宮﨑真紀のレビュー一覧
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瀕死の女性がそこに至るまでの出来事を朦朧としながら話す形で進む本書。構成の新しさと、明確に書かれないままなのに引き込み続ける文章に驚きました。
作中何度も登場する「救出の距離」という言葉はかなり女性的な感覚かもしれず、根拠はないが当たっている「ピンときた」の表現の最高峰だと思います。いい意味で女性的な感覚に溢れている一方、読み終わってから冷静に考えてみれば、イラつく態度を取っていた夫たちにも正しさがあるな、と思えるところもまた面白さがあります。説明が難しいので、とりあえず読んで!となってしまう本です。
あとがきがかなり理解を進めてくれますので、意味がわからず閉じそうになった際にはぜひあとがきを。 -
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ネタバレ土地に根ざした恐怖は、その国の文化や社会情勢や歴史と分かち難く結びついていて、そこから逃げることはできない。私はこれをフィクションとして怖がることができるし、物語である以上それは正しいんだろうけれど、呪いや幽霊や異常な現象の背後にある現実が身近にある人たちが読んだ時の恐怖は私では想像も及ばないものがあるのだろう。その隣り合わせの恐怖をほんの端っこだけでも理解するのに、この物語たちはうってつけだと思う。
・ちっちゃな天使を掘り返す
アンへリータ、ビジュアルが悪夢的なのにどこか愛らしい。主人公のやれやれ感も合わさってどこか楽しささえ感じる。ところで、別に幼少期のことだけが原因ではないよね、主人公の元にアンへリータが来た理由は。
・遊水池の聖母
邪神〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!邪神邪神邪神〜〜〜!!!
思い上がった若者から見る思い上がった若者の描写が良すぎる。いやそんなことで、と言いたいところだけど、でも熱中している時はそれが世界の全てだもんな。わかるよ。綺麗さっぱり忘れられるのかなこの子達は。
・ショッピングカート
ラストの解釈がちょっと難しくて、あれは、母親のいう「あの文無しの年寄り、くそったれよ」って、うんち爺のこと?フアンチョのこと?
みんながみんなより弱い立場の人たちを馬鹿にしている。呪いなんてなくたって、ゆるやかにこういうことが起きたんだろうな。誰もが同じように不幸になった時、奪い合うんだこの人たちは。
・井戸
ジャパニーズ因習ホラーのような味わいもあるなこれ。知らずにいる権利をすら奪ったという点において、姉はマジで最悪です。自分の慰みのために最後に残った妹の拠り所すら奪う権利がお前にあるのかよ〜〜〜
・悲しみの大通り
嗅覚にくるタイプの怖さが苦手なのかもしれず、えらい怖かった。臭いの記憶はいつまでも残るよね。忘れるな、忘れるなっていう声まで聞こえてきそうで辛い。その土地に住む人間がどう歩んできたか知らないまま楽しむこと、過去を何もなかったことにすること。どっちも最悪だけど、だからって何ができるんだ?とも思う。
・展望塔
視点が気持ちわるくて好き。
同じ悲しみ、あるいは苦しみをもつ人間じゃなければいけないんだとしたら、未来永劫ここには不幸しかないじゃない。
繰り返しが続くだけ。嫌だな。
・どこにあるの、心臓
うわぁ〜〜〜〜。欲しいものが手に入っても入らなくても、到達してしまった人間は壊れてしまうの?いやでもここまできたらいっそ美しささえ感じるな。その自己弁護も含めて。
あと私は心臓が好き。
・肉
やった!!!!!やったぜ!!!!
対象人物を物理的に取り込むことでその人物に近づこうとするタイプのカニバ!だ!!!
