蓮池薫のレビュー一覧
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ネタバレ安重根と伊藤博文それぞれの人生を交互に描きながら、暗殺シーンの見せ場までに読者の気持ちをジワジワ高めていく手腕がお見事。
「暗殺はまだかな?」とドキドキワクワクしながら読み進めていました。
2人が少しずつハルビンに近づいてくるのを追いかけるのがまた楽しい。地図がついてたら嬉しかった。
乾いた硬質な文体で、どの人物にも特段肩入れすることなく淡々と描いているのだが、しかしどの人物にもやけに生々しい存在感があり、「実際こういう人間であったのだろう」と思わせるリアリティに満ちている。
ただ、個人的に、理想を掲げて突っ走る英雄タイプの歴史上人物が苦手なので、「奥さんと子ども置いて金も送らんと何してんねん…」というイライラはどうしてもぬぐえず。。
いや、でもおもしろかったです。
暗殺シーンが意外とはやく訪れて、その後の展開どうするんだろうとちょっと不安になったけど、最後まで緊張感を保ったまま見事に終結してました。
蓮池さんの翻訳もすごい! -
Posted by ブクログ
まだまだ道半ばの北朝鮮による拉致問題
そんな中での今回の蓮池薫さんの手記、拉致されて向こうでの生活、何をしてまたはさせられて過ごてきたのか、
拉致被害者同士の交流はあったのかなど、今まで私たちが知りたかったことを赤裸々に綴っておられる。
工作員たちへの日本の教育、自分がかかわった工作員たちのその後のゆくえを心配し、どうか重大な事件に加担しないように、自分が教えたことで何かを成すことがないようになど、心を痛めておられた様子や、当時の最高指導者の死去に伴う哀悼の意の示し方、最高指導者に対する敬意の表し方、それは正しく思想教育の植え付けであり、そういう関連の書物を読まされ続けたと実に生々しく語られている。
思い起こせば、2002年に24年ぶりに日本に帰国され、飛行機のタラップを降りようとするときの、何とも言えない表情が忘れられない。
嬉しいような、戸惑う様な・・・
実は、あの時は「一時帰国」で一週間ほどでまた北に帰ることになっていたらしい。
子どもも向こうに残してきているのだし。
「せっかく帰れるのなら帰ったらいい」とある人に(北朝鮮の人)言われ帰国を決めたとある。
私達は、続いて第2回、第3回の帰国があると思っていたのに、その後はなしのつぶて・・・ 被害者の親、親族の悲痛な声を耳にするたび、早くすべての人の帰国が叶うことを願わずにはいられない。 -
Posted by ブクログ
拉致事件についてはこれまで多くのニュースで見てきたが、当事者による本を読んだのは初めて。拉致の内部事情が理解できた。北朝鮮の現実性を無視した計画、その挫折後の行き当たりばったりの対応、その場しのぎの噓などが重なり、結果、人権を無視したひどい状況が今日まで続いているものと感じた。著者らが果たした工作員への日本語教育係も拉致したもののほかにやらせることがないからという印象である。金正日が拉致問題を認めたことから一部帰国することができたが、横田めぐみさんなど「死亡」とされた人たちについては著者自身が知っている矛盾する事実を挙げており、これで「解決済み」はあり得ない。北朝鮮との向き合い方について、改めてこの独裁国家は体制が変わらない限り、信用してはならないことを再認識できた。
【目次】
はじめに――ある人の言葉
選択肢のなかった日々
何のために二四年間を奪われたのか
Ⅰ 問題は決して「解決済み」ではない
1 「八人死亡」は事実か
二〇年の時を経て
「遭難救出」から「拉致」へ
当局へのダメージ軽減――二つの策略
筋書きどおりに動かせる人物を
指導部は何を見誤ったか
2 変遷する説明――横田めぐみさんをめぐって
他人の遺骨だった
拉致被害者の住所は最高機密
妻の「死亡日」を錯覚?
