岡潔のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
角川ソフィア文庫から岡潔のエッセイが出るのは四冊目。『春宵十話』『春風夏雨』『夜雨の声』、そしてこの『風蘭』。
どの作品にも、情緒という感覚が深く絡んできて、その説明は分かるようで分からない、どこかに響いているようで、それがどことは言えない感じがする。
並々ならぬ数学者でありながら、教育するということもよく見つめてきた偉人である。
自分の世界だけに入り込みそうに思うのに、そうではなく、よく見ていると感心させられる。
「よく批判的精神などといって、小学校の一年生あたりから「批判」をさせているようですが、批判力というのは高等学校三年ぐらいにならなければ顕現しないと思われますから、批判できるはずがありません。
あれは、人の欠点を見いだして、そして全体を否定するというやり方で、これは明らかに衝動的判断です。」
この引用については、解説で内田樹も触れている。
インターネットの罵詈雑言は、正にここに値する。
ここに至らないためには「羞恥心」がいちばん大切であると、述べている。
「それからとくに中学校の教え方ですが、あのころは知性で申しますと、夜が明けようとしてなかなか明けきらない長い夜明けの時期です。それにたとえられます。目覚めようとして、まだ眠っているものが心の中にいろいろあるのです。
いわば、浅い眠りを揺り動かして目覚めさせる、こういうやり方をなさる先生の授業はみなおもしろい。」
「そういう点において最大の傑作は、ドストエフスキーの「白痴」です。
そこでは完全に行きづまっていると思うのに、つぎのページになるとまったく新しい道がひらけてくる。文学でさえこんなふうにやっているのに、数学がこんな壁ぐらい突き破れないなどというようなだらしなさでは仕方がないと思ったりして、勇気をふるいおこしてまたやるのです。」
いつも、岡潔を読むと、もう少しゆっくりものを見たり、考えたりしようと戒められる。
しばらくすると、また忘れているから、こんな風に折に触れて読もうと意識している人である。 -
Posted by ブクログ
STANDARD BOOKS創刊。
プレゼントにしたいくらい、きれいな装丁。
岡潔、寺田寅彦、野尻抱影と三冊出ていたのを、一揃い買ってしまった。本当は、『数学する身体』を買おうと思っていたのに……。
岡潔は、角川ソフィア文庫『春宵十話』『春風夏雨』を持っているので、既に読んだものが多い。
これから買う人は注意かも。
『実際、人間が集団生活を営み得るというのは、他人の感情がわかるというアビリティがあるからで、集団に特別な本能が与えられているわけではない。……だから個人を十分みがいてからでないと、集めてもうまくゆかない。
今の小、中学校の教育では、初めからグループ、グループをつくって教えているのではないか。というのは大学でも、集まってディスカッションをやるというふうにしなければ考えられないらしい。こんなものは数学にはまことに不向きで、数学には限らないが、何事でも、そんなやり方では言葉のおよぶ範囲よりは決して深くははいれない。言葉のおよぶところまでなら語学にすぎない。それから先に進むから数学なのである。すべてそうだと思う。』
非常に感銘を受けた箇所を引用してみた。
岡潔の文章を読んでいると、自分の中の余裕に光を当ててやろうという気持ちになる。
それが彼の言っていることとは一致しないとしても、広くゆったりと観ることの大切さを感じることが多いのだ。
数学とは、そういう「こころ」を重んじるものなんだな、ということはこの方から学んだ。 -
Posted by ブクログ
批評家、文筆家として有名な小林秀雄と、
歴史に名を残す数学者・岡潔の対談本です。
昭和40年(1965年)のものだということです。
冒頭から、ピカソやアインシュタインを引き合いに出しながら
話は進んでいきます。
「無明」をちゃんと分かっている方が良いんだという流れになります。
無明って、僕は「救いのない」ことなのだろうと読んでいたのですが、
言葉の意味を間違えていたようで、パソコンの広辞苑を開くと、
「一切の迷妄・煩悩ぼんのうの根源。三惑の一つ。」などと書かれていたりする。
となると、話は全然違ってくる。
自分の愚かしさを知っておいた方が良いというような意味にとらえられますね、
彼らの、とくに岡さんの主張は。
そういったところから、
今度は「情緒」とか「情」とか呼ぶもののことについて
話は進んでいきます。
面白いですよね、文士の小林さんと数学者の岡さんの話がまじわるところというのが、
そういう部分になるんですよ。つまり「心」ですね。
分野は違えど、心というものに対する考え方は似通っていて、
そして、互いに自身の人生の中で心を磨いてきていた。
そして、その「心」関する考察や、彼らの心のあり方っていうのは、
十全に現代に通じるのです。
古いとか新しいとかではない、不易(真理)がここにあるのかもしれない。
とかなんとか、なかなか感想が書きにくい本ではあります。
なにせ、難しいです。
ただ、解説に茂木健一郎さんが書いているように、
読んでいると、自分の頭が良くなるような感じもしますね。
クリアになることもあるし、ヴィジョンが開けるところもある。
じっくりと思索したい人、思索が好きな人には
おすすめの本です。