カルト的な人気っていうだけでは説明がつかない何かが生まれていく悍ましさは同時にやたらと高潔なものに見える。不思議。
・誕生会でも洗礼式でもなく
このパターンのタイプの悪魔憑き、よく見るけどこれはどうかな、実際に悪魔の仕業だと思いたい。この両親のまるで駄目な対応を見るに、そうじゃない場合もあり得る気もするけど、どちらにしても娘の証言云々はともかく苦しみは本物であることを受け入れて接することができない時点で何もかもおしまいだ。
・戻ってくる子供たち
怖い。一番怖い。途中まで完全に油断しており、社会問題の話だなぁと思いながら読んでいた。基本的にはそうなんだけど、中盤以降の怖さはちょっと尋常ではない。何かの器が溢れてしまったのだという認識は合っているのかもしれない。
・寝煙草の危険
そんなものより倦むべきものが多すぎるよね世の中は。心の安らぎと死の恐怖を天秤にかけて、手近な安寧をとりたい気持ちはわかる。それがたとえ死を招く結果になったとしても。
・私たちが死者と話していたとき
身近に行方不明者が多すぎる。そうじゃない人間が不興を買うようなことが「あたりまえ」なのが一番怖い。
コックリさんはどこの国でもやっぱり人気なんだろうけど、ことこの物語では出てくる霊に人格がありすぎる。方向性が違う怖さだよこれは。 -
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ネタバレサマンタ・シュウェブリンの邦訳三作目。国書刊行会のスパニッシュ・ホラー文芸シリーズとしても三作目。
病院のベッドで横たわる女性と、少年との会話劇。どうやら少年は、女性に過去を思い出させ、何かのターニングポイントを見つけたいようで…
中編程度の長さで、サクッと読める。
全編に漂う不安感とむず痒さは、まるで虫が体を這うよう。そして地の文がなく二人の会話だけで話が進むため、熱にうなされるような、奇妙な酩酊感を味わうことができる。
題の「救出の距離」とは、母親が自分の子供の危機に対して、すぐに駆けつけることができる距離。このことの説明と、子供が遊ぶ描写が繰り返されることにより、子供の身に何か起こるのではないかという不安感が拭えないまま読み進めることになる。そこからのラストを是非、堪能して欲しい。
ページの割に強気な価格設定だが、相変わらず見惚れるほどの装丁で。次作も予告されているので、楽しみにしている。 -
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読んでよかった。そして、どこかで見かけた本のような気がするが……思い出せない。ネットだったろうか。新聞の書評だったろうか。どちらで見かけていてもおかしくはないが、思い出せない。
『女性の発言がどれだけ公の場から排除されてきたか』という事が書かれている。
講演の内容を本にしてあるので、読みやすい。ただ、知らない物語(神話)について知っている前提で書かれているところもあるのでそれについては、自力で調べるしかない。
それらを抜いても、伝えたい事はわかる。繰り返し「女性の発言がどう排除されてきたか』『女性の発言はどう受け止められてきたか』『女性はどのような時にだけ発言が認められたか』が書かれている。
第一部『女が発言すること』
『オデュッセイア』の中で「黙れ、女は人前で発言してはならぬ」というシーンからの考察から書かれている。西欧文学には詳しくないが、最初は丁寧に説明が入っているので、入りやすい。古代ギリシア・ローマ時代から女性は公の場での発言が認められてなかった事が説明されていく。
女性の発言が認められていたのは2つだけ。
『死の直前の発言』と『限定的な範囲内の利益のための発言』
少し前に『米騒動』の映画があって、それは女性たちから始まったと言われているけど。
これも『家族が食べる米すらない』というとても身近で【限定的な範囲の利益】の発言だな……と思った。これも別に女性の発言が通ったわけではなくて、切実な日常の訴えをしたのがたまたま女性でその影響が男性にも及ぶものだったから通じただけかもしれない。と、本を読んで思ってしまった。
