2巻目と3巻目は、遂に起こった日本史上最大の喧嘩、応仁の乱の最初の2年間(京都が舞台)を描いています。
2巻目になると、やっと顔と名前が一致する様になります。そもそも彼らの呼び方は、ロシア文学以上にややこしい。
主人公は、2巻目で12歳にして元服して伊勢新九郎盛時を名乗ります。よって、
普通は備前
...続きを読む守などの受領名で呼ぶ(しかしこれは必ずしも実態を表していないからややこしい)。やがて新九郎は赴任先で御名代などと呼ばれることになる。
仮名(けみょう)は新九郎。普通はこれで呼ぶ。
諱(いみな)で読んでいいのは、親や目上の親族、主人筋に限る。新九郎の諱は盛時である。
よって、これまでマンガでは盛定にかな書して(びぜんのかみ)と書いていたり、兵庫助と書いて(さだむね)と書いていたりするのだけど、やっとガッテンがいった。
しかも、八郎、九郎は他の家でも当たり前のように使われている。ややこしくてたまらない。けど、やっと慣れてきました(^^)。しかも、日本語ではかながきとして、二重に説明してくれるので、慣れると理解が進んでゆく。←だんだんと説明自体が「ややこしく」なってきた。わかりました?
そもそも、ただでさえややこしい「応仁の乱」のことを、この短いレビューで解説するなどはできませぬ。まぁ都内での守護大名同士の「喧嘩」が、いつのまにか将軍を巻き込んで東軍西軍に分かれて、やがては日本全国に拡大していった10年間の「大喧嘩」になっていったのだと、私は理解しました(←解説してるやないか!)。この漫画を読んで、初めてだいたいのことがわかりました。
鎌倉幕府成立から約300年。彼ら武士は完全に平安貴族のしきたりを上書きしているし、一方では荘園経営をしながら武士として何度か死線を潜ってもきています。源氏物語や吾妻鏡も彼らの教養の一つであり、それらを咀嚼しながら未来を作っているだろうな、とまでは漫画では書いてはいませんが、想像できるほどに作者はこの時代を咀嚼していると思いました。
この時代、喧嘩のルールがいったん壊れる。
おそらく歴史書では一つのトピックとして大きく扱われているはずの新兵器「発石器」(石を砲弾のように飛ばす武器)も、足軽という名前の戦闘集団の頭目・骨皮道賢も、さらっと出てきて、「一度使われてしまえば、敵も同様な物を使用する」と、すぐに「新兵器」は新鮮味がなくなる、というクールな描き方になっています。
「これが武士のいくさのすることかぁ!」と西軍の頭、山名宗全は叫ぶのですが、おそらくこれこそ中世のいくさなのだろう。発石器や骨皮道賢の姿を生き生きと見れることを楽しみました。
いよいよ次巻からは、地方に飛び火したいくさに対して、自らの所領を守るために、若干16歳の新九郎が備中荏原(岡山県井原市)に赴任します。