マリアーナ・エンリケスのレビュー一覧

  • 秘儀(上)(新潮文庫)

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    ネタバレ

    物語の舞台は、1960年代から90年代にかけてのアルゼンチン。当時の社会状況を色濃く映し出したゴシックホラー。読み始めは全体像がつかみにくく戸惑ったけれど、読み進めるうちに断片がつながり、気づけば深く物語の中に引き込まれていた。教団をめぐる人物関係は複雑で少し覚えづらく、家系図を作って整理すると理解しやすかった(家系図を作ったのは『百年の孤独』以来かも)。
    フアンと教団に関わるパートは不気味さと恐怖が強く、一方でガスパルと友人たちの場面にはYA文学のような瑞々しさがあり、その対比も印象的。フアンがガスパルを傷つけてしまう場面は胸が痛み、読んでいてつらくなった。普段あまり手に取らないジャンルだけ

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    2025年12月20日
  • 寝煙草の危険

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    貧困と社会不安から湧き上がってくるホラーを、ドライで簡素でありながらマジカルな筆致で描きだした短篇集。


    評判はかねがね聞いていたのでどんなものかと探る気持ちで読み始めた。「展望塔」辺りまでは語り口がスタイリッシュな今風のホラーだなくらいに思っていたら、「どこにあるの、心臓」以降キレ味鋭い作品がズラッと並んでいてすっかり参った。
    あけすけな語り口で身も蓋もないことがサクッと言葉にされているので、一瞬気づかず通り過ぎたあと二度見してギョッとする、みたいな文章が持ち味なのだが、エンリケスはジャーナリスト出身だそうでとても納得した。その身も蓋もなさには、どこかルシア・ベルリンのような味わいもある。

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    2025年11月11日
  • 秘儀(下)(新潮文庫)

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    ネタバレ

    こんなに長い本読んだのは久しぶり。
    最近の小説が値上がりしてるなか、この分量でこの値段!安い!かなり良心的、買う時絶対4000円超えると思ったのに。

    章ごとに視点と年代が変わるし、物語のジャンルみたいなのも変わってて楽しい。解説の杉江さんが書かれてるようにわたしもコーマック・マッカーシーとスティーブン・キングが頭に浮かんでたからびっくり!
    ガスパルのパートはITとかストレンジャーシングスを連想しながらだった。
    こんなに長いのにそこ?って言われそうだけど、上下巻通して第5部が1番面白かった。
    ここだけ雰囲気が全く違うし、ここ以外は教団に関わりがあって、ほとんど身内だけの視点だったのにいきなり外

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    2025年10月19日
  • 秘儀(上)(新潮文庫)

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    ネタバレ

    タイトルとカバー写真見てこれはもう買うしかないと、そして中身はぎっしりです。
    上から下までぎっしり文字が!隙間がないページがほとんどで活字中毒のための本かもしれない。
    儀式、怪しい組織、魔術のようなものを使える主人公、血と肉と狂気が詰まった儀式シーンは圧巻ですね。
    後半から息子のガスパル視点になり、フアンが一つも説明してくれないことに読んでるこっちも不安になってくる。見て覚えろ、やってみろ精神なのか口下手なのか。

    闇を神と崇めている組織があり、それを出現させるための霊媒がフアンであり、その力を息子ガスパルも引き継いでいるので組織に狙われているようですね。
    章ごとに視点が変わるので下巻では誰に

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    2025年10月10日
  • 寝煙草の危険

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    1973年ブエノスアイレスで生まれたアルゼンチン女性作家。
    ジャンルはホラー短篇なのですが、背景にはアルゼンチンの社会情勢、貧富や人種の格差、児童売買、女性への暴力などがあり、そして呪術や悪霊の存在が混じって、土着的な物語となっています。
    時代背景として、アルゼンチンでは1976年から83年の軍事政権時代に、警察や軍による市民弾圧がおこなわれ、3万人もの人々が姿を消した、ということがあります。
    グロテスクな描写、短篇の中では解決していない、弱者は酷い目にあう、などやりきれない展開ではありますが、そんな死んだ人、表面的にはきれいにされてもそこにある悲しみや苦しみ、霊となって戻ってきた者たちへを再