本に戻る。
『変身物語』では『レイプされた女性が告発をしようとするのを防ぐために、レイプ魔は舌を切った』という物語があると言う話が出てくる。ここまで来ると本のタイトルの「舌を抜かれる女たち」がここから来ている事が分かる。
女性の発言者たちは、両性有具者とされたり変人とされたりしている。
また、低い声は勇敢さを高い声は臆病さを表してきたとも示している。ここからは、様々な例を引き合いにして女性の発言がどのように見られてきたかという事が書かれていく。
ネット上でのあれこれも混ぜて、女性の発言を奪い、茶化し、脅迫してくる男性たちの姿が描かれている。
ただしそれは、男性だけではなく女性自身も女性の発言に対して同じような信用が出来ないイメージを抱いているという……事でもある。
一部を読んでもまだ『どうしたらいいか』は分からないが、うっすらと形が見えてきたような気がする。
第二部『女がパワーを持つということ』
「フェミジニア――女だけのユートピア』著:シャーロット・パーキンス・ギルマンの物語についての考察から始まっている。
それは女性だけの国に男性がやって来て、国が壊れていくという物語。
女性が女性の力を信じていないという話。
女性が大学教授を想像するとき、女性を想像する事は難しい。その地位にいる女性が少ないからや固定観念が邪魔をするから。
女性が発言をする時は男性のような格好になり、男性のように声を低くする。世界の『女性リーダー』たちはそうしている。
この辺りの例では『ヒラリー・クリントン』や『アンゲラ・メルケル』などが出てくる。
けど、私はエジプトの『ハトシェプスト』を思い出してしまった。詳しいわけではないケド、以前テレビで見ていた時に『男性のような髭』をつけていたとあったから。他にも男性のように振る舞ってエジプトを統治していたと。これもたぶん、『女性は男性のように振る舞わなければ統治者(リーダー)になれない』ということなのかなと。
本の話に戻る。
他にも女性だけの部族『アマゾネス』の話が載っていた。これが事実かそうでないのかはよく分からなかったが、現代ではほぼ否定されて想像の産物という事らしい。アマゾネスも男のように振る舞う女たちの部族で、『男性のように振る舞わなければ統治は出来ない』という話ではないかというのは、なるほどと思えた。
『ブラック・ライヴズ・マター』が三人の女性から始まった。と言うのも初めて知った。女性たちのパワーはいろんな形で新しく動いている。でもその動きは、小さい。
最後に最初の『フェミジニア』の話に戻って、三人の男のうちの一人との間に男の子が生まれた……という話で物語は終わっているとなっている。
強固な『男性の統治者』というイメージは覆りそうにないという事かなと思う。
この後は『あとがき』が続いている。
内容は『女性の失敗は徹底的に攻撃される』という話。
これを読みながら、確か呪術廻戦で『女の子は完璧でなくてはいけないの』……だったかな。そんなセリフがあったなぁと思った。
失敗が許されないというのは、私も感じる。でも同時に、男たちは『女は泣けば済むと思っている』という風にも思っているのを知っている。
さらに『#Me Too』の事が書かれていた。
ここで驚いたのは、レイプ被害の告白をしていることだ。
それについて、当初は『レイプではない。誘惑したのは私の方』とすら語っていたという事。
理由は「疲れていて、拒否をしなかったから」
でもそれを話して聞かせた人の中には『受け身の動詞ばかり使っているのだから、あなたは完全に無力だった。だから、やっぱりレイプよ』と指摘した。とある。
これ、それを言えるのはすごいなと思ってしまう。
男だけではなく女性自身すらも『拒否しなかったならば同意』と思ってしまう価値観の中で、『受け身ばかり』『無力だったからレイプ』と言えるのは『合意のない性行為がレイプである』という認識がなければ言えない。
さらにこういう性行為をレイプと言ったところで『でも拒否しなかったんだろ』という人間たちが一定数いる。
自分自身ですら『レイプ』と認めたくなくて、「自分で誘った」などと思いこもうとする。
