池田清彦のレビュー一覧
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ネタバレ1995年まで優生保護法が続いており、優性思想としてはつい最近まで残っているため、たとえ政策が変わってしまっても人々の意識にはまだまだ優性思想が残っている印象。
満州での支配において、国民の健康増進が軍事課題であり、1940年にナチスをモデルとした「国民優性法」がとられる。総力戦体制の一環と捉えられ、現在の体育行政や学校教育への影響が見られる。アメリカでも優性運動が生まれたが、好景気による経済問題解消から、いずれ衰退。日本では1970年代前半までは遺伝性疾患をもつ子供を産まないべき、という考えが珍しくなく存在したが、1970年代後半から障害者運動が始まり少なくなる(これも経済問題解消による効果か?)
現在日本では経済問題が深刻化し優性思想が前面に出るようになり、今まで以上に注意が必要である。ナチスは特異な思想をもった悪の集団として突然現れたわけではない
(それにしても本当に学校体育嫌いだったな~、身体を動かすことは好きだったんだけど) -
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『構造主義科学論の冒険』(講談社学術文庫)や『科学はどこまでいくのか』(ちくま文庫)につづく、著者の科学論が開陳されている本です。
本書では、著者の「構造主義科学論」にもとづいて、同一性を記述することが科学という営みの本質であるという考えが語られるとともに、そうした科学という営みを歴史的ないし社会的な観点から考察して、オカルトとの関係についての議論が展開されています。
科学はオカルトを起源としながらも、オカルトとは異なり客観性を担保しうることで正統な知として社会に承認されるようになったことや、そうした正統な知としての科学によってすくいとることのできない領域に心霊主義などのオカルトが流行する理由が求められること、さらに現代のカルト宗教が、科学によってあつかうことのできない「かけがえのない私」についての問いかけにこたえを求める人びとを引き寄せているけれども、その教義が正統な知である科学のグロテスクな反復になっていることなどが、比較的自由なスタイルで論じられています。
現代社会における科学のありかたについてわかりやすく解説している本ですが、ややテーマが拡散している印象もあります。 -
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ほとんどを朝のウォーキング中に、スマホの読み上げ機能で読んでしまった。軽いノリで、けっこう考えさせられる意見を言ってくれていて、早朝頭の活性化にもつながるね。この人の本は何冊か読んでいるし、テレビでもみたことがあって、なんかすっとぼけたじいさんだなぁ、という感はあるんだけど、そこが楽しいと思う。はじめて読んだときにたしか「リバータリアンである私は・・・」的な言い方をしていて、なんだこの人?とちょっと引いたものだけど、いずれの論説も斜に構えているようでスジが通っている言説なんじゃないかと思う。まぁすべてにそうだ、そうだとは言えないにしてもさ。
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生物学者で早稲田大学名誉教授でもある著者が国家や人生などについて自身の哲学を書いた一冊。
国家や死生観など様々なことについてほどほどでいいということを自身の経験や価値観から書かれており一つの考えとして感慨深いものがありました。
国家の拡大や人口増加、資本主義について大きくなりすぎる弊害について学べただけでなく生物学者として人間や他の生き物が生存しているメカニズムなども盛り込まれており勉強になりました。
また著者のベーシックインカムに対する考えも興味深いと感じました。
本書を読んで資本主義のシステムというなかでいろいろなものが増えるにつれて欲を満たすため働き、また欲が膨らむという循環の只中にいる私たちがふと立ち止まり考えるきっかけをくれる一冊だと感じました。 -
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先週(2021.1末)本屋さんに行った時に見つけた本です、副題にある「不良老人のすすめ」が気になりました、また本の帯にある「健康も安全も何が最善かを決めるのは自分だけである」というフレーズにも惹かれて読んでみることにしました。
