宮﨑真紀のレビュー一覧

  • 秘儀(下)(新潮文庫)

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    ネタバレ

    上巻からの勢いで下巻へ。物語は不穏さを増し、不気味で不安をかき立てる描写が続く。あまりに生々しく、想像すると吐き気を覚えるような場面が延々と続き、正直、嫌悪感を拭えなかった。
    自分の子を守るために別の子を犠牲にしたフアンの選択は、結局のところ教団のやっていることと何が違うのだろう。腑に落ちない点はいくつもあるけれど、最後まで読者を離さない力があり、読み終えてみればやはり面白かった。アルゼンチンの歴史や背景をもっと知っていれば、より深く理解できたのかも。時間を置いて、もう一度読み返してみたい一冊。

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    2025年12月23日
  • 肉は美し

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    ネタバレ

     パンデミックにより動物がほぼ淘汰され、人間を食肉用として家畜化することが合法化された近未来、食肉処理会社で働く男の姿を通して描かれたディストピアSFホラー。常識、倫理観、感情を激しく揺さぶられる一作。

     動物感染症の蔓延によって畜肉の食用が不可能となってかつてない食糧危機が世界を襲う。動物性蛋白質を求めた一部の間で移民や貧民を狙う人肉の闇取引が横行する。食肉需要を充たそうとする圧力に押され、食肉用としてヒトを飼育・繁殖・屠畜することが合法化され、それらのヒトは〈頭〉と呼ばれていた。主人公マルコスは〈頭〉を解体し加工した〈特級肉〉を卸す食肉処理工場の重役だったが、待望の赤ん坊を喪い、妻とは距

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    2025年12月28日
  • 寝煙草の危険

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    アルゼンチン作家のホラー短編集。ちっちゃな天使を掘り返す/湧水池の聖母/どこにあるの、心臓/肉が特に印象に残っています。幽霊、降霊術、悪魔、ゾンビといった類のものから、人間の嫌な部分、狂気の行き着く果てを描いた作品も。不穏でじわじわと足元から怖さが忍び寄る感覚。子どもや女性を主役に据えた作品が多い。面白いです!

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    2025年12月18日
  • 肉は美し

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    食人とそれにまつわる社会の有り様と主人公がいかに壊れているかの描写を積み重ねるけれど、個人的には食人はあくまでモチーフでやりがいのない仕事、妻との不和、親や妹との乖離等、普遍的なテーマを扱った作品と感じた。
    食人はわかりやすく人が人を搾取する構造だけれど、現実社会でも人が人を搾取する、モノ扱いすることはいくらでもあるし、食人が合法化されていない現実社会でも主人公のように壊れる人は沢山いるよなと思う。
    公私ともに現状に不満を抱えている今読めて良かった。

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    2025年11月26日
  • 肉は美し

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    人肉を食べることが合法化された世界で、食糧となるために生まれてきた人間と、そうではない人間を分けるものは何か。そんなことを考えた。

    人肉が食べられる状態に加工されるまでの過程は、今まで自分たち人間が鶏、豚、牛などの動物にしてきたことと全く同じように描かれている。食糧となるために生まれ、肉が美味しくなるような餌を与えられ、状態を管理され、一定の基準に達したら血を抜かれて内臓は抜き取られ、部位ごとに体を切り分けられる。これが人間が動物たちにしてきたこと。いざ人間がその対象になると、その全てがおぞましく思える。

    動物の場合と唯一異なるのは、食糧となる人間と、そうではない人間とで生殖ができること。

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    2025年11月23日
  • 秘儀(下)(新潮文庫)

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    ネタバレ

    自らの命を永らえさせる為に生贄を捧げ続ける〈教団〉とそれに利用され使い潰される〈霊媒〉という構図と、〈教団〉から子を守ろうとする父、という構図が重層的になった壮大なダークミステリーとして、非常に満足のいく終わり方だった

    上巻における主人公が退場したことで、今巻は誰が主人公なんだろうと開いたらロサリオだったことには驚いた
    それぞれの部ごとに視点が異なっているため、同じ事件に対して多角的に描写され、それに伴い〈教団〉の内部事情やアルゼンチンの政治状況など、これでもかと言うくらいに物語を膨らませることで、終盤にかけてどういう風に終わるのかとページをめくる手が止まらなかった

    上巻がフアンvs〈教団

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    2025年11月10日
  • 秘儀(上)(新潮文庫)

