チョ・ナムジュのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
82年生まれ、キム・ジヨン
著者:チョ・ナムジュ
子育て中に異常行動が表れた1人の女性患者のカウンセリング記録という形で進行していく小説。
過去から現在に至るまでの韓国社会における女性差別の実態を告発するかのような内容で、フェミニズム本のような読み味だった。
出生、進学、就職、所得、結婚、育児
様々な点においての男女格差を極めて普遍的に描いており、その普遍さが薄い膜のように作品を纏い、とても不気味で恐ろしいものに感じた。
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「でもさ、ジヨン、失うもののことばかり考えないで、得るものについて考えてごらんよ。親になる事がどんなに意味のある、感動的なことかをさ。それに、本当に預け先がなくて、最悪、君が会社を辞めることになったとしても心配しないで。僕が責任を持つから。君にお金を稼いでこいなんて言わないから」
「それで、あなたが失うものは何なの?」
「え?」
「失うもののことばかり考えるなって言うけど、私は今の若さも、健康も、職場や同僚や友だちっていう社内的ネットワークも、今までの計画も、未来も、全部失うかもしれないんだよ。だから失うもののことばかり考えちゃうんだよ。だけど、あなたは何を失うの?」p149
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女性として生まれたが為に、
周りのみんながそうであるように、
当たり前のように諦めなければいけない事はあって良いものなのだろうか。
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法律や制度が価値観を変えるのか、
価値観が法律や制度を牽引するのかと。p145
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女性差別はどの国でも共通する重要なトピックであると同時に、その実態として掲げた理想との大きな矛盾が生じていることも再認識する必要があると感じた。
それを象徴するかのような結末には本当に救いの無いどうしようもなさが集約されていた。そして解説を読んで、さらに恐ろしい著者の意図に震えた。
これは決して他人事では無い。 -
Posted by ブクログ
読んでてしんどくなる作品だった。でも内容は興味深いしもちろんストーリーとして良い。男女どちらも読むべき。
韓国の文化をよく学べた本だった、一部フィクションもあるかもしれないけど。
どの本よりも怖いしこんな世の中嫌だと思えるけど、日本でも身に覚えありそうなことばかりなのが余計しんどい。
なんで女性というだけでレッテルを貼られて、中身を見てくれないんだろう。今はもう女性だから大学は行かなくて良いとかは言われない時代だけど、完全に男女差が無くなったわけじゃないよね。
男女どちらも出産できるようにして、ほとんど身体の個体差もなくなれば、こんな嫌な世の中じゃなくなるんだろうか。 -
Posted by ブクログ
フェミニズム小説として評判になっていたのは知っていたので購入だけはしておいたが、ようやく読むことができた。
解説にもあるとおり、確かにこの本を読めば、「これは、まさに私の話です!」と多くの女性が共感したことも納得できる。「男性と女性の扱いがこんなに違うのはなぜ」、「どうして私がこんな目にあうの」というように、家庭、学校、就職、職場、結婚、出産といった人生の様々な場所やステージにおいて、偏見や差別を受けてきたのだろう。
82年生まれのキム・ジヨンに対して、自分は60年代前半生まれの男性。本書に書かれている「性の鑑別と女児の堕胎が大っぴらに行われていた」という韓国の状況ほどではないが、自分の子ども時代には、男の子を生んで嫁としてやっと一人前と言われていたり、学校の生徒会長や学級委員長がほぼ男子だった時代だった。成人の頃やっと均等法が施行されるなどしたが、女性が責任ある仕事を任されることは少なかったし、職場や接待の飲み会の場ではお酌の役割りを振られたりセクハラする人間も当たり前にいる時代で、本書に描かれていることのほとんどが「日本も当時はそうだったなあ」と思えることばかりだ。今考えると信じられないようなことなのだが、女性の嫌な思いというものを実感できていなかったし、自分がそのような状況を少しでも変えるために何かしたということもない。
制度的には男女差別的な取扱いは少なくなっているのだろうが、形になっていない差別や多くの男性が持っているだろう無意識な偏見というものはきっとあちこちにあるのだろう。
女性にとっては勇気を与え、男性にとっては自らの意識や態度に自己反省を迫る一冊だと思う。 -
Posted by ブクログ
チョ・ナムジュさん、『82年生まれ、キム・ジヨン』に次いで2冊目。韓国社会の性差別問題を扱った『キム・ジヨン』は、#Me Too運動からフェミニズムへと社会の潮目を変える契機となったとか…。本作はその延長線上にある短編集です。
60人余りの様々な年代の女性への取材をもとにした、「私」の一人称で展開する物語です。『キム・ジヨン』よりも更に視野が広がったこと、そして女性たちが目の前の難題に抗い、声を上げ行動している描写が印象に残ります。
4章立てで、次第に年齢層が上がり、立場や社会的責任の異なる28人の女性が紹介される構成になっています。"目の前の難題"は多様で、深刻度の高低はあるものの、共通するのはやはり女性たちの生きにくさへの抵抗だと感じます。
本書の発行は2018年のようですが、果たして現在、韓国社会に潜む女性差別や困難は、どれだけ改善されているのでしょうか?
