チョ・ナムジュのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ最終章、ジンギョンが総理館に乗り込んで行くシーンは映画さながらだが、結局ウミもトギョンも生きていたのかどうかわからず、唐突な感じで終わるので不完全燃焼。
ただしサハマンションの薄暗い感じや湿度、物音、そこでの生活の描写とここに逃げ込まずにいられなかった人の背景などのストーリーと文体はとても引き込まれた。
チョ・ナムジュはもっと読みたい
■214号室、サラ
「ナプキンを出して鶴を折った。ナプキンとしては厚くてしっかりした紙で、気をつけて折ると十分に思い通りの形に折れた。以後、ヨナは夫に殴られるたびにナプキンで折り鶴を折った。一日に一個だけの日もあれば、三羽、四羽と折る日もあった。窓枠の上に一列 -
Posted by ブクログ
これも『82年生まれ、キム・ジヨン』からの流れで読んだ。同じ作者の短編集なんだけど、どれも読んでて苦しくなるような話が多くて1話読み終えるたびにけっこう疲弊した。なので進むペースは遅くなったけど、そのぶん一つひとつをちゃんと受け止めながら読めた気もする。
苦しさのなかに、ほんの少しの希望が見える話もあって、ただ絶望を突きつけられるだけじゃないのが救いだった。中には連作っぽくつながっている話もあって、小説としての構成も面白い。
フィクションなんだけど、全然他人事に思えなかった。描かれていることの多くが、今も現実に起きていることなんだと思いながら読んでた。社会の側が当たり前のように押しつけてる -
Posted by ブクログ
28の物語を収めたこの短編集では、28人分の女性の人生の一部分がそれぞれ描き出されています。いずれも、韓国の現代社会に生きる女性たちの、きっとリアルな生き様で、国を超えて共感できる部分も少なくありません。
セクハラとたたかう女性、結婚が招く理不尽さにあえぐ女性、労働環境の改善を訴える女性。日常のつらさに直面して、切り開こうと努力する、あるいは受け入れて消化する、彼女たちの問題への対処のスタイルはそれぞれだけれども、芯があってその道行きを応援したいと静かに思う。女だからではなく、人として当たり前のしあわせを掴んで欲しい、と思うから。
最後の一編は小学生の出馬宣言で締めくくられます。どこか背伸び -
Posted by ブクログ
ネタバレ初韓国文学、初フェミニズム小説。
読む前はタイトルに惹かれただけで、フェミニズム文学とは知らなかったけど、読んでいくうちに日本でも同じようなことが起きているなと思った。
ネットでフェミニストはバカにされる対象だし、逆差別という主張はレディースデイ、レディース割への反論でも記憶に新しい。ミソジニー的な犯罪や発言は溢れかえっているし、2025年の今の日本でもホット。
なぜここまで性別で揉めるのかと考えると、解説にあるように自分にはない特権を持っていると捉えてしまうことが発端で、女性だけでなく多岐にわたるマイノリティへのヘイトの多くがこれ。
それってつまり、みんなが苦しんでいる証拠かなと。政治や経 -
Posted by ブクログ
それぞれの話の背景には住宅格差、厳しい学歴社会、就職難、ストライキ、デモ参加などが見え、日本社会ではそれほど馴染みがないこれらに「韓国って日本より過酷だな」と呑気に思ってしまうかもしれない。しかし解説にある通り、男女格差は日本の方が遥かに遅れており、危機感を持ちたいところだ。韓国のジェンダーギャップ指数が日本を上回ったのはこの本の女性たちのように声を上げ続ける人がいたからだ。著者がこの本や『82年生まれ、キム・ジヨン』を書いたように、作家たちが世界に発信し続けているからだ。
28人の韓国人女性たちの声が聞こえる。日本人であっても女性ならばきっと誰かに共感し、互いを抱きしめ合いたいと思うだろう -
Posted by ブクログ
ソヨン洞のマンションを舞台にした連作短編集。
書評家の三宅香帆さんがこの作品を韓国版タワマン文学だ!と言っていて、興味が出て読みました。
もっと下世話な話なのかと勝手に想像していたのですが、実際読んでみるとソヨン洞という架空の都市を舞台にして人の感情の機微を繊細に描いた作品でした。とても面白かったです。
作者のチョ・ナムジュさんは日本の読者への後書きの中で「私が伝えたかったのは、個人ではどうすることもできない時代と社会の不幸を前に、我々はどんな選択をできるのか、どんな態度をとるべきかという悩み、さらには人間らしさを失わずに生きる方法に対する問いかけでした」と述べています。
作中でテーマになっ