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    ネタバレ

    謎の儀式を行い〈闇〉と接触することを本懐とする〈教団〉、そして〈闇〉を呼び出すことが出来る力をもつばかりに〈教団〉に振り回される霊媒のフアンとその息子ガスパルを主軸として展開する、この世の暗い部分を全て詰め込んだかのような作品

    序盤に二人で旅行に出かけるシーンは、何か違和感がありつつも和やかな感じだったのに、タリに会ってからはエログロのオンパレードという具合でびっくりした
    フアンがガスパルのことを愛しているのはよく分かるんだけど、病気で今にも死にそうだという焦燥感や敵の強大さが起因してるのか、愛情表現が大変にバグってる
    しかもこの小説、敵の本拠地に行っても一部を除いてエグい描写ないのに、ホー

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    2025年10月19日
  • なりすまし――正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験

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    この本は閉鎖病棟の実験による不完全な論文が影響を与えた精神医療改革の光と影を追い続けた。
    著者は精神医療の傲慢さやいい加減さを認めつつも、なお精神医療が発展して、将来信頼にこたえてくれると信じている。
    精神科病院の実態だが、まるで刑務所の囚人のような閉鎖病棟に普通の人が入っても、出た時には精神病になっているんじゃないかというくらい、ヤバい場所だとわかる内容。
    一方で、社会心理学から精神科病院の質を調べるために偽装患者として潜入することは、不要な治療、不要な検査を受けたりしてしまうという点で、非常にリスクがあると感じた。
    詳細はぜひ本書で確認してほしい。
    映画を見ているようなスリリングな展開力で

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    2025年08月18日
  • 救出の距離

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    不穏さと曖昧さが漂う不条理ホラー。真相に近づくラストにもはっきりとした描写はなく、どこに怖さを感じるかは読者に委ねられる。分かりづらい展開なのだがあっという間に読み進めていた。新しいホラーの形ともいえるだろう。

    #日本怪奇幻想読者クラブ

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    2024年11月15日
  • 救出の距離

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    わが子を愛おしく想う母性と社会問題への警告と呪い… アルゼンチンのサスペンスホラー #救出の距離

    ■きっと読みたくなるレビュー
    アルゼンチンのサスペンスホラー、芸術性の高い文芸作品ですね。母娘の絆がメインのお話なんですが、なにやら忌まわしい雰囲気たっぷりで、さらには社会問題への怖い警告も含まれています。

    本作の導入、いきなり意識があるのかないのか、何が起こっているのかさっぱりわからないところから始まる。得体のしれない恐ろしさに包まれながら、ひたすら少年の声との会話を下敷きにしながらストーリーが進行するんです。この二人の語り口調がまるで魔術や呪文のようで、非日常の世界に引きずりこまれていくこ

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    2024年10月21日
  • 兎の島

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    鳥を始末させるために小島に放たれた兎の異様な変容を描く短編の表題作を始めとして、幻想と現実が入り交じった不可思議なシチュエーションの短編が集められた作品集。

    わけのわからなさ、きわめて難解な風景の中から仄見える、現実で抱える恐怖や哀しみが時折スパイスとなって胸に刺さってくる、そんな話が多いように感じました。

    そのわけのわからなさにまったく感応できないままのお話もあったのですが、その置いてけぼり感というか、何を見せられたのだろうという茫然とした感覚もまた面白いものだな、とも自分は感じられました。なかなか不思議な後味のある短編集でした。

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    2024年10月14日
  • 寝煙草の危険

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    現代を生きる若者たちを主に主人公に据えて、昔ながらの民間伝承や信仰を織り込み、現代の社会問題を絡めて描き出した味わい深いホラー短編集。不条理さと現実の不合理さが同時に味わえる、複雑な面白味のある話を楽しめました。

    この短編集の中では、「戻ってくる子供たち」が一番印象的でした。一見現代の社会問題を追っているような筋書きから、次第に不条理な不気味さが表に出てきて、現実を凌駕していく。けれどその不条理さは、辛く酷い現実を今生きている少年少女たちのどこへも表出しない辛みの別側面でもあるようで、けして絵空事だと軽んじて受け止められない重みを感じました。

    多くの短編でこの短編のように貧困などに晒されて

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    2024年07月15日
  • 怪物のゲーム 下

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    〈怪物〉を名乗る人物に娘を誘拐され、3つの課題をやり遂げなければ娘に同じことをした末に殺すと脅されるディエゴ。それは彼が書いた小説を模倣していて‥‥。

