宮脇孝雄のレビュー一覧
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悪夢の中を彷徨っているのか…? 物の怪に襲われるような感覚に浸れる幻想&ホラー作品集 #悪夢工場
■きっと読みたくなるレビュー
タイトル通り、悪夢の中を彷徨っているような体験をさせてくれる幻想&ホラー作品集。
数行読み進めるたびに理解が追い付かなくなるという魔の小説。たぶん読書力がどれだけあっても全部を解釈できる人はいないんじゃなの? というほど難解。ただ決してつまらない訳ではなく、むしろ物語に吸い込まれてしまうように、むさぼって読んじゃうんすよねー
誰しも一度は存在意義ってのを考えてしまうけど、こういった虚無感と超現実に満ちた物語に浸っていると、モノノケに襲われるような気分になるんすよ。何が書いてあるのか、さっぱりわからんってのを如何に楽しむかがポイントですね。たぶん何度も何度も読んで、写経くらいしてみると理解できるかもしれないと思いました。
■お気に入り作品の簡単レビュー
●戯れ
刑務所のある街にきた精神科医の物語、妻との仕事の愚痴をこぼすが…
比較的分かりやすい作品で導入には良いですね。終始ずっと不愉快な気分にさせてくれる、そして終盤は命を奪われていくような恐怖が味わえます。
●道化師の最後の祭り
人類学の教師がミロコーという街の奇妙な祭りを体験する物語。その奇祭の道化師とは何なのか?
この街や祭りが不気味なんすよ、暑苦しいというか、むさくるしいというか、いやーな臭いが漂ってくる。道化師をどう解釈するのかなんだけど、人間の不愉快さしか伝わってこない。
●ツァラル
骸骨町と呼ばれる廃墟に人が集まってくるところから始まる…
何が起きているのかよくわかんないんだけど、やたら陰鬱な群像劇、なのか?途中時系列が変わったり、生きる意味なんてねーよと否定されているような気がしながらも、結局は判然としない。ラストはひたすら後味が悪い。
●赤塔
廃墟と化した赤色の工場、操業停止になった理由は…
相変わらず、ずっとネガティブが文字で埋め尽くされる。結局、何を作っている工場やねんっという疑問はあたりまえのように理解はできない。ただ他の作品よりは生命力、前向きさを感じる作品ではありました。
■ぜっさん推しポイント
この本の装丁ですよ。カバー、見返し、天、血、小口など、すべてが「真っ赤」。赤って恐怖や不穏な興奮を感じさせる色ですよねー、本作の性癖が伝わってきました。悪夢を見ているような不条理さと狂気性を楽しみましょう~ -
Posted by ブクログ
ネタバレまだ上巻なので作品のできについての判断はできないけれど、あまりにも衒学過ぎてとっつきにくいにもほどがあると最初はうんざりした。
何しろ17世紀のイギリスの話で、第一章の語り手はイギリスに着いたばかりのヴェネツィアの若者。
多分本人による手記よりも会話は困難を極めただろうし、それに伴う勘違いのようなボタンの掛け違いもあっただろうし、文化の違いによるバイアスもかかっただろう。
何よりも、宗教の違いは大きい。
語り手は敬虔なカトリック教徒であり、英国は英国国教会を国教としている国。
日本人から見ると同じ神を信じているはずなのに、神に対する姿勢は全く違う。
”プロテスタントがよく聖書の引用をして競い合うのはどう考えても馬鹿ばかしいことだったし、場合によっては神への冒瀆に当たるのではないか、とさえ思っている。”
これと同じことをモンテーニュも『エセー』の中で書いていましたね。
さて、多少世間知らずなところがあるとはいえ、医学生として病人を見ると治療せずにはいられない好青年のマルコ・ダ・コーラの手記が第一章に当たる。
実家は裕福ではあるものの、信頼していた人にイギリスでの財産を横領され、それを取り返すべく野蛮な国イギリスにやってきたわけだけど、どこで誰に訴えていいのかもわからないし、手持ちの金も不如意の状態。
それでも、イギリス人の文化程度の低さも不衛生も我慢し、極力プライドを抑えてオックスフォードの学生としての人脈を広げようと努力を怠らない。
たとえ空回りをしようとも。
ふとしたことで一人の老女の治療をすることになるが、どう見ても手の施しようがない。
