおける通史を記述する必要性がエモい。信用できる著者だと感じた。
Posted by ブクログ
中世から現代にかけて、どんな音楽が西洋で流行して、そのきっかけとなる要素は何かを解説する。また音楽そのものは、各時代においてどのような人々に受け入れられて、どんな見方をされたのかを言及しており、現代の物差しでは実感できないことを、本書を通じて明らかとなる。
Posted by ブクログ
概要を大きく知るに当たって、とても参考になりました。時々と見返したい、講義のようなスタイルでした。
第一章 グレゴリオ聖歌
【800-】
・中世の音楽史はグレゴリオ聖歌を軸に発展していった。
・『グレゴリオ聖歌』→単旋律によって歌われる、ローマ・カトリック教会の、ラテン語による聖歌。
・音楽史へのアウフタクトとしての認識。
「西洋芸術音楽」の定義→「知的エリート階級(聖職者ならびに貴族)によって支えられ」、「主としてイタリア・フランス・ドイツを中心に発達した」、「紙に書かれ設計される」音楽文化のことである。
・『オルガヌム』→グレゴリオ聖歌に別の声部を加えたもの。中世前半の音楽を占めた。
【1000-1100】
・オルガヌムの声部が独立して動き出す(メリスマ・オルガヌム)
【1100年代末】レオナン、ペロタン
・オルガヌムの頂点時期は『ノートルダム楽派』
→レオナン(オルガヌム大全)、ペロタン
・第一回十字軍遠征
【1200年代-1300年代】マショー
・中世後半の中心はオルガヌムから生まれたモテットである→違いは上声にのる歌詞がフランス語で書かれている
・アルス・ノヴァ・ノタンディ→新しいリズムの記譜法の提示
【1400年代】ルネサンス前半 ジョスカン
・フランドル楽派→デュファイ、オケゲム、バンショウ、ジョスカン
・イギリス⇔フランス(100年戦争)
・イギリスの影響あり
・作品名に作曲者が入り出した時代
・和音はメロを束ねる紐の役割
【1500年代】ルネサンス後半 パレストリーナ
・舞台はフランスからイタリアへ
・『多元化』の時代
・ジャンルの多様化→器楽曲の隆盛(チェンバロ、オルガン、リュート、ヴァージナル)
・『マドリガーレ』の流行→イタリア語の合唱でバロックの元となっていく
・ルターはジョスカンの崇拝者
〇カトリック⇔グレゴリオ聖歌
〇プロテスタント⇔コラール(ドイツプロテスタント音楽文化の土台)
・宗教曲の伝統はパレストリーナへ引き継ぐ
・『ヴェネツィア楽派』→ガブリエリ(エコー効果)
・和音は紐から柱の役割へ移行
・不協和音の表出→ジェズアルド(美から表現への移行)、モンテヴェルディ(マドリガーレを開拓)
【1600前後】バロックへの移行期
・ルネサンスの終焉→バロックの始まり
・プリマ・プラツテイカ「第1のやり方」
・セコンダ・プラツテイカ「第2のやり方」
→バロックへの扉
【1600-1750】バロック時代
バッハ、リュリ、ヘンデル、スカルラッティ、ハッセ、テレマン、
・王侯貴族の生活を彩る音楽、その頂点はオペラ
・バロックとか「音楽がドラマになった時代」
・劇的音楽がルネサンスとバロックを分かつ要素
・オラトリオ「メサイア(ヘンデル)」、カンタータ受難曲「マタイ受難曲(バッハ)」、バロックオペラ
・バロックの感情表現は定型的→劇音楽に限る
・器楽曲はあくまでBGMの役割
・作曲技法の点ではバロックは「通奏低音と協奏曲の時代」と定義されることが多い。
・通奏低音→ジャズにおけるピアノとベースの役割
・モノディの登場→通奏低音の上で1人の歌手が歌う
・協奏曲の時代→競走の時代「声⇔楽器」「声⇔声」「独奏楽器⇔伴奏楽器」「独奏楽器⇔オーケストラ」
・カトリック文化圏とプロテスタント文化圏で区別して考える
・ドイツプロテスタント文化圏で「バッハ」が登場した。→教会での質素な暮らし、カントールとしての仕事。音楽は神への捧げ物という意識。
