【感想・ネタバレ】春宵十話のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ 2023年01月19日

いつだって私のバイブル、指南書である。日本語をここまで美しく書ける数学者はこの人くらいだろう。日本の未来を憂いて様々なことを書いているが、本人が今の日本を見たらどう感じるのか。私は常にそう考えている。

0

Posted by ブクログ 2022年03月14日

情緒を磨きなさい。今の教育は急かしすぎている。人の中心は情緒であるからゆっくりと健全に育てなければならないのだ。そうでないと数学も人も社会の心もわからないのだ。損得感情抜きに、自分がこれだと思う直観を大切に理路整然とした行いをしなさいー現在の教育問題にも通ずる大数学者の人間論。

自明のことを自明と...続きを読むしてみて(=純粋直観)、少しも打算を伴わない理路整然とした行い(=善行)を人生の中で大切にしていたい。

10年後、子育ての際にも参考にしたい。

「数学の本体は調和の精神である」とポアンカレーはいう。数学者である岡潔がこんなに素晴らしい人間論をかくものだから、数学にも興味が湧いてしまった。

0

Posted by ブクログ 2022年02月23日

〈本から〉
自然の感銘と発見とはよく結びつくものらしい。

自然の風景に恍惚としたときなどに意識に切れ目ができ、その間から成熟を待っていたものが顔を出すらしい。そのときに見えたものを後になってから書くだけで、描写を重ねていけば自然に論文ができあがる。

情操が深まれば境地が進む

何事にもよらず、力...続きを読むの強いのがよいといった考え方は文化とは何のかかわりもない。むしろ野蛮だと呼ぶべきだろう。

「楽しむ」というのが学問の中心に住むことにほかならない。

理想とか、その内容である真善美は、私には理性の世界のものではなく、ただ実在感としてこの世界と交渉を持つもののように思われる。

理想とはおそろしくひきつける力を持っており、見た事がないのに知っているような気持ちになる。

基調になっているのは「なつかしい」という情操だといえよう。これは違うとすぐに気がつくのは理想の目によって見るからよく見えるのである。そして理想の高さが気品の高さになるのである。

情緒の中心の調和が損なわれると人の心は腐敗する。

社会に正義的衝動がなくなれば、その社会はいくらでも腐敗する。これがいちばん恐ろしいことである。

「衣装して梅改める匂いかな」と蕉門の句にある。およそひきしめるものはすべてみな礼に属するといってよい。礼を抜きにすることはなれることであり、ここからやはり獣性がはいってくるのである。

数学教育の目的は決して計算にあるのではない。かたく閉じた心の窓を力強く押し開いて清涼の気がよく入るようにするのにあるのだ。数学教育は大自然の純粋直感が人の子の情緒の中心によく射すかどうかに深くかかわっているのであって、計算が早い、遅いなどというのは問題ではない。

アンリ・ポアンかれー 「数学の本体は調和の精神である」

数学の目標は真の中における調和であり、芸術の目標は美の中における調和である。

「浅きより深きに入り、深きより浅きに戻る心の味なり」 (芭蕉)

0

Posted by ブクログ 2020年09月21日

ここで語られる教育論や、情緒とそこに根差す情操と言ったものは今もって説得力があると感じる。
数学と芸術の類似性についての語りは、あぁこの人天才なんだな、と感じる次第であるが、実際に物事を深く探求するといことは、そうした境地に近づくといことなんだろう。その意味で、文学を含めた芸術に批評的であるというの...続きを読むは、何かを極める上でも必要な資質なんだと理解した。

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年08月30日

数学者岡潔のエッセイ。
子どもを育てるものとして参考になることがたくさん書いてあった。

1901年生まれなのでかなり昔の方なのだけど、教育にとって大事なのは情緒的な感情や心の成長だと終始書かれていて、今まさに非認知能力が注目されているのを見ると間違っていないなと思う。

そしてこの方、数学者であり...続きを読むながら芸術的なもの、文学や絵画、音楽なども楽しむ心を持っており、目的に通じるわかりやすい何か一つを突き詰めるだけでは物事への理解を深めるには限界があって、いろんなことを楽しむ心を育てることでそれが深まっていくということがよくわかった。

わたしも兼ねてから、人生のいわゆる成功(学歴や職種)に直接関係のない芸術やら何やら好きなものを深めることで人生を豊かにする一助になると思っていて無駄はないはず!といろんなことをやっていたので、この方の人生や考え方を通してそれは間違っていなさそうだと確信できた。

