宮﨑真紀のレビュー一覧

  • なりすまし――正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験

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    ローゼンハンの偽精神患者の実験は広く知られている。しかし、そのニセ患者が自分と院生以外はいたかどうかわからない、という結論である。サイエンスに掲載された論文とともにこれを読むことがいいと思われる。ただし、400ページの本文のうち250ページは偽精神患者実験の説明であり、残り150ページがそのニセ患者の真偽をめぐる話である。したがって、この本を読むだけでローゼンハンの実験の説明になっている。
     シンバルドや電気ショックの実験についても、それぞれ実験の過剰操作としての電気ショックの強要や、囚人役の過激な演技が記載されているが、これをもっとで説明している本が翻訳で必要であろう。

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    2022年04月29日
  • 幻覚剤は役に立つのか

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    興味深い!マリファナアヘンコカイン覚醒剤等とは違いLSDは依存性ゼロ、脳の知覚機能へ一時的に「サイケデリック」に作用するだけで、LSDを服用した人はみな救済を体験し、サイケ体験はターミナルケアや精神疾患の治療に役立つ、というもの。

    治療薬として効果のある幻覚剤の成分構成と脳機能との化学反応など専門的な記述もあるけど全体としてちゃんと読める。そしてここでも邦題より原題(How to chage your mind) のほうが内容に沿っているんだよな。。だって最初から「役に立つ」前提で話が進むんでるしさ。。。まあこのタイトルだとスピリチュアルの棚に並びそうだけども。。

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    2022年02月12日
  • 花嫁殺し

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    ネタバレ

    結婚式を控えた花嫁が無惨な方法で殺害された。
    8年前にも同様の事件があったが犯人は服役中。これは連続殺人なのか、模倣犯が現れたのか?
    捜査にあたる特殊分析班のエレナと所轄のサラテ、エレナのチームの個性的な面々が魅力的。
    エレナの背負う苦悩も徐々に明らかになっていき、クライマックスへ!
    クライマックスに向けて盛り上がり重視で、少し疑問やツッコミどころもありつつ、最後まで物語を楽しみました。
    主要登場人物一人一人が、モブ的な人がいないというか、それぞれでスピンオフ書けそうな、物語外でもちゃんと生活がある感じに書かれていてそこが好き。
    それと翻訳に、いわゆる“女言葉”が使われてない事に途中で気がつい

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    2021年10月03日
  • 幻覚剤は役に立つのか

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    ★脳を揺さぶる科学と導く人間のノウハウの間★覚醒剤や麻薬、LSDの区別がよく分からないが、LSDやシャーマニズムで使われるマジックマッシュルームのようなものは中毒性はないという。
    幻覚剤にはかつて米国の医療分野などできちんとした研究の蓄積があったがサブカルとして広がった反動で抹消されてしまったという歴史、自らによる体験、脳科学の分野からの研究、トリップを生かした終末期や依存症のセラピーと、一人称を交えたノンフィクション。

    脳の分析からは、スピリチュアルジャーニーは生活を送るうえで効率化した脳の設定(デフォルトモード)に対しエントロピーを増大させることで、秩序を揺るがせると紹介する。ふだんはつ

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    2021年09月05日
  • 花嫁殺し

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     ある意味、完璧と言える構成の傑作だ。冒頭から読者を引きつける、あまりにも奇抜な殺人。マドリードの公園で発見された被害者女性は、頭に三つの小さな穴を開けられ、その中に入れられた蛆たちに脳みそを食われていた。ショッキングだし、その異常さにも程がある。

     被害者の姉も、実は類似の手口で七年前に殺害されていた。当時の加害者は杜撰にも見える裁判を経て、現在、牢獄に収容されている。連続殺人に見えるこの事件の真実はどこにあるのか? どうして姉妹が殺されねばならなかったのか?

     警察署とは別の民間ビルの一角に設けられたスペイン警察特殊分析班(BAC)。この事件は彼らに委ねられる。

     素晴らしいのは5人

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    2021年05月30日
  • 花嫁殺し

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    カルメン・モラ『花嫁殺し』ハーパーBOOKS。

    珍しいスペイン・ミステリー。3部作で構成されるスペイン警察・特殊分析班シリーズの第1弾。覆面作家のデビュー作にしてベストセラーらしい。

    海外ミステリーを読むのには元々時間を要するのだが、面白い海外ミステリーとなると、さらに時間を掛けてじっくり読みたいものだ。本作を読むのに要した時間は足掛け3日間。それだけ面白く、魅力のある作品だったのだ。作中に描かれる2つの猟奇殺人事件と真犯人の謎という面白さに加え、主人公のエレナの悲しい過去と特殊分析班を率いる逞しい女性像が姫川玲子に重なるところが、魅力ある作品に仕上がっている理由なのかも知れない。