私より20歳くらい先輩である著者の書かれていることは、実際の体験をベースに、さらには生物学者の観点から書かれていて、今後数年以内には別のステージに移行する予定の私にとっては為になる部分が多かったです。
私がこの本から受け取ったメッセージは、自分の老後(いわゆる60歳定年以降)は自分の基準・価値観で決めるべきで、外部情報に惑わされたり他人との比較は意味がないということ、更には、加齢とは上手に付き合うのが一番ストレスがかからない、というものでした。
以下は気になったポイントです。
・スペイン風邪は1918年1月から流行し始めて1920年12月に収束したと言われている、収束までに3年を要している。COVID-19の場合は、下手をすればそれ以上に長引く可能性がある。死者数を比較すれば、COVIDのウィルスは毒性がマイルドである可能性が高いから(p20)マイルドに変異する(毒性が弱い)ほど増殖しやすい(p21)
・90%の予防効果とは、ワクチンを接種した人の90%がウィルスに感染しないという意味でない、2万人にワクチン投与、2万人にはプラシーボ(偽薬)を投与したとして、一定期間内の発症者が前者は5人、後者が50人だったとすると、予防効果は90%となる。ワクチンを接種したことで50人が5人になったという意味での「予防効果90%」である(p25)
・本音としては「社会を守るために、ちょっと危険かもしれないが、お年寄りの方からワクチンを打って欲しい」ということ(p29)
・COVID-19による呼吸不全のリスクを高める遺伝子がネアンデルタール人からもたらされたという論文がネイチャー(2020.9.30)に掲載されていた。日本や韓国、中国などの東アジアにはほとんどいない、一方で南アジアでは30%、欧州では6%がこの遺伝子を持つ(p34)
・PCR検査が進まない理由として、厚生労働省の利権がある。行政は内務省、教育は文部省という明治の初頭に決められた縄張りがあり、疾病対策は内務省にルーツを持つ厚労省、大学医学部・研究機関を統括する文科省は介入しないという暗黙のルールがある。PCR検査は厚労省の所管であり、文科省の介入は許さないということになっている(p46)
・医療崩壊が起こるとすれば、厚労省が近年ずっと全国の病院のベット数を減らすことに腐心してきたことに原因がある。(p48)
・昆虫類は膨大な卵を産むが、ほとんどが親になれず繁殖に関与する前に死んでしまう、もっと効率的なやり方をすればよさそうだが、無駄がないと有事の際に余裕がなくて絶滅してしまう可能性が高くなる為であろう、アリやハチは7割はあまり働かず、1割は一生懸命働かない。この働かないアリこそが有事のセキュリティ装置として巣の存続に役に立っているのだろう(p49)
・1994年の法改正により、1998年からは60際未満定年制が禁止、2012年には定年が過ぎても本人が希望すれば65歳まで継続雇用することが企業に義務付けられ、2013年に施工された、これに合わせて年金も65歳支給となった(p52)
・寿命に関与する遺伝子の発現を制御している領域の「DNAメチル化」を調べて算出された人間の自然寿命は、38歳である。アフリカゾウは65歳、ビンタゾウガメは120歳である、象や亀は実際の寿命とほぼ一致している(p56)
・肺がんになりやすいかどうかは、タバコを吸うかどうかよりも、肺がんから命を守る方向に遺伝子が働くか否かによって決まる部分が圧倒的に多い(p61)
・あやふやな未来を「ある」と決めて受けることで生き方が窮屈になってしまうくらいならば、今を楽しみながら生きるのがいい、今を大事に生きる方が絶対に得である、今日美味しいと感じるものを食べ、今日楽しいと思えることをやる。一方で、明日からもなんとなく人生が続いていくことを想定しているのだから、お金はほどほどに使い、無駄使いもすることはしない(p76)
・老後というと「のんびりする」のが正解だと思いがちだが、寿命を延ばしたいのならば、多少なりとも「めんどくさいな」と感じることが必要である(p80)
・癌で死ぬ人の数は減っていない、がん検診とは、「がんの発見」には貢献しても、癌で死ぬ人を減らすことには貢献できていない。がんの早期発見が進んでも死ぬ人の数は減らない、という事実は「早く発見しても遅く発見しても、治る人は治るし、死ぬ人は死ぬ」ことを意味しており、結局のところ、早く発見することに大したメリットはない(p130)癌で死ぬかどうかは、発見の早さではなく、その悪性度によって決まる(p132)
