藤野千夜のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
☆☆★
平成の小学6年生大森美々加が昭和49年の小学4年生小岩井さらとして目覚め、半年ほど〝さら〟として生きた物語。
ここから先はネタバレになります。
不思議な物語に理由はいらないと思うのだけれど、それにしても美々加がさらとして過ごした半年間の経験が平成の美々加になのん教訓ももたらしてくれてないというのは残念過ぎる。
わがままで頑固で甘えん坊な美々加が昭和の古き良き時代に翻弄されつつも家族や友人らに支えられ、乗り越えたさきには平成の家族を思いやれる女の子へと成長する物語である。となってくれたのなら、この長い物語にも意味が見出せたのだけれど…昭和でも平成でもただ家族を困らせ混乱させ不安にさせるに止まっている。
どういうことだ。
ならば、家族と過ごす最後の貴重な半年間を見ず知らずの美々加に受け渡したさらの想いはいったいどこに着地すればいいというのだろう。
無念。
私がさらであったならそう思う。
最後の最後で初めに戻って、大森美々花が実在することに保健室の先生や美々加が知らないのも不自然すぎた。
むしろその存在を知っているからこそ「昔、美々加ちゃんと同じ名前の宝ジェンヌがいたんだよー。」という伏線から、もしかして!ってことで小岩井家に赴いてみようという流れであったほうが自然だったかな。
ストーリーは悪くないのに、いわゆる伏線回収が殆どなくてただ過去に行った。帰ってきた。に留まっている。熊谷さんとの関係は?阿部さんや高島さんは?さらさんに手を合わせてないよ。
いろいろモヤっとして終わる。
今年の13冊目 -
Posted by ブクログ
ネタバレ目次
・お江戸の味
・どじょっこたち
・酢めしの話
・変わらぬ味
・藪から蕎麦
・ひなまつり
・お花見日和
・川の景色
多分初めての藤野千夜。
人気のある作家の作品なので、楽しみに読んだのだけれど、思ったのと違ったな。
朝の情報番組でお天気お姉さんをしている寿々は、都下に実家があるけれど通勤に便利という理由で祖母の家で暮らしている。
隅田川に近い下町で暮らす料理上手の祖母、昔なじみの友達。ふむふむ。
何度も挑戦しているけれど合格できない気象予報士の仕事。ふむふむ。
直前まで進んだのに流れてしまった結婚話。ふむふむ。
社長の勧めに従って始めた「江戸町めぐり」ブログからのBSのお江戸番組のアシスタントに抜擢。ふむふむ。
ねえ、一体何を書きたい話だったの?
寿々は周囲の人に恵まれている。
親戚の口添えで今の事務所に所属し、なんとなく仕事もうまくいっている。
でも、なんとなく、なのよ。
お仕事のことを書いているけれど、お仕事小説ではない。
「江戸町めぐり」のブログにしても、そんなに江戸に詳しいわけではないから、1日に1回更新するのがせいぜいって、どれだけ更新するつもりなん?
書いてることは江戸時代から続く名店で美味しいものを食べて、ちょっと歴史のエピソード(ネタ元はおばあちゃん)を書くくらいで、よく毎日更新できるな、逆に。
江戸時代から続く名点があるかと思えば、時代から取り残され寂れていく友だちの酒屋。
ここで何か有効なアドバイスをするのかと思えば、対策として宝くじを買うくらい。(近代的なビルにするつもりらしい)
好きな人ができたと言って寿々のもとを去った元婚約者からの未練がましいメール。
この婚約者が本当に嫌なやつで、寿々が有名になったからよりを戻したがっているのかと思いきや、本当にちょっとした未練だったらしい。
なんか大きな風呂敷が拡げられましたが、最初から最後まで風呂敷の上のものは変わらず、風呂敷が畳まれることもなく終わったような感じです。
一冊読み終わってここまで成長と無縁の主人公も珍しいかも。
素材が良いだけに残念でした。 -
Posted by ブクログ
ショートパンツを穿いてサンダル履き、シャーツの前をはだけて、腹を丸出しにして、裾を風にはためかせている奴の姿を見ると、破滅の予感が沸いてくる。Tシャーツに印刷された絵や文字は、どうにも珍妙で道理に反している。自分の内在している思想や感情を表現しているように見えてしまうことが卑怯すぎる。見えてしまうことによって、人は破滅に向かう。Tシャーツ1枚で偉そうに思想を語った気になる。自分の弱いモチーフを服によって増幅させる。これは刺青をちらつかせて人を威圧するのと変わらない。相応の覚悟もないまま雰囲気だけまとって、さも中身があるかのように取り繕う人間には破滅の道があるだけ。破滅が恐ろしくてTシャーツが着られない。
直木賞、芥川賞など、超一流の作家たちが季節をモチーフにそれぞれが時節の表情を独特のタッチで描ききる。 -
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この作者が織りなす悲しみの雰囲気は、少しだけ癖になりそう。
ハッキリと書くことなく、ジワリと滲ませる感じ。
表題作の「夏の約束」について。
MtFの美容師がひょんなことから入院することになる。
友人らがお見舞いに行くと、同じ病室の男性から心無い言葉を聞いてしまう。
"隣のベッドに新しく入った中年男性が、白髪まじりの坊主あたまをなでまわしながら、あんた、おかまちゃんの友だち?とぎすぎすした声で訊いた"
酷い。あまりの無理解さに頭痛がする。
それでも、友人らは抗議することなく、当の本人が苦しむ描写も為されない。
だけど、一人のゲイとして、あえて描かれなかった部分が容易に想像できてしまう。
この他にも、マルオというゲイの登場人物に為された差別的なアクションがすらすらと書かれる。
決してドラマチックに書かないことで、こんな差別的な言動は日常茶飯事でありふれたものなのだ、ということがむしろ強調されていた。
そっか、1999年の作品。時代はまだ寛容への道すがら…。
同時収録の「主婦と交番」も悪くなかった。
電車恐怖症の主婦から見た世界は、マイノリティの生き方を感じさせて、夏の約束と同じエッセンスを持っていた。
話と登場人物がよりシンプルなだけに、こちらの方が読みやすいかもしれない。
さて、どちらの作品もある種の魅力的な囲気を持ってはいるのだけど、小説として秀でているかと言えば、凡庸さは否めない。ということは付記しておく。
芥川賞、やっぱりよくわからない。