彼女自身はトラウマと言えるようなトラウマは見当たらないが、それでも「怒り」はあると。つまり、やりたくてやったわけではない。という事。
レイプの告白とそれについてのあれこれの後は、『男たちはどう思っているのか』についての考えが書かれている。実際にどう思っているのかは分からない。本には「彼女がやりたがっていた」「流れに乗っただけ」と言い訳をしているのでは?と書かれている。
最後に『今こそきっぱり言いましょう、「彼女はちっともやりたがっていなかった!」とある。男たちの物語を変えるには『訴え続ける』しかない。
男……と言ってしまうと広すぎるが、一部の男たちが勝手な妄想の中で生きている。それが現実の女性に加害を行うという事実はある。
という本だった。
読んでみて良かった。無駄に長い感想になってしまった。
そして、訳者のあとがきで本の全てがまとめられている。
上記の私の感想を読むより、『訳者あとがき』を読むのをお勧めする。
『語る事がパワーになる』
疑問を常に持ち続けて、考え続ける大切さ。
最後まで素敵だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレマリアーナ・エンリケスのデビュー作。
国書刊行会のスパニッシュ・ホラーシリーズ第2弾。
幻想味が強いエルビラ・ナバロと違い、純粋ホラーな作風。人間の怖さというより、呪術やゾンビ、幽霊などの怖さを描いた作品が多い。
わかりやすくホラーな分、読みやすかった。そしてエゲツない表現は共通。ある意味リアルなのだろうか。。。
(本体が高いこともあり)高級チョコのような味わい方で楽しませてもらった。第3弾が待ちきれない。
○ちっちゃな天使を掘り返す
ちっちゃな天使の正体がエグい。そして描写もグロい。だけどユーモアあふれるゴーストストーリーなのが不思議。
○湧水池の聖母
気に食わない先輩と狙っていた男子が付き合い始め、全然面白くない女子グループの話。全員肉食系。あと呪い方法がエグい。
○ショッピングカート ★おすすめ
追い出した浮浪者が置いていったショッピングカートから呪いが湧き出て、その区画の住人に不幸が襲いかかる話。悲惨。サラッと悲惨。
最後は誰の?という疑問と、ママも同列になったのでは、と思わせる終わり方。
○井戸 ★おすすめ
子供の頃、呪い師の家に行った時から、何をするのも不安と恐怖でいっぱいになった女の子の話。救いもなく酷い話。
○悲しみの大通り
友人の家がある通りの匂いが耐えきれない。その昔は治安の悪い、モラルがない通りだったが、今はきれいになっている。だけど上部だけで、死んだ子供たちの霊が徘徊している。子供たちの霊がエグい。
○展望塔
古いホテルが舞台。恋人に捨てられたが、まだ連絡を待っている女と、それを見守るホテルの幽霊の話。思ったよりテンプレなゴーストストーリーか。
○どこにあるの、心臓 ★おすすめ
もうサイコパス。変態のサイコパス。変態しかいない。途中で着地点は読めるけど、それでもやっぱりキツい。
○肉 ★おすすめ
うん、ヤバい。短めな短編だが、「どこにあるの、心臓」を軽く超える狂気だった。二人の少女の究極のファン行為。
○誕生会でも洗礼式でもなく
誕生会でも洗礼式でもなく、そういった普通のイベント以外での撮影を専門とする男が出会った少女の話。エクソシストか?それとも虚偽か?どうやら前作にも関連するキャラが出ていたようで。
○戻ってくる子供たち ★おすすめ
少し長めの短編。行方不明になった少年少女が、行方不明になった時のまま戻ってくる話。チェンジリング。じわじわと蝕まれていく、ねちっこい怖さが良い。
○寝煙草の危険
表題作。火に誘われる女の話。不感症?自殺願望?短いながらも、この短編集の性格をギュッと詰めた話だと感じた。
○わたしたちが死者と話していたとき
ウィジャボードで行方不明者と会話をする5人の少女の話。これも、割とテンプレートなゴーストストーリー。特に日本はコックリさんがあるから、見たことがあるストーリー展開かも。 -
Posted by ブクログ
ネタバレエルビラ・ナバロの短編集。スパニッシュ・ホラーと銘打ってあるが、どちらかというと幻想文学?