車の行き先は
不自然な「遺骨」保管経緯
捏造の理由
Ⅱ 日本人拉致の本当の目的
1 直接の目的は何だったのか
拉致機関は二つ
「よど号」グループによる“人材獲得”
スパイ網の構築のために
「土台人」を利用してのなり代わり
非合法、半合法、合法
2 世界各地で発生した事件
金賢姫の告白
「日本人は思いどおりにはできない」
偶発的な拉致だったのか
一一人の被害――一九七七〜七八年
曽我ひとみさん親子・田口八重子さんの場合
前代未聞の同時多発事件
Ⅲ 拉致は北朝鮮に何をもたらしたのか
1 果たされなかった目的
進まない思想改造
「拉致されたことは恥ずかしい」
一九八八年、実家に届いた手紙
「豆飯を食わせる」警告
二〇〇二年の方向転換
謝罪の背景――経済援助だけではない
2 まず「拉致」ありきの発想
最初の拉致で、犯人は逮捕されていた
なり代わったが、持て余す
対外情報調査部の「消極性」
逮捕、自白
送還ののち「非転向長期囚」に
3 計画を頓挫させたもの
確認できない工作員教育
工作員の条件――政治軍事大学卒業
脱出に成功した被害者たち
国内で育成する方針に
外国人「工作員化」の非現実性
Ⅳ 変容する思想教育
1 工作員育成のための「マインドコントロール」術
言いようのない孤独
韓国敵視――塗りつぶされた「韓」の字
「社会主義は世界の趨勢」
映画学習、日本人としての「負い目」
「この内容、わかりますか」
言われるままに
贈り物伝達式
2 育成放棄後の思想統制
思想の「現地化」へ
国際情勢に目を向けさせない「二〇〇日戦闘」
朝鮮半島核危機へ
涙は出ない
希望のありか
Ⅴ 独裁下を生きるということ――私に与えられた「革命任務」
1 一二人の工作員に日本語を教える
「用済み」とされた被害者をどう扱うか
手に負えない任務
朝鮮戦争従軍者たち
ネイティブ化という幻想
将来不安な生徒
この二人も秘密工作員の任務につくことはなかった
敵の手に落ちれば――幹部の保身
怖さと後ろめたさ
2 書庫での発見
対外情報調査部七課
検閲からこぼれた記事
武田信玄について翻訳させられた
革命英雄の小説執筆
一冊のパンフレット
3 異質な任務
新室長の野心――金正日の現地指導
「自力更生」のため建設労働者に
月命日ごとに、花かごを
生死を懸けた熾烈な政争
遮断塀の中の生活
機密に接することが負担だった
自分で自分を警備する
4 動き出した事態
日朝国交正常化という目標
「日本に帰るのが怖い」
平壌市内の生活には馴染めない
小泉訪朝、面談へ――変わる北朝鮮側の指示
本音を話せない虚しさ
踏み絵だった質問――「子どもを連れていくか」
決断を後押しした言葉
おわりに――重層的な人権問題として
拉致問題の原点
被害者「線引き」の意味は
被害は拉致そのものだけではない
日本人拉致 関連年表 -
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ネタバレ帯を見て、「帰国されてもう23年も経ったのか」というのが衝撃でした。拉致されて北朝鮮での24年に匹敵する長さです。その間、帰国した5人以外の拉致被害者の奪還について日本政府はその言葉とは裏腹に無為無策でした。
その24年間の北朝鮮での生活、北朝鮮のスパイ組織の人間との関係、マインドコントロール、やらされた仕事・・・それらを軸に、北朝鮮の「明確な国家戦略があっての拉致作戦ではなかった」ことを明らかにし、その出鱈目さを指摘します。そして、北朝鮮のいう「8人死亡」は捏造だと一人一人について明らかにします。
なぜ5人は帰国できて、8人は「死亡」とされたのか。著者は「日本政府との面会の際に、北朝鮮側の描いた筋書き通りに話してくれないと思われる人たちは、「生存者」リストから外された可能性が高い」「常に日本に帰りたいというつよう思いを持っていると判断される拉致被害者、なかでも家族がおらず、発言を強要するための人質がいない拉致被害者は、日本側と会わせないために、生存者リストに入れなかったと考える」と書きます。
北朝鮮が出した8人の死因は著者が書く通り出鱈目でしょう。ただ、生存者リストに入らなかった理由はあくまでも推測に過ぎません。通読しても、そこが強化されることはありません。だからこそ、その救出が急がれる、ということだと思います。
