CO2増加は地球温暖化に繋がるり、それが人類に悪影響を及ぼすということで多くの議論がなされてきました。しかし都市部分のヒートアイランド現象はあるものの、太陽の黒点の活動が弱まってきていて現在は寒冷化しているとの報告もあります。
この数年、地球温暖化はあまり言われなくなり、その代わりとして、より大きな概念の「気候変動」というフレーズが使われるようになってきました。これはCO2増加が原因なのだろうか、と思っていた私にとって、この本はとても興味を惹かれるものでした。
悲しいことですが、利権の絡まない(既成することで誰かが得をしない)環境規制は無視される、という内容には納得してしまいました。
以下は気になったポイントです。
・一度システムが出来上がり、それに依存して儲かる企業がたくさん現れると、システムの合理性を支える証拠が間違っていたとわかっていても、システムは潰れないで存続する。その好例はダイオキシン規制である(P7)
・多くの人はもう忘れているかもしれないが、かつて環境問題と言えば、自然保護と公害のことだった(P18)
・最近では、フロンガスがオゾン層を破壊する主たる原因なのかどうも怪しくなってきた、南極の温度が下がるとその上空のオゾン層が破壊されるという説が有力になってきているらしい。つまりオゾン層の増大は、太陽活動に関連した南極の冬の気温の低下が主因だったということである(P26)
・カラスは有機物のゴミ処理という点から見ればとても良いことをしている。カラスがいるおかげで東京湾の富栄養化をかなり防ぐことができている面は間違いなくある。カラスは昼間、海辺で有機物のゴミをあさり、夕方になると郊外の森や林を集まって、糞をする。つまり海の栄養物を内陸に運ぶという役割を果たしている(P29)
・CO2は確かに増えているが、その増え方は窒素などに比べればたいしたことはない。CO2は約0.03が0,04%に増えたが、窒素の2倍に比べれば少ないと言える(P33)
・一時話題になった環境ホルモンは動物の生殖機能に影響を与え、オスがメス化するとして67の物質をリストアップしたが結局はガセネタだとわかり、環境省はリストを取り下げた。この騒ぎで得をしたのは、研究費をもらった学者だけであり、幸いなことにこれをネタにした税金収奪システムは立ち上がらなかった(P36)1960年代後半から1980年代の初めあで気象学者たちは地球寒冷化を警告していた、1940-70年の30年間で0.2度ほど下がった。しかし寒冷化を人類はコントロールするわけにはいかないので、寒冷化を防ぐ手立てはなく寒冷化予防が利権になることはなかった(P36)
・炭素の排出権取引という制度が作られ、炭素税を課し、CO2の旗のもとににエコカー、自然エネルギー開発や利用に莫大な税金が使われ始めた。確かに100年で地球の平均気温は0.7度上昇したが、21世紀に入っては全く上昇していない、 CO2の排出量は21世紀になっても増え続けているので、CO2が温暖化の主たる原因であるとはおかしいのは素人でもわかる(P37)
・持続可能な開発目標(SDGS)が最近流行っている、昔はSDのみであったが、経済発展を止めないで世界のシステムを安定化させようとする目論見なのだろう。そもそもSDGSは矛盾した言葉で、ディベロップメントが続く限りゴールは来ないし、ゴールが来たらディベロップメントは終了する(p49)
・人口が少なっても一人当たりのエネルギーや食べ物が多くなる、そういうシステムを考えた方がいいと思うがそうとは考えられていない。人口が激減すると資本主義がつぶれてしまうから、資本主義とは人口もエネルギー消費も右肩上がりを前提として成り立っているシステムだから。日本の人口も6000万人程度であればあまり無茶苦茶なことをせずにエネルギーは足りる(p50)
・地球の温度変動は太陽の活動のほうがCO2よりもはるかに重要な要素だが太陽の活動は人間がコントロールできないので、環境問題とは言わない)p67)