日常の何気ないことが、非常にむず痒く気持ち悪く描写されることが多く。嗅覚、触覚を使い読書をする感覚。良かった。
○ヘラルドの手紙
付き合っている男性との別れを決意した女性の心理を描いた短編。現実なのか、この女性の妄想なのか。凄く曖昧な、真ん中はハッキリしてるけど、周辺がボヤけているような。なんとも言えない読後感。シャワー室の虫の描写が気持ち悪い。女性の心理を表しているのか、むず痒くなる。
○ストリキニーネ ★おすすめ
最後の一行怖い。耳たぶから肢が生えてくる時点で怖いけど。だんだん、自分の身体が乗っ取られそう。それにしても最後の一行がとんでもなく怖い。
○兎の島 ★おすすめ
表題作。一見愛らしい兎の、醜悪な行動。本当に気持ち悪い。一つ一つの描写が気持ち悪い。これほど気持ち悪いって感想しか湧かないのが凄い。
○後戻り
衝撃の一行(おばあちゃん)。二度見した。そしてその後の思春期ならではのいじめ。仲良くしていた子が急にそっぽ向くとか。おばあちゃん以外は普通の短編。おばあちゃん以外は。
○パリ近郊
これまたよくわからない読後感。不思議な世界観。滲み出る不安感というか、何もないのに焦っている感覚がある小説。
○ミオトラグス
前半と中盤以降のつながりが全くわからなかった。小山羊の肉じゃないと言ってクレームをつける女と、絶滅したヤギ、ミオトラグスをもう一度見たいと探す変態貴族。時代も違うようで、本当によくわからない短編だった。
○冥界様式建築に関する覚書
発狂した兄と建築を学ぶ弟の話。霧がかったように描写が、背景がボヤける。不思議な感覚の短編。
○最上階の部屋
他人の夢を見てしまう料理人の話。住み込みでホテルの最上階をあてがわれており、宿泊客や乗務員の夢を受信してしまう。段々と正気ではいられなくなり、最後は建立されたばかりの橋梁の下で100万人の夢を見るというとんでもない話に。他の話よりわかりやすいかも。
○メモリアル
死んだ母からFacebookにメッセージが届く。イタズラか、なんなのか。読みやすく、すんなりと情景は理解できる。最後の手記も良い。
○歯茎 ★おすすめ
もう結婚式の話をしたくないカップルが結婚式の偽装、偽の新婚旅行を行う話。結婚に向けた葛藤が、偽の夫の歯茎の腫れと共に示される。彼女の不安が、偽の夫の臭い息と共に深まっていく感じがシュール。
○占い師
未来を予言するメールが勝手に届く話。自身の不安を他人が形にすると、あたかも予言に思えるだろうなぁと。 -
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★5 弱者の現実と奈落の底からの叫び声が聞こえる… アルゼンチン作家のホラー短編集 #寝煙草の危険
■きっと読みたくなるレビュー
アルゼンチンの作家、掌編・短編からなるホラー作品集。良い作品なので、しっかりと読みましょう。
テイストとしては文芸作品ですが、痛烈で狂気な描写が多く、アルゼンチンの歴史や現実も克明に記された内容。正直、治安と経済状況がいい日本に生まれたことを安堵してしまいました。
本作はあからさまな表現で豊富で、めっちゃメッセージ性が強い。そして気がついたら読み切ってしまうほど、熱中度が半端ないです。読めば読むほど味わい深く、すっかりエンリケスの沼にはまってしまいました。
〇ちっちゃな天使を掘り返す
可愛いんだけど怖いという矛盾に包まれる。哀愁も漂う美しい作品。
〇湧水池の聖母
惜しげもなく表現された女の嫉妬と業。冷酷さが怖すぎ。
〇ショッピングカート
まさに絶望への階段…薄暗く不安定な恐怖を体験できる。
〇井戸【おススメ】
魂と狂気、井戸の底に見えたものは… 不安に包まれる少女の精神描写が力強く、心臓がつぶされる感覚になる。
〇悲しみの大通り
書かれている一文一文、何もかもが受け入れがたい。唯一救われるのは、友人の思いやりだけ。
〇展望塔
いわゆるこんな症状に侵されている人間の深淵を垣間見る。絶望すら生ぬるく、生気が全く感じられない。
〇どこにあるの、心臓【おススメ】
変態。あまりにも純粋すぎる変態。すべての描写がストレートで潔く、ラストも大好きな作品。
〇肉