    不気

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    2021年04月24日
  • 秘儀(下)(新潮文庫)

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    ネタバレ

    自らの命を永らえさせる為に生贄を捧げ続ける〈教団〉とそれに利用され使い潰される〈霊媒〉という構図と、〈教団〉から子を守ろうとする父、という構図が重層的になった壮大なダークミステリーとして、非常に満足のいく終わり方だった

    上巻における主人公が退場したことで、今巻は誰が主人公なんだろうと開いたらロサリオだったことには驚いた
    それぞれの部ごとに視点が異なっているため、同じ事件に対して多角的に描写され、それに伴い〈教団〉の内部事情やアルゼンチンの政治状況など、これでもかと言うくらいに物語を膨らませることで、終盤にかけてどういう風に終わるのかとページをめくる手が止まらなかった

    上巻がフアンvs〈教団

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    2025年11月10日
  • 秘儀(上)(新潮文庫)

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    ネタバレ

    謎の儀式を行い〈闇〉と接触することを本懐とする〈教団〉、そして〈闇〉を呼び出すことが出来る力をもつばかりに〈教団〉に振り回される霊媒のフアンとその息子ガスパルを主軸として展開する、この世の暗い部分を全て詰め込んだかのような作品

    序盤に二人で旅行に出かけるシーンは、何か違和感がありつつも和やかな感じだったのに、タリに会ってからはエログロのオンパレードという具合でびっくりした
    フアンがガスパルのことを愛しているのはよく分かるんだけど、病気で今にも死にそうだという焦燥感や敵の強大さが起因してるのか、愛情表現が大変にバグってる
    しかもこの小説、敵の本拠地に行っても一部を除いてエグい描写ないのに、ホー

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    2025年10月19日
  • なりすまし――正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験

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    この本は閉鎖病棟の実験による不完全な論文が影響を与えた精神医療改革の光と影を追い続けた。
    著者は精神医療の傲慢さやいい加減さを認めつつも、なお精神医療が発展して、将来信頼にこたえてくれると信じている。
    精神科病院の実態だが、まるで刑務所の囚人のような閉鎖病棟に普通の人が入っても、出た時には精神病になっているんじゃないかというくらい、ヤバい場所だとわかる内容。
    一方で、社会心理学から精神科病院の質を調べるために偽装患者として潜入することは、不要な治療、不要な検査を受けたりしてしまうという点で、非常にリスクがあると感じた。
    詳細はぜひ本書で確認してほしい。
    映画を見ているようなスリリングな展開力で

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    2025年08月18日
  • 救出の距離

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    不穏さと曖昧さが漂う不条理ホラー。真相に近づくラストにもはっきりとした描写はなく、どこに怖さを感じるかは読者に委ねられる。分かりづらい展開なのだがあっという間に読み進めていた。新しいホラーの形ともいえるだろう。

    #日本怪奇幻想読者クラブ

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    2024年11月15日
  • 救出の距離

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    わが子を愛おしく想う母性と社会問題への警告と呪い… アルゼンチンのサスペンスホラー #救出の距離

    ■きっと読みたくなるレビュー
    アルゼンチンのサスペンスホラー、芸術性の高い文芸作品ですね。母娘の絆がメインのお話なんですが、なにやら忌まわしい雰囲気たっぷりで、さらには社会問題への怖い警告も含まれています。

    本作の導入、いきなり意識があるのかないのか、何が起こっているのかさっぱりわからないところから始まる。得体のしれない恐ろしさに包まれながら、ひたすら少年の声との会話を下敷きにしながらストーリーが進行するんです。この二人の語り口調がまるで魔術や呪文のようで、非日常の世界に引きずりこまれていくこ

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    2024年10月21日
  • 兎の島

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    鳥を始末させるために小島に放たれた兎の異様な変容を描く短編の表題作を始めとして、幻想と現実が入り交じった不可思議なシチュエーションの短編が集められた作品集。

    わけのわからなさ、きわめて難解な風景の中から仄見える、現実で抱える恐怖や哀しみが時折スパイスとなって胸に刺さってくる、そんな話が多いように感じました。

    そのわけのわからなさにまったく感応できないままのお話もあったのですが、その置いてけぼり感というか、何を見せられたのだろうという茫然とした感覚もまた面白いものだな、とも自分は感じられました。なかなか不思議な後味のある短編集でした。

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    2024年10月14日
  • 寝煙草の危険

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    現代を生きる若者たちを主に主人公に据えて、昔ながらの民間伝承や信仰を織り込み、現代の社会問題を絡めて描き出した味わい深いホラー短編集。不条理さと現実の不合理さが同時に味わえる、複雑な面白味のある話を楽しめました。

