宮﨑真紀のレビュー一覧

  • 肉は美し

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    面白い SFとかディストピアとかSNSで話題とかどうでもいい評価を拭き取りたくなるくらい ホラー?食肉なんて日常ではないか 肉はうまし

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    2026年09月21日
  • 肉は美し

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    人間以外の動物が謎のウイルスに感染し、肉が食べられなくなった世界。動物性タンパク質を摂取するため、「人肉食」と呼ばれる人間の肉を食べることが合法化されている。

    主人公は食肉処理工場の管理職として働いていたが、人間が人間を食べることが当たり前となったこの世界に、どこか後ろめたさを感じていた。そんな中、家畜化された人間のメスとの出会いをきっかけに、さまざまな葛藤を抱えていく。

    内容は非常にセンシティブでグロテスク。割と耐性があると自負していた私でも、思わず目を背けたくなるような描写が多かった。読むなら、体調の良いときのほうがいいのかもしれない……。

    ただ、単にグロテスクなだけの作品ではなく、読んでいるうちに「人間が動物の肉を食べる」という、現実の食肉文化についても考えさせられた。

    現代社会でも、私たちは動物を家畜化し、食肉として加工して口にしている。立場が人間から動物に置き換わっただけで、果たして何が違うのか。そんなことを考えながら読んでしまった。

    そして何より、ラストがとんでもない展開で、読んでいて思わず声が出てしまった。ここまで読んできたからこその衝撃というか……本当に驚いた。

    グロテスクな描写はかなり強烈だけど、それだけでは終わらず、食べることや命についても考えさせられる作品だった。

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    2026年09月01日
  • 肉は美し

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    ネタバレ

    すごい、、、うわあ、、

    ホラーは苦手なほうで、『食人』と聞いてかなり身構えたけど、“動物感染症により畜肉が食べられなくなった世界”と聞いて、一般社会を生きる人の心にフォーカスされた話かも…と興味が湧いて読んでみた

    本を閉じると頭が痺れるほど残酷な描写もあるけれど、ただの残酷なホラーじゃない。
    変わってしまった世界を生かすための制度と人々の営み、心の葛藤が冷徹な文章の中に見え隠れしていて、読む手が止まらなかった。

    人を食べられるなんて…屠畜なんてありえない…とは読んでいて考えつつ、普段から食べている肉はその過程を経て自分のもとに届いてるんだなと思うと、人間は残酷な生き物だ…ただそれでも肉は美味いんです…

    最後の一文。衝撃。
    『家畜なのに、人間みたいな目をしてた。』

    そうだよ、ここまで人間は家畜に対して、食肉に対して冷徹で割り切った気持ちを抱いているじゃないか、、、

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    2026年08月30日
  • 肉は美し

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    ───彼は、皮肉なものだとつい考える。肉が肉を食うなんて。

    動物の感染症により畜肉が食べられなくなり、人肉食が合法化された近未来を食肉処理工場に勤める男・マルコス視点で描いたディストピア小説

    淡々としていて温度の低い文体がこの物語にあっていて、ストーリーも文章もとても好きだった。
    なんといっても、ラストシーン。鮮烈。大傑作。

    幼い頃わたしは「人間はなんで食べられないんだろう?」とおもっていて、そこからカニバリズム等の話題は未だに好きなのだけれど、これは素晴らしかった。
    屠殺という行為を人間以外の動物から人間に置き換えただけなのにこんなにも異常で歪んだようにみえるのは私が人間だからだし、こんなにも考えされされるのも私がカニバリストでもヴィーガンでもない食肉をする人間だからなのだろう。

    それにしても邦題めちゃくちゃ洒落ててかっこいいよね……

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    2026年08月27日
  • 寝煙草の危険

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    ものすごく久々に海外文学を読んだ…(韓国文学以外で)
    アルゼンチンすごい
    この惨状(貧困、薬物、人身売買、売春、ストリートチルドレン、狂人、暴力、犯罪etc)が本当に街中で起こっているっていうこと自体もすごいし…
    異世界 徹底的に汚く治安の悪いスラム…

