あらすじ
生きづらさを独りで抱え込むすべての人へ贈る
韓国で15万部突破の衝撃作、待望の日本語版刊行決定!
韓国で特殊清掃の会社「ハードワークス」を経営し、自身も清掃員として現場へ赴くキム・ワン氏が綴る、孤独な死者たちの部屋に残された生前の痕跡。
キム氏の視線をだどった先に私たちは何を見るのか。
彼らを死へと追いやったものは一体何だったのか。
それぞれの部屋に残された届かぬままの「たすけて」が浮き彫りになる。
「コロナウイルス感染者が爆発的に増加し、毎日死亡者に関するニュースが続いていた2020年の初夏に韓国でこの本が発売されました。発売後すぐに多くの人が読んでくださり、出版社・書店・読者による「今年の本」に選んでくださいました。死という重い主題の本が成功した前例がなかった韓国で、思いもよらないことが起きたのです。」―本文より
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
孤独は都市生活に付きもののありふれた状態とはいえ、孤独死というものは寂しく、惨たらしいものだと本書を読んでつくづく思う。そんな当たり前の他者への共感さえ、日々さらされる大量の刺激的な情報によって、たいぶ麻痺していたのだなと反省した。
もちろん、表題から予想されるような、グロテスクでショッキングな描写もそれなりにあるが、非日常を見せられるというよりはむしろ、日常生活に目を凝らすと浮きでる現代の地獄を見ている感じがしてくるような文章だった。そこが他の特殊清掃モノと違うところだ。
都市化した社会がないことにしている、孤立してしまった人たちの苦しみや死というものが、腐敗した遺体からものすごい臭気となって、ちゃんと見てくれ、無いことにしないでくれと訴えているようだった。その辺り、孤独死の遺体のシミが霊のように見える傑作Jホラー『回路』と似ている。ただこちらは恐ろしさよりも悲哀が強く、より人間的であり、孤独死のむごさをしみじみ感じさせられる。テレビの向こう側にさせてくれない。
例えばペットボトルに尿を溜め込んでいた部屋の住人の不可解さ。著者と一緒に、どうしてそんなことになってしまったのだと、どんより不安になった。その分からなさにブラックホールのような絶対的な孤独を感じた。著者が丁寧かつ共感的に描く「誰かの残した部屋」にはそれぞれ、そうした割り切れない存在感があった。無視できない異様でゴツゴツしたもの。これが他者性なのかと思う。それを無視し、他者との葛藤から逃れようとするのが心の都市化というものであり、孤独死を量産する社会のあり様でもある。
本書はそんな都市化されてツルツルになりかけた心に再び毛を生やしてくれるような本だった。また、孤独死や少子高齢化など、日本と韓国の社会状況がかなり似ているのも興味深かった。
Posted by ブクログ
韓国の孤独死事情が垣間見える
どこの世界も孤独死の実態は変わらないのかもしれない
電気停止の告知書が追い詰められていた人を更に追い詰め、自殺への一押しとなってしまう話や手紙を書くような文章の愛するヨンミンさんへの話は胸がギュッとしてしまう
日本では孤独死や自殺があった部屋は事故物件として格安で借りられることがあるから入居者が集まるし、人が死んだからとアパートやマンションの住民が大勢出ていくことはあまり聞かない気がする
韓国では違うんだな
翻訳者が拉致被害者の方と同姓同名だなと思ってたらご本人だった
Posted by ブクログ
audible112冊目。
凄惨な現場に向き合いながら、死者が最期に見たもの・考えたことに思いを馳せる。
昨今は、特殊清掃の現場を映像等で配信している例を見かけます。
実際の映像のインパクトは大きく衝撃を受けますが、特殊清掃員の方が書いた著作なら、自分の頭と心でじっくりと考えながら、向き合うことができました。
Posted by ブクログ
著者は、特殊清掃業を営む男性。孤独死や自殺などで部屋の清掃を依頼される。色々な事情で亡くなった人の跡形を無くすことを行う。読んでいくと様々な死があることに目が向くようになる。遺品整理士のドラマを見ているが、文章で読んでみると孤独と貧困がより明らかになってくる。富裕な人の依頼は皆無だろう。
Posted by ブクログ
20.死者宅の清掃
日本の小説家中山七里氏の『特殊清掃人』を先に読み、ノンフィクションで書かれたものを探していた際に出会えた一冊
孤独死、自死
誰にも見取られず、見つけられずに旅立った人の足跡を
淡々と仕事として清掃しつつも、その生活の端々に死者の事を思う著者の心が見えてくる
Posted by ブクログ
死と向き合う機会は当たり前に生きてたらそんなに無いと思う。その一方で筆者は死者宅の清掃をする特殊清掃員として多くの人の生きた跡と死んだ跡に関わり、死と生の淡いを日々眺めている。そんな筆者のエッセイには死から考える生という死生観の大切さを感じられた。
本書を読んで良かったのは、知人が亡くなったときに感じる「お前もこうなるかもね」と言われているような、いずれくる自分の死と向き合わざるを得ない感情との付き合い方を見出だせたところにありました。ひとりの人の生と死を見て自分も例外じゃないというのを改めてつきつけられるあの瞬間との付き合いだけは妙に慣れていなかったのでよかった。
デスストランディング上巻を読んでいて感じた『人の死は何かしらの衝撃を残す』という印象をここでも感じた。本書で例示される宿主たちは孤独にいたのにも関わらず、臭いやモノといった足跡で今を生きてる人たちと再びつながる。筆者もそうしてつながった人の1人。死者の衝撃を受けて自分自身や社会と向き合うことになり、その中で確固とした生を見出だせているようにも感じる。向き合うのは怖い死だけれど、向き合うことで生をより色濃く鮮やかに感じられるのではと思える1冊でした。
Posted by ブクログ
凄惨な自殺現場が生々しく描かれているのかな~とおっかなびっくり頁を捲ってみたけど決してそんなことはなく。特殊清掃というお仕事を通して自省している、日記を読ませてもらっているようだった。
読んでいて所々にパンチラインと感じた文章があったので以下に記載。
『虎は死んで皮を残し、人は死んで名を残すという。そのことわざに込められた名誉至上主義と度の過ぎる人間本位の世界観が私には気に入らなかった』
『人生はとても複雑に絡んでいるようで、実はすべてが食べて生きるという単純な動機から始まっている。』
『苦労の多い人間ほど大きな生きがいを持つといった比例法則のようなものが存在するのだろうか。』