柴田錬三郎のレビュー一覧
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上~中編にあったような怒濤の決闘はなく、いささか落ち着いてきた感のある下編。
武蔵だけでなく、彼を取り巻く人たちのドラマもきっちりえがかれていますが、逆に、「あの人どこ行ったの?」という放置のおかたも……。
真田幸村
猿飛佐助
夕姫
この三人はふっつりと姿を見せなくなりました。
まあ、別にいなくてもいいようなキャラなんですが……。
記憶がちょっと定かでないんですが、吉川英治版の「宮本武蔵」には、幸村は出ていなかったと思いますので、やはりこれは、作者のお気に入りってことで出したのでしょうかね。
幸村と佐助目当てに読み始めたのですが、いなくても、充分におもしろいんですが。
あと、喜和も後半、出ませんでしたね。
伊織は、どうしたんでしょう。
伊織といえば、彼はまことに立派な青年になって、幼い頃のやんちゃぶりなど、見る影もありません。
なんていい男なのでしょうか。
武蔵の決闘は、佐々木小次郎との立ち合いで幕を閉じますが、この武蔵の戦法というのが、作戦まできちんと含めたもので、ただ業前を競っているだけではない。
なので、純粋に「強さ」を求めて読めば、この武蔵は卑怯者に思えるかもしれません。
そこを「智慧者」と見るか「卑怯者」と見るかは、読み手次第なのではないかと……。
わたしは、その意表を突く作戦も、面白く読めました。 -
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柴田錬三郎の連作時代小説『花嫁首 眠狂四郎ミステリ傑作選(英題:Head of the Bride)』を読みました。
柴田錬三郎の作品は3年半くらい前に読んだ『御家人斬九郎』以来なので久し振りですね。
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時代小説の大家が贈る、孤高の剣士の名推理
異色の探偵の活躍を描く珠玉の21編
ころび伴天連(バテレン)の父と武士の娘である母を持ち、虚無をまとう孤高の剣士・眠狂四郎。
彼は時に老中・水野忠邦の側頭役から依頼を受け、時に旅で訪れた土地で謎と遭遇して、数々の難事件を解決する名探偵でもあった。
密室状態にある大名屋敷の湯殿で、奥女中が相次いで不可解な死を遂げる「湯殿の謎」。
寝室で花嫁の首が刎(は)ねられ、代りに罪人の首が継ぎ合せられていた「花嫁首」。
時代小説の大家が生み出した異色の名探偵が奇怪な事件に挑む、珠玉の21編を収録する。
解説=末國善己
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眠狂四郎シリーズの中から、密室殺人・呪われた屋敷・山中の怪異・重要書類の消失・雪の密室・首切り殺人などに眠狂四郎が挑む、バラエティに富んだミステリ作品を21篇収録した一冊です。
■雛の首
■禁苑の怪
■悪魔祭
■千両箱異聞
■切腹心中
■皇后悪夢像
■湯殿の謎
■疑惑の棺
■妖異碓氷峠
■家康騒動
■毒と虚無僧
■謎の春雪
■からくり門
■芳香異変
■髑髏屋敷
■狂い部屋
■恋慕幽霊
■美女放心
■消えた兇器
■花嫁首
■悪女仇討
■編者解説 末國善己
時代小説の大家が生み出した、孤高の剣士・眠狂四郎……彼は時に老中・水野忠邦の依頼で、時に旅先で謎を解決する名探偵でもある! 異色の探偵の活躍を描く珠玉の21篇を収録。
記念すべきシリーズ第1話で狂四郎と金八の出会い等のシリーズの基本設定が描かれる『雛の首』、狂四郎の出生の秘密が明かされる『悪魔祭』が収録されていて、シリーズの全体像が掴みやすい構成でした……個人的には過去に住んだことのある、西宮の甲山を舞台にした『皇后悪夢像』や岡山を舞台にした『悪女仇討』(『眠狂四郎炎情剣』として1965年(昭和40年)映画化)も興味深かったですね。
面白かったのは、やはりミステリ色の強い作品、、、
家康自筆の天照大御神の絵を3点見つかり、その真贋を狂四郎が見抜く『家康騒動』、