今子どもにできていることできていないことたくさんあるけど

・学校の成績のようなわかりやすいゴールだけを目的に勉強を詰め込ませない
・たくさん遊ばせる(特に自然に触れて綺麗なものをたくさん見せる)
・興味のあるものをどんどんやらせる
・否定しない
・裏切らない
・一つだけ教えてあとはそっとしとく

これは守っていきたいな。

0

Posted by ブクログ 2019年02月11日

著者、岡潔は、この本の中で「なつかしい」という言葉を多用している。そして、数学は情緒であるという。岡潔は、日本的情緒が失われることを今でなく、ずいぶん昔に危惧している。でも、私個人としては、この本の読後感としては、のどかで、温もりを感じ、こころが洗われた。そして、過去のこととは思えなかった。同時に生...続きを読むきている生々しさがあった。

また、芥川龍之介や夏目漱石、ドストエフスキーといった文豪を好みにしているところが私と一致していたことに驚きを感じた。

0

Posted by ブクログ 2018年11月23日

"こんな本に出合えることが、読書をやめられない理由の一つ。
自分自身がこれまでの人生の中で、ありとあらゆる外界と接触して培ってきた感覚と、本書の著者である数学者の岡さんのものは、全然違うもの。
新たな視点、気づき、驚きを与えてくれた。岡潔さんの目線と同じ場所に到達するには、まだまだ精進が足...続きを読むりない気がする。
人間を見つめる視点、日本人をとらえる感覚は、深く洞察したうえで到達する高みにあるようだ。数学と芸術はとても似ているという感覚は、今の自分には持ちえない感覚だ。また、前頭葉の使い方で戦前と戦後では日本人の顔までも変化しているという観察など、思いもつかない。
人の顔なんて、それぞれで、こんなもんだなぁと思うだけ。俯瞰して大きな時間軸で観察していないと気が付かないし、思いもしないようなことが、この本にはいっぱい書いてある。

繰り返し読み返し、言葉をかみしめて、読んだ時の自分が感じた感覚を大切に生きていきたい。"

0

Posted by ブクログ 2016年07月16日

世界大戦後の日本を憂慮して教育に関して自身の経験を交えつつ書いたエッセイ.
読み始めたときは数学者とは思えないほど表現力に富んだ柔らかな文章だなと思ったが,数学者だからこそ,特に筆者の言う"情緒"に富んだ方だからことこのように興味深い文章が書けるのだと納得した.
歴史や昆虫採集な...続きを読むど,幼いころから多方面への興味を筆者がもっていたことが興味深かった.一方で集団行動,詰め込み教育に重きをおく現状では筆者の言う真の智が生まれることは難しいのではないかと感じた.
何度も再読したいし,友人にもおすすめしたい一冊.

0

Posted by ブクログ 2016年11月23日

世界的数学者・岡潔(1901~1978年)の代表的な随筆集で、1963年に発表され、その後何度も復刊を重ねているロングセラー。(本書は2006年光文社文庫で復刊)
岡潔は、京大時代には後のノーベル賞学者の湯川秀樹や朝永振一郎に講義を行い、広中平祐のフィールズ賞受賞業績にも影響を与えたといい、また、自...続きを読む身の数学上の業績は、西欧の数学界ではそれがたった一人の数学者によるものとは当初信じられなかったほど、強烈な異彩を放つものであったという。
また、岡氏は、日本人のもつ「情緒・情操」の大切さを繰り返し述べ、本書以外にもそうした思いを綴った多数の随筆を残しており、一般にはむしろそうした実績で有名かもしれない。
「人の中心は情緒である。・・・数学とはどういうものかというと、自らの情緒を外に表現することによって作り出す学問芸術の一つであって、知性の文字板に、欧米人が数学と呼んでいる形式に表現するものである。」
「数学の目標は真の中における調和であり、芸術の目標は美の中における調和である。どちらも調和という形で認められるという点で共通しており、そこに働いているのが情緒であるということも同じである。だから、両者はふつう考えられている以上によく似ている。」
「文化の型を西洋流と東洋流の二つに分ければ、西洋のはおもにインスピレーションを中心にしている。・・・これに対して東洋は情操が主になっている。・・・木にたとえるとインスピレーション型は花の咲く木で、情操型は大木に似ている。」等
「数学は美しい」とは数学者がしばしば口にするフレーズであるが、日本の数学界には優れた数学者が現れるべきして現れていることを実感する、素晴らしい随筆集である。
(2008年4月了)