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    2025年09月12日
  • 寝煙草の危険

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    同発行元の「救出の距離」でスパニッシュホラーを知り、次に手に取った本書。本書も、むしろ本書が増して面白い。古くからある恐ろしいものが違和感なく現代に現れる短編集で、バナディス、フリエタと出てくる人名は馴染みがないものの、じわっとくる気味悪さはどこか親和性を感じ読みやすかった。

    ○ちっちゃな天使を掘り起こす
    雨の日に祖母が聞いていた泣き声。その元凶が突然ベッド脇に現れる。腐りかけのそれは主人公を終始追いかけるが、PC作業中に横で座っていたりと少し可愛く見えてしまった。

    ○湧水地の聖母
    ブスのくせに!というねっとりした嫉妬、正体不明の噂話、湧水の清らかさが美しく組み合わさった人怖。

    ○井戸

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    2025年08月24日
  • 寝煙草の危険

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    ネタバレ

    土地に根ざした恐怖は、その国の文化や社会情勢や歴史と分かち難く結びついていて、そこから逃げることはできない。私はこれをフィクションとして怖がることができるし、物語である以上それは正しいんだろうけれど、呪いや幽霊や異常な現象の背後にある現実が身近にある人たちが読んだ時の恐怖は私では想像も及ばないものがあるのだろう。その隣り合わせの恐怖をほんの端っこだけでも理解するのに、この物語たちはうってつけだと思う。

    ・ちっちゃな天使を掘り返す
    アンへリータ、ビジュアルが悪夢的なのにどこか愛らしい。主人公のやれやれ感も合わさってどこか楽しささえ感じる。ところで、別に幼少期のことだけが原因ではないよね、主人公

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    2024年12月26日
  • 寝煙草の危険

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    ネタバレ

    マリアーナ・エンリケスのデビュー作。
    国書刊行会のスパニッシュ・ホラーシリーズ第2弾。

    幻想味が強いエルビラ・ナバロと違い、純粋ホラーな作風。人間の怖さというより、呪術やゾンビ、幽霊などの怖さを描いた作品が多い。
    わかりやすくホラーな分、読みやすかった。そしてエゲツない表現は共通。ある意味リアルなのだろうか。。。
    (本体が高いこともあり)高級チョコのような味わい方で楽しませてもらった。第3弾が待ちきれない。


    ○ちっちゃな天使を掘り返す
    ちっちゃな天使の正体がエグい。そして描写もグロい。だけどユーモアあふれるゴーストストーリーなのが不思議。

    ○湧水池の聖母
    気に食わない先輩と狙っていた男

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    2023年10月09日
  • 寝煙草の危険

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    ★5 弱者の現実と奈落の底からの叫び声が聞こえる… アルゼンチン作家のホラー短編集 #寝煙草の危険

    ■きっと読みたくなるレビュー
    アルゼンチンの作家、掌編・短編からなるホラー作品集。良い作品なので、しっかりと読みましょう。

    テイストとしては文芸作品ですが、痛烈で狂気な描写が多く、アルゼンチンの歴史や現実も克明に記された内容。正直、治安と経済状況がいい日本に生まれたことを安堵してしまいました。

    本作はあからさまな表現で豊富で、めっちゃメッセージ性が強い。そして気がついたら読み切ってしまうほど、熱中度が半端ないです。読めば読むほど味わい深く、すっかりエンリケスの沼にはまってしまいました。

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    2023年08月06日
  • 秘儀(下)(新潮文庫)