雪の降った日、土蔵の扉に手を掛けたまま背中を刺された刺青師の弥太兵衛が見つかり、土蔵の中には縛られた女しかおらず、雪の上には弥太兵衛の足跡しかなかったという事件の謎を狂四郎が追う『謎の春雪』、
唐鐸奉納の正使である掌侍が茶亭で過ごしている間に、貴賓座敷にある白木箱の中から唐鐸が消えた謎を狂四郎が追う『からくり門』、
三千石の旗本が湯殿の中で刺殺され、兇器が見当たらない奇妙奇天烈な事件の謎を狂四郎が追う『消えた兇器』、
三河譜代の名門・加倉井家の婚礼で、花嫁が首をはねられて殺された奇怪な事件を狂四郎が追う『花嫁首』、
あたりが印象的だったかな……バラエティに富んだ作品が並んでいますが、21篇も続けて読むと、少し飽きちゃいますねー 意外とバカミス系やエロ系も多かったですね。 -
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・私は柴田錬三郎を知らない。いつもかういふことを書いてゐるのだが、実際に知らないのでかうとしか書けない。私は好き嫌ひが多い。 読む物も片寄つてゐる。作家も同様である。かつて私の眼中にシバレンはなかつた。ところが最近はいろいろな文庫が出る。海外の読みたいものがないので、今は昔の日本の作家でも読まうと思つた。さうしてたまたま買つたのが柴田錬三郎「第8監房」(ちくま文庫)であつた。本書所収の短編は昭和30年頃の作品である。同じ頃に例の「眠狂四郎」も始まつた。本書はそれとは全く違ふ作品集で、「昭和二十年代以前には、時代小説は数あるレパートリーのうちのひとつで、純文学から大衆小説、随筆、評論、少年少女向けの作品まで、柴田錬三郎は才気にまかせて多種多様なジャンルを手がけていた」(日下三蔵「編者解説」361頁)らし い。実際、本書にはフランスを舞台にした作品もある。時代小説の大家がこんなものをと思つてしまふ作品である。 他は大体時代が分かる作品、つまり、戦後が舞台になつている。本書はアンソロジーではあつても他を流用した「あとがき」を持ち、そこには、「小説ばかり書いていると、たまには、別の読物を書いてみたくなる衝動が起る。本書に収めた各篇は、折々に読みちらした材料をもとにして、私の勝手な潤色を加えたものばかりである。」(359 頁)とある。本書にこれがそのまま当たるのかどうか私には分からないが、編者がさう判断して本書の「あとがき」としたのである。たぶんそんな作品なのであらう。
・そんな中で最も出来の良いのが表題作「第8監房」であらう。ごくかいつまんで言へば、場末のキャバレーの男女の因縁話とでもならうか。男は女の夫をルソン島で殺したのである。事情はあつても殺人は殺人といふことで、男は復員後、上官の妻を捜して遂に見つける。それがキャバレーの女であつた。ただし、男は何もできず、ただ遠くから見守るのみであつた。ある時、女にまとわりつく男が殺された。男は女の罪をかぶるが、その時、女は肺病で死の間際であつた。そこで第8監房から……といふ物語である。前半の罪をかぶるまではありさうな話なのだが、後半にな ると本当かと思つてしまひさうである。最後は「走れメロス」風でさへある。このやうな看守がゐるのも都合よすぎ る。これを「考えてみればシバレンの作品は、異常なシチュエーションや異常な心理を描くものばかり」(「編者解 説」367頁)だといふ一例にすぎないと考へればそれまでであらう。小説といふもの、大体が極めて都合よくできてゐる。都合よくないと物語にならない。これも男と女は良いとしても、看守がゐないとお話にならない。物語はそこで終はつてしまふ。そこでいささかの〈人情味〉をといふことでこの作品ができてゐる。他の作品とは違ふところである。これが表題作になれる所以であらう。巻頭の「平家部落の亡霊」はその題名からしてクレームがつきさうで ある。部落はいけない集落にせよと今なら言はれるはずである。大雨の中、バス故障により平家部落に避難した人達の物語である。ポイントは亡霊とは何かである。それは「現世にふたつとは存在しない凄惨な形相の怪物」(54 頁)と形容される。それ以前に「二十歳になった孫息子が、ある嵐の晩に云々」(29頁)とある。ただ、物語はこれだけに関はることはなく、といふよりこれは添へ物で、いくつかの小さなエピソードが集まつてをり、亡霊はその一つに過ぎない。タイトルに偽りありの如くで、何か中途半端な感じである。そんなわけで、時代や風俗が分かつて 面白いのだが、肝心の物語が今一つといふのが私の読後感であつた。 -
