志駕晃のレビュー一覧
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志駕晃『令和 人間椅子』文春文庫。
江戸川乱歩の数々の傑作をベースに現代風にアレンジした短編6編を収録。最初は駐車券江戸川乱歩の功績を踏み躙るような、あからさまな盗作短編集と思ったが、読み進むうちにこういう短編も面白いと思うようになった。
『令和 人間椅子』。前半は江戸川乱歩の『人間椅子』を現代に置き換えただけの展開なのだが、最後に大きな捻りがある。大学在学中に作家デビューした美子に突然送られてきた原稿は、AIが搭載されたマッサージチェアが書いたという美子の私生活を赤裸々に綴った小説だった。
『令和 屋根裏の散歩者』。こちらも前半は江戸川乱歩の傑作を現代に置き換えた展開から始まる。原作の -
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ネタバレタイトルが面白そうだったのと、「スマホを落としただけなのに」の作者の作品だと知って興味が湧いたため手に取った。
この本の面白いところは、細かい伏線が随所に張られていることだ。だからこそ、後半で伏線がどんどん回収されていくときに、ゾワゾワしてしまった。何より、鈴木の周囲の人間の様子がおかしくなるに従って、「鈴木どうにか最後まで生き残って〜」と思いながら読み進めてしまうほど、物語に熱中していた。しかし、結果的に鈴木は自殺という道を選択してしまう。
この作品の恐ろしいところは、鈴木に感情移入させておきながら、その鈴木本人が実は洗脳されていたことが終盤で明かされる点だ。人間の脳がいかに脆く、洗脳されや -
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うっかりスマホを落としたことが大きな災難に繋がっていく恐ろしさを描いたホラーミステリー。
シリーズ3作目。全6章。全7章とエピローグからなる。
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あのサイコパス・浦井がまたしても登場します。
浦井はサイバー・テロリストとして、なんと北朝鮮に招聘されるという設定です。なのに大した働きを見せず自身の欲望のために動こうとするのは浦井らしくてよかった。
しかし何よりおもしろかったのは、浦井と桐野刑事との間に芽生えている奇妙な友情です。そのあたりは『新宿鮫』の鮫島と仙田を彷彿とさせてくれます。
だから2人のやりとりも作品を読む楽しみになっています。 ( クラ -
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うっかりスマホを落としたことが大きな災難に繋がっていく恐ろしさを描いたホラーミステリー。
シリーズ2作目。全6章。
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前作で逮捕されたサイコパス・浦井が活躍。重要な役どころであり、主役と言ってもいいほどです。まずこの設定に意表を突かれました。
さらに警察側の主役としてサイバー犯罪担当の桐野刑事が登場。これで物語にグッと安定感が出ました。
さて今回も息もつかせぬ展開で、やはりラストで作者にしてやられました。
森岡が怪しいことはバレバレなので逮捕されても警戒を緩めなかったのだけれど、その動機となった恋慕が明らかになったところで気を抜いたのが間違いでした