    刹那的で、退廃的で、厭世観に満ちた世界
    日本が舞台の物語ではなかなかに表現できるものではない というか存在しない。

    訳者あとがきでのインタビュー紹介に『読者は私の小説を読んだ時、なんでこんなにぶっ飛んだことを書くのかと言うけれど、実はちっとも遠くない』と
    アルゼンチンその他日本ではない国の歴史と現状を知りたい、アップデートしたい

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    2026年08月26日
  • 寝煙草の危険

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    アルゼンチン。ホラー。短編集。
    めっちゃ面白かった。怖いしグロテスクなんだけどどこかに高潔さがあると思う。ゴシック??
    偏執的な妄想にとらわれている人の心理描写がすごい迫力で取り込まれそうになる。若い時に読んでいたらまずかったかもしれない…。

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    2026年08月19日
  • 肉は美し

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    感情が・・もう最後の衝撃で全部吹っ飛んだ。人肉食が合法化した世界。こんな未来が来ないとは言い切れないからなおさら怖い。食べるために製造された人間が解体される描写が淡々と続くけど、今でも牛や豚などに対して同じようにしているわけで、食糧危機がいよいよやってきたらこの世界が現実になるんだろうと簡単に想像できることがまた怖かった。

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    2026年07月18日
  • 肉は美し

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    人間が食料にされる設定って、「食糧人類」とか「狂鬼降臨」を思い出すんですが、こちら2作は、今現在自分が生きている倫理観を崩すことなく、奇想天外なフィクションとして読むことが出来きましたが、この小説だと、食人が当たり前で、食料とされる人(頭)は人間ではないからどう扱っても良い、という考えが当たり前として話が進む。
    この両者の違いに思いっきり脳がバグるというか、理解するのを本能で拒否するというかなので、中々にメンタル削られました。
    各章が数ページの短さだったのが本当にありがたかったです。
    動物すべてが憎しみの対象となっているのも結構しんどかったなあ。犬が殺される描写はもうすっ飛ばしました。

    この物語が酷く不穏に感じるもう一つの理由としては、世界観が決して絵空事ではない気がするからかなと。
    食人制度導入直後にあった罪悪感や嫌悪感があっという間に消え去ってしまうところとか、みんな食べてるからいいよね!的な流されっぷりとか。
    食人制度ではないけれど、例えばナチスの時代とかルワンダの大虐殺とか、今でいうとガザ侵攻とか。
    正しいという理由付けがあれば、人間何でもしちゃうので、ありえないような極端な状況になろうと現実になってしまうことを知っているだけに、フィクションだと思えないところがすごく怖い。

    食用の人(頭)が加工される過程を懇切丁寧に描写していてるところは、映画「ホステル」を思い出しましたが、
    映像化したら、ゴア描写は多分こっちの勝ちじゃないかな(笑)
    ただこれ人間だからグロい気がするだけで、牛豚鳥さんも同じように殺されているわけだから…と思うと、そうグロに感じないところは、己の感覚も主人公たちとあまり変わらないのかしら、とも思ったり。
    (でも動物の断末魔を聞いた後はしばらくはもの食えないですけど)
    とはいえお肉大好きなのは変わらないと思うので、せめて死んでくれた牛さん豚さん鳥さんのために、残さず美味しく頂かせてもらいます。

    そういえば、共食いが禁じられているのは倫理だけの問題じゃなくて病理的にも何が起きるかわからないからなのでは?と思うので、いずれ狂牛病のような予想外の疾患が起きたりする→食人を天罰だと思う人が出てくる→容認派と反対派で対立してやがて戦争勃発→結局人類滅亡的な展開もありなのかなぁ、などと勝手に思ったりしつつ読んでいました。

    強烈なパンチの効いた小説なので、読む人は選ぶと思いますが、個人的には色々な意味で凄い満足度高いです。
    ただ最後まで鬱々した展開なので、メンタル弱っている時には向かないかと思います。
    休息挟まないと本のパワーに負けちゃいそうだったので、お口直しに小川洋子さんの「人質の朗読会」を並行して読んでました。
    そのくらい重量級の本だと思います。

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    2026年01月13日
  • 肉は美し

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    装丁の鮮やかさに惹かれて購入。内容も素晴らしかった。実際に人肉を食べなければいけないことになったら、自分はどうするのだろう…。生きるために目を逸らしてでも食べるんだろうな…。衝撃のラストに最後の最後まで引き込まれました。