看病している娘のサラは顔はきれいでも性格は粗暴で、これ以上関わりたくないという思いと、輸血という新しい治療法を試してみたい気持ちとの間で揺れたコーラは、結局治療をすることで否応なく事件に巻き込まれていく。
オックスフォードの教師グローヴが、自宅の室内で誰かに毒殺された。
どういうわけか最初からサラが犯人であるといううわさが流れ、証拠も提出される。
サラは罪を認め絞首刑となり、一度は持ち直したサラの母も結局は命を喪ってしまう。
コーラはサラを火葬してやり、その母親の埋葬費も払ってイギリスを去り国へ帰ることにした。
そして二章に入ると、今度はコーラと何度か交流のあったジャック・プレストコットの手記となる。
なるほど、この本に4人の訳者がいるというのは、そういうことか。(全体が四章ある)
プレストコットは第一章では、オックスフォード大学の法学徒であり恩人を殺害しようとした罪で死刑を待つ囚人だった。
しかし、プレストコットはまず、コーラの手記には嘘があることを記す。
また、恣意的に記載されていないことのあることを指摘する。
自身の生い立ちを延々と書き連ね、それはそれで興味深いが、いったい私は何を読まされているのだ?と思った頃、プレストコットとサラの繫がりも明らかになる。
21世紀では考えられない関係性というしかない二人の因縁は、第一章でコーラが書いたようにサラの刑死という形で幕を下ろすのだけど、それで本当にいいのか?プレストコットよ。
グローヴの死の瞬間を立ち会ったプレストコットは、それについてあまり衝撃を受けていないようにも見え、少々メンタルが普通じゃないのかもしれないと思ったり。
この二人の手記は、それぞれに自分は善人であると思い、正しい行いをし、神に対して恥じることがないように書いていあるが、書かれている内容は必ずしも同じではない。
信用できる語り手なんて存在はない、というのがこのタイトル『指差す標識の事例』ってことなんだろうか。 -
Posted by ブクログ
17世紀のイギリスを舞台にした宗教と政争と策略をめぐる物語。4人の異なる男性(異邦人であるヴェネチアの商人、汚名を着せられ命を亡くした父親の名誉挽回に猛進する弁護士志望の若者、暗号を解く技能を使い自分も重要人物であると自負してやまない数学者、華々しい政治の舞台には縁遠いながら身分としてはジェントルマンである不器用な歴史学者)の手記で構成されていて、日本語訳はそれぞれ4人の翻訳者が担当したという凝った作品。ある出来事を別々の視点から語るという群像劇が好きなのでその点では楽しめましたが、世界史にも英国の歴史にも詳しくないので、実在の人物と史実をベースに架空の人物とフィクションを織り交ぜて良質な娯楽作品になっているものの、知識が足りずに(おそらくは)半分ほどしか理解していないのでは、という感触で申し訳ない気持ちです。読みながら芥川の『藪の中』を思い出していたら、役者あとがきにもそういう声があがっているがそれより『月長石』を挙げる方が妥当では、とありました。『月長石』も読んだと思うのですがそう言われてもあまりしっくりきませんでした。個人的には芥川と、夏目漱石の『こころ』の先生の独白を思い出しました。最後まで読むとある種のカタルシスが得られますが、そこに至るまでの長い道のりは自己愛に満ちた嫌な人物のひとりよがりな長口上を延々と聞かされるかのようで辟易しそうになったりもしましたが、そこを読み終えてこそ、4人目が語る事件後の話で気持ちがすっきりできたという面もあるように思いました。まだ記憶が残っているうちに再読したら、初見より楽しめるのではないかと思います。
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ネタバレ読み応えがあった。
語り手が変わるたびに意味が変わっていく出来事の連続で、主観が違うとこうも違うのかと。もちろんあえて真実を書いていない語り手も存在しているのだけど。2人目が1番手こずった。ちょっとどこまでが妄想なのか…。下巻に入ってからは割と一気に読めたかな。
手記ごとに訳者が違うも面白い。より一層、4人それぞれの視点、それぞれの物語へと入ってしまうので事実はさらにわからなくなっていく。
語り手が変わるたびに、ひっくり返されるミステリ。あまりこの時代の宗教戦争に詳しくないことが悔やまれたけれど…薔薇の名前を読んでみようと思う。 -