0

Posted by ブクログ 2023年12月23日

読んでいて気が引き締まる美しい日本語の随筆集。数学者が情緒の寛容さを解くとても興味深い内容でした。

西洋の宗教はインスピレーション、東洋の宗教は情緒、というのは鋭い指摘だと感じました。だから東洋は年老いても、いや年老いてこそ味が出てくる、と。宗教に入ってから、世界が開けたという体験も何故だろう?と...続きを読む思えてきて楽しかった。

0

Posted by ブクログ 2021年12月28日

本書は、天才数学者である岡潔さんが書かれた本です。
「数学に最も大切なのは、情緒である❕」というのは、とても深い言葉だなーと思いました。
数学博士としての「人生論」「教育論」が書かれており、参考になりました。
ぜひぜひ読んでみて下さい。

0

Posted by ブクログ 2019年02月05日

数学だけでなく芸術や教育についても多く触れられている。特に日本の教育の行く末について非常に心配している。50年以上前に書かれた本だが今の時代にもかなりあてはまるような鋭い指摘が多数。

0

Posted by ブクログ 2018年11月18日

往来堂書店「D坂文庫 2013夏」からピックアップした一冊。先達の言葉に耳を傾け、背筋をピシッと伸ばしてもらおうと思って手にした。
数学者が書いた本だが、のっけから「人の中心は情緒である」と来る。この情緒を豊かなものにしないことには数学も何もない、という思いから、幼児教育や義務教育などについてひと言...続きを読むもふた言も申している。「何よりいけないことは、欠点を探して否定することをもって批判と呼び、見る自分と見られる自分がまだ一つになっていない子供たちにこの批判をさせることである。」1963年に刊行された本だが、今の時代にもそのまま突き刺さる言葉が耳に痛い。
ところで、なぜ数学者には数学以外の教育のことを述べる著書が多いのか。この岡潔しかり、藤原正彦しかり。その答えをこの本の「数学の本体は調和の精神」「数学の目標は真の中における調和」というくだりに見た。数学者は美しい図形や数式に調和を見い出し、その美しい調和というものはそもそも人間が基本的なところで持つべきものだという考えに行きついた。そして、それを持つには教育が重要だ。彼らの中にはこういうロジックがあるように思う。

0

Posted by ブクログ 2016年12月29日

以下全て、この本よりの抜粋。

●近頃は集団として考え、また行動するようしつけているらしい。だが、人の基本的なアビリティーである、「他人の感情がわかる」ということ、物を判断する、ということ。これは個人が持っているアビリティーであって、決して集団に与えられたアビリティーではない。

●集団について教え...続きを読む、集団的に行動する習慣をつけさせれば、数人寄ってディスカッションしないと、物を考えられなくなる。しかしそれでは少なくとも深いことは何一つわからないのだ。

●集団的に怒りの気持ちを持って行動するのは疑問だ。人というものが怒っているときに正常な判断を下せるかどうか、だれにでもわかるはずだ。

●集団をつくらせると、ボスができるばかりである。ボスができてからは、道義道徳を入れようがない。

●クラス活動、グループ活動。そんなひまがあれば放任して、遊びに没入させるに越したことはない。子供を小学校に入れる際にどうしたらいいか、と母親に質問されると、しばらく入学させないで待っていなさいと教えているのだが、違法だろうか。

●何よりいけないことは、欠点を探して否定することをもって、批判と呼ぶこと。

●根性なんて心の垢に過ぎない。

●どの人がしゃべったかが大切なのであって、何をしゃべったかはそれほど大切ではない。

#

岡潔(おか きよし)さん。
1901−1978の、数学者さんです。

もう、40年ほど前に亡くなった方ですし、なにしろ数学者さん。
ただ、随筆を多く書かれていて、「名随筆だ」という評価も高い。
と、いう噂だけ知っていて、ふらっと衝動買い。

いやあ。
強烈な変人さん(笑)。奇人。個性的。
なあなあの集団生活、追従、空気を読む、とか、できないんだろうなあ。

ただ、上記抜粋したような内容は、僕は好きでした。素敵!