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    2026年01月04日
  • 肉は美し

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    すごかった。問題作と言われるのがよく分かった。
    ちょっと違うかもしれないけど、ドラマ「ハンニバル」を連想した。
    あのシリーズは一部の人たちの嗜好だけど、この本の世界は肉といえば人肉。食べる肉がもれなく人なのだ。
    主人公の最後の行動がひどい。利己的で嫌で、人間くさい。

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    2025年12月27日
  • 秘儀(上)(新潮文庫)

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    ネタバレ

    物語の舞台は、1960年代から90年代にかけてのアルゼンチン。当時の社会状況を色濃く映し出したゴシックホラー。読み始めは全体像がつかみにくく戸惑ったけれど、読み進めるうちに断片がつながり、気づけば深く物語の中に引き込まれていた。教団をめぐる人物関係は複雑で少し覚えづらく、家系図を作って整理すると理解しやすかった(家系図を作ったのは『百年の孤独』以来かも)。
    フアンと教団に関わるパートは不気味さと恐怖が強く、一方でガスパルと友人たちの場面にはYA文学のような瑞々しさがあり、その対比も印象的。フアンがガスパルを傷つけてしまう場面は胸が痛み、読んでいてつらくなった。普段あまり手に取らないジャンルだけど、予想以上に面白く、すっかりハマっている。下巻を読むのが楽しみ!

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    2025年12月20日
  • 肉は美し

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    ネタバレ

    おもしろかった。
    とんでもなかった。
    ラストがとんでもなかった。
    ここからは個人的な考察になるが、主人公はジャスミンに服を着せたり、テレビを見せたりして一見、本物の人間のように扱っているが、それと並行してかれがペットに少し異常とも言えるような愛情を持っていたことが描かれている。
    彼は、彼女を最初からペットとして、いや、もしかしたら自分の子供を産ませるだけの道具としてしかみていなかったかもしれない。
    私たちは、常に動物などに対してひどいことをしているので、もしいきなり宇宙人とかに家畜にされてもなんも言えない気がしました。
    妹との会話が印象に残りました。
    また読みたいです。

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    2025年12月20日
  • 肉は美し

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    肉は美し。あとがきにも記載があったが皮肉のよく聞いた題名だと思った。
    有名な映画にもあるカニバリズムではなく、人間が人間を食べないといけなくなったという設定には背中がゾクゾクさせられた。主人公は食用人間を捌く側の人間でそれを生業としておこなっている。色んな葛藤がある中で、決断し実行する姿はなんとも言えない気持ちになった。その反面、やってはいけないことをあっさりしてしまうので、人間というものは理性にあらがえない生き物なんだなとも思った。
    結末も背筋が凍る内容で思わず車内で「え!?」と言ってしまった。
    ページ数は少ないが、とても内容の濃いSF/ホラー作品でとても考えさせられる作品だった。

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    2025年12月16日
  • 寝煙草の危険

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    貧困と社会不安から湧き上がってくるホラーを、ドライで簡素でありながらマジカルな筆致で描きだした短篇集。


    評判はかねがね聞いていたのでどんなものかと探る気持ちで読み始めた。「展望塔」辺りまでは語り口がスタイリッシュな今風のホラーだなくらいに思っていたら、「どこにあるの、心臓」以降キレ味鋭い作品がズラッと並んでいてすっかり参った。
    あけすけな語り口で身も蓋もないことがサクッと言葉にされているので、一瞬気づかず通り過ぎたあと二度見してギョッとする、みたいな文章が持ち味なのだが、エンリケスはジャーナリスト出身だそうでとても納得した。その身も蓋もなさには、どこかルシア・ベルリンのような味わいもある。以下、印象に残った作品の感想。

    ◆「ちっちゃな天使を掘り返す」
    結末に、確かに成仏って生者本位のシステムなのかもなぁと納得して笑ってしまった。語り手のヤケクソ具合も相まってコントのよう。

