辻邦生のレビュー一覧

  • 安土往還記(新潮文庫)

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    ジェノバの宣教師の目を通した信長の生き方を捉えた本。「事を成す為、理に適うのか」のみをひたすらに自他に厳しく極みに達しようと強い意志を持っていた故、時に非情と人には映り、益々孤独になって行った信長。そこに私益の為にという感情は一切ない。果たして自分はどうなのか。って考えさせられた。

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    2012年05月28日
  • 安土往還記(新潮文庫)

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    宣教師に同行した船員の手記の形で描かれるのが新鮮です。
    まさに見てきたかのような描写で、臨場感溢れます。

    克己的な信長の人物像がくっきりと立体的に浮かんできます。
    とても読み応えがありました。

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    2012年03月19日
  • 春の戴冠1

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    ボッティチェルリの回顧を友人が老境のみになって
    することによって、またフィレンツェを舞台とする
    ことにより永遠とは、存在とは、生きるということ、死とは
    何かを問いかけていると思われる小説。

    平明だけど教養と優しさと死と輪廻を感じる。。

    あと3巻長いけど気長によもうー。

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    2011年08月30日
  • 春の戴冠1

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    15世紀フィレンツェの社会状況を、ボッティチェリの親友で古典学者が70代になってから、昔を振り返る形で描いた歴史小説。
    全4巻の長編で、心情や社会状況が克明に描かれている。15世紀半ば~後半の全盛期のフィレンツェを振り返りながら、全盛期と言われる時代に、凋落の兆しがあったことを丁寧に記述していく。
    現代は経済社会の変化が激しく速いのかと思っていたが、当時もさほど変わらないなと思いながら、読んでいる。

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    2011年07月10日
  • 嵯峨野明月記

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    俵屋宗達、角倉、本阿弥光悦の3人の語りが織り成す群像劇。戦国から江戸政権の成立までの激動の時代を生きた3人がそれぞれの立場でそれぞれを語り、時には重なり合い、同じことを別の視点から語る。同じ出来事を別々の視点で語る藪の中とは違い、人生の一部においてそれぞれが共に過ごした時があり、その人生の一部として語られる。
    辻邦夫は何度再読しても味わいが深い。

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    2011年06月25日
  • 言葉の箱 小説を書くということ

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    この作品は電子ブックで読んだものである。著者の作法や小説に向かう態度がまざまざと語られており、楽しめたし、役に立った作品であった。

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    2010年12月06日
  • 西行花伝(新潮文庫)

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    ずっと気になる存在だった西行さん。
    そしてずっと気になっていた小説。
    櫻とともに生きた方ですね。 

    西行さんが出家する前後が
    一番興味があったので、ぐんぐん読めましたが

    それにしても新院がもう…。
    あそこの文章の壮絶さがもうね。圧巻でした。

    美しい言葉や、色々な意味で胸に刺さる言葉が沢山でした。

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    2012年03月09日
  • 西行花伝(新潮文庫)

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    長期間、ちびちびと読んだ。元はと言えば、夢枕獏の朝日の連載小説が似てる話だったので。構想はこっちのほうがよほどしっかりしている。重厚で読み応えあり。

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    2011年07月15日
  • 西行花伝(新潮文庫)

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    色とは何か、華とは何か、別れとは何か。
    その全てが詰った珠玉の1冊、辛い別離の後に読むのがオススメ。

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    2009年10月04日
  • 鳥たちの横切る空 辻邦生短篇選集 Ombre

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    ネタバレ

    初期から晩年までの作品から「人生の陰翳を描き出す精選六篇」を、編者堀江敏幸が、著者の生誕100年を記念して選出した、全二巻の、まずは前篇とのこと。

    堀江が心がけたのが、「できるだけ幅広い時期から選出すること」と、「相通じる要素のある作品を二作ずつ組んで流れをつく」ること、「その色合いと感触で陰と陽にふりわけること」だったとか。
    前篇にあたる、本書『鳥たちの横切る空』は、陰のほう、翳り「Ombre」だとか。
    自分的には、おそらく次の陽の「Lumiere」のほうが好みかなと思うが、さて、どうなるか。

    戦争の陰、影響を受ける時代の作品が並ぶのは、単なる偶然ではなかろう。
    「しかしおれたちは本当に

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    2025年11月20日
  • 安土往還記(新潮文庫)

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    確かに流れるような美しい文体だと思う。信長と渡来したヨーロッパ人のお互いに響きあう交流も本当かもしれない。そうした展開はこの小説を読むべき点だと思う。私にはその後の主人公たちの姿を詳細に書き上げてほしいなと思った。かなわぬことであるが、そこが残念なところだった。

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    2024年10月25日
  • 言葉の箱 小説を書くということ

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    著者が、小説を書くことを志す人びとに向けておこなった講義を収録しています。

    著者は小説とはなにかという問いに対して、「フィクションによってつくられた架空の事柄を言葉によって構築し、「言葉の箱」のなかにそういうものを詰め込むという作業」だとこたえています。そのうえで、著者は夏目漱石の「文学論」における「凡そ文学的内容の形式は(F+f)なることを要す」という考えを参照し、近代以降のロマン(小説)における内面性を重視する立場から、小説のありかたについて議論がなされています。