というか、これらの物語の舞台が、日本だとしても(悲しいかな)違和感なく受け入れられそうです。なにせジェンダーギャップ指数は、日本の方が韓国より低いですもんね。ちょっと調べたら、2025年ランキング結果だと韓国101位、日本118位!←かなり恥ずかしい…。この低さは、今の現実と大して変わっていないことを示しているのか?
やはり韓国女性の方が声を上げる人が多い印象?男女関係なく、誰かが犠牲にならず我慢もせず、自分らしく生きることができる社会は絶対大事ですね。自分の価値を自分で下げない生き方が問われている気がしました。
世の男性、組織のトップの面々が、どう当事者意識をもてるかもかなり重要だと痛感します。本書の陰には、著者の黙認ではない前進し続ける姿勢が満ちあふれていました。
※偶然にも、現役トップ女流棋士の福間香奈さんが、妊娠・出産をめぐる連盟規定に対し、見直しを求める意見書を提出した報道が話題(波紋?)となりました。柔軟で理解ある連盟対応を望みます。 -
Posted by ブクログ
ここのところの姑の体調不良を見ているせいか、どうも年を取ることに対して臆病になっている自分がいる。60を越えた自分の顔を鏡で見るたびがっかりするし、鏡よりひどいのは写真に写った自分の姿。がっかりなんてもんじゃないので、なるべく撮らないようにしている。
息子はもう自立しているし、細々やりたいことはあれど、やらなきゃならないこともない。もうこの辺でいいかなあなんて思ってみたりする。こんなことを書くと怒られるかもしれないが、私は、自分の命の最後は自分で決めていいと思っているので。病院でたくさんの管に繋がれて生き延びるなんて絶対やだ。
と思っていたら、この本に出てくる卒寿に近いおばあさんが、
「長~く、生きさせてください!人工呼吸器でもなんでも、ぜ~んぶぶら下げてください。見栄えが良く死んだってなんの意味もない。きれいじゃなくても、長~く、生きてやるんだから。このいい世の中で、ずっとずっと息しててやるんだから!」
(『オーロラの夜』チョ・ナムジュ著)
と、イエローナイフのオーロラに願い事を叫んでいたのを読んで、なんだかすごい生命のエネルギーがこちらにも注入されるのを感じた。なかなかのパワーに圧倒されつつも、すてきなばあさんだと思った。
この本には7つの物語が収録されている。
さまざまな女性のエピソードが描かれていて、女性ならば多かれ少なかれ同じような体験をしているのではないか、と思う。共感できたり、嫌悪したり、涙したり、怒ったり、女性には結構ハードな話で、読み進めるのが辛くなることもある。しかしそんな中にも、少し救いがあるのがうれしい。
韓国で炎上?したらしい、ベストセラー『82年生まれ、キム・ジヨン』をめぐる作者のその後(その時の気持ち?)の物語があると聞いて手に取ったこの本。目的の『誤記』よりも、他の作品の方が良かった。
特に、デビュー作『ミス・キムは知っている』は、クビにされたミス・キムがいなくなった会社のてんやわんやがなかなかおもしろかったし、『梅の木の下』は克明に描かれた老いの描写に、今以上に老いるのが嫌になった。一番前向きになれた『オーロラの夜』が姑と暮らす私(物語と違って、幸い、夫は健在)の一番のお気に入りかな。
男性にも読んでほしいとは思うが、どれほど理解してもらえるかはわからない。女性には一度は読んでほしい本だ。 -
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ネタバレ最終章、ジンギョンが総理館に乗り込んで行くシーンは映画さながらだが、結局ウミもトギョンも生きていたのかどうかわからず、唐突な感じで終わるので不完全燃焼。
ただしサハマンションの薄暗い感じや湿度、物音、そこでの生活の描写とここに逃げ込まずにいられなかった人の背景などのストーリーと文体はとても引き込まれた。