    ◆「湧水池の聖母」
    洋画・洋ドラを見ていると10代のドラッグとセックス問題が繰り返し描かれるので、ンモーこいつらも本当は何も楽しくないだろとうんざりだったのだが、この小説の少女たちが語る「湧水池の冷たい水で体を濡らしたまま、狭い浜辺で横になっている彼と代わるがわるセックスしながら、池の主がいつ発砲してくるかと待つ。そして、銃弾の雨が降る中を、半裸のまま幹線道路をめざして一目散に走るのだ」というスリリングな欲望は叶わないからこそ鮮烈で、私がうんざりしていたティーン表象をも説明してくれている気がしてストンと腑に落ちた。

    ◆「哀しみの大通り」
    腐臭の描写が上手くて嫌。政治的にはクリーンになったはずの都市にストリート・チルドレンの霊魂がうようよと犇めいているというイメージはかなり歌舞伎町っぽく、読みながらトー横ホラーという概念が頭に浮かんだ。この辺からエンリケスは物凄く絶妙なタイミングで物語をぶった切る天才だと気づく。

    ◆「どこにあるの、心臓」
    乙一の『GOTH』を初めて読んだときを思いだした。これ以降の三作は日本の90~00年代の青春ホラーと共通する空気が漂っていると思う。インターネット時代のゴスの生態。薄暗い熱病のようなフェティシズムと性描写の身も蓋もなさ。

    ◆「肉」
    夭折したスターとそのファンダムを聖書になぞらえて描いためっちゃ今っぽい話。スターの死にざまとその後の死肉食らいシーンは収録作中でも一番ゴアだが、カリカチュアライズされているせいか他の作品よりポップでもある。男性アイドルオタクとしては、ファンダム内の力関係でトップ2にいる二人が手を繋いで墓荒らしするという設定にリアリティが感じられて嫌だった(笑)。男性スターを人身御供に捧げて勃興するシスターフッド。津原泰水の『妖都』も思いだす。

    ◆「誕生会でも洗礼式でもなく」
    悪魔憑きを訴えるティーンの女の子を説得するため、ハメ撮り専門カメラマンを雇う母、という構図がもうダメなんだけど、父親による性的虐待の可能性に語り手が最後まで一切触れないのが一番不気味。この人の作風からして明らかに故意だろう。カメラマン本人ではなく彼の女友だちの視点から描くことで、悪魔憑きの女の子への好奇心ではなく彼女を取り囲む状況の不穏さに焦点を当てている。

    ◆「戻ってくる子供たち」
    これは本当に怖かったし居心地悪かったしマジで容赦ないな~~と思った。第一に、子どもたちの失踪にまつわる現実的な背景が恐ろしすぎる。児童保護施設に勤めながらも、記録庫の管理係という壁一枚隔てたところにいる語り手は、ジャーナリストに資料を差しだしながらも直接深入りしようとはしない冷淡さも卑近でリアルで、身に覚えのある感情だからこそ怖かった。この子どもたちのゾンビは「哀しみの大通り」の幽霊たちと同じで、個々人が蘇ったというより全員の意識を共有した、社会的な罪悪感の擬人化のようなものなのだろう。ホラーというエンタメが持つ、生者と死者の別れを切なく演出するためのロマンティックな甘さがこの作品には全くない。実録犯罪もののような緊迫した読み味。

    ◆「わたしたちが死者と話していたとき」
    こっくりさんをしながら知り合いに失踪者が何人いるかを自慢していく女の子たちの会話がリアルだなと感心していたが、解説で社会的な背景を知ると余計に恐ろしい。そして一番怖いところでスパッと終わる。最近はホラーでも腑に落ちるオチがあったり伏線回収したりするのが人気だけど、やっぱり無差別に襲い掛かる理不尽ほど恐ろしいものはない。そして、その点では幽霊も悪魔も邪神も犯罪組織も一緒なんだよな。

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    2025年11月11日
  • 秘儀(下)(新潮文庫)

