高齢化社会になり、誰もが経験するであろう親の介護問題。在宅での介護or施設入居、どちらを選ぶかで悩み、介護される側も介護する側も葛藤し、疲労する。
施設を選択する場合でも、介護度や費用などで幾つかの選択肢があり、頭を悩ます。
この小説は、そういった問題をベースに置き、加えて格差社会が介護の世界にも影
...続きを読む響を及ぼしていることを痛烈に皮肉ったドラマとなっている。
重くなりがちなテーマを扱いながらも、コミカルなドタバタ劇にして、介護疲れを感じている読者に共感と癒しをもたらす意図で描かれた作品ともいえる。
舞台となるセブンスタータウンは高級高齢者のための介護付き居住施設だ。
住人は医者、大企業の役員、経営者、元芸能人、出版社編集長などハイソサエティで裕福な人ばかり。
その施設内の食堂ウエイトレス、受付で働く従業員、看護師の3人の女性が主役となるが、彼女たちはいずれも親の介護に関し深刻な問題を抱えている。
それぞれに事情があり、ほとんど一人で親の世話をし、限界状態にある3人と、対照的に最高級の暮らしをするセブンスターの住人。
3人は住人たちとの格差が我慢ならず、自分たちの親も何とかここに住まわせようと虚々実々の策略を始める。
策略は大胆さを増すが、思わぬ事態から破綻をきたす。だが、3人は諦めず、一部の理解ある住人も巻き込んで、とんでもない結末を招く。
介護の格差を世に知らしめるためには、非合法で明らかに犯罪と言える手段も辞さない展開は読み手にとってはドラマチックで痛快だが、少しやり過ぎ感があることも確かだ。
しかし、NHKでドラマ化もされており、もし、映画化されたらドタバタコミカル劇だと割りきって見たくなる気がする。
追記しておきたいのは、セブンスタータウンでは上の階が介護付き居住室となっており、体が不自由になったり、認知の傾向が出ると「上へ行く」というシステムになっていること。「上へ行く」ことは疎まれる人になるということを意味し、下の階の住民はそれを何より怖れる。学識や名誉があり気位が高い層ほど、要介護になることへの落差を強く感じるということもこの小説が伝える要素のひとつなのかもしれない