・1990年代の多くの未来予想がみな外れたということはパラメータ(気温上昇のパラメータを過大評価、その逆のパラメータを過小評価)が間違っていたということ、今までの予測が外れた検証はなにもしないで未来のシミュレーションばかりやっている、信じろをいうほうが無理である(p72)
・石油はまだ相当ある、実はピークアウトはせずに少なくともあと200年はなんとかなりそうである。シェールオイル、シェールガスを含めれば400年はもつだろう。ウランはあと100年でなくなる(p91)
・メジャー電力源で一番安上がりなのは、石炭火力と天然ガス、全体の60%を占めている。(p100)
・植物は動物に食われないように毒を持っているものが多い、理由は植物には排泄器官がないから。動物には排泄器官があるから、代謝終産物質を肝臓で解毒して最終的には腎臓から尿の一部として出す。植物はそればできないので、それを液胞の中に貯めておく(p135)
・遺伝子組み換えの一つは、昆虫を殺す物質(Btタンパク質)を発言させる遺伝子を作物に組み込む、昆虫の腸管内はアルカリ性でBtはアルカリ性の環境で有毒になる、人間の腸管の中は酸性なので大丈夫である(p136)もう一つは、除草剤耐性の薬を野菜の中に組み込むもの(p137)
・牛や鶏の肉も今は人工的に作れるようになった、2013年にオランダで世界初の鶏肉ビーフバーガーが作られた。筋肉細胞を作り出す体性幹細胞を取り出し、それを培養してやれば肉ができるが今のところコストが莫大にかかる。2013年の時点では100グラム3500万円だったが、現在は2000円までに下がった、これが300円くらいになれば普通の人でも買うだろう(p189)
・カラスは腐肉食の鶏なので美味しいわけがない、美味しいのは穀物とか昆虫をたべている鳥である、動物も同じで肉食獣の肉はまずい、ライオンやトラの肉なんてまずいだろう、草食獣の肉のほうが美味しい(p191)
・培養肉が一般的になると食べられる野鳥の肉が一挙に増えるだろう、魚もそうである。今は生きたものを飼って、それを殺して食べているので、飼育が大変な動物の肉は市場にでない。一番買いやすいのが鶏、次は豚と牛。なので、多様性がない。培養肉の技術が進歩すれば食べ物の文化が激変する可能性がある(p192)
・人工光合成ができるようになれば、培養肉の比ではない、炭水化物が人工的に作れるので、大きな湖のそばに工場をたてて、太陽光を集めてそこに炭酸ガスと水を注入すると炭水化物ができるいうこと。そうやって人類生存に必要な炭水化物をつくれば、畑がいらなくなる(p193)この技術や培養肉の技術は、食料不足になったとき、気候と関係なく人工的に食料を生産できる(p194)
・光合成をする独立栄養生物の中にもオイルを生成するものがある、有名なのはボトリオコッカスという緑藻である、現在は1リットルのオイルをつくるのに最低でも500円かかるのがネック。光合成は水中や空気中のCO2を固定化しているのでそれを燃やして空気中に戻るので全くのカーボンフリーである(p202)
・食べ物から何から何まで、お金で買わなければ入手できないようなシステムを構築するおが、差し当たってのグローバルキャピタリズムの目標である。たくさんの人々が自給し始めると成り立たなくなる、あるいは物々交換すれば、成り立たなくなる。物々交換できるシステムを構築することが、キャピタリズムに一番打撃を与える(p204)
・イギリスの人類学者、ロビン・ダンバーは、お互いに相手と密接な関係を築ける集団の構成員の上限は150人程度だという仮説を提唱した、これをダンバー数という。ダンバー数以下の集団では、集団の構成員を縛る明示的なルールはなくともなんとなくうまくいく(p208)日本でもっとも可能性がありそうなのは、農村に移り住んで、ダンバー数以下の物々交換コミュニティをつくって、なるべく貨幣に頼らず生活すること(p213)
・サステイナブルとディベロップメントは、背反している。中産階級以下の人が優雅に生きようとするならば、短期的な利潤だけを追求するラットレースから降りて、貨幣に全面依存しないで生きられるような定常システムを構築してダンバー数以下の信頼できるコミュニティの中で生活することが良い(p214)
2020年11月14日作成