アルゼンチンの推し燃ゆ+狂気。彼女たちがこうならないための手段はなかったのだろうか。
〇誕生会でも洗礼式でもなく
小児性愛の変態性すら霞む異常性、1ミリも理解できない。穢らわしい表現が読者の精神を蝕んでいく。
〇戻ってくる子供たち【おススメ】
本書の中では比較的長めの短編。全編にわたって現実から目をそむけたくなる。アルゼンチンの非業な歴史、辛辣な社会を感じさせる。意外な展開から結局どういうことなのか混乱するが、作者の言いたいことは最後の一文に現れている。
〇寝煙草の危険
弱弱しい生命の灯、それでも吸い寄せられてしまう光。虫けら同然の無為の人生に包まれる。
〇わたしたちが死者と話していたとき
交霊術の恐ろしい顛末。ウィジャボードからのメッセージが怖すぎる。これもアルゼンチンの悲しい歴史を感じさせる作品。
■きっと共感できる書評
本作各編の主人公は、子ども、経済的に恵まれない人、病気の患っている人々など社会的弱者が多い。彼らの現実と奈落の底から聞こえる叫び声が、読者を追い込んでいくのです。
ある程度恵まれた国で生活している私たち。保身のために、彼らから目を背けてしまうますが、我々は手を差し伸べる勇気を持たければなりませんね。 -
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幻覚剤(サイケディリクス)についての概念が一変する内容。
LSD,サイロシビン、MDMA、ペヨーテなどがその範疇に入る。
幻覚剤には乱用に至るとか依存性が強くあるなどと我々は認識しているが、それは無いのである。
幻覚剤を活用することで「うつ病」や「依存病=アルコール依存など」の治療そしてがんの末期患者の恐怖を取り除くなど「精神疾患」全般の治療に役立つとの認識が世界では高まってきている(日本は希薄)ということが詳しく説かれている。
ヒトの脳の構造を解き明かすルートとしも幻覚剤の研究は大きな糸口を得ることにつながる可能性が強いなど。
この本は、有益で極めておもしろい。 -
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ローゼンハンの偽精神患者の実験は広く知られている。しかし、そのニセ患者が自分と院生以外はいたかどうかわからない、という結論である。サイエンスに掲載された論文とともにこれを読むことがいいと思われる。ただし、400ページの本文のうち250ページは偽精神患者実験の説明であり、残り150ページがそのニセ患者の真偽をめぐる話である。したがって、この本を読むだけでローゼンハンの実験の説明になっている。
シンバルドや電気ショックの実験についても、それぞれ実験の過剰操作としての電気ショックの強要や、囚人役の過激な演技が記載されているが、これをもっとで説明している本が翻訳で必要であろう。 -
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興味深い!マリファナアヘンコカイン覚醒剤等とは違いLSDは依存性ゼロ、脳の知覚機能へ一時的に「サイケデリック」に作用するだけで、LSDを服用した人はみな救済を体験し、サイケ体験はターミナルケアや精神疾患の治療に役立つ、というもの。
治療薬として効果のある幻覚剤の成分構成と脳機能との化学反応など専門的な記述もあるけど全体としてちゃんと読める。そしてここでも邦題より原題(How to chage your mind) のほうが内容に沿っているんだよな。。だって最初から「役に立つ」前提で話が進むんでるしさ。。。まあこのタイトルだとスピリチュアルの棚に並びそうだけども。。 -
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ネタバレ結婚式を控えた花嫁が無惨な方法で殺害された。
8年前にも同様の事件があったが犯人は服役中。これは連続殺人なのか、模倣犯が現れたのか?
捜査にあたる特殊分析班のエレナと所轄のサラテ、エレナのチームの個性的な面々が魅力的。
エレナの背負う苦悩も徐々に明らかになっていき、クライマックスへ!
