蓮池薫のレビュー一覧
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最初に断っておくと、本書は小説だ。
参考文献の記載も無く、ノンフィクションに分類されていない時点で、本書の歴史的事実に関する記述の正確さを考慮して評価を下すことは適切ではない。あくまで実際に起こった事件を土台として、当事者や関与した人間がどのように考えて行動したかを考える作家の想像力の方向性と、それを再現するための文章能力や演出方法に注意を向けて読むべきだ。当時の情勢や声を現代に届けてくれる資料として本書に目を通していくことはあまり意味がないように思う。それが作家の意図する全てではない。
金薫は、安重根の若く力強いエネルギーと行動力を是が非でも取り上げ、作品として昇華させたいと長年思っていた -
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孤独は都市生活に付きもののありふれた状態とはいえ、孤独死というものは寂しく、惨たらしいものだと本書を読んでつくづく思う。そんな当たり前の他者への共感さえ、日々さらされる大量の刺激的な情報によって、たいぶ麻痺していたのだなと反省した。
もちろん、表題から予想されるような、グロテスクでショッキングな描写もそれなりにあるが、非日常を見せられるというよりはむしろ、日常生活に目を凝らすと浮きでる現代の地獄を見ている感じがしてくるような文章だった。そこが他の特殊清掃モノと違うところだ。
都市化した社会がないことにしている、孤立してしまった人たちの苦しみや死というものが、腐敗した遺体からものすごい臭気と -
Posted by ブクログ
私の地元新潟の拉致被害当事者の蓮池薫さんによる、いまだからこそ伝えるべきと取り組んだ、自身の体験と拉致された後、どんな生活をしていたのかを回想を交えながら書き記した本です。
拉致されていた時の心境が赤裸々に綴られていて、奪われた年数を考えると悔しさは今も消えていないでしょう。
私の幼少期、おじが刑事をしていたこともあり、人攫いが起きているとか、海岸に子供だけで近づくなとか、物騒な事を言われて注意された記憶を思い出します。
未だ帰国の叶わない方々がいて、風化をさせてはいけないのに、報道されることも減ってきている状況なので、この本を是非中学、高校の教育資料として使って頂きたいと感じました。 -
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北朝鮮の拉致問題。関心が高かった訳ではなく、5人の日本人が帰国できていた事実すら、知らなかった。
実家に帰ったら、たまたま母が買ってきて、拉致された方が書いた本ということで興味を引かれて読みました。
暗闇の中、いきなり殴られて袋詰めにされて拉致される(連れ去られる)ことの恐怖、理不尽さ。
北に渡ったが最後、監視下におかれ、生殺与奪の権を握られ、先が見えない中、「上層部」のさじ加減で運命が決まるんだ、と衝撃的でした。
拉致して洗脳して、対日本のスパイに仕立てるための拉致。日本人になりすます為の拉致。。
もし私が不意に連れ去られるような事態に直面したら、どう対処すべきか…?
反抗せず従順 -
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私は拉致された方が北朝鮮でどのような暮らしをしていたのか興味があったためこの本を読みました。この本を読んで著者である蓮池薫さんが24年間、北朝鮮で苦しい思いをしてきたということがよく分かりました。
その本の中でも以下の二つの内容は読んでいて胸が締め付けられました。
・平成5年に北朝鮮とアメリカの間で核を巡る対立が起きた際には
『(略)有事の際には真っ先に前線部隊に嘆願入隊することも誓わされた。「拉致されてきた私が、どうして拉致した国のために戦争にいかなけばならないのだ...」決意の拳を振り上げながらも、私は理不尽な思いでいっぱいだった。(略)』(120P)
・日本語を教えるため、現在の時事 -
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自殺未遂をくりかえす孤独な元ピアニスト・樹里と死刑囚の青年・祐の出会いから始まる喪失と贖罪、絶望と希望の物語。不幸な境遇に育った祐、愛さない母を振り向かせたい一心でピアノを弾き続けた樹里。ともに心に傷を抱えた二人がぎこちない触れ合いを通し、癒されていく過程が切実に染みる。
「殺人現場を目撃した人は死刑制度の存続を
死刑執行現場を見た人は死刑制度廃止論者へ
人の出す答えには結局エゴが含まれていて
どなたか偉い方がそれでいいとおっしゃってくだされば
こんなに悩むこともないだろうに」
佐原ミズさんの繊細で透明感ある絵柄が清冽な雰囲気を引き立てる。
最初は無表情だった祐がはにかむような笑みを浮かべ -
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2002年に北朝鮮から帰国した蓮池薫氏が、帰国から10年を経て、初めて北朝鮮で過ごした24年間を綴った手記。2012年に単行本で発行され、2015年に文庫化された。
本書を読み終わって、北朝鮮で過ごした24年と帰国後の10年の蓮池さんの心の葛藤は如何ばかりのものであっただろうかと、心が締め付けられる思いである。
蓮池さんは、「はじめに」で、本書を書き記す決断をするために、
◆何よりも日本に残るという決断が正しかったという確信が必要だった。それには子どもたちが意欲を持って自立の道を歩み出すことが最低条件だった。
◆ほかの拉致被害者たちの帰国を実現するうえで、いったい私がどうすることが適切なのか、 -
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ネタバレなんだか切ない。
ようやく、生きるための目的ができたとたん・・・。
子供が苦しむ理由はやっぱり親なんだよね
理由を探せばもとはやっぱりそこ
不幸な生い立ちの影に苦しむ理由は結局はそこなんろう。
彼らが悪いんじゃない
彼らの出会いはやっぱり必然だったんだろうし
洗礼を受けたシーンで、ただ手に触れただけのシーンなのに、こんなにも心が震え、感動してジーンとするなんてと思うほど、逆にこんなことにさえこんなに感動するなんてとビックリするけれど、だけどそんなシーンに血が通う感覚、人間らしさをみて、夢も希望もないまま生きてきた意味さえ見いだせず刑を執行されなくてよかったとさえ思った。
普通の少女マンガのラブ