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    ネタバレ

    上巻からの勢いで下巻へ。物語は不穏さを増し、不気味で不安をかき立てる描写が続く。あまりに生々しく、想像すると吐き気を覚えるような場面が延々と続き、正直、嫌悪感を拭えなかった。
    自分の子を守るために別の子を犠牲にしたフアンの選択は、結局のところ教団のやっていることと何が違うのだろう。腑に落ちない点はいくつもあるけれど、最後まで読者を離さない力があり、読み終えてみればやはり面白かった。アルゼンチンの歴史や背景をもっと知っていれば、より深く理解できたのかも。時間を置いて、もう一度読み返してみたい一冊。

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    2025年12月23日
  • 寝煙草の危険

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    アルゼンチン作家のホラー短編集。ちっちゃな天使を掘り返す/湧水池の聖母/どこにあるの、心臓/肉が特に印象に残っています。幽霊、降霊術、悪魔、ゾンビといった類のものから、人間の嫌な部分、狂気の行き着く果てを描いた作品も。不穏でじわじわと足元から怖さが忍び寄る感覚。子どもや女性を主役に据えた作品が多い。面白いです!

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    2025年12月18日
  • 秘儀(下)(新潮文庫)

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    ネタバレ

    自らの命を永らえさせる為に生贄を捧げ続ける〈教団〉とそれに利用され使い潰される〈霊媒〉という構図と、〈教団〉から子を守ろうとする父、という構図が重層的になった壮大なダークミステリーとして、非常に満足のいく終わり方だった

    上巻における主人公が退場したことで、今巻は誰が主人公なんだろうと開いたらロサリオだったことには驚いた
    それぞれの部ごとに視点が異なっているため、同じ事件に対して多角的に描写され、それに伴い〈教団〉の内部事情やアルゼンチンの政治状況など、これでもかと言うくらいに物語を膨らませることで、終盤にかけてどういう風に終わるのかとページをめくる手が止まらなかった

    上巻がフアンvs〈教団

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    2025年11月10日
  • 秘儀(上)(新潮文庫)

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    ネタバレ

    謎の儀式を行い〈闇〉と接触することを本懐とする〈教団〉、そして〈闇〉を呼び出すことが出来る力をもつばかりに〈教団〉に振り回される霊媒のフアンとその息子ガスパルを主軸として展開する、この世の暗い部分を全て詰め込んだかのような作品

    序盤に二人で旅行に出かけるシーンは、何か違和感がありつつも和やかな感じだったのに、タリに会ってからはエログロのオンパレードという具合でびっくりした
    フアンがガスパルのことを愛しているのはよく分かるんだけど、病気で今にも死にそうだという焦燥感や敵の強大さが起因してるのか、愛情表現が大変にバグってる
    しかもこの小説、敵の本拠地に行っても一部を除いてエグい描写ないのに、ホー

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    2025年10月19日
  • 寝煙草の危険

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    現代を生きる若者たちを主に主人公に据えて、昔ながらの民間伝承や信仰を織り込み、現代の社会問題を絡めて描き出した味わい深いホラー短編集。不条理さと現実の不合理さが同時に味わえる、複雑な面白味のある話を楽しめました。

    この短編集の中では、「戻ってくる子供たち」が一番印象的でした。一見現代の社会問題を追っているような筋書きから、次第に不条理な不気味さが表に出てきて、現実を凌駕していく。けれどその不条理さは、辛く酷い現実を今生きている少年少女たちのどこへも表出しない辛みの別側面でもあるようで、けして絵空事だと軽んじて受け止められない重みを感じました。

    多くの短編でこの短編のように貧困などに晒されて

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    2024年07月15日
  • 寝煙草の危険

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    ・とっつきにくいかな?と思っていた読む前の印象と違い全然読みやすかった。訳が良い?のか?言葉も現代的なスラングも使われている所もあり、面白かった。
    ・全体的に覆われる不穏感。ラテンアメリカ文学的は不思議さみたいのも感じるけど、何となく思っていたのは映画のJホラー的な不穏さ。何もまだ起こってないのに何かが進行している様なドキドキ。日本的な環境とは明らかに違う場所での話なのにスッと入っていけるのは、その感覚の既視感があったから、かな?