クライマックスに向けて盛り上がり重視で、少し疑問やツッコミどころもありつつ、最後まで物語を楽しみました。
主要登場人物一人一人が、モブ的な人がいないというか、それぞれでスピンオフ書けそうな、物語外でもちゃんと生活がある感じに書かれていてそこが好き。
それと翻訳に、いわゆる“女言葉”が使われてない事に途中で気がついたんだけど、そこも違和感に邪魔されず良いなぁと思いました。
事件は解決するも、ええっラストそこで終わるの⁈という衝撃で続きが気になります。三部作で、すでに本国では刊行済みらしいので、続編の邦訳をぜひ! -
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★脳を揺さぶる科学と導く人間のノウハウの間★覚醒剤や麻薬、LSDの区別がよく分からないが、LSDやシャーマニズムで使われるマジックマッシュルームのようなものは中毒性はないという。
幻覚剤にはかつて米国の医療分野などできちんとした研究の蓄積があったがサブカルとして広がった反動で抹消されてしまったという歴史、自らによる体験、脳科学の分野からの研究、トリップを生かした終末期や依存症のセラピーと、一人称を交えたノンフィクション。
脳の分析からは、スピリチュアルジャーニーは生活を送るうえで効率化した脳の設定(デフォルトモード)に対しエントロピーを増大させることで、秩序を揺るがせると紹介する。ふだんはつながらない脳の各部分がつながることで、共感覚のような状態が生じる。子どものころの脳の環境にも似ている。それが凝り固まった自我をゆさぶり、超越的な視点を得られるのではないかと指摘する。ただし純粋に科学的な反応として生じるわけではなく、環境やサポートする人、神秘体験中に見たものを整理する振り返りがしっかりしていないと、バッドドリップになる可能性もあるという。
著者が前半でウィリアム・ジェイムズの引用として指摘していたが、神秘体験の特徴は4つのサインがあるという。「言葉にしようがない」「認識的性質(体験を絶対的に確かなものととらえる)」「暫時性(神秘的状態は長続きしないが記憶に残って何度もよみがえる)」「受動(至高の力によってわしずかみされる)」。この理由の説明がなされていたかは結局よく分からなかった。神秘体験は視覚で響いてくるというが、盲目の人にはどう感じるのだろう。
幻覚剤の作用がどこかでインドのヨガなどと通じるのは、神を信じる宗教性と絶対神を持たない人のそもそもの差のようにも思える。本書でも指摘しているように、幻覚剤を使わなくても同じような体験はできるそうだ。しかし日本で医療用として使われる未来は大麻の扱いを考えても遠いだろう。米国での大麻合法化がどういう影響を生んでいるか気になった。 -
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ある意味、完璧と言える構成の傑作だ。冒頭から読者を引きつける、あまりにも奇抜な殺人。マドリードの公園で発見された被害者女性は、頭に三つの小さな穴を開けられ、その中に入れられた蛆たちに脳みそを食われていた。ショッキングだし、その異常さにも程がある。
被害者の姉も、実は類似の手口で七年前に殺害されていた。当時の加害者は杜撰にも見える裁判を経て、現在、牢獄に収容されている。連続殺人に見えるこの事件の真実はどこにあるのか? どうして姉妹が殺されねばならなかったのか?