    この短編集の中では、「戻ってくる子供たち」が一番印象的でした。一見現代の社会問題を追っているような筋書きから、次第に不条理な不気味さが表に出てきて、現実を凌駕していく。けれどその不条理さは、辛く酷い現実を今生きている少年少女たちのどこへも表出しない辛みの別側面でもあるようで、けして絵空事だと軽んじて受け止められない重みを感じました。

    多くの短編でこの短編のように貧困などに晒されて

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    2024年07月15日
  • 怪物のゲーム 下

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    〈怪物〉を名乗る人物に娘を誘拐され、3つの課題をやり遂げなければ娘に同じことをした末に殺すと脅されるディエゴ。それは彼が書いた小説を模倣していて‥‥。

    課題の内容がおぞましくて気持ち悪くて、早く解決して欲しいという思いで一気読み。『クリミナルマインド』みたいだけど、警察がそこまで優秀じゃない。ディエゴは被害者なんだけど、なんとなくあんまり好きになれないキャラ。妻のラウラも。終盤はなかなか引っ張るけど、面白かった。

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    2024年05月09日
  • 寝煙草の危険

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    ・とっつきにくいかな?と思っていた読む前の印象と違い全然読みやすかった。訳が良い?のか?言葉も現代的なスラングも使われている所もあり、面白かった。
    ・全体的に覆われる不穏感。ラテンアメリカ文学的は不思議さみたいのも感じるけど、何となく思っていたのは映画のJホラー的な不穏さ。何もまだ起こってないのに何かが進行している様なドキドキ。日本的な環境とは明らかに違う場所での話なのにスッと入っていけるのは、その感覚の既視感があったから、かな?

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    2023年09月23日
  • 幻覚剤は役に立つのか

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    面白い。しかし脳に作用する物質でスピリチュアルな悟りを得るのが好きだねアメリカ人は。それのどこが悟りなのか。精神が物質の結果でしかないこの上ない証拠のように思うが。

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    2023年08月15日
  • 兎の島

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    装丁が綺麗で手に取ったもの。
    11の短編。タイトルの兎の島は、川の中の小島でウサギを飼ったところ、兎が想定外の行動を始める話。主人公がいなくなると、ウサギも死んで何もなかったかのようになる。
    「ホテル最上階の部屋は」、住み込み料理人が、ホテルの部屋で他人の見る夢を見始める。
    他人が見ている夢といいつつ、他人の考えを夢想しているだけでもあり、精神病名がつきそうな症状とも思える。
    「メモリアル」は死んだ母のアカウントが自分のFacebookに友達申請される話。ホラーというよりも、母を亡くした喪失感と立ち直りの話のようである。

    全編精神疾患の症状を、語るようでもある。
    スペインの持つイメージともか

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    2023年05月27日
  • 兎の島

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    全く、スペイン語圏ホラーに触れるのは初めて。新鮮という感触より、同じ 人間同士という事でのカルチャーショックを愉しんだ。

    妄想、夢想、無気味、居心地悪さ、嫌悪的感触や臭気・・は人間なら同様に感じるはず~言語は異なっても。

    11の短編はいずれ劣らぬ秀作。
    個人的には「兎の島」のシュール度が圧巻。
    肉しか食べなくなっていた兎が、発端を作った人間が消えると死滅、あとは綺麗な白い毛布となって(死体の形状から見ると)島を覆っているというラスト観が寒い。

    「地獄洋式建築に関する覚書」に登場する大兄~語り手の自分の在り様がそもそも精神的なので言うこと見る事の確かさが危ういまま、最後は霧の中に消える。司

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    2022年12月14日
  • なりすまし――正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験

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    著者には脳炎を精神病と誤診された過去がある。危うく精神病棟に移送されかけたが、別の医師が脳炎を見抜き、事なきを得た。なぜ簡単に誤診が起きてしまうのか? 精神病とはいったい何なのか?  著者は自身の体験から、こう問い続けた。脳疾患と精神疾患の境目について調べていく内に、著者がたどり着いたのは「ローゼンハン実験」だった。

    ローゼンハンと実験協力者は、統合失調症の症状を偽って訴え、精神病棟への入院を果たした。入院後、自分たちの症状が「回復」するまでの経緯と精神病棟の現場における実態を詳細に記録した。研究成果は「狂気の場所で正気でいること」という論文に結実し、権威ある学術誌である『サイエンス』誌に掲

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    2022年09月21日
  • なりすまし――正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験

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    1973年に行われた精神病院潜入実験「ローゼンハン実験」の真相を探求した刺激的なノンフィクションでした。本文にもある「もし正気と狂気が存在するなら、違いはどこにあるのか?」が本書のテーマでしょうか。結末がやや曖昧でした。偽患者として精神病院に潜入する体験談が(真偽はともかく)スリリングでした。

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    2022年08月25日