Posted by ブクログ
四人の語り手の手記により、大学で発生した毒殺事件と、その犯人と疑われた女性の運命如何を主筋として、イングランド王政復古時代の政治情勢や党派対立等を絡ませながら、物語は進んでいく。
ミステリとして見れば、信頼できない語り手の問題や語り=騙りといったことになるが、媚びず、卑屈にならず生きていくヒロインの人物造形が実に魅力的だと思った。
ヒロインのラストについては、ウーンという気持ちも拭えないが、語りの中で、そこまで含めて書かれているではないかと言えば、そうかもしれないと思わされる(ネタバレ気味の恐れもあるのでぼかしていますが、最後まで読まれた方には分かっていただきたい)。
本書では、実在の登場人物も多く、当時の医師の社会的立場だったり、輸血研究の先陣争いだったりと、興味深いトピックも面白いし、歴史小説としても読み応えがあると思われる。
ただ、少し注文が。年表や登場人物の表が付され、また訳者解説でも時代背景に触れられてはいるのだが、もう少し、この時代を巡るイングランドの政治党派関係や宗教的対立等について説明があれば、より人物関係の微妙さや出来事の意味合いについて理解が深まったのではないかと思う。 -
Posted by ブクログ
先ずは本書の無事刊行を寿ぎたい。
本書の帯とカバー裏には、『薔薇の名前』とクリスティの名作が融合と謳われているが、本作を手に取り、内容ではない別の面での『薔薇の名前』との共通点を思って、しばし感慨に耽った。
それは、日本語訳がなかなか出なかったということである。『薔薇の名前』が映画化された頃、原作ではアリストテレスやキリスト教、異端審問等に関わる内容が満載だということで、それらに纏わる蘊蓄本がだいぶ刊行されていたのだが、肝心の原作の翻訳が待てど暮らせど出ない、その出版社が東京創元社であった。
翻訳者の一人である日暮氏が、本書についての打合せの始まった時期のことを書いた文章を読んだが、20年以上前から作業は開始されていたようだし、訳者の東江氏の御逝去という事情もあったりと、本書刊行まで難航したことが窺える。そうした困難を乗り越え、刊行に至り、この大作を読むことができたことに、何はともあれ感謝したい。
感想は、下巻にて。 -
Posted by ブクログ
翻訳ものの小説を読んでいて、何度か読み返す箇所が出てくることがある。あれ、これってどういう意味… よくわかんない… こんなことになる度に、ああ自分は読書好きなのに、なんて理解力がないんだ、こんなとこでつまづいてるのは自分だけに違いない!と思っていた。
だけど、この本を読んで、自分のせいじゃないこともあるのかと安心した。この本は、マズイ翻訳もあるってことがたくさんの例で説明されている。そうだったのかー、翻訳が違っていたのね。にしても、外国語のエキスパートであり、文章書きのエキスパートでもある翻訳者の方が出した本に、翻訳のミスがあるなんて誰が思うだろうか。私は全く思ってなかった。
翻訳本に関しては、賛否両論あるのも何度も目にしてきたが、そんなのは表現方法の違いだと思ってきた。でももしかしたら人にとっては許せない誤訳があるのかも… そして私が読んできた翻訳小説にも誤訳があったのかも…とちょっぴり切なくなった。
でも、外国語の優れた物語をこうやって私が楽しめてるのも、翻訳者様のおかげです。これから私も原文で読めるように頑張ります。 -
Posted by ブクログ
趣味で翻訳やってるけれど、いつも苦労をしている。でも、これを読んでると、本職の方でも普通に誤訳しまくりでそのまま出版もされていたりするから本当に翻訳は難しいと思う。
まぁ、誤訳のレベルが違うんだろうけどねw
翻訳のコツや、間違えやすい翻訳、翻訳を知るにはアメリカ英語ではなくイギリス英語を知らないとダメな点や、英和辞書よりも英英辞書、いろんなノウハウを知る事が出来た。
なにより翻訳のノウハウよりは、翻訳がいかに難しいかを今更思い知る。
そして、文学者が書いた英語ならまだしも、一般人が書いた英文なんか、誤字脱字だらけで文法もなっていない、それを翻訳するとなるとそれ以上の翻訳地獄が待っていそうだと。
サクッと読める本なので、翻訳に携わる事がある人は一度は目を通してみると面白いかもね。