#

一方で、この本。批判的に言うなれば。

ものすごい主観的で一方的な意見を、なんだか圧倒的な確信でおっしゃる(笑)。

そして、ええええっ!っていうくらい驚愕の精神論。精神主義な意見も多々。

そして、頻発するのが。
「最近の若いものはだめだ。僕の頃はこうだった。僕はこうやって豊かな心を養った」

という要約が可能な、

「偉そうな爺さんのほろ酔いループ自慢話」…。

#

ただ、内容と論理にただよう、ただなるオリジナリティー…。

「秀才」ではない。「天才」…。

#

そんなトデモナイ内容の、その一方で。

はっとするくらい、「なるほどなあ」という言葉があったり。

エッセイが素晴らしい、というより、警句、アフォリズムというか。

文学芸術のことまで、この人はまあ、とにかく考えに考え抜いているなあ、という感心があったり。

「高等数学っていうのは、つまり哲学だ」

という言葉があるのは知っているのですが、この人はもはや数学者というより哲学者なのでは?という佇まい。

というわけで、読んだ自分の中で毀誉褒貶、難しい評価の一冊ながら、興味深い発見であったことは確かでした。

#

ただ、この本の編集のボリュームで言うと、岡潔さんの初心者には分量が多かったかな、とは思います。
所詮随筆を、後年寄せ集めて編集した本なので、もっと厳選して薄いほうが食べやすいのでは。

#

それから、この本の「今時の若いもの批判」というのは、時折吹き出してしまうくらい理不尽でヒドイなあ、と思ったのですが。
でも考えてみると、ここで批判されている「若いもの」っていう人々は、2016年現在、「今の若いものはなっとらん」といちばん発言しているであろう、60代〜70代の人々なんだなあ、と思うと、なんだか微笑ましかった。

#

いくつもの随筆、社会批判、若者批判が、そのあまりにも無邪気なまでの横暴、暴論、依怙贔屓内容に、「これぁ、2016年に発表したら、即座にネットで炎上するんだろうなあ」とにやにやして読みました。

#

数学者としての岡潔さんがされてきた研究内容っていうのは、この本の随筆のいくつかでも触れられていますし、ネット検索しても縷々と説明されています。
なんですけど、一言半句たりとも、僕には分かりませんでした…。

ただ、欧米の研究者が、「あんなすごい質と量の研究を、個人が、それも日本人ごときが出来るわけがない」という感想から、「オカキヨシ」というのは、研究者のグループの名前だと思っていた、という逸話があるそうです。すごいですねえ。わかりませんが。

0

Posted by ブクログ 2016年06月06日

ずっと読みたい…と思っていた岡潔さんの本。
50年以上前の著作だが、全く古さを感じず、現代にも通じる点が多く見られました。

0

Posted by ブクログ 2015年08月08日

人生について、学びについてを追求しつくす
迷うことがあったときにはじっくり向き合って、頭の中を整理するときに再読したい

0

Posted by ブクログ 2015年02月07日

力不足で理解に及ばない箇所もあった。。が、教育への警鐘はわりとわかりやすい内容で、現代にも通じるものだった(当時の傾向が変わらなかったということやけど)。動物的・競争的な性格をのばし、情操・道義を疎かにしていると批判している。詰め込み過ぎで隙間がないという指摘なども。
芸術論も面白かった。

0

Posted by ブクログ 2014年10月13日

数学者、岡潔氏のエッセイ。
情緒の大切さ、教育の大切さが話の中心となっている。
その気持ちの裏側には、「近ごろのこのくにのありさまがひどく心配になって、とうてい話しかけずにはいられなくなったから」という危機感があった。とくに戦後教育により加速度的に「動物性」が入り込み、人々の情緒が失われているという...続きを読む

『数学と芸術』において筆者は、「両者はふつう考えられている以上によく似ている」といい、それは、両者が求めているものは「調和」であり、数学においては「真の中における調和」であって、芸術においては「美の中における調和」であるからだ。
「調和」を感じるためには情緒を働かせなければできない。ゆえに情緒が大切なのだという。

また『一番心配なこと』での以下の言葉は興味深い。
「人の基本的なアビリティーである、他人の感情がわかるということ、これは個人の持っているアビリティーであって、決して集団に与えられたアビリティーではない」
一人でじっくりと考えることから情緒が生まれる。集団によるディスカッションでは深さに到達できないという筆者の言葉に、めまぐるしく情報が飛び交う中で、自分に立ち戻って考える時間を持つことの大切さを教えられた。