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    2023年09月23日
  • 秘儀(下)(新潮文庫)

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    ネタバレ

    家族から勧められて読んでみた。とにかく面白いらしい。
    期待が高まる、、、が、帯を見ると、、、
    えっ⁉️ホラー?
    全世界が注目する南米ホラー
    今世紀、最強の恐怖
    アルゼンチンのホラー女王が綴る暗黒の書
    これまたおどろおどろしいキャッチコピーが並ぶ。
    私、ホラー苦手なんだよねぇ〜怖いのよ(泣)オカルト、怪談の類が無理❗️絶対、怖い❗️一人で寝れなくなる❗️嫌だ、、、読めない、恐ろしすぎる、、、と相当、読み始めるまで悩んで、怖いもの見たさに〝えいやぁー″と勢いで読み始めた。

    なんじゃこりゃ?
    巻末の解説に「ページを繰っても繰っても全貌が見えてこない構造の複雑さ」とあったが、それそれ!複雑な小説を読

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    2025年11月10日
  • 寝煙草の危険

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    お初のジャンルでございました。
    短編集というのもあり非常に読みやすかったし、
    いい感じのホラー感と面白さかな〜と。

    幽霊や呪術と人の悪意がいい感じに共存してて
    ヒィー!ってはならないけどおお〜となる感じ。

    個人的には湧水地の聖母が1番良かったな。
    まさに人の悪意なんですけど、
    私も読んでて悪意から願ったので…笑

    後書きのアルゼンチンの歴史を知るとなるほどそうなのか〜ともなれます。知識がある方は本編を読んでいる最中にきっと気づけるのだろうね。

    めちゃどうでもいいんですけど作中2回うんこが出てきて、それがどっちもげりぴーだったのはちょっと笑いました。お気に入りなのかな?!

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    2025年07月08日
  • 寝煙草の危険

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    アルゼンチンと言う国の不安定さとゴシックホラーの融合

    あとがきがとてもわかりやすく魅力を伝えていると思う。
    国の事情や風土のようなものがあるからこそのなんとも言えない不気味さなんだなと。


    国書刊行会のスパニッシュ・ホラー文芸
    ・兎の島
    ・寝煙草の危険
    ・救出の距離
    とすべて所謂、ジャケ買いしていますが…
    やはり買い時は毎回躊躇するお値段

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    2025年05月26日
  • 寝煙草の危険

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    ホラー、、、苦手だ。。。と思いつつ読み始めたけど、(最初こそ入り込めなかったものの)楽しく読めた。特に「戻ってくる子供たち」が面白い。
    とはいえ、最初入り込めなかったのも、私がアルゼンチン(あるいは南アメリカ)の社会状況をよく理解できていないからだろう。現実の方がもっと恐ろしいものだとすれば、ホラー小説という形式でオブラートに包んで追体験させてもらっているという事か。そう考えると「戻ってくる子供たち」を読んでいてなぜか感じた痛快さも理解できるような気がしてくる。

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    2025年02月09日
  • 寝煙草の危険

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    ネタバレ

    〈アルゼンチンのホラー・プリンセス〉による12編の悪夢。幽霊や魔女、呪いといったガジェットが登場するゴシック調ホラーに描かれるのは、現実のアルゼンチンが抱える過去の傷と病理。本書全体に漂う倦怠感と閉塞感、絶望、そしてグロテスクなまでに生々しい生への渇望。

    ・小さな骨を庭から掘り出したことで赤子の幽霊に付き纏われる少女「ちっちゃな天使を掘り返す」。アンヘリータ(ちっちゃな天使)の望みとは一体何だったのか。
    ・少女たちの憧れと嫉妬が残酷な結果を招く「涌水地の聖母」。この"少女たち"というワードもエンリケス作品の重要な要素なのかも。
    ・住宅街に現れた酔いどれの老人はゴミを満載し

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    2024年01月18日