・フィンランド保健局が1974-1989年の15年にわたり、40-45歳の管理職1200にんの男性を対象に行なった調査がある、5年間、4ヶ月毎に定期検診を行い、医者が適切と思われる介入をした群としなかった群に分けて、15年間の死者数を比べたところ、介入群の方が非介入群よりも死者が多かった、これを「フィンランド症候群」と呼ばれている(p148)
・一緒にゆっくり食事を楽しむことができるのは人間だけであり、人間だけが持つ貴重な楽しみ、心を豊かにする秘訣である。それを続けることで人間社会のありようが変質すると心配される(p154)
・自分自身が楽しくなるためにも、他人と楽しく付き合うためにも、自分の頭の中をいつもニュートラルにして多様性を維持しておくのが良い(p158)他人の言動が必要以上引っ掛かるのは、これだけが正しい、と思い込んでいる、つまり多様性がない。他人の言動で気になることがあったとしても、あまり深く考えずに、ペンディングしておけば良い。その辺をうまくスルーする能力も、楽しい老後には必要である(p159)
・自分が社会の役に立っているという自尊心を持つことは、いつまでも老け込まずに豊かな老後を送ることに繋がる(p179)
・国民全員に10万円支給したのは、まさにベーシックインカムである、これを毎月やって、その大半を使用期間限定の貨幣にすれば良い。そうすることで、貯めるのでなく、使うことを前提に現金を支給できて経済は回っていく(p206)
2021年2月11日作成 -
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大学は勉強するところではない。大学とは、知識を商品のように学生に売るところではありません。知とはデジタルデータではなく、身体と感情を持った人間一人一人が身につけ、実践し、対話し、試行錯誤する中でしか役立たない。
あらかじめ用意された正解をたくさん覚えることが優秀だというのは、いわば知識ベースの勉強です。しかし、非常事態に対処するには、そんな勉強だけでは限界があります。そこで力を発揮するのが、物事をいろいろな角度から観察し、今までに知った事実と組み合わせて、全体の構造を考えるという知性ベースの学びです。
まだ答えがない問題への対処については、先生と生徒の立場は対等です。 -
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ネタバレ・私は『人間、このタガの外れた生き物』で池田清彦先生に出会いました。自分を知るという意味でも、社会を知るという意味でも、世界を知るという意味でも、生物学という視座が極めて有効だと思いました。
オトコとオンナの生物学 (PHP文庫-2016/6/3)>>を『人間、このタガの外れた生き物 (ベスト新書– 2013/5/9)』『世間のカラクリ (新潮文庫-2016/10/28,単行本–2014/9/18)』『マツ☆キヨ:「ヘンな人」で生きる技術 (新潮文庫–2014/4/28,単行本–2011/8)』に続いて読みました。第2章は月間誌『くらしラク~る♪』(2015年4月号~9月号)に連載された「女性はなぜハイヒールをはくのか」を大幅に加筆・再編集し、第1章、第3章は新たに書き下ろしたものとのこと…
そのためか!?全体的に取り留めのない内容になっているような気もしますが、最後32『ヒトはなぜ世界中に広がったのか?』の「ほかの種を滅ぼしていった人類」~「増え続ける世界人口と止めろ!」で一気に収斂していく感じが、『人間、このタガが外れた生き物』『世間のカラクリ』『マツ☆キヨ:「へんな人」で生きる技術』との違いか(・・? -
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BSEや地球温暖化、クローン技術など、さまざまな問題をあつかった科学エッセイです。
著者の議論を支えている柱のひとつは、著者が「好コントロール装置」と呼んでいる近代国家のパターナリズムに対する批判だといえるように思います。ただし本書は「リバタリアンのすすめ」といったような内容ではなく、科学的な装いを施したパターナリズムに対して科学者の立場から問題点を指摘するというものとなっており、興味深く読みました。
本書の議論を支えるもうひとつの柱となっているのが、著者のいう「構造主義的科学論」の視点です。これは、あらゆる科学の理論は「同一性」というものに依拠して組み立てられているという科学認識論上の立場だと理解することができます。著者は、この同一性を構築するのは脳の働きだという、唯脳論の養老孟司を思わせる議論を展開しています。
読者によっては、著者のシニカルな語り口が好きになれないと感じるひともいるかもしれません。