春宵一刻値千金
(春の夜は、なんともいわれぬ趣があり、一刻が千金に値するような心地がする)

0

Posted by ブクログ 2013年10月26日

本書は、人には情緒が大切であると言っている。
自分は、しかしそもそも情緒って何だろうかということから考えてしまったが、、
全般的に教えられることが多かった。

―はしがきより引用
人の中心は情緒である。情緒には民族の違いによっていろいろな色調のものがある。たとえば春の野にさまざまな色どりの草花がある...続きを読むようなものである。
…私は数学なんかをして人類にどういう利益があるのだと問う人に対しては、スミレはただスミレのように咲けばよいのであって、そのことが春の野にどのような影響があろうとなかろうと、スミレのあずかり知らないことだと答えてきた。

著者は1901年生まれ、'78年没。
自分が生まれるよりも前に生きて死んだ人の書いた本を読むとはなんだか変な気分だった。死んでもなおその思いは本として残り、読む人に影響する。

0

Posted by ブクログ 2023年08月24日

読書会でお借りした本、その2。

岡潔という数学者のお名前は、SNSか何かで見かけたことがあるようなないような…、程度の知識で読み始めた。
何やらその分野ではもの凄い偉人であるらしい。
数学者の大偉人…。
さて、どんなエッセイだろう…、とページをめくった1行目。

人の中心は情緒である。

おおっ。...続きを読む

…えっと…、この場合の情緒とは
わたしの思っている情緒と同じなのかしら。

読んでいくうちに自分の持っている概念が岡先生と同じものなのかわからなくなってくる。

少し古めかしさも残る美しい日本語、
突然引用される俳句、連歌。
1960年代には当たり前に持っていた、もしくは人によってはギリギリ弁えていた知識や教養がないと、真の意味では理解が難しいのかもしれない。

それでもなんとなく朧げだけどわかる部分もある。諸手を挙げて先生の意見に全て賛成はできないけど、この作品が書かれて半世紀後から読んでも、
「ああ、ホントその通りだ」
「今まさにこんなふうに言われている通りになってるな」
と思える内容も少なくなかった。

ざっくりした印象だけど、仏教に傾倒しておられた面も見受けられ、ところどころ唯識的なお話もあり、情緒を大事にされる部分もあわせ、論理先行のイメージがある数学者なのに振れ幅が大きくてとても魅力的だなと感じた。

一方で、やたらと日本民族に固執する記述、主語の大きさ、懐古的な批判が多いようなところも少し食傷を感じたりも。

解説にあったけど、一芸に達した人の言葉なら、まあ
そう言うのもアリなんだろう。
まさに何を言っているかよりも誰が言っているか、なのかな。

0

Posted by ブクログ 2022年09月18日

数学者、岡潔の随筆書。彼の生い立ちや、考え方が記されていた。

一貫して主張されているのは、「人間の中心は情緒である」ということ。

事物との接し方について、考え直すきっかけとなった。
何かに取り組むとき、何かの目的のもと目的達成のためのあくまで過程としか考えていなかった。
例えば勉強はあくまで試験...続きを読むに通過するためのもののように。

目的が主体となり、現実の事物を軽んじてきたことに、中身の無い物足りなさを感じていた自分の感覚が明確なものになった。

目的への執着、色々な欲を一旦置いて目の前の事物と純粋に向き合いたいなと思った。
向き合った上で自分が納得することが大切だと分かった。

また、以下のフレーズに共感した。
「このくにで善行といえば少しも打算を伴わない行為のこと」


0

Posted by ブクログ 2022年06月15日

日本を代表する数学者岡潔さんのエッセイ。
”数学者“と聞くと意味のわからない文字や式とずっと睨めっこをしているイメージしか湧かなかった。岡潔さんは情緒を大切にされているそうで、情緒の中心の調和がそこなわれると人の心は腐敗すると言う。
心に響く言葉もあればこれはちょっと、、となるような強い主張もちらほ...続きを読むら。

0

Posted by ブクログ 2020年06月28日

久し振りの著者のエッセイ集。情緒、道義、真理、自明。自発的な学びの重要性と成熟を忍耐強く待つ姿勢。それまでまったく辿り着けるように感じていなかったものが、突然舞い降りてくる感覚。自然の流れの中に身を委ね、動物性を除去することで得られるものもあるだろうと...。借り物でない自身の考えを生み出すには必要...続きを読むな時間だと実感できた。