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    ネタバレ

    こんなに長い本読んだのは久しぶり。
    最近の小説が値上がりしてるなか、この分量でこの値段!安い!かなり良心的、買う時絶対4000円超えると思ったのに。

    章ごとに視点と年代が変わるし、物語のジャンルみたいなのも変わってて楽しい。解説の杉江さんが書かれてるようにわたしもコーマック・マッカーシーとスティーブン・キングが頭に浮かんでたからびっくり!
    ガスパルのパートはITとかストレンジャーシングスを連想しながらだった。
    こんなに長いのにそこ?って言われそうだけど、上下巻通して第5部が1番面白かった。
    ここだけ雰囲気が全く違うし、ここ以外は教団に関わりがあって、ほとんど身内だけの視点だったのにいきなり外から見られる話になる。かなりスリリングでいわゆる普通のホラーだったりサスペンスものを感じたからかも。
    あとはあちら側ですね。やっぱりここが出てくるとこはめっちゃ面白かった。スカッとするし。ここまで搾取し続けてきた特権階級を皆殺しにする場面はイングロとかジャンゴを彷彿とさせるいい展開ですね。ここまでの長大な物語を締める、こんな歴史へのカウンターが用意されてるとは!最高ですね。

    地の文の中で会話が進行するのもスピード感があってよかった。こんなに長いのに流れるような読み心地です。
    短編集をまだ読んでないからいずれ読みたいな。

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    2025年10月19日
  • 秘儀(上)(新潮文庫)

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    ネタバレ

    タイトルとカバー写真見てこれはもう買うしかないと、そして中身はぎっしりです。
    上から下までぎっしり文字が!隙間がないページがほとんどで活字中毒のための本かもしれない。
    儀式、怪しい組織、魔術のようなものを使える主人公、血と肉と狂気が詰まった儀式シーンは圧巻ですね。
    後半から息子のガスパル視点になり、フアンが一つも説明してくれないことに読んでるこっちも不安になってくる。見て覚えろ、やってみろ精神なのか口下手なのか。

    闇を神と崇めている組織があり、それを出現させるための霊媒がフアンであり、その力を息子ガスパルも引き継いでいるので組織に狙われているようですね。
    章ごとに視点が変わるので下巻では誰になり、どんな物語が語られるのか!
    楽しみです。

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    2025年10月10日
  • 寝煙草の危険

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    1973年ブエノスアイレスで生まれたアルゼンチン女性作家。
    ジャンルはホラー短篇なのですが、背景にはアルゼンチンの社会情勢、貧富や人種の格差、児童売買、女性への暴力などがあり、そして呪術や悪霊の存在が混じって、土着的な物語となっています。
    時代背景として、アルゼンチンでは1976年から83年の軍事政権時代に、警察や軍による市民弾圧がおこなわれ、3万人もの人々が姿を消した、ということがあります。
    グロテスクな描写、短篇の中では解決していない、弱者は酷い目にあう、などやりきれない展開ではありますが、そんな死んだ人、表面的にはきれいにされてもそこにある悲しみや苦しみ、霊となって戻ってきた者たちへを再度表面化させて、鎮魂するような短篇だと思いました。

    なお、ある短篇で「日本では、あの世がいっぱいになると入りきれなくなって霊魂が地上に戻って来る」って言われますが、どの宗教だ?日本のホラー映画とか見たのか?「地獄の蓋が開いた」みたいな?
    さらに「日本は狭いけど人口が多い」って言う会話に続くのですが、これって日本人の中には霊魂(幽霊)が混じってるけどそのまま生活してるかも〜、ってのが日本人ってことかな?

    『ちっちゃな天使を掘り返す』
    小さい頃に住んでいた家の裏庭から小さな骨が出てきた。おばあちゃんは「赤ん坊の頃に死んだずっと下の妹だ」って言う。今でもたまに、雨の日には妹の鳴き声が聞こえるんだって。
    やがて家族は家を手放した。私は一人暮らし。だが眼の前に赤ちゃんの亡霊が現れた!腐った顔に体、ボロボロの毛布、口がきけずにどこかを指差すだけ。
    どうすればいいの!?
    数日経つ間になんだか慣れてきた。触ることだってできるから、腐った体と顔を白い布で覆ってみた。裸足で付いてくるからリュックに入れた。
    どうやら、昔住んでいた家に行きたいらしい。わたしは赤ちゃん大叔母さんを連れて昔の家に行くことにした。
    ==
    怖い、んだけど、なんだか笑ってしまう。不気味なものでも慣れちゃって、亡霊に振り回されるだけじゃなくて語り手が亡霊を振り回したり・笑

