午鳥志季のレビュー一覧
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ネタバレ・待ちに待ったはずの手術で、
その患者はあっさりと死んだ。
・医者というのはざっくり分けて外科系かそれ以外かの二人種に分類される。手術をするか否か、の違いと言ってもいい。なぜなら手術というのは器具の使用方法から術前・術後の患者管理に至るまで独特の技能を求められ、これを習得するかそれとも内科的診断学や研究など他の分野に注力するかで、医師としての形がまるで変わってくるからだ。
・「お前が飛び降りたら、俺は速攻で整形外科医と脳神経外科医と救急科医を呼ぶ。外傷のスペシャリストだ。お前の足の骨が折れていようと腹の中で血が出ていようと頭の中で血腫ができていようと、絶対に手術台に乗せて救命してやる。緊急オペだ」
・「いいか遥、死のうとするのは勝手だ。だけどな、俺たちがあらゆる医療を駆使してお前を絶対に死なせない」
・「見捨てないでよ。約束して。私を助ける、って」 俺は目をぱちくりさせた。「……見捨てるわけないだろ。俺は主治医だぜ」
・もし自分が意識もなく寝たままになったら、俺はいっそ楽に殺してほしいと思う。
・「今月から心臓血管外科で研修する、研修医の湊遥よ」その笑顔を見て俺は、生まれて初めてこんなことを思った。 ──医者って、案外悪くないな。
ヤブ医者がこんなにも誰かを助けたいと思い甦えり最後には彼女が救われる。わたしが好きなハッピーエンドだった! -
Posted by ブクログ
医師作家9人によるアンソロジー作品。
どの作品も50頁程なので、スピード感がある。
研修医 精神科医 救急医療 現場医療 研究者 認知症等 医療1つとってもジャンルが違い、心理描写の加減に手に汗握ってハラハラしたり、淡々と読み進めたり、一冊で何度も美味しい読み応えのある本でした。
医師(著者)が実際に経験しているであろうリアリティがそこにある。
認知症対応を生業としている身としては、何度も見た光景で「あーー大変さの中に、いくつも希望が見いだせるんだよ」「怒ったらダメダメ」と逆の意味でハラハラさせられた。
現代はサービスが揃っているので、抱え込まず使える手段を利用していくのがお互いの心の安定を図るが、未だに長男が!とか、嫁が!とか他人事の様に話す親戚がいるのも事実。
「介護者は生き方を選べないのか?」に胸つまされる。
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購入済み
珠玉の医療ドラマ
世の中に数多ある医療をテーマにした物語の中では地味な作品かもしれません。この作品には失敗しない美人女医もゴッドハンドのスーパードクターも登場しませんし、緊迫感のある手術シーンもありません。
主人公は研修医どころかそのずっと手前の医学生。しかも血を見るのが苦手という医療を志すには致命的とも言える欠点があります。そんな志は高く座学は優秀なのに血を見ると失神してしまうヘタレ医学生の戸島くんが、膠原病内科医の漆原先生の『助手』もとい『パシリ』としてこき使われつつ、人としてそして医師の卵として成長していく物語になっています。
厳しい現実を突き付けられることもあり、一読者である自分も戸島くんと一緒に考え、学び、成長していくような気がします。
いつか自分や家族が膠原病になったとしたら。
そんな未来はない方が良いけれど、この作品を読んだ経験があることで、万一の時にはより納得のいく選択ができるかもしれません。
この作品を書いてくれた作者様に感謝します! -
Posted by ブクログ
「血が苦手な医学生の成長譚」と書けば、どこかで見たり読んだりしたよくある物語と思われると思います。
しかしながら、この作品には、医療ドラマでよく見るような、腕の立つ医師により患者が完治する、というようなシーンは一切出てきません。
それは、本作品が自己免疫疾患を主な治療隊hそうとする膠原病内科を舞台としているからです。
本作品の中でも触れられていますが、自己免疫疾患は現代の医療を持ってしても完治させることはできず、症状の寛解を目指すのが治療目標となります。
医学生なのに血が病的に苦手で医師に向いていないと言われ続けていた主人公は、とある事情から大学病院の膠原病内科に助手(パシリ?)として立ち会うことになり、目の前で繰り広げられる光景に戸惑い、自らの無知・無学を痛感し、「正解」のない現実に打ちひしがれる中で、多くのものを学んでいきます。
本作品の帯には、「膠原病内科は、患者の人生を背負う科なんだよ」と印刷されています。
これは作中に出てくるセリフですが、本作品は膠原病内科を舞台にすることによって、これまでの医療ドラマとは異なる切り口の作品となっており、感心しました。 -
Posted by ブクログ
牛島志季『ワル・ドクター 矯正医官シロウ』朝日文庫。
初読み作家。医師と作家の二足草鞋を履いているらしい。
タイトルとカバーイラストからどんな悪い医師が登場するのかと構えていたら、至極真っ当で真っ直ぐに我が道を行くという医師が主人公であった。
ストーリーも設定もなかなか面白い。恐らくシリーズ化されるのではなかろうか。
大学附属病院の同僚で、教授の虐めにより疲弊していた一色栄太の尊厳を守るために教授を殴ったことから、病院を追われた優秀な外科医の神志那士郎は教授の手回しにより他の病院からも採用されず、パチンコと酒に明け暮れる日々を送っていた。
ある日、そんな神志那の元を大和医療刑務所の所長が鳶野栄恵が訪れ、刑務所で受刑者を診る矯正医官に採用したいと申し出る。神志那は一度その誘いを断るが、友人である波土清司の意見を聞き、矯正医官の道を目指すことを決意する。
いざ医療刑務所に出勤した神志那は、全てのドアや引き出しに鍵が掛かり、聴診器やペンライトといった医療器具も机の上には放置出来ず、医療従事者同士も名前で呼ぶ事を禁じられ、余りの勝手の違いに戸惑う。
一筋縄では行かない受刑者の診療に当たりながら神志那は再び医師としての矜持に目覚めていく。
本体価格740円
★★★★