0

Posted by ブクログ 2019年05月11日

人が知的に発達するモデルが独特で、びっくりした。
残念ながらそれほど知的な発達を遂げていない自分には、自分の体験に照らして、思い当たる節があるとか思えることがない。

直観(平等性力智、真善美を判断する智、妙観察智)が合わさって智力を構成している。
情緒は感情のうち、外界の影響を受ける上澄みの部分、...続きを読む下のほうの動かない部分を情操と呼び分けられている。
そしてこれが感覚、知性、情緒(こころ)の順に多く「差し込む」。
大筋、こんな体系のようだ。
つまり、まず人間教育が必要で、それは人を優先することを徹底する道義教育で培われる、とか。

岡先生を訪ねてきた戦後世代の中学生との間に、深い溝があったようだが、私も同じものを感じる。
岡先生のような天才にしか当てはまらない教育論なのかなあ、と思っちゃうのだが。

0

Posted by ブクログ 2019年04月25日

低評価の理由(意味)は、そもそも岡潔さんてどんな人だったかに触れたかったのがそうではなかったので。単に期待した内容の本ではなかったていうこと、なのでほんとにこの作品を評価したものではない。

0

Posted by ブクログ 2021年08月08日

数学者というと論理的思考のエキスパートという印象があったが著者は芸術家に近いと思った。
それにしても、著者の小説や絵画など文化への造形が深くて驚きだ。

解答を導き出すためのひらめきの導き出し方は共感できた。

「…緊張がゆるんだときに働くこの智力こそ大自然の純粋直感とも呼ぶべきものであって、私たち...続きを読むが純粋無雑に努力した結果、真情によく澄んだ一瞬ができ、時を同じくしてそこに智力の光が射したのです。
 …絶えずきれぎれの意志が働き続けるのが大脳の過熱で、この意志が大脳前頭葉に働くのを抑止しなければ本当の智力は働かないということです。」

0

Posted by ブクログ 2018年03月24日

春宵の知への誘い。日本に警鐘を鳴らす。人の中心は情緒である。発見の前に緊張と、それに続く一種のゆるみが必要ではないか。智力も、冷ましているときに働くものだ。春の野に咲くスミレはただスミレらしく咲いているだけでいい思っている。人生において必要なセンスが至るところに散りばめられている。天才と呼ばれる人の...続きを読むセンスを感じることができる一冊。「人間の建設」にしろ著者写真にいつも惹きつけられるのは私だけだろうか。

0

Posted by ブクログ 2017年11月06日

日本が誇る大数学者岡潔氏のベストセラー随筆集。論理が最重要な数学者が「最も重要なものは情緒」と語っているのは興味深い。岡氏の主張として教育の重要性を謳っているが「質がどんどん劣化している」というトーンはいつの時代もご老体が語る言葉であり、柔軟な発想を持った岡氏の発言としてはやや違和感を感じながら読ん...続きを読むだ。

本書内で特に好きな文は「よく人から数学をやって何になるのかと聞かれるが、私は春の野に咲くスミレはただスミレらしく咲いているだけでいいと思っている。咲くことがどんなによいことであろうとなかろうと、それはスミレのあずかり知らないことだ。」。物事の是非を図るのは人間の驕りであり、良し悪しは自然の摂理が決めることである。

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2016年05月28日

数学者として天才の人が、大切なのは情緒であると語られるのがユニークです。「そうだと思ったら何でも本当にやってみることである。徹底してやらなければいけない。それでこそ理想を描くことができるのであって、社会通念に従って生きていこうなどと思っていて理想など描けるものではない。」岡氏の発言であるだけに説得力...続きを読むがあります。

0

Posted by ブクログ 2014年09月16日

筆者の意見が良くも悪くも尖っているため,いろいろなことを考えさせてくれる本.数学者だが,本の内容はほとんど日本という国とその未来のための教育について.

もともと偏った意見や考え方をしている人だとは知っていたが,それにしても偏っている.しかしながら,その偏った意見や考え方の中に多くの人が同意できるも...続きを読むのも含まれている.

筆者の意見を鵜呑みにすることも,遮二無二批判することもせず,極力フラットな気持ちで考えながら読むと良いと思う.

0

「エッセイ・紀行」ランキング