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柴田さんといえば剣豪娯楽小説シリーズしか思い浮かばなかったわたし
「へえ~~」と本屋で衝動買い
創元社文庫で復刻版の由、書かれた時代は1960年
ストーリーの時代背景も同じく50年末から60年の昭和レトロ
というかわたしの若いころのなつかしき風景・風物が多々の
古風に言えば、探偵もの、ミステリー物語で
前に「笑うセールスマン」なんてコントドラマがあったが
その「セールスマン」が「灰色の幽霊」になった感じで
謎解きをしてくれる『幽霊紳士』シリーズと
異国情緒趣味豊かな異常事件収録の『異常物語』
『幽霊紳士』のほうの背景、古き昭和が懐かしい
自動車がまだ高根の花だったころの後楽園スタジアムでの自動車ショー
数寄屋橋の川が埋め立てらればかりのころの有楽町や日比谷公園あたり
今のように整然としていなくて、殺風景ともいえる皇居堀端の風景
丸の内せいぜい7階建ビル街の古さ、いまは高層ビル群、見違えるもの
などなどリアルで蘇るからおもしろい
ストーリーは素朴かつ単純だけどね
これぞ娯楽というのだろうよ
『異常物語』の異国情景の描写もおもしろい
ロンドンやパリが出てくるのだけれど
1ドル360円の時代、ほんとに見た人は少ないから
言えば、どんな描写でもOK(笑
柴田錬三郎さんは実際渡欧なさっていたのかどうか
1ドル360円といえば、いま118円になったが
一時95~8円になって、昔を思うと日本の状態が変わった
当時立派な装丁本全集の1冊が350円くらい
いまやその手の単行本は2500円はする
これってどういうこと
わかるような、わからないような -
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先日読んだ、木枯らし紋次郎シリーズのミステリー傑作選がなかなか良かったので、たまたま見つけたこちらの作品も読んでみた。
初めて読む眠狂四郎シリーズ。
円月殺法くらいしか知らなかったので、どんな男かと思っていたら、紋次郎とは真逆のキャラクター。
編者あとがきによると、作家さんが当時流行っていた正統派時代物ヒーローとは真逆にしようと、眠狂四郎というキャラクターを作り上げたらしい。
水野忠邦の側頭役・武部仙十郎の依頼で様々な事件の解決に取り組むことが多いものの、武部に飼われているというわけでもなく、好奇心のままに事件に首を突っ込むこともある。
何より女好き。気ままに女に情を掛けておいて気を持たせたり突き放したり。それでもモテるのだからよく分からない。
女だけではない、狂四郎と何かとコンビを組むスリの金八まで懐いている。天然の人たらしなのか。
信仰を捨てた『ころび伴天連』の父と、父に襲われて自分を産んだ武家の娘である母との間に生まれた狂四郎。
作品集の中では父に復讐の刃を向けるシーンもある。
さしたる故なくとも刀を振るう、生きる凶器のように感じる場面すらある。
だがそういうダークヒーローを徹底したから人気があったのかも知れない。
ミステリー傑作選という割には一編が短いので、謎解きをする間もなく終わってしまうものもある。
それと、結構艶っぽい話が多い。現代のような生々しい描写はないものの、大人向けだろう。
ただ凶器や物の消失、密室殺人、花嫁の首が斬られ代わりに罪人の首が繋ぎ合わされているという、横溝先生の作品のような話もあってワクワクした。
しかしやはり一話が短くて、あの人は、あのことはその後どうなったのか置き去りな感じがちょっと勿体無い。