・フーガの技法はルネサンスを源流としており、バロック時代においても古風なスタイル。バロックにおいては和音のスタイルに向かうことがスタンダード
・バッハはドイツプロテスタントのナショナリズムの隆盛に絡めて発掘された面もある
・フランス、イギリス音楽 VS ドイツ音楽の構図
【1750前後-1815頃】古典派への緩やかな以降
(バロック最末期の作曲家たち)
クープラン、スカルラッティ、テレマン、ラモー、〔バッハ〕
・市民階級の隆盛→【啓蒙主義】が流行した時代。権力からの独立
(前古典派)
・大バッハの息子達の活躍した時代
→エマニュエル、クリスチャン、フリーデマン
・マンハイム楽派→シュターミツ
・ウィーン古典派
・作曲技法における古典派の特徴→「対位法の廃止」「旋律と和音伴奏によるシンプルな演奏」
「通奏低音の廃止→旋律主導による音楽」
・旋律の魅力へのフォーカス
・演奏会、楽譜印刷擬似、お金を出せば家でも
・演奏会・楽譜印刷→作曲家の自立の機会
・ソナタ形式の確立
〇バロック→オペラ・セリア
〇前古典→オペラ・ブッファ
・モーツァルト没 -1791 フランス革命前
・ハイドン 最終作 1801 フランス革命移行期
・ベートーヴェン初作 1800- フランス革命後
・ベートーヴェンと同時期の作曲家
→ロッシーニ、シューベルト、ウェーバー
ロマン派の作曲家と大きく重なる時代がある。
【1800年代】ロマン派
シューベルト、シューマン、リスト、ショパン、ワーグナー、ブラームス、ベルリオーズ、ロッシーニ、ヴェルディ、スメタナ、ドヴォルザーク、チャイコフスキー
・作曲家に求められたのは強烈なキャラクター性
・市民階級か音楽に手が届くようになった
・「職人的うまさ」→「芸術家の独創性」に変化
・批評家の登場→名曲の誕生
・音楽学校の登場→音楽の民主化
・超絶技巧の競走→タールベルグのハープ、リスト「ノルマの回想」
・楽器の大音量化
・グランド・オペラとサロン音楽
〇サロン音楽の技巧面→後のロシア楽派(ラフマニノフ等)
〇サロン音楽のダンディズム→後の近大フランス楽派(フォーレ、ドビュッシー)
・ドイツ音楽は器楽曲が隆盛した、ドイツロマン派である。
・このドイツの器楽文化は3つの方向に分かれる。
〇詩的ピアノ小品→子供の情景(シューマン)、無言歌(メンデルスゾーン)詩的世界観の表現
〇理念的な表現「標題音楽」→幻想交響曲、ロメオとジュリエット(ベルリオーズ)、ファウスト交響曲(リスト)
ベルリオーズの交響詩はリヒャルト・シュトラウスに引き継ぐ、その後ワーグナーへ
〇文学的要素の排除「絶対音楽」→ブラームスは標題作品をほぼ残していない
・ロマン派の旋律の特徴は「胸の奥から絞り出す吐息」と言えるだろう
【1883-1914】後期ロマン派
マーラー、シュトラウス、プッチーニ、ドビュッシー、ラヴェル、サティ、ラフマニノフ、スクリャービン、ファリャ、アルベニス、グラナドス
シェーンベルク、ストラヴィンスキー、バルトーク
・国民楽派モダニズムの隆盛
・1890-ヴェルディ、ブルックナー、ブラームス、ドヴォルザークの終盤の時期
・フランスで国民音楽協会が設立→ドイツへの対抗心(著名な作曲家が輩出されていなかった)
・ドビュッシーやラヴェルの時期には国民音楽協会への反発の動きが強くなる。
・国民音楽協会との違いは、ダンディズムの違いである。場末の音楽への興味を示した。
→サティ(ジュトゥヴ)、ドビュッシー(ゴリーウォークのケークウォーク)、ラヴェル(ピアノ協奏曲)
・ドビュッシー→近代フランス音楽の幕開け、ガムランなどの東洋音楽との出会い、和声の変化
・シェーンベルクやストラヴィンスキーに繋がっていく
【1915-】近代音楽 第一次世界大戦
プロコフィエフ、ショスタコーヴィチ、ヒンデミット、ミヨー、プーランク