    『湧水池の聖母』
    思春期女の子グループのなかで一歩先に行くのはシルビア。もう働いて一人暮らし、みんなのやったことはとっくに体験済み。なんか悔しい。だってわたしたちはイケイケの美少女揃いなのに、シルビアは色黒のちび!(多分他の子は白人系、シルビアはインディオ系)それより気に食わないのは素敵なディエゴと付き合い初めたから!!
    私達だってディエゴとセックス体験したい!付き合いたいわけじゃない、せっかくならディエゴを夢中にさせて夢のようなセックスがしたいじゃない。
    ある時グループは湧水池にピクニックに行く。シルビアとディエゴは泳げるから池で「聖母の祠」まで行く。わたしたちは汗びっしょりで池の周りを歩いたの!くやしい!
    でもね、この湧水池の周りには野犬の群れがいるんだって。そして「聖母の祠」は、キリスト教のものではなくてなんか邪悪なものなのよ…

    『ショッピングカート』
    汚らしい老人が道端で汚らしいことをしたので、みんなで追い払った。一人、私達のママだけは「そんなにしなくてもいいじゃない。ほら、あんた、もう行きなさい」って言ったの。老人はショッピングカートを置き去りにして逃げていった。
    それから数日して、近所のみんなは全員ひどい事故や詐欺で破産した!全員!みんながあの老人の呪いだって言っている!
    でも実は私の家だけは破産を免れているの。それがバレないうちにここから逃げなくちゃ…
    ==最後のママの言葉と行動がよくわからない…(-_-;)

    『井戸』
    ホセフィーナと姉のマリエラは、おばあちゃん、お母さんに連れられてある家に行った。ホセフィーナ以外のみんなは何かを異常に怖がっていた。家から出られない。誰かが事故に合うのではないかと考える。食事もろくにできない。眠ることも怖い。
    その家の「魔女」は何かをしたみたい。おばあちゃんたちはすっかり元気になった。
    でもそのあと、ホセフィーナが何もできなくなった。怖い。食べるのが怖い。外を見るのが怖い。でも家の中も怖い。眠るのが怖い。人が怖い。自分が怖い。生きるのが怖い。死ぬことが怖くて自殺なんてできない。
    姉のマリエラは、子供の頃に行ったあの家にホセフィーナを連れてゆく。
    だが「魔女」がいうのは…
    ==これは苦しい。遺伝性精神疾患なのか、太古の悪霊とか呪いなのかわからないけれど、悪霊だとしてもこの祓い方か。カウンセリングに連れて行ってあげてほしいが、この家族ではなあ…

    『哀しみの大通り』
    ソフィアは、バルセロナに住む女友達フリエタを訪ねている。バルセロナってこんなに汚い街だっけ?こんんなに腐った匂いがするの?こんなに変な、苦しそうな、あたまのおかしそうな、嫌な目をした人ばかり居る街だっけ?
    フリエタがソフィアに言う。以前バルセロナでは小児性愛者組織があった。貧しく死んだ子供、親に売られた子供がたくさんいた。みんなここに留まっている。子供たちを忘れるなって彷徨っている。酷い臭いを撒き散らしている。私はもう出られない。でもあなたは早く逃げなさい。

    『展望塔』
    海辺のホテルを舞台に、二人の女性の目線で交互に語られる。
    一人は、酷い経験をして仕事が続けられなくなり、一人で旅に出たエリナ。
    もう一人は…?読んでいくとこのホテルに閉じ込められた女性の亡霊だと分かる。誰かを身代わりにしたい。でも自分のことが見えない人たち、脅かし方を間違えてホテルを去った人たち。この女エリナはどうかしら?

    『どこにあるの、心臓』
    私は子供の頃から病気の人にエロスを感じた。まずは物語の登場人物で心臓病肺病の患者が息も絶え絶えになり、その呼吸が途絶える事を考えて気が狂うくらいに自慰行為に耽った。
    やがて実際の人の心臓の音に惹かれる。その中でも奇妙な心音を持つ男と実際に会うようになった。彼の心臓の音!気が狂うくらいの自慰行為!
    でもだんだん飽きてきた。本物の心臓がほしい、触りたい。鼓動を握りつぶしたい…。

