鶴田謙二のレビュー一覧
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生命誕生からの記憶をすべて持っているエマノン。
主人公の青年とエマノンが、船旅の船のなかで出会い、語り合い、惹かれあう、ほとんどそれだけの話。
たったそれだけなのだけど、1コマずつ、1ページにあふれる叙情によって、自分の体験であったかのように感じた。
不死ではないが記憶を持ち続けるということは、つまり、数時間も、数十年も、同じことだと彼女は言う。
ちなみにヒロイン「エマノン」の名は、「NO NAME(名無し)」の逆さ読み。
遅筆で、作品を宙吊りにしてしまうことも珍しくない作家さんだそうだけど、こんな世界が見えているのならば、それは因果であると思った。
精読に耐える、素晴らしい漫画作 -
Posted by ブクログ
舞台は水の都ヴェネツィア。
日本人とイタリア人のハーフである私立探偵、伊万里マリエル。
ほんとは祖父の莫大な遺産があるのだが、遺産相続の条件は20年前に盗まれた絵画を取り戻すこと。
その絵画の題名は「Forget me not」
そんな彼女に、ある日イタリア中を騒がせている怪盗ベッキオから挑戦状が。
ところがそのベッキオの正体というのが…
寡作で知られる鶴田健二さんのオリジナル作品。
とにかく絵がすばらしいです。
感情の細やかな機微さえも、ちょっとした表情の違いで描き出している、その表現力の豊かさ。
美しくて、思わずため息が出てしまいます。
ぐーたらな探偵マリエルのキャラもいいです -
Posted by ブクログ
げにおそろしきはこれが10年分の作品のほとんどってことですよ。
その分内容はものすごく濃いんだけどね。SF男子の浪漫がこれでもかといわんばかりに詰め込まれたような、そんな一冊。
下調べたくさんしたよ!と文字間から作者の声高な主張が見え隠れするような最近のSFにはない、いい意味で夢見がちな、まだ科学が人々の指先の上にあった時代だからこその発想が、その次の世代に生まれてしまった私には逆に目新しく映った。
女性たちもこれまた男子の夢を凝縮したようなキャラクターでね、だけど鶴田さんが書くとそこらへんのアニメキャラのように嫌味に映らないから不思議不思議。