・ロマン派への嫌悪感
・喧騒に対する好み、テンポをほとんど揺らさない、感情を抜いた音楽性
・1920-ストラヴィンスキー新古典主義(プルチネルラ)→ピカソのコラージュ技法との類似点
・1910-シェーンベルク→調性の解体
・1920-シェーンベルク→十二音技法
【1950-】現代音楽 第二次世界大戦
ブーレーズ、シュトックハウゼン、ノーノ
・西洋音楽史の終焉
・十二音技法の複雑化→総音列主義
・管理された偶然音楽→ケージ「4分33秒」
・クラスター技法、コラージュ音楽
1970-前衛音楽に陰りが見られる
〈作者の視点〉
〇前衛音楽の系譜→作品史としての歴史
講習の不在
〇巨匠によるクラシックレパートリーの演奏
→「誰が何を作るか」から「誰が何を演奏するか」
〇アングロサクソン系の娯楽音楽→ポピュラー音楽の隆盛
ルーツは西洋音楽からの系譜、サロン音楽とアメリカ音楽との結びつき
・ロマン派からの呪縛に今も囚われている部分がある。
Posted by ブクログ
グラウト/パリスカ『新 西洋音楽史』と比べ,当時における作曲者の立ち位置や大衆文化との関係についてより踏み込んだ記述が見られる。有名な作曲者と代表作品を知っていることは前提としている。
Posted by ブクログ
わかりやすいけど大事なポイントを抑えられていて、いろんな人におすすめできると思った!
これぐらいさっぱり分かる西洋音楽史の本って少ないよな〜。
Posted by ブクログ
クラシック音楽をハイライトとする西洋芸術音楽の歴史の大きな流れを解説。
西洋芸術音楽の流れについて理解が深まった。フランス、イタリア、ドイツなど各国での音楽文化の違いも興味深かった。
Posted by ブクログ
音楽家の学生以外は殆ど学ぶことのない世界が広がった。もっとも、かなり以前より、うっすらと疑問が沈積してきたことではあるが・・クラシックにおける【黄昏】という標題自体 日の当たる感覚ではない印象。
読み始め直ぐに納得~18~20世紀にかけての宗教と娯楽の分裂のプロセスと解説に有るこの詳細な語りが続く、実に面白く、これぞ教養としての学びという気がした。
中世より以降 「グレゴリオ聖歌から世俗的な音楽解体」へと連なる流れ それはある意味各党と言っても忌憚のない表現。その大半はドイツロマン派の努力になるモノで それを忌避するか好むかは人それぞれだが//ドイツ3大Bの一人 バッハの偉大なる力はその核に有ると言って過言でないと思う。
中世以降 「ミサで祈りをささげる信者」に想定される音楽がクラシックコンサートで身を投じんばかりに耳を傾ける聴衆に変容して行ったprocessが 水が染む如く理解できた。
Posted by ブクログ
歴史にある程度通じていて、音楽に関心がある人間にとって最も勧めたい一冊。大きな流れでの西洋音楽の変遷を各時代の社会や芸術などと絡めて知ることが出来る。最終章に於ける筆者の音楽に対する開けた考えに心を動かされる。
Posted by ブクログ
最近、家でBGMとしてクラシック音楽を聞くことが多くなり、そうすると、より楽しむために歴史や背景、位置付けなどを知りたくなった。サクッと読める本を探して、本書を読んでみた。
コンパクトに西洋音楽(クラシック音楽)を通史として書いており、全体を理解しやすいし、けっこう面白かった。
Posted by ブクログ
久しぶりに著者が表現した通りか興味を持ってしまうという感情が湧き上がった。
序盤は最後まで読めるだろうかと心配になったけれど、バロック辺りから歴史の教科書と楽典と音楽史そして楽譜が並行して並び、だからか!まるで学生のような学びが腑に落ちた。
バッハと言えば宗教的楽曲、それはキリスト教になじみがない日本人なら難解に感じるのも否めない。
宗教というより、民衆が音楽を聴けるのは、催事や宗教への参加などでしかなかったということ。これに尽きる。