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■214号室、サラ
「ナプキンを出して鶴を折った。ナプキンとしては厚くてしっかりした紙で、気をつけて折ると十分に思い通りの形に折れた。以後、ヨナは夫に殴られるたびにナプキンで折り鶴を折った。一日に一個だけの日もあれば、三羽、四羽と折る日もあった。窓枠の上に一列に並べた折り鶴が百羽になった日、ヨナは夫から逃げ出した」
■714号、スーとトギョン
サハマンションの子どもたちを自主的に診療している女医のスー。賢く勇敢でユーモアもあるスーがあっけなく崩壊するさまが悲しい。
「みんなが、ええーって思わないかな? 全員で似たような生活してるのに、僕らだけそんなピカピカ生活をしたら?」
「それがピカピカなの? 水が出て寒さ暑さを防げるっていうのが? それはただの基本でしょ。どうしてずっとこんな不便な暮らしをしなくちゃいけないって思ってるの? 直しながら住もうよ。私たちがやったら、他の人たちも真似するよ」
スーの言う通りだった。トギョンを非難しているわけでもせかしているわけでもなかった。だがトギョンは心が辛くなった。
「ここで何も持たず、何もできずに暮らしていたら、そういう決心をするのは簡単じゃないんだよ。サハマンションの人たちがばかだからでも、怠け者だからでもないんだ」
「だから私みたいな人間が必要になるの。私はいろいろ持ってるし、いろいろできるし、あなたが好きだから」
■その他のひとびと
・ウンジン
児童養護施設で育った女性。幼い頃から年下の子供の面倒を見るのがうまく、困難を乗り越えて保育士となりマンションを出るが感染症で亡くなる。チョークで地面に描く遊びを無限に知っていて、折り紙も数限りなく知っている彼女がなぜ死ななくてはならなかったのかと辛くなる
・花ばあさん
昔、助産婦をしている際、無免許で少女の堕胎をほどこし、死亡させてしまったことからマンションに逃げ込む。ウミもウヨンも花ばあさんに育てられた
・ウミ
大柄な身体を持つ女性。花ばあさんに育てられた。謎の研究室に定期的に通い、どうやら研究材料にされているらしい。交通費として支給されていたタクシー代を花ばあさんが使わずに自分の養育費に充てていたことに気づくシーンは切ない。 -
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これも『82年生まれ、キム・ジヨン』からの流れで読んだ。同じ作者の短編集なんだけど、どれも読んでて苦しくなるような話が多くて1話読み終えるたびにけっこう疲弊した。なので進むペースは遅くなったけど、そのぶん一つひとつをちゃんと受け止めながら読めた気もする。
苦しさのなかに、ほんの少しの希望が見える話もあって、ただ絶望を突きつけられるだけじゃないのが救いだった。中には連作っぽくつながっている話もあって、小説としての構成も面白い。
フィクションなんだけど、全然他人事に思えなかった。描かれていることの多くが、今も現実に起きていることなんだと思いながら読んでた。社会の側が当たり前のように押しつけてる役割とか沈黙とか、そういうものが物語の中に静かに埋め込まれててそれがリアルだった。 -
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28の物語を収めたこの短編集では、28人分の女性の人生の一部分がそれぞれ描き出されています。いずれも、韓国の現代社会に生きる女性たちの、きっとリアルな生き様で、国を超えて共感できる部分も少なくありません。
