岡潔のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
岡潔さんのことを知ることができたのは、つい最近のことです。
人は壁の中に住んでいるのではなくて、すき間でこそ成長する。すき間を長くしなければ到底智力が働くことはできまいと思われます。
人が数学をし、人が教育し、またされるのである。
心の世界は数学の使えない世界、これに反して物質の世界は数学の使える世界。
欧米に於いては自然科学はだいたい物質主義で、社会主義の人達に対しては、完全な物質主義である。
自然科学で到底乗り越えられそうもない二つの難問題。一つは物質が常に諸法則を守って決して違背しないのはなぜだろうということと、もう一つは時間、空間、特に時間とはなんだろうという問題。
この本 -
Posted by ブクログ
日本の誇る数学者である岡潔さんの講義やエッセイ。
好きになった数学を、探求し続けた岡さんの生きてきた軌跡を垣間見れる一冊。
俳句、絵画、芸術、仏教、日本文化などにも造詣が深く、それが数学にもつながってきたりする「岡さんが見つめてきた世界」を一緒に見ている気分になってくる。
どんな分野でも世界的な偉業を成し遂げるような人は、視野はとてつもなく広く、独特の視点から見つめる先を深く深く掘り下げ、自らの立場に立ち返って視座を高めている。そして、誰も追いつけない高みに到達している。
そのほんの一旦でもいいから、近づきたいとの思いから、日々悶絶している凡人には眩しすぎる。でも、見つめずにはいられない憧れ -
Posted by ブクログ
ネタバレ数学者岡潔のエッセイ。
子どもを育てるものとして参考になることがたくさん書いてあった。
1901年生まれなのでかなり昔の方なのだけど、教育にとって大事なのは情緒的な感情や心の成長だと終始書かれていて、今まさに非認知能力が注目されているのを見ると間違っていないなと思う。
そしてこの方、数学者でありながら芸術的なもの、文学や絵画、音楽なども楽しむ心を持っており、目的に通じるわかりやすい何か一つを突き詰めるだけでは物事への理解を深めるには限界があって、いろんなことを楽しむ心を育てることでそれが深まっていくということがよくわかった。
わたしも兼ねてから、人生のいわゆる成功(学歴や職種)に直接関係 -
Posted by ブクログ
ネタバレ娘が学芸大学に行っているので教育学を学んでいる学生たちのことを聞いてみたが、ひどいものだと思った。「何々教育学」というものがそこら中いちめんにあり、必ず出席をとるだけでなく試験をする。おもしろくもないのを覚えなければならない。ゼミナールだ、講義だといって自分の勉強はちっともしていない。こうして本来のものからはずれたものになり、理性が理性として働かず、鉛のさびをかぶせたようになってしまう。
こういう人たちが先生になり、その調子で教える。義務教育の子に遊ぶひまもないくらいいろんなことを教え込む。その結果、子供たちは、わかってもわかっていなくてもぼうっとしていることになり、いろいろなセンスが欠けて -
Posted by ブクログ
"こんな本に出合えることが、読書をやめられない理由の一つ。
自分自身がこれまでの人生の中で、ありとあらゆる外界と接触して培ってきた感覚と、本書の著者である数学者の岡さんのものは、全然違うもの。
新たな視点、気づき、驚きを与えてくれた。岡潔さんの目線と同じ場所に到達するには、まだまだ精進が足りない気がする。
人間を見つめる視点、日本人をとらえる感覚は、深く洞察したうえで到達する高みにあるようだ。数学と芸術はとても似ているという感覚は、今の自分には持ちえない感覚だ。また、前頭葉の使い方で戦前と戦後では日本人の顔までも変化しているという観察など、思いもつかない。
人の顔なんて、それぞれで、 -
Posted by ブクログ
世界的数学者・岡潔(1901~1978年)の代表的な随筆集で、1963年に発表され、その後何度も復刊を重ねているロングセラー。(本書は2006年光文社文庫で復刊)
岡潔は、京大時代には後のノーベル賞学者の湯川秀樹や朝永振一郎に講義を行い、広中平祐のフィールズ賞受賞業績にも影響を与えたといい、また、自身の数学上の業績は、西欧の数学界ではそれがたった一人の数学者によるものとは当初信じられなかったほど、強烈な異彩を放つものであったという。
また、岡氏は、日本人のもつ「情緒・情操」の大切さを繰り返し述べ、本書以外にもそうした思いを綴った多数の随筆を残しており、一般にはむしろそうした実績で有名かもしれな -
Posted by ブクログ
「人の中心は情緒である」から始まる本書は、随所で情緒の重要性を強調している。感情や心、精神といった言葉ではなく、あえて「情緒」が重要だと述べている点が肝なのだろう。一般的に情緒は、何かに触れた際に生じる様々な感情や心の動きを指すことが多い。しかし、その説明だけでは捉えきれない、より深いニュアンスがあるように感じる。本書で用いられている「情緒」も、一般的な意味合いとは異なるようだ。
私自身は、「情緒」という言葉に自然との繋がりを強く感じていた。自然そのものや、自然の美しさを謳う詩に触れたときに湧き上がる心の動き。木々や草花を見て美しいと感じる心、百人一首や漢詩を読み、揺さぶられる感情。それらは