    本書の冒頭で、著者はアメリカの大学では創作科が存在するということに触れていますが、本書はシナリオ・ライターを養成するための

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    2021年08月16日
  • 嵯峨野明月記

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    「嵯峨本」と呼ばれる豪華本の制作にたずさわった本阿弥光悦、俵屋宗達、角倉素庵の三人の物語です。

    三人の登場人物が交替に語り手を務めて、戦国時代から江戸時代にかけての激動の時代を彼らがどのように生き、それぞれの立場から芸術に対してどのようにかかわっていったのかということがえがかれています。

    現実の事象をえがきとるのではなく、みずからの心のなかに生じるかたちを筆によってえがきだすことをめざす天才肌の宗達と、実業家として学問や芸術へのみずからのあこがれを抑えつつ、優れた芸術をこの世界にのこすために力を尽くした素庵の物語がわかりやすいのに対して、光悦の物語はすこしむずかしく感じました。土岐民部の妻

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    2021年08月16日
  • 天草の雅歌

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    長崎で通辞を務める上田与志(うえだ・よし)という男が、ポルトガル人の血を引くコルネリアという女性との愛をえがくとともに、朱印船貿易家と糸割符仲間との抗争が二人の運命を引き裂く顛末を語る歴史小説です。

    しだいに鎖国体制が整備されていくことになる江戸時代初期の長崎を舞台に、さまざまな人びとの思惑が入り乱れるさまがえがかれています。主人公の上田はやや地味な人物像ではありますが、激変する時代の波に翻弄されながらもコルネリアへの純愛をつらぬき、物語を読むことのたのしみをあじわえる作品です。

    著者のもうひとつの歴史小説である『安土往還記』では、キリスト教の布教のために海を越えて日本へやってきた南蛮人と

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    2021年08月03日
  • 北の岬

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    短編五編を収録しています。

    第一話「ランデルスにて」は、明確なオチをもつ怪奇潭仕立ての作品で、純粋な愛(の不在)をテーマにしています。第三話「風塵」も、やはり怪奇潭のような雰囲気をもつ作品です。

    表題作となっている第二話「北の岬」は、婚約者の直子を日本にのこして二年間パリですごした留学生の男が、修道女のマリ・テレーズへの愛を棄てることができず、帰国後彼女のもとを訪れるという話です。

    第五話「叢林の果て」は、叔父夫婦の家を出てタバコの売り子となったマリアナという女性と、革命軍の兵士であるラウルの語りが交互にならべられるという、風変わりな構成の作品です。

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    2021年08月02日
  • 西行花伝(新潮文庫)

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    出家をするというのは、心が自由になるということなのかな、とこの小説を読んで何となく思った。
    落ち着いた雰囲気の長編だからか、読みながら何となく別の考えに没頭してしまったりするので、小説の感想といえるのかどうかはわからないが、時々読み返して小説の世界に浸れるようになりたいと思う。

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    2021年04月17日
  • 西行花伝(新潮文庫)

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    長い、そして文章の流れが少なくとも現在の私に合わない。
    本作の出来云々とは違った次元で、単に好み等にマッチしなかったということでしょう。
    しかし俗世と離れていた人のように勝手に思い込んでいましたが、なかなか、俗世の中を立ち向かって生き抜いた人という感を抱きました、本作を読んで。超越したいと思いつつも、そうは出来ない人々の格闘の物語だなと。

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    2019年05月01日
  • 安土往還記(新潮文庫)

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    この本は、イタリアジェノバ出身の船員の目を通して、信長という時代の変革者の人物像と安土という時代の様相をとても知的な文体で描いている。
    私はこれまで延暦寺焼き討ちなどに見る徹底的に非情なやり口に信長のことがどうしても好きにはなれなかったが、本書で描かれる「事がなる」ために自己を抑制し「理に適う」方法を徹底的に追求するという人物像に、近代的な人間の先駆者としての孤独と時代の変革者としての強い覚悟を感じて見る目が変わった。
    彼がキリスト教の布教に寛容で、西洋の文化にとても強い好奇心を抱いたのは、布教のために命を賭けて海を渡る宣教師等の使命感と、その「事を成し遂げる」ための「理に適う」行動に自分と同

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    2019年04月15日
  • 春の戴冠2

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    ネタバレ

    p.199「人間にとって真の幸福とは,夢にしかない。夢をみることーそれが人間の幸福なのだ。・・・人間は夢をみている動物なんだ。夢をどれだけ長くみられるか,に,人間の幸福がかかっているんだ。」
    P.238「・・・人間はどんな世の中でも放置すれば野蛮に帰るものなのだ。ただ絶えざる陶冶だけが人間を辛うじて人間にふさわしい状態にとどめているのである。したがって人間が自己陶冶の意思も基準も失い,ただ財貨を集め,日々の欲求を満たすだけの存在となれば,容易に,人間以下の状態に転落するのは自明のことと言っていい。」

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    2017年07月31日
  • 嵯峨野明月記

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    嵯峨本を刊行した角倉素庵、俵屋宗達、本阿弥光悦を通した美の追及話。文章が綺麗。でもちょっと冗長過ぎるな。

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    2015年01月01日