そうした事は教科書にはなく、この本ではそんな事が並行して書いてあるので成る程と思う事が多い。
特別に楽器を習ったとか音大とかでなくても、この著者の言う意味が歴史と重なるから引き込まれる。
モーツァルト、ハイドン、ベートーヴェン、シューベルト。この辺りの比較と曲の特徴を語るところは楽しみながら検証してみたいものだ。
久しぶりに出てくる曲を聴いてみたいと思わせてもらった。
Posted by ブクログ
文章は学術的な感じが強いので、少し難しいところもありますが、クラシック音楽の歴史の流れをこれだけわかりやすく解説した本は、なかなかないと思います。
もともとクラシックについて、それほど知っていたわけではないですが、知らなかった話が多く書かれていて、興味深く読むことができました。
Posted by ブクログ
「音楽」以前の中世の音楽からフランドル学派、バロック、ウィーン古典派、ロマン派、20世紀から現代へと続く歴史の流れを、著者の見解を交えて解説するもの。「単に音楽史上の重要な人物名や作品や用語などを、時代順に洩れなく列挙したりすることは、私の意図するところではない」(p.ii)とあるように、あくまでどういうストーリーの中にどういう音楽が生まれたのかという視点で解説されている。
この夏、ちょっと新しい趣味を始めようと思って、音楽をちゃんと勉強しようとしているところで読んだ。と言っても、自分はクラシック音楽のファンでもなければ指揮者とかも知らないし、楽譜もほとんど読めない初心者なので、ちょっと難しいかなあと思ってたけど、意外とすんなり読むことが出来た。もちろん分からない所も多々あるが、著者の立場、歴史の捉え方が明確になっているので、全体像は掴みやすいと思う。
まず「西洋音楽」というのは「イタリア・フランス・ドイツの文化トライアングル」(p.10)の世界の中で生まれた音楽が中心で、「アングロサクソンは西洋芸術音楽の主流ではなかった」(同)というのは、言われてみたらそうだなあと思った。イギリスでエルガーの博物館?みたいなところに行ったが、確かにあんまりイギリスの作曲家っていないかもしれない(「せいぜいパーセルとエルガーとブリテンくらいか?」(同)と書いてあるので、この3人の曲を聞いてみよう)。そして面白いのは「謎めいた中世音楽」という第1章。音楽は「どこかしら甘美な存在ではなかった」(p.19)、「和声感覚の違い」(同)という、日本人の多くが音楽と捉える感じと違う、というのが興味深い。バリ島のケチャや日本の雅楽に触れるのと同じような感覚になるのだろうか。そして「ルネサンス的な調和した美とは対照的に、バロックにおいては英雄的でギラギラした効果が好まれる傾向があった。周知のようにバロックとはもともと『いびつな真珠』という意味であり、ルネサンスと比べた時のこの時代の美術の趣味の悪さを揶揄した表現だった」(p.69)らしい。へえ。バロックとかゴシックとかロココ調?とかいう芸術用語もどこかで整理して覚えておきたい。あと面白かったのは、「音楽の勉強」について。今日では「ほとんど『楽器の演奏(略)』と同義である。だが一八世紀までの徒弟制度的な音楽家養成(略)においては、音楽学習は何より『作曲の勉強』を意味した。音楽家はあくまで、自分の作品を自分で引いて人前に披露できるようになるために、楽器を学んだのだった。少なくとも独奏者の場合、演奏とは基本的に自作自演のことであって、もっぱら他人が作った作品ばかりを演奏する『演奏家』などというものは存在しなかった。」(p.137)というのも意外。作曲をする人が指揮したりピアノ弾いたりする、というテレビや映画音楽の作曲家なんていうのが、当時の文脈での「音楽家」という感じなのだろうか。