【感想・ネタバレ】拉致と決断のレビュー

あらすじ

恋人と語らう柏崎の浜辺で、声をかけてきた見知らぬ男。「煙草の火を貸してくれませんか」。この言葉が、〈拉致〉のはじまりだった――。言動・思想の自由を奪われた生活、脱出への希望と挫折、子どもについた大きな嘘……。夢と絆を断たれながらも必死で生き抜いた、北朝鮮での24年間とは。帰国から10年を経て初めて綴られた、衝撃の手記。拉致の当日を記した原稿を新たに収録。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

生きていれば辛いこと、悲しいことも多いが、生きるために自己否定を迫られることほど辛いことはないだろう。しかも拉致という不合理な手段によってならなおさらだと思う。本書はそのリアルな記録であり、生きる目的とは何なのかを考える素晴らしい教科書であると感じた。

1
2016年01月28日

Posted by ブクログ

2002年に北朝鮮から帰国した蓮池薫氏が、帰国から10年を経て、初めて北朝鮮で過ごした24年間を綴った手記。2012年に単行本で発行され、2015年に文庫化された。
本書を読み終わって、北朝鮮で過ごした24年と帰国後の10年の蓮池さんの心の葛藤は如何ばかりのものであっただろうかと、心が締め付けられる思いである。
蓮池さんは、「はじめに」で、本書を書き記す決断をするために、
◆何よりも日本に残るという決断が正しかったという確信が必要だった。それには子どもたちが意欲を持って自立の道を歩み出すことが最低条件だった。
◆ほかの拉致被害者たちの帰国を実現するうえで、いったい私がどうすることが適切なのか、つまり私がこのようなものを書くことが問題解決に有益なのかどうかを判断する必要もあった。
◆さらには、私自身が北朝鮮での生活を、むき出しの感情や感傷からだけでなく、一定の距離を置いて冷静に振り返ることのできる、心の余裕も不可欠だった。
といい、そのためには10年が必要だったと語っている。
本書には、蓮池さん自身の心の動き、葛藤についての記述が中心で、その他のことは意外に書かれていない。招待所に住んでいた他の人々のことはもちろん、家族のことですら最小限しか触れられていない。
また、かつて一部の市民運動家たちからは、「生還した拉致被害者はもっと多くのことを知っているはずだ。それを明らかにすべきだ」と非難されたとも言う。
しかし、蓮池さんは、誰に相談することもなく、「ここまでなら明かしていいだろう。これ以上は不味い」ということを、時の経過により変容した部分を含めて判断し、本書を綴っているのであり、その緊張感は並大抵のものではなかろうと、心中を察する。
そして、本書の中心となっている、蓮池さんが、家族が少しでも幸せに生きるためには何が必要かを考え、帰国の夢を断ち切り、我が子に自分たちは在日朝鮮人だと嘘をつき通したことには、言葉も見つからない。
また、北朝鮮の人々にも温かい目を向けているが、それは蓮池さんの心の強さと柔軟さの現れであると思う。
書かれていないことには理由があり、それを想像することを含めて、とても深く重い。
(2015年4月了)

1
2016年01月11日

Posted by ブクログ

蓮池薫さんは、生まれた子供には「日本から拉致された」とは伝えずに育ててきたという。嘘をつき続けながら(しかも大切な子供達に)生き続けるというのはどれほど辛いことか。

日朝両政府にとって互いに交渉のカードとなりつつある拉致問題だが、人の運命を現在進行形で翻弄し続けていることを改めて認識し、1日でも早く解決の糸口を見つけてほしい。

0
2023年07月08日

Posted by ブクログ

壮絶な内容で、胸を何度痛めたことか。極限の状態になったからこそ、考え抜かれた蓮池さんの考え1つ1つにはっとさせられた。

この本でいう「革命」と「招待所」が何か詳しく分からず、気になってしまった。

0
2025年06月28日

Posted by ブクログ

蓮池さんご夫妻をはじめとして、拉致被害に関しては、とても日本人の乗り越えられる労力・負担・重荷の限界を超えているのではないのかと暗澹たる思いになりました。

この本の内容にしても、これだけではなくて、もっともっといろいろな生々しいご経験が必ずあったはずです。
いろいろな葛藤、お悩みとか。人には言えない事々。
そしてそれらはいま現在も続いておられるはずです。

ですから失礼かもしれませんが、抑えた感じの、あっさりとした書き方の本になってしまったのでしょう。

拉致は、拉致加害関係者たちにとっては、とんでもないことにも、特別なことでも人間としてとても許されないことでもなんでもなくて、当たり前に軽い気持ちで行われ続けてきたそうです。

