マリアーナ・エンリケスの作品一覧
「マリアーナ・エンリケス」の「寝煙草の危険」「秘儀」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「マリアーナ・エンリケス」の「寝煙草の危険」「秘儀」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
小説・文芸
Posted by ブクログ
『このホラーがすごい!2026』海外編1位。
エンリケスは『寝煙草の危険』を読んだとき、
不気味さ、おぞましさ、悲哀が三拍子揃った
あのキレッキレの短編集にやられて、一気にファンになった。
そして今回は、
上下巻合わせて1100ページ超えの大長編!
いやぁ……圧巻でした。
読み終えた今も、
頭の半分くらい「あちら側の世界」に行ってます。笑
『秘儀』マリアーナ・エンリケス
個人的には、ホラーというよりも
ダークファンタジーに近い印象だった。
死と隣り合わせの世界だったり、
〈教団〉の本儀式なんかは、鳥肌が立つほどのおぞましさ。
でもそこに、家族の絆や青春、友情まで絡んでくるから、
どこかスティーヴン・キングっぽさも感じられる。
✧
物語は、ある若い父親が
小さな男の子を連れて旅をしている場面から始まる。
この父親が、なんともミステリアスなのだ。
人目を引くほど美しいのだけれど、
どうやら重い病気を抱えているらしい。
彼らは一体どこへ向かっているのか。
なぜ母親はいないのか。
そんな謎だらけの序盤に、
ぬらりと死者の影や不気味な〈教団〉の存在が入り込み、
物語は一気に禍々しさを増していく。
✧
生贄を捧げる狂気の〈教団〉。
〈闇〉を呼び出すために、使い捨てにされる霊媒。
血なまぐさい儀式。
生贄。そして、入信者たちの狂気。
怖いというより、
もう「悪夢」そのものなのね。
上巻と下巻では物語の印象もガラリと変わる。
下巻は青春パートが長く続くので、
正直、少し冗長に感じるところもあった。
でも、あれだけ長い時間を彼らと過ごしたからこそ、
終盤の“あのシーン”が効いてくるのかもしれない。
そしてちなみに、
金髪イケメンパパはバイセクシュアルで、
恋愛や性に関してもかなり奔放。
いや、思ってた以上に奔放でビビった。笑
(もちろん、そこにもちゃんと理由があるのだけれど……)
✧
まぁ色々書いたけれど、
総合的にはめちゃくちゃ面白かったです。
とにかく濃い!おぞましい!美しい!
そして、なかなか現実に戻してくれない。
まだ〈闇〉の向こう側にいる気がします。
Posted by ブクログ
ものすごく久々に海外文学を読んだ…(韓国文学以外で)
アルゼンチンすごい
この惨状(貧困、薬物、人身売買、売春、ストリートチルドレン、狂人、暴力、犯罪etc)が本当に街中で起こっているっていうこと自体もすごいし…
異世界 徹底的に汚く治安の悪いスラム…
刹那的で、退廃的で、厭世観に満ちた世界
日本が舞台の物語ではなかなかに表現できるものではない というか存在しない。
訳者あとがきでのインタビュー紹介に『読者は私の小説を読んだ時、なんでこんなにぶっ飛んだことを書くのかと言うけれど、実はちっとも遠くない』と
アルゼンチンその他日本ではない国の歴史と現状を知りたい、アップデートしたい
Posted by ブクログ
物語の舞台は、1960年代から90年代にかけてのアルゼンチン。当時の社会状況を色濃く映し出したゴシックホラー。読み始めは全体像がつかみにくく戸惑ったけれど、読み進めるうちに断片がつながり、気づけば深く物語の中に引き込まれていた。教団をめぐる人物関係は複雑で少し覚えづらく、家系図を作って整理すると理解しやすかった(家系図を作ったのは『百年の孤独』以来かも)。
フアンと教団に関わるパートは不気味さと恐怖が強く、一方でガスパルと友人たちの場面にはYA文学のような瑞々しさがあり、その対比も印象的。フアンがガスパルを傷つけてしまう場面は胸が痛み、読んでいてつらくなった。普段あまり手に取らないジャンルだけど、予想以上に面白く、すっかりハマっている。下巻を読むのが楽しみ!