それから、「音楽の聴き方」について、「全神経を集中して粛々として聴くべき『芸術』と、まずは楽しみを目的とする『娯楽』とに音楽史がかなりはっきり分離し始めるのは、一九世紀以来のことである。ある程度単純化して言えば、『門外漢にとって何回で敷居が高く、演奏会で静かに傾聴すべき、真面目な芸術音楽」が発展したのは、もっぱらドイツ語圏なのである。われわれが抱く『クラシック=ムズカシイ音楽』のイメージは、実は『ドイツのクラシック』のみに当てはまる」(p.159)ということで、それは意外。そう考えると、絵画とかはどうなんだろう。娯楽的な絵画と芸術的な絵画、みたいな別はあったりするんだろうか、と思った。最後に面白かった?のは20世紀初頭まで「指強化を目的とする矯正器具がいろいろ作られた」(p.147)らしく、この器具を使ったことで、「薬指が動かなくなってしまった」(同)というシューマンという人がいるらしい。恐ろしい。どんな器具なんだろう。
と言って歴史や人物、曲名を知っても、やっぱりそれを鑑賞するというのが本質だと思うから、ちゃんと聞こうと思った曲の備忘録。バッハの「フーガの技法」(p.89)。「彼の音楽は『聴いて感覚的に楽しむ』というより、楽譜として読んだ時に初めて、その信じられないような作曲技法の腕前が理解されるようなところがある。例えばバッハのフーガの凄さは、相当に作曲の心得がある人間だげが、その楽譜を『読んだ』時に理解できる、そういう性質のものではないか…。」(同)というものらしい。あとは「今日では上演される機会もあまりなく、またそれをいくぶん冷たくて退屈だと感じる日も大いに違いない」(p.101)という「オペラ改革で有名なグルック」(同)という人の最高傑作「トーリードのイフィジェニー」というのがあるらしい。そしてバッハとモーツァルトの比較。「ためしにバッハとモーツァルトの任意の作品を、どちらも低温に焦点を合わせて聴き比べてほしい。こうやって聴くと、バッハは一段と奥行き深く荘厳に響くだろうが、モーツァルトはぜんぜん面白くないはずである」(p.103)らしい。へえ。「『旋律それ自体の魅力』が、古典派において音楽の主役になる」(同)ということだから、ということはおれは分かりやすい古典派の方がいいかなあ。やっぱり口ずさめるやつがいいなあ。そして古典派音楽は「『シンフォニックな響き』に貫かれている」(p.112)らしく、たとえばモーツァルトの「ピアノ協奏曲第二五番」を聞けばいいらしい。それからワーグナーは、何かの本で反ユダヤ思想を持っていたというので、正直すごい積極的に聴きたいともどうしても思えないのだけれど、「『舞台神聖祝典劇』と題された彼の最期の楽劇《バルシファル》は長い間バイロイトだけでしか上演を許可されなかった」(p.173)というものらしく、当時はすごい貴重なものだったらしいから、聞くならこれかなあとか思った。バイロイトはミュンヘン近郊の田舎町で、ワーグナーが「自分の作品だけを上演するための劇場を立てた」(同)ということらしく、なんかやっぱりこのエピソードだけでも好きになれないなあと思ってしまうけれど。あとはp.188の「ドビュッシーの《版画》の第一曲〈塔〉の大胆な和声などは、西洋の既成の音楽指向からは決して生まれ得なかったはずのもの」とか、「最初の一撃でハッタリをかます」(p.189)シュトラウスの「ツァラトゥストラはこう言った」とか。そして「リートという一九世紀で最も親密とされたジャンルが、交響曲(オラトリオ)という最も壮大なジャンルと結合される」(p.193)という、その結合の意味を理解できるというのが「マーラーの《交響曲第三番》」らしい。でも演奏に一時間半かかるらしいから、鑑賞できるのかなあ。あと「調性がない」曲、なんてまったく想像できないけれど、それを理論化した「十二音技法」(p.212)というのがあるらしい。「例えば《三つのピアノ曲》作品一一(一九〇九年作曲)と《ピアノ組曲》作品二五(一九二三年作曲)を聴き比べて頂きたい。前者は自由奔放な音響の極彩色の乱舞である。しかし後者は幾何学模様のようで、どこか奇妙に冷たい」)(p.213)って、どういうものなのか、ぜひ聴いてみたいと思った。
