蓮池薫のレビュー一覧
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拉致事件についてはこれまで多くのニュースで見てきたが、当事者による本を読んだのは初めて。拉致の内部事情が理解できた。北朝鮮の現実性を無視した計画、その挫折後の行き当たりばったりの対応、その場しのぎの噓などが重なり、結果、人権を無視したひどい状況が今日まで続いているものと感じた。著者らが果たした工作員への日本語教育係も拉致したもののほかにやらせることがないからという印象である。金正日が拉致問題を認めたことから一部帰国することができたが、横田めぐみさんなど「死亡」とされた人たちについては著者自身が知っている矛盾する事実を挙げており、これで「解決済み」はあり得ない。北朝鮮との向き合い方について、改め
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ネタバレ帯を見て、「帰国されてもう23年も経ったのか」というのが衝撃でした。拉致されて北朝鮮での24年に匹敵する長さです。その間、帰国した5人以外の拉致被害者の奪還について日本政府はその言葉とは裏腹に無為無策でした。
その24年間の北朝鮮での生活、北朝鮮のスパイ組織の人間との関係、マインドコントロール、やらされた仕事・・・それらを軸に、北朝鮮の「明確な国家戦略があっての拉致作戦ではなかった」ことを明らかにし、その出鱈目さを指摘します。そして、北朝鮮のいう「8人死亡」は捏造だと一人一人について明らかにします。
なぜ5人は帰国できて、8人は「死亡」とされたのか。著者は「日本政府との面会の際に、北朝 -
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ネタバレハルビンで日本の初代首相伊藤博文が暗殺されたことを、暗殺者安重根や韓国側からの目線で書いたノンフィクション(だと思う)。
とはいえ、私自身は日本側からの視点でのこの事件の詳細はよく知らない。
日本は韓国を併合しようとしていたのだから、当然多くの韓国人は日本に対して良く思っていなかっただろうと考えていたが、この本にはそのような韓国人の激しい感情はほとんど書かれていない。
伊藤が暗殺された後の韓国人、少なくとも上層部の人たちは、日本に謝罪し、喪に服し、伊藤の死を悼んでいた。
日本も同様、伊藤の暗殺に対して、激しい怒りに出ることもなく、裁判も当時の法律に則って静かにきちんと、安重根への取り調べを何度 -
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日本は明治維新から駆け足で拡大し、日清、日露戦争の後〈列強〉といわれる陣取り合戦に名乗りを挙げる。
高校で習う〈朝鮮半島併合〉は、単に地図の色が変わった程度。
当然ではあるが人の血が流れていることを、この本は伝えている。
「伊藤博文」は、幕末に吉田松陰の下で学んだ長州藩志士。維新後に初代内閣総理大臣(その後何度も再任)を勤め立憲政治を進めたことはもちろん、日清戦争の下関条約締結で清朝末期の西太后とも関わりが深く、昭和の千円札でも馴染み深い、明治の重要人物。彼を銃で暗殺した「安重根」という人物に光を当てた物語。
恐らく膨大であったであろう資料をもとに、客観的な文章を心がけて綴られた物語は、淡 -
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ハルビンの駅で伊藤博文を銃撃した安重根(안중근)を描いた小説。安家は黄海道の海州で代々暮らしてきた地主だ。安重根は安家の長男だった。一人で山に入り数か月も家に帰らず、時にはノロ鹿を銃で撃って持ち帰ってくるような青年だった。キリスト教の洗礼を受けていたが、神父には上海にいくとだけ話した。そして上海では思ったほど人に会えず一年して戻って来た。そして村で小さな学校を開いて子供に地理や国史などを教えていたが、もどかしさを感じていた。そしてしばらくして神父にあいさつに行った。ウラジオストクに行くと。神父は何故そこに行くのかと問うたが、安重根の答えを待たなかった。安重根という男を知っていたからだった。これ
