志駕晃のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
志駕晃『令和 人間椅子』文春文庫。
江戸川乱歩の数々の傑作をベースに現代風にアレンジした短編6編を収録。最初は駐車券江戸川乱歩の功績を踏み躙るような、あからさまな盗作短編集と思ったが、読み進むうちにこういう短編も面白いと思うようになった。
『令和 人間椅子』。前半は江戸川乱歩の『人間椅子』を現代に置き換えただけの展開なのだが、最後に大きな捻りがある。大学在学中に作家デビューした美子に突然送られてきた原稿は、AIが搭載されたマッサージチェアが書いたという美子の私生活を赤裸々に綴った小説だった。
『令和 屋根裏の散歩者』。こちらも前半は江戸川乱歩の傑作を現代に置き換えた展開から始まる。原作の方は屋根裏から下の部屋で寝起きする男を毒殺する事件があり、名探偵・明智小五郎がトリックを解き明かすという話である。こちらはさらにその裏をかくような内容であった。仮想通貨の取引で違法すれすれのハッキングで大金を得た二郎は、マンションの下の部屋に越してきた女子大生に恋をしてしまい、次第にストーキング行為がエスカレートしていく。
『令和 人でなしの恋』。この短編では江戸川乱歩の原作を大きく捻っている。所謂、フィギュアオタク的な自分には到底理解出来ない世界が描かれる。マッチングアプリで知り合い結婚した総資産100億の実業家である昌彦は理想的な夫だと思ったが、時折、妻の遥香の目を盗んで出掛けていた。昌彦の浮気を疑う遥香は……
『令和 赤い部屋』。江戸川乱歩の原作に描かれるプロバビリティーの犯罪をどう表現するかが見物だったが、現代風にサイバー犯罪の味付けをして上手く昇華させているようだ。参加者は服も背景も赤一色の赤い部屋。この異様なオンラインサロンの参加者は、全員がサイバー犯罪の首謀者たちだった。
『令和 一人二役』。江戸川乱歩の『一人二役』とは全く異なり、様々な一人二役が描かれる。人間には表の顔があれば裏の顔もある。ここまでの4編の短編に登場した人物たちも顔を出すという面白い趣向の短編。劇団「X」に所属する女優の卵・小夜子はマッチングアプリで色々な女性に成りすますサクラのアルバイトで食いつないでいた。
『令和 陰獣』。江戸川乱歩の『陰獣』と『一人二役』をミックスしたような『令和 一人二役』の続編みたいな短編であった。本作に収録されていた『令和 人間椅子』を読んだという愛莉という名の読者からの熱烈なファンレターをもらった作家。
本体価格770円
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Posted by ブクログ
ネタバレタイトルが面白そうだったのと、「スマホを落としただけなのに」の作者の作品だと知って興味が湧いたため手に取った。
この本の面白いところは、細かい伏線が随所に張られていることだ。だからこそ、後半で伏線がどんどん回収されていくときに、ゾワゾワしてしまった。何より、鈴木の周囲の人間の様子がおかしくなるに従って、「鈴木どうにか最後まで生き残って〜」と思いながら読み進めてしまうほど、物語に熱中していた。しかし、結果的に鈴木は自殺という道を選択してしまう。
この作品の恐ろしいところは、鈴木に感情移入させておきながら、その鈴木本人が実は洗脳されていたことが終盤で明かされる点だ。人間の脳がいかに脆く、洗脳されやすいのかを考えさせられた。それと同時に、私自身も洗脳されているのではないかと思うようにもなった。私の価値観や思想というのは、果たして本当に私の意思で形成されたものなのだろうか。私が見るツイート、私がフォローするインスタグラマーは、果たして私の思考がどれほど反映された結果表示されたものなのだろうか。現代においてそんなことを考えるとキリがないのも事実だが、同時に、私たちが人間らしくあるためにもこの問いに向き合うことは重要だと思う。本作は、私に洗脳やネット社会、AI技術の恐ろしさを改めて感じさせた。