拉致被害者本人しか書けない、北朝鮮での24年。貴重な証言です。
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ネタバレハルビンで日本の初代首相伊藤博文が暗殺されたことを、暗殺者安重根や韓国側からの目線で書いたノンフィクション(だと思う)。
とはいえ、私自身は日本側からの視点でのこの事件の詳細はよく知らない。
日本は韓国を併合しようとしていたのだから、当然多くの韓国人は日本に対して良く思っていなかっただろうと考えていたが、この本にはそのような韓国人の激しい感情はほとんど書かれていない。
伊藤が暗殺された後の韓国人、少なくとも上層部の人たちは、日本に謝罪し、喪に服し、伊藤の死を悼んでいた。
日本も同様、伊藤の暗殺に対して、激しい怒りに出ることもなく、裁判も当時の法律に則って静かにきちんと、安重根への取り調べを何度も行い進めている。
もちろん死刑にはなるのだが。
韓国で安重根は英雄視されていると聞いたので、この本には韓国人のもっと激しい感情が描かれているかと思ったが、そうではなかった。
私は歴史を知らなすぎるのだと思う。 -
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日本は明治維新から駆け足で拡大し、日清、日露戦争の後〈列強〉といわれる陣取り合戦に名乗りを挙げる。
高校で習う〈朝鮮半島併合〉は、単に地図の色が変わった程度。
当然ではあるが人の血が流れていることを、この本は伝えている。
「伊藤博文」は、幕末に吉田松陰の下で学んだ長州藩志士。維新後に初代内閣総理大臣(その後何度も再任)を勤め立憲政治を進めたことはもちろん、日清戦争の下関条約締結で清朝末期の西太后とも関わりが深く、昭和の千円札でも馴染み深い、明治の重要人物。彼を銃で暗殺した「安重根」という人物に光を当てた物語。
恐らく膨大であったであろう資料をもとに、客観的な文章を心がけて綴られた物語は、淡々としていて好感が持てるのみならず、かえってこの物語の本質を理解しようと試みる気になるほど。
「暗殺」という陰湿で嫌悪感の強い事件でありながら、深みのある物語である。 -
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ハルビンの駅で伊藤博文を銃撃した安重根(안중근)を描いた小説。安家は黄海道の海州で代々暮らしてきた地主だ。安重根は安家の長男だった。一人で山に入り数か月も家に帰らず、時にはノロ鹿を銃で撃って持ち帰ってくるような青年だった。キリスト教の洗礼を受けていたが、神父には上海にいくとだけ話した。そして上海では思ったほど人に会えず一年して戻って来た。そして村で小さな学校を開いて子供に地理や国史などを教えていたが、もどかしさを感じていた。そしてしばらくして神父にあいさつに行った。ウラジオストクに行くと。神父は何故そこに行くのかと問うたが、安重根の答えを待たなかった。安重根という男を知っていたからだった。これで安重根の軌跡は伊藤博文の軌跡とハルビンでついには交わることになる。何故安重根は伊藤を銃撃したのか。それは朝鮮人全てが知っていると。朝鮮の山野に夥しい骸が眠っているのは伊藤のせいだと。それを日本人はほとんど知らない…。
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韓国側からの見方により、安重根が一方的に正義だとは思わない。だからと言って日本側の朝鮮統治や安重根に対する裁判の経過と結論はまったく正しくないけれど、それぞれの立場で依拠する論理が理解できてしまう。どちらにも正しいと思わせるところがあるから難しい。そしてそういった国家の論理を超えて存すると思われる宗教の立場においても、これらを救うことはできないことをこの小説は示してしまう。その意味ではある意味絶望的である。ただ、作者は後記において、安重根の青春を描きたかったと述べており、その意図を鑑みると、この小説の描きたいところを理解することができる。