でも結局有名な作曲家も名前くらいしか聞いたことない人ばっかりなので、もう少し西洋音楽史の本を読んで、頭に入れたい。最後に「文献ガイド」があるけど、これは原書がドイツ語だったりする本もあって、なかなか壁が高そう…。(21/08/13)
Posted by ブクログ
名曲ガイドや巨匠紹介のような類の本ではなく、時代背景に即して西洋音楽史を概観していくような内容。非常に流れがはっきりとしているので、一気に読み進められた。ただ、芸術史や文化史を読む上では当然ながら、頭に西洋史の知識や作曲家の名前が入っていないとさすがに読んでいくのに若干厳しいものがある。
Posted by ブクログ
バッハがなぜ音楽の父と呼ばれるのか。
ベートーベンやモーツアルト、ハイドンの曲はなんで音楽の時間でかなりの時間を費やして学んだのか。
読後、ちょっとだけ分かった気がした。
音楽は個々の曲や作曲家について興味をもつことはあれど、音楽の歴史そのものを時系列で学ぶことはなかったので、とても分かりやすく頭にすっと入ってきた。
こういう授業をうけていたら、高校時代くらいからもう少しクラシック音楽に興味をもっていたのかなあ…となんとなく感じた。
Posted by ブクログ
中世音楽に始まり、ルネサンス、バロック、古典派、ロマン派、そして世紀末と戦争の時代を経て現代の音楽につながる西洋音楽の歴史を一望する本です。
本書を読めば、西洋音楽の歴史は宗教のための音楽から、貴族の音楽、ブルジョアの音楽、大衆の音楽へと変化・多様化する過程でもあることがよく分かります。
いわゆるクラシック音楽とは西洋音楽のうちバロック後期から20世紀初頭までの200年間に作られた音楽をいう、そして、芸術音楽とは芸術として意図され、紙の上で楽譜という設計図を組み立てて作られた音楽である、といった著者の整理は分かりやすいです。
この本は読者に対して、西洋音楽の成り立ちと奥行きを明快に示し、そのことによって、西洋音楽 ── 中でも特にクラシック音楽 ── を聴く楽しみを深めてくれると思います。
Posted by ブクログ
音楽学者の岡田暁生氏が音楽史についてまとめたもの。本書では中世、ルネサンス、バロックから、第一次世界大戦以後の現代までを、いわゆるクラシック音楽と呼ばれるものに限定されていますが、互いに接続しながら解説しています。それぞれが独立して存在しているわけではなく、どのように発展、もしくは衰退していったかが解説されており、単純に作曲家や曲を羅列した本とは異なります。またそれぞれの時代の社会情勢や風俗などとも関連付けていて面白いです。
Posted by ブクログ
中世から現代に至るまで、音楽がその時代の人々にとってどのようなものだったか、どのように変化していったかをわかりやすく書いていて、面白かった。
音楽が人々にとってどのようなものか、距離をとって考えてみたことなんてなかったし、前の時代から受け継いだり変化していった価値観を俯瞰して眺めることが、高校生の頃世界史を勉強してとても楽しかった気持ちを思い出させてくれた。
バッハやベートーヴェンなど有名な音楽家のイメージも、ほぼゼロ知識からなんとなくつかめた。
特にベートーヴェンが一番音楽と向き合い働いた、というのが印象に残った。天賦の才ではなく、労働によって圧倒的な音楽を作り上げた、という見方は以外だった。
できれば文中に登場する音楽を聴きながら読めたらよかったんだけど…中世音楽の和音を意識しない感じとか、ずっと低音がある感じとか、現代音楽の不協和音とか…
いつかちゃんと聞いてみようと思う…