チョ・ナムジュのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
チョ・ナムジュさんといえば、著書「82年生まれ、キム・ジヨン」がベストセラーとなり、多くの国で翻訳、映画化にもなったのでご存じの方も多いと思います。
私も韓国ドラマから韓国の文化に興味を持ち始め、音楽とともに文学作品として読んだのも彼女のこの作品が初でした。
今回は不動産ブーム、過熱化した教育熱、所得格差を、連作短編集という形で書かれています。
登場人物もソヨン洞のマンションを介してつながっており、意外な場面で意外な人物が再登場する。
「訳者あとがき」抜粋
このつながりと登場場面により、登場人物の人物像が変化するあたりも秀逸です。
そしてこの作品以降、彼女の作品の翻訳本が出るたび、読 -
Posted by ブクログ
“答えられなかった。言ったところで、あなたに理解できるだろうか。大学を卒業もしないうちから、ソウルの超高層複合型マンションの一室を所有することになったあなたに、叔父さんのレストランから伯父さんの会社に転職したあなたに、家族のグループトークに親が載せる海外旅行の写真に、何も考えずスタンプを押せるあなたに、そのすべてがごく当たり前で自然なことだと思っているあなたに理解できるだろうか。”(p.64)
「理解できるだろうか」は絶対に理解されないことを深く思い知っている人の反語表現だ。だから親近感をおぼえた。あなたの孤独や諦念に似たものをわたしも知ってるよ、と。読んでいて悲しくなったがこの部分がいち -
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キム・イルは、知能が少し下回るためクラスメイトや
両親からも「ばか」と言われている。
ただ、聴く力だけは誰にも負けなかった。
〈見ないでいることはできるし話さないでいることもできるが、
聞かないでいることはできない〉
P146
周りの大人たちがキム・イルを追い詰めていく。
「スリーカップゲーム」大会を開催し
・客足が途絶えがちな市場を盛り上げよう。
・スリーカップ大会を放送し視聴率を稼ぐ。
・聴力がずば抜けている息子を大会に出場させ
賞金を手にしようと目論む両親。
無言で孤独なキム・イル。
反対に、大いに盛り上がり、そして堕ちていく大人たち。
違う世界で生きられたら、救われていただろう -
Posted by ブクログ
ネタバレ抑圧されたタウンの、階級の底辺でもがきながら生きる人々の話。
ひとつの国家が誕生し、それに立ち会った人々の苦悩と、国の外から逃れサハに行き着いた人たち。
そこで生まれた二世、三世にとっては当たり前の世界が、大人になるにつれ、寛容できなくなっていく様子。
サハの住民それぞれの視点で描かれる。
差別、偏見、抑圧の中で生きるサハマンションの人々のリアルが辛い。とてもフィクションとは思えない。どこの世界でも起こり得ることだ。
韓国での社会問題を多数組み込まれて作られた話という事で、作者の現代社会への問題提起を感じた。
全ての人々の話がラストに向けて繋がる訳ではなく、その世界のマンションの住人のエピ