Posted by ブクログ
貧困と社会不安から湧き上がってくるホラーを、ドライで簡素でありながらマジカルな筆致で描きだした短篇集。
評判はかねがね聞いていたのでどんなものかと探る気持ちで読み始めた。「展望塔」辺りまでは語り口がスタイリッシュな今風のホラーだなくらいに思っていたら、「どこにあるの、心臓」以降キレ味鋭い作品がズラッと並んでいてすっかり参った。
あけすけな語り口で身も蓋もないことがサクッと言葉にされているので、一瞬気づかず通り過ぎたあと二度見してギョッとする、みたいな文章が持ち味なのだが、エンリケスはジャーナリスト出身だそうでとても納得した。その身も蓋もなさには、どこかルシア・ベルリンのような味わいもある。以下、印象に残った作品の感想。
◆「ちっちゃな天使を掘り返す」
結末に、確かに成仏って生者本位のシステムなのかもなぁと納得して笑ってしまった。語り手のヤケクソ具合も相まってコントのよう。
◆「湧水池の聖母」
洋画・洋ドラを見ていると10代のドラッグとセックス問題が繰り返し描かれるので、ンモーこいつらも本当は何も楽しくないだろとうんざりだったのだが、この小説の少女たちが語る「湧水池の冷たい水で体を濡らしたまま、狭い浜辺で横になっている彼と代わるがわるセックスしながら、池の主がいつ発砲してくるかと待つ。そして、銃弾の雨が降る中を、半裸のまま幹線道路をめざして一目散に走るのだ」というスリリングな欲望は叶わないからこそ鮮烈で、私がうんざりしていたティーン表象をも説明してくれている気がしてストンと腑に落ちた。
◆「哀しみの大通り」
腐臭の描写が上手くて嫌。政治的にはクリーンになったはずの都市にストリート・チルドレンの霊魂がうようよと犇めいているというイメージはかなり歌舞伎町っぽく、読みながらトー横ホラーという概念が頭に浮かんだ。この辺からエンリケスは物凄く絶妙なタイミングで物語をぶった切る天才だと気づく。
◆「どこにあるの、心臓」
乙一の『GOTH』を初めて読んだときを思いだした。これ以降の三作は日本の90~00年代の青春ホラーと共通する空気が漂っていると思う。インターネット時代のゴスの生態。薄暗い熱病のようなフェティシズムと性描写の身も蓋もなさ。
◆「肉」
夭折したスターとそのファンダムを聖書になぞらえて描いためっちゃ今っぽい話。スターの死にざまとその後の死肉食らいシーンは収録作中でも一番ゴアだが、カリカチュアライズされているせいか他の作品よりポップでもある。男性アイドルオタクとしては、ファンダム内の力関係でトップ2にいる二人が手を繋いで墓荒らしするという設定にリアリティが感じられて嫌だった(笑)。男性スターを人身御供に捧げて勃興するシスターフッド。津原泰水の『妖都』も思いだす。
◆「誕生会でも洗礼式でもなく」
悪魔憑きを訴えるティーンの女の子を説得するため、ハメ撮り専門カメラマンを雇う母、という構図がもうダメなんだけど、父親による性的虐待の可能性に語り手が最後まで一切触れないのが一番不気味。この人の作風からして明らかに故意だろう。カメラマン本人ではなく彼の女友だちの視点から描くことで、悪魔憑きの女の子への好奇心ではなく彼女を取り囲む状況の不穏さに焦点を当てている。
◆「戻ってくる子供たち」
これは本当に怖かったし居心地悪かったしマジで容赦ないな~~と思った。第一に、子どもたちの失踪にまつわる現実的な背景が恐ろしすぎる。児童保護施設に勤めながらも、記録庫の管理係という壁一枚隔てたところにいる語り手は、ジャーナリストに資料を差しだしながらも直接深入りしようとはしない冷淡さも卑近でリアルで、身に覚えのある感情だからこそ怖かった。この子どもたちのゾンビは「哀しみの大通り」の幽霊たちと同じで、個々人が蘇ったというより全員の意識を共有した、社会的な罪悪感の擬人化のようなものなのだろう。ホラーというエンタメが持つ、生者と死者の別れを切なく演出するためのロマンティックな甘さがこの作品には全くない。実録犯罪もののような緊迫した読み味。
◆「わたしたちが死者と話していたとき」
こっくりさんをしながら知り合いに失踪者が何人いるかを自慢していく女の子たちの会話がリアルだなと感心していたが、解説で社会的な背景を知ると余計に恐ろしい。そして一番怖いところでスパッと終わる。最近はホラーでも腑に落ちるオチがあったり伏線回収したりするのが人気だけど、やっぱり無差別に襲い掛かる理不尽ほど恐ろしいものはない。そして、その点では幽霊も悪魔も邪神も犯罪組織も一緒なんだよな。