蓮池さんは、愛国心に関していえば、わたしは拉致されてからどうして日本という国が救いに来てくれないのかという思いがあった、と述べられています。

拉致問題は、日本という国が太古の昔から続いてきてからいま現代までの中でも絶対に乗り越えていかなければならない最重要・最大級の大問題、課題だと痛感しました。

決して、断じて、絶対に拉致なんかを好き放題に行ってきたこと許してはいけません。
何十年、何百年、何千年、何万年かけてでも、地の果て、宇宙の果てまでも追いかけて捕まえて、拉致加害者達を問答無用に厳しく罰し、考えられるかぎりの重い刑罰、罰則で、生命や大金での償いで、人間としての罪の報いを受けさせることこそが、日本人として、人間として、心ある日本人の目指すべき道でしょう。

太古から続いてきた日本が国家として存続していくためにも。

0
2020年12月28日

購入済み

無関心はいけない

近所で蓮池さんの講演会があって、私は行かなかったのですが、行った人から拉致の話を伝え聞いた。
興味を持って、こちらを読んでみたのだが、うかがい知れない北朝鮮の内情が細かく書かれていて興味深かった。
まだ帰れない拉致被害者の方たちがどんな思いでいまの情勢を見ているかと思うと、なんともいえない気持ちになる。
まだまだ、拉致被害は過去のことじゃないんだと、思い知らされた。

0
2017年05月04日

Posted by ブクログ

自分が語る事で、まだ残る拉致被害者が危険な目に遭わぬように…。

どのように拉致されたか。北朝鮮で、日々、どんな生活を送っていたか。どんな待遇を受けたか。そして今、何をやって過ごしているか。赤裸々に語られる。社会人になる前の学生カップルを突如襲った工作員。その日から急激に変わる運命。長い長い時間。受け入れざるを得なかったにせよ、全く。あまりにも。

この本では、北朝鮮が、何故彼らを拉致したのか。国家として、拉致被害者にやらせていた仕事とは何かが全く語られない。この辺が、まだ残る拉致被害者への配慮だろうと、勝手に考える。しかし、外交戦略上、拉致行為に有効性を認めさせてはならない。日本はもっと、武力や警察権でもって、強く解決に乗り出す必要があると思う。しかし、思うが、怖いのは核と非常識な為政者。金正日は、朝鮮の無い地球など不要、爆発してしまえば良いと言っていたらしい。ファシズムと強力な破壊兵器の関係は、非常に悩ましい問題だ。

0
2016年09月07日

Posted by ブクログ

北朝鮮に拉致された蓮池薫さんの自伝。拉致されて北朝鮮で生活していた時の話が描かれている。北朝鮮での生活や実際の北朝鮮の人々の描写など知られざる部分を知ることができる作品。やはり北朝鮮は金日成の頃はまだ良かったがだんだんと生活困窮と体制が崩壊しつつあり今後どうなるのか予断を許さない様に感じると同時にまだ拉致されている横田めぐみさんをはじめとする拉致被害者の方の早い帰国を願わずにはいられない。
北朝鮮のことを知るには読んでおくべき本多と思う。

0
2016年08月03日

Posted by ブクログ

何をどう書いたらいいのか……。

この方がとても頭の良い方であるということと、
いまもってして蓮池さんと同じような人がまだ彼の地にいることを思うと、とても辛いことだと思う。

0
2015年07月26日

Posted by ブクログ

同じ大学・同じ学部で私より一学年後輩。しかも同じ年の春に日本海の海岸近くで車に寝泊まりしながら旅行をしていた。
私だったら、蓮池さんのように冷静でいられたろうか?
早く拉致された全員の帰国を願ってやまない。

0
2015年06月14日

Posted by ブクログ

2002年の帰国からもう13年。
だいぶ記憶が薄れつつあるからか、はたまた年齢と共に同郷ゆえの親近感が増してしまったからか、本書を手にしてしまった。
主に蓮池さん自身の拉致から24年の話で、もちろん、様々な配慮があって他の拉致被害者のかたや、奥さんのことはほとんど語られていない。
情報が断絶された中で希望に寄り添いながら必死で生きてきた様子がよく伝わる。時には心安らか時間があり、時にはアメリカとの開戦を身近に感じ怯えながらの生活。
そして、日常生活を通してみた北朝鮮の実態。
最も衝撃だったのは、日本への一時帰国さえ、自身の子供達には朝鮮内の旅行だと嘘をつかねばならなかったこと、日本人だということさえ言えなかったこと。しかし北朝鮮に戻ったらもう二度と日本へは帰れない。そんな状態で日本政府に子供達の帰国を任せる決断をした勇気と覚悟。上手くピースがはまって本当によかった。他の方も一刻も早く帰れますように。

0
2015年04月17日

Posted by ブクログ

デート中にいきなり拉致されて
知らない国に連れていかれるなんて
恐怖でしかない
そんな中でも家族を守り24年間生き抜いてきた蓮池さんの著書を興味深く読んだ
書けないことが多いと思われる制約の中でも、蓮池さんの心の機微や、北朝鮮の人々の内面がとても伝わってきた

0
2025年10月31日

「ノンフィクション」ランキング