    『肉』
    カルト的人気のロックスターのサンディアゴの最後のアルバムは「肉(カルネ)」。そしてものすごい死体で見つかった。葬儀は思ったより混乱しなかった。墓で過ごすファンも思ったよりおとなしかった。
    かと思われた。
    だがある日守衛は二人の少女が、サンティアゴの墓のそばで…、…、…(読んでください…(=_=;)
    彼女たちの行動は国中の話題をかっさらった。やがて二人が自由になったら、他のファンたちはサンティアゴを真に理解した彼女たちを通して復活を祝うだろう。

    『誕生会でも洗礼式でもなく』
    私は、隠し撮り映像で金を稼ぐニコと知り合った。たまに彼の隠し撮り撮影を見せてもらう。カップルの性行為、小児性愛者用の好みの女の子詰め合わせ。
    ある時マルセラという少女の母親から依頼が来た。「娘のマルセラが幻覚を見て暴れて暴言を吐いて自分を傷つけて自慰行為をする。マルセラが幻影を見ているところを撮影してほしい。マルセラが自分で見れば、幻影だって分かるだろう」
    マルセラは撮影に来たニコに「あなたならきっと分かる」と言う。だがニコの撮った映像にはマルセラしかいない。彼女の見ていたのは本当に幻覚なのだ。
    ニコはしばらくマルセラを訪ねたが、やがていかなくなった。
    きっと幻覚を見て大暴れして自分を傷まみれにした後で、ただ眠りに落ちる姿に惹かれたんだろう。だから行かなくなったんだ。

    『戻ってくる子供たち』
    メチは行方不明児童のファイル整理の仕事に就いた。この町ではたくさんの子供たちが姿を消す。家族からの暴力や強姦による家出、誘拐、売春組織に売られる、急に姿を消す…
    メチの男友達のペドロはジャーナリストで、印象的な事件を!と、児童誘拐を追っている。メチとは情報を交換し合っている。
    メチが、多大なファイルのなかでも特に印象的なのはバナディスという14歳くらいのインディオ系の美少女だ。幼い頃から裏道で売春をしている。少女の美しさ、神秘的な様子に、道で生きる人たちのファンが付いた。バナディスの最後の目撃談は、二人の男の性行為の相手をさせられ録画されたというもの。男たちはネットで稼ぐのだろう。
    だがメチはそんなバナディスを見つけたのだ!公園で!ただ座って!
    その時から、行方不明の子供たちが次々に戻って来る。大喜びで迎え入れる親たち!
    だがすぐに違和感に気がつく。何年の前に消えたというのに、その時と全く同じ様子で帰ってきたのだ。食事はしない。親たちは「そっくりだけど自分の子供ではない」と言って、帰ってきた子供を追い出したり、絶望で自殺する者もいた。
    追い出された子供たちは施錠されているはずの空き屋敷に集まっていった。
    もう一度バナディスを追いかけたメチは、子供たちはすでに「集合体」なのだと悟る…

    『寝煙草の危険』
    パウラは寝煙草で焼け死んだ老女の話を聞く。彼女は一人でマットレスでシーツを被って食事をして、煙草を吸っている。マットレスは汚れて臭いし、被ったシーツは焼け焦げている。
    でもその焼け焦げから天井に光が届く。まるで星みたいだ。

    『わたしたちが死者と話していたとき』
    思春期少女たちは降霊術(コックリさんみたいなやつ)に夢中になっている。
    彼女たちの状況が少しずつ分かってくる。ポーランド系大家族のポラーカ、祖母の家に弟と住むフリータ、スラムぐらしのナディア、郊外に住むどんくさいピノキア、そして私。
    時代はまだ軍事政権による市民弾圧の痕跡がある。多くの国民は知っている誰かを連れさられていたのだ。フリータの父母を初めとして、友人の兄、近所のおじさん。わたしの世代は直接被害者にはならなかったけれど、本や映画、歴史の授業で、どんなに酷いことがおきたのかは知っていたのだ。
    ある日の降霊会、それは最後になった。だって本当に現れたのだ。理由は「一人だけ、知り合いの誰も連れ去れられていないから」。
    ==間接的であっても被害を受けていない人が非難されてしまう。この話では、霊魂が「自分と同じように苦しんでいないやつは気に食わん」って感じてるのか?
    降霊ということで書いているけど、社会全体が何事もなかった人への批判があったんだろうか。