警察署とは別の民間ビルの一角に設けられたスペイン警察特殊分析班(BAC)。この事件は彼らに委ねられる。
素晴らしいのは5人の個性的なメンバーが魅力的に描き分けられていること。いわゆるキャラが立っている。現地警察から強引に捜査に割り入り捜査班に組み入れてもらった客人刑事アンヘル・サラテの存在感も、メンバーに負けず劣らず強い。何よりも、主役でありチームのリーダーである女性警部エレナ・ブランコの個性は、ひときわ目立つ。
エレナの個性。それは、奇行、酒浸り、男漁り、不眠。それでいて仕事ができる。情熱的ですらある。さらに謎の腹の傷とそれにちなむ隠された過去。シリーズ・ヒロインとしては、最初からやけに謎が多いのである。
一方もう一人目立つ刑事であるサラテは、所轄刑事なのにどうしても捜査権を渡したくなくてこのチームに無理やり割り込んでくるという経緯。気が強く、容赦なく意見を言い、強気の態度を取り、メンバーの一人からは強烈な反感を買う。それにけっこう複雑な性格。
サラテが尊敬する元刑事の老人の存在が物語のギアとなる。7年前の事件の犯人を牢獄にぶち込んだ刑事。しかし、現在は認知症が入っていて言動が少し覚束ないところもあったり。
現在の事件が過去のそれと反響し合い、作中の世界をより深く、複雑に見せている。
言わば犯罪者側も、捜査側も、一筋縄ではゆかないのがこの作品なのだ。スペインという国柄を現わす気候、地理、そしてロマの人々の異文化。それらは確実にこの事件に深い影を落とす。これだから海外ミステリーはやめられない。見たこともない犯罪。日本ではあり得ない人種間ヘイトや、隠れた差別。それらが捜査に影や歪みを与えて来るのである。この捻じれた異種感覚がたまらない。圧倒的な旅情感覚みたいに。
そして何よりも、数回出現するある叙述が、暗示的で、謎で、気になりすぎる。何によってか、誰によってか、何故なのかは不明なまま、小屋に閉じ込められた正体のわからない少年がいる。彼に関する恐怖の叙述が四たびに渡って数ページのみ挿入されているのだ。これが凄絶すぎ、まさに物語全体の緊張感を高めてくれる。
最後に、マドリードを舞台に息をのむ捜査が展開するこのシリーズの圧倒感を是非ともお伝えしておきたい。エンタメとしてもピカイチなのだが、覆面作家による作品とのふれこみ。相当な書き手であることは想像に難くない。ストーリーテリングを楽しみたい作品なのだ。
本作は三部作構成の一作らしいが、訳者のあとがきによれば、以降の翻訳は今現在確定されていないらしい。本書が一人でも多くの読者の眼に触れ、本邦での続編出版に繋がってくれることを読者として願ってやまない。というより、このままでは心情的にどうしても終われないのである。そういう意味でも、一人でも多くの方にお読み頂きたい。応援をどうぞ宜しく願います。 -
Posted by ブクログ
カルメン・モラ『花嫁殺し』ハーパーBOOKS。
珍しいスペイン・ミステリー。3部作で構成されるスペイン警察・特殊分析班シリーズの第1弾。覆面作家のデビュー作にしてベストセラーらしい。
海外ミステリーを読むのには元々時間を要するのだが、面白い海外ミステリーとなると、さらに時間を掛けてじっくり読みたいものだ。本作を読むのに要した時間は足掛け3日間。それだけ面白く、魅力のある作品だったのだ。作中に描かれる2つの猟奇殺人事件と真犯人の謎という面白さに加え、主人公のエレナの悲しい過去と特殊分析班を率いる逞しい女性像が姫川玲子に重なるところが、魅力ある作品に仕上がっている理由なのかも知れない。
不気味な猟奇殺人事件は7年前の事件の模倣か、それとも真犯人が別に居るのか……メインのストーリーの途中、途中に挟み込まれる倉庫に監禁されて必死に生きようとする少年は一体誰なのか……
マドリードの公園で頭蓋骨に穴を開けられ、蛆虫を埋め込まれた結婚を目前に控えた若い女性の遺体が発見される。被害者の女性の姉も7年前に同様の手口で殺害されているが、犯人は逮捕され、収監されていた。難事件のみ扱うスペイン警察の精鋭チーム特殊分析班を率いる警部エレナは仲間と共に事件の捜査にあたるが……
最後に待ち受ける衝撃の描写。第2作の『パープル・ネットワーク(仮題)』へと続くようだ。第3作は『お嬢ちゃん(仮題)』。早く続きが読みたい。
定価1,210円
★★★★★