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韓国側からの見方により、安重根が一方的に正義だとは思わない。だからと言って日本側の朝鮮統治や安重根に対する裁判の経過と結論はまったく正しくないけれど、それぞれの立場で依拠する論理が理解できてしまう。どちらにも正しいと思わせるところがあるから難しい。そしてそういった国家の論理を超えて存すると思われる宗教の立場においても、これらを救うことはできないことをこの小説は示してしまう。その意味ではある意味絶望的である。ただ、作者は後記において、安重根の青春を描きたかったと述べており、その意図を鑑みると、この小説の描きたいところを理解することができる。
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死と向き合う機会は当たり前に生きてたらそんなに無いと思う。その一方で筆者は死者宅の清掃をする特殊清掃員として多くの人の生きた跡と死んだ跡に関わり、死と生の淡いを日々眺めている。そんな筆者のエッセイには死から考える生という死生観の大切さを感じられた。
本書を読んで良かったのは、知人が亡くなったときに感じる「お前もこうなるかもね」と言われているような、いずれくる自分の死と向き合わざるを得ない感情との付き合い方を見出だせたところにありました。ひとりの人の生と死を見て自分も例外じゃないというのを改めてつきつけられるあの瞬間との付き合いだけは妙に慣れていなかったのでよかった。
デスストランディング -
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蓮池さんご夫妻をはじめとして、拉致被害に関しては、とても日本人の乗り越えられる労力・負担・重荷の限界を超えているのではないのかと暗澹たる思いになりました。
この本の内容にしても、これだけではなくて、もっともっといろいろな生々しいご経験が必ずあったはずです。
いろいろな葛藤、お悩みとか。人には言えない事々。
そしてそれらはいま現在も続いておられるはずです。
ですから失礼かもしれませんが、抑えた感じの、あっさりとした書き方の本になってしまったのでしょう。
拉致は、拉致加害関係者たちにとっては、とんでもないことにも、特別なことでも人間としてとても許されないことでもなんでもなくて、当たり前に軽い -
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ネタバレとにかく考えさせられるお話でした。涙がずっととまらない。死刑に処せられるということは、それだけ重い罪を犯したわけですし、被害者関係者から言わせれば当然となるところだろうと理解はできるのですが…難しいです。看守の井上さんが、「笑いの無い人生だった彼に俺たちがしてやれる事は死刑台で首に縄をかけるだけなのか?そんなの寂しいじゃないか…」と言って祐に心を砕いてくれていました。祐が生きる支えにしていたものが自分のせいでなくなっていくことの絶望。それでも井上さんのおかげで樹里と出会えて、絶望だけで終わらなくてよかった…のかな。それとも生きたいという願いが出てきたときに死を迎えるのは酷なことだったのかな。た
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購入済み
無関心はいけない
近所で蓮池さんの講演会があって、私は行かなかったのですが、行った人から拉致の話を伝え聞いた。
興味を持って、こちらを読んでみたのだが、うかがい知れない北朝鮮の内情が細かく書かれていて興味深かった。
まだ帰れない拉致被害者の方たちがどんな思いでいまの情勢を見ているかと思うと、なんともいえない気持ちになる。
まだまだ、拉致被害は過去のことじゃないんだと、思い知らされた。 -
Posted by ブクログ
自分が語る事で、まだ残る拉致被害者が危険な目に遭わぬように…。
どのように拉致されたか。北朝鮮で、日々、どんな生活を送っていたか。どんな待遇を受けたか。そして今、何をやって過ごしているか。赤裸々に語られる。社会人になる前の学生カップルを突如襲った工作員。その日から急激に変わる運命。長い長い時間。受け入れざるを得なかったにせよ、全く。あまりにも。
この本では、北朝鮮が、何故彼らを拉致したのか。国家として、拉致被害者にやらせていた仕事とは何かが全く語られない。この辺が、まだ残る拉致被害者への配慮だろうと、勝手に考える。しかし、外交戦略上、拉致行為に有効性を認めさせてはならない。日本はもっと、武