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    2025年09月12日
  • 寝煙草の危険

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    同発行元の「救出の距離」でスパニッシュホラーを知り、次に手に取った本書。本書も、むしろ本書が増して面白い。古くからある恐ろしいものが違和感なく現代に現れる短編集で、バナディス、フリエタと出てくる人名は馴染みがないものの、じわっとくる気味悪さはどこか親和性を感じ読みやすかった。

    ○ちっちゃな天使を掘り起こす
    雨の日に祖母が聞いていた泣き声。その元凶が突然ベッド脇に現れる。腐りかけのそれは主人公を終始追いかけるが、PC作業中に横で座っていたりと少し可愛く見えてしまった。

    ○湧水地の聖母
    ブスのくせに!というねっとりした嫉妬、正体不明の噂話、湧水の清らかさが美しく組み合わさった人怖。

    ○井戸
    魔女の家に行った日から極度の恐怖症になった少女。精神科治療と呪術の両立が面白い。ラストが悲しく新しかった。

    ○悲しみの大通り
    清掃と秩序が重視されたバルセロナに入った途端、感じる異臭の正体。淡々と語られる街の違和感を読み進めるのが面白い。

    ○どこにあるの、心臓
    心音に興奮する女の進みきった自己世界の話。

    ○肉
    急死したロックスターとその想いをまっすぐ飲み込んだファンの人生について。最高にロック。

    ○戻ってくる子供たち
    行方不明児童の情報センターで起こる出来事。「夏になったら下りる」と答えた群れの想像が何故か頭から離れず、好きな物語。

    ○寝煙草の危険
    表題。ぷつぷつしたものの気持ち悪さがいつしか壮大な星空となる素晴らしさがあった。

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    2025年08月24日
  • 舌を抜かれる女たち

    Posted by ブクログ

    女性におおやけの場で発言する権利がなかった時代があったとはつゆほども知らなかった。
    訳者さんのスキルが高すぎるのか、すごく読みやすかった。イラストもかなり挿入されていて、短時間で読めた。

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    2025年07月12日
  • 花嫁殺し

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    すんごーい!

    最高に面白いけどまたもや翻訳作品の悲しさで、3部作の第1作。以降の翻訳予定なし…omg

    猟奇殺人大好きレイヤーとしてまず、頭に穴を開けられて蛆を詰められて殺される、しかも姉も数年前に全く同じ方法で殺され、犯人は収監中。果たして冤罪か模倣犯か?
    ……これだけでもう、跳ね起きる準備はできていた。「お坊さんも飛び跳ねて食べるほどおいしい」と名の付いた中華料理があったと思うけど、もうそんな感じ。気持ちわかる!このアイデア思いついたら時点でこの作品が面白くないわけないよね?

    間に挟まる少年のエピソードもすごい。
    エピソードそのものもすごいんだけど、その構成の妙がたまらない。物語は実は序盤の殺人と、そのオリジナルであろう被害者の姉の事件でほぼ終わり、あとはその捜査に割かれる。普通ならすこし面白さが減速してもおかしくないと思うんだけど本作ではタイミングよく挟み込まれる少年のエピソードが、現在とは逆にどんどん凄惨さを増してエスカレートする。





    《ネタバレ地雷の方はここまででストップ推奨》




    暗い場所に放置された少年。ゲームなのかな?と無邪気に思うところからとんでもない飢餓に苛まれ、死んだ犬を食べ、そこにわいた蛆に手を伸ばす。そして体力を失った少年の体にも蛆が……いつしか少年の運命が気になってそっちにまで引き込まれるから、まったく飽きずに読み込めた。

    おそらくはこの少年が犯人なんだろうけど、これは一体誰?そして姉妹を狙った理由は?

    最初はスペイン名の男女さえわからずに読みづらさも感じたけど、そこを超えたらあとはもう、加速度が止まらない。スペインの文化、薬物の闇、家族・民族意識、司法制度、痴呆症などなど。さらには主人公の息子が誘拐されて安否確認ができておらず、主人公はそれも追い続けていることが明かされる。
    そして、その息子に関する衝撃のラスト!

    あーーーーーーーーー!
    続き、読みたい!
    (探したけど続きはスペイン語とポルトガル語、カタルニア語!でしか出ていないようで…英語でさえ入手不可。ウソでしょタスケテ……)

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    2025年04月26日