    課題の内容がおぞましくて気持ち悪くて、早く解決して欲しいという思いで一気読み。『クリミナルマインド』みたいだけど、警察がそこまで優秀じゃない。ディエゴは被害者なんだけど、なんとなくあんまり好きになれないキャラ。妻のラウラも。終盤はなかなか引っ張るけど、面白かった。

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    2024年05月09日
  • 寝煙草の危険

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    ・とっつきにくいかな?と思っていた読む前の印象と違い全然読みやすかった。訳が良い?のか?言葉も現代的なスラングも使われている所もあり、面白かった。
    ・全体的に覆われる不穏感。ラテンアメリカ文学的は不思議さみたいのも感じるけど、何となく思っていたのは映画のJホラー的な不穏さ。何もまだ起こってないのに何かが進行している様なドキドキ。日本的な環境とは明らかに違う場所での話なのにスッと入っていけるのは、その感覚の既視感があったから、かな?

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    2023年09月23日
  • 幻覚剤は役に立つのか

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    面白い。しかし脳に作用する物質でスピリチュアルな悟りを得るのが好きだねアメリカ人は。それのどこが悟りなのか。精神が物質の結果でしかないこの上ない証拠のように思うが。

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    2023年08月15日
  • 兎の島

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    装丁が綺麗で手に取ったもの。
    11の短編。タイトルの兎の島は、川の中の小島でウサギを飼ったところ、兎が想定外の行動を始める話。主人公がいなくなると、ウサギも死んで何もなかったかのようになる。
    「ホテル最上階の部屋は」、住み込み料理人が、ホテルの部屋で他人の見る夢を見始める。
    他人が見ている夢といいつつ、他人の考えを夢想しているだけでもあり、精神病名がつきそうな症状とも思える。
    「メモリアル」は死んだ母のアカウントが自分のFacebookに友達申請される話。ホラーというよりも、母を亡くした喪失感と立ち直りの話のようである。

    全編精神疾患の症状を、語るようでもある。
    スペインの持つイメージともか

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    2023年05月27日
  • プロジェクト・ファザーフッド

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    「プリズン・ブック・クラブ」に似た読後感。
    父親不在で育ったスラム地区の父親達。父親としてあり方をピアグループを通じ変わっていく過程が書かれている。
    自分たちが犯した罪を悔い、後悔を子どもたちに伝えていく。
    守りの対象が自分の子どもから地域の子どもたちまでに広がっていく過程がよかった。

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    2023年01月12日
  • なりすまし――正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験

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    著者には脳炎を精神病と誤診された過去がある。危うく精神病棟に移送されかけたが、別の医師が脳炎を見抜き、事なきを得た。なぜ簡単に誤診が起きてしまうのか? 精神病とはいったい何なのか?  著者は自身の体験から、こう問い続けた。脳疾患と精神疾患の境目について調べていく内に、著者がたどり着いたのは「ローゼンハン実験」だった。

    ローゼンハンと実験協力者は、統合失調症の症状を偽って訴え、精神病棟への入院を果たした。入院後、自分たちの症状が「回復」するまでの経緯と精神病棟の現場における実態を詳細に記録した。研究成果は「狂気の場所で正気でいること」という論文に結実し、権威ある学術誌である『サイエンス』誌に掲

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    2022年09月21日
  • なりすまし――正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験

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    1973年に行われた精神病院潜入実験「ローゼンハン実験」の真相を探求した刺激的なノンフィクションでした。本文にもある「もし正気と狂気が存在するなら、違いはどこにあるのか?」が本書のテーマでしょうか。結末がやや曖昧でした。偽患者として精神病院に潜入する体験談が(真偽はともかく)スリリングでした。

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    2022年08月25日
  • 骨は知っている――声なき死者の物語

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    コロナ下で3度目の、特に予定がない夏。
    こんな時には、本に身を委ねてバーチャル一人旅。

    、、、こんな時でなければ、けっして手に取らなかった本だと思う。ホラー系とか、全くムリなのに、なんの気の迷いで手にしてしまったか、、、、

    法人類学者という単語を初めて知りました。
    (イギリスでは、死者の骨を調べる学者?をそう呼ぶらしい)
    怖すぎて、明るいお昼間にしか読めない内容ながらも、た〜っぷり、全く未知の世界を、遥か彼方まで、旅しました。

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    2022年08月21日