セクハラとたたかう女性、結婚が招く理不尽さにあえぐ女性、労働環境の改善を訴える女性。日常のつらさに直面して、切り開こうと努力する、あるいは受け入れて消化する、彼女たちの問題への対処のスタイルはそれぞれだけれども、芯があってその道行きを応援したいと静かに思う。女だからではなく、人として当たり前のしあわせを掴んで欲しい、と思うから。
最後の一編は小学生の出馬宣言で締めくくられます。どこか背伸びしたような、けれど純然として理路整然なうつくしい問題提起が、問題として受け入れられる社会になるよう、願ってやみません。 -
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それぞれの話の背景には住宅格差、厳しい学歴社会、就職難、ストライキ、デモ参加などが見え、日本社会ではそれほど馴染みがないこれらに「韓国って日本より過酷だな」と呑気に思ってしまうかもしれない。しかし解説にある通り、男女格差は日本の方が遥かに遅れており、危機感を持ちたいところだ。韓国のジェンダーギャップ指数が日本を上回ったのはこの本の女性たちのように声を上げ続ける人がいたからだ。著者がこの本や『82年生まれ、キム・ジヨン』を書いたように、作家たちが世界に発信し続けているからだ。
28人の韓国人女性たちの声が聞こえる。日本人であっても女性ならばきっと誰かに共感し、互いを抱きしめ合いたいと思うだろう。男性読者は、身近な女性たちの苦しみがここに書かれていると理解できてほしい。自分を含め日本人はもっと今の社会に対して声を上げなければ。フェミニズムだけでなくストライキやデモ参加だってもっと近くにあって良いと思う。冷笑して距離を取るのではなく。
解説の桜庭一樹の、家父長制の悪を凝縮したグロいエピソードが強烈すぎて呆気に取られた。もうこういう発言を浴びせられる人がいませんように、と願っているけれどきっとまだ道のりは遠い。私も岩に卵を投げつけるひとりとなろう。 -
Posted by ブクログ
ソヨン洞のマンションを舞台にした連作短編集。
書評家の三宅香帆さんがこの作品を韓国版タワマン文学だ!と言っていて、興味が出て読みました。
もっと下世話な話なのかと勝手に想像していたのですが、実際読んでみるとソヨン洞という架空の都市を舞台にして人の感情の機微を繊細に描いた作品でした。とても面白かったです。
作者のチョ・ナムジュさんは日本の読者への後書きの中で「私が伝えたかったのは、個人ではどうすることもできない時代と社会の不幸を前に、我々はどんな選択をできるのか、どんな態度をとるべきかという悩み、さらには人間らしさを失わずに生きる方法に対する問いかけでした」と述べています。
作中でテーマになっている韓国の不動産バブル、所得格差、教育問題等は、日本も同じような問題を抱えているので、とても馴染み深く共感しやすい話でした。
中でも『警告マン』『百雲学院連合会の会長、ギョンファ』『不思議の国のエリー』が特に良かったです。 -
Posted by ブクログ
フェミニズム小説といえば真っ先にタイトルがあがる作品の一つであろう本作をやっと読みました。
日本においてたまたま女の体で生まれたというだけで理不尽な苦痛や困難を社会に強いられてきた人はたくさんいて、私もその一人。今でも悔しい思いをすることがあるし、それらの体験は後々も思い出して怒りに震え、決して忘れることはありません。この小説は韓国が舞台ですが、私たちが経験したこと、していること、見たこと、聞いたことが詰まっていて「これは私の話だ」となります。どこかで傷つき、しかしそれをなかったことにしてどうにか生きてきた自分を抱きしめることができたように思います。
本編後には、この小説の巧みな構成についてや、日本社会との文化の違い、フェミニズムの広がりについてなどを著者や訳者が解説していて、新たな気づきがあって充実しています。