あらすじ
翻訳業界の中でもその博識ぶりと名訳者ぶりがリスペクトされている宮脇孝雄氏による、翻訳者と志望者、英語学習者、海外文学愛好家に有用な珠玉のエッセー集。
「翻訳は難しい」とはよく言われること。文法的に一応正しく訳したつもりなのに、著者が本当に言いたいことはまるっきり伝わっていない―――そんなことがままあるのが「翻訳の世界」なのです。表層的な訳から脱したい、時代や文化背景の違いを乗り越えて、より正確でより魅力的な訳にたどりつきたい、ともがき苦しむ翻訳者たち。知恵を振り絞りあらゆる手段を使い、正しく訳せた時の歓びは格別ながら、心残りのある訳文しかひねり出せなかった時には悔いがいつまでも尾を引き……。
本書は、そんなちょっとマゾヒスティックな翻訳者や翻訳コンシャスな人々に贈る書。古今のさまざまなジャンルの英語の読み物に通じ、英語圏の文化や言葉への造詣が深い宮脇氏が、数多くの翻訳実例も引用しつつ、翻訳のやり方、アプローチ法を実践的に紹介します。読めば読むほど翻訳者の苦悩と奮闘、そして翻訳の奥深さ面白さがじわじわ伝わってくる一冊なのです。
●エッセー41篇が3つの章に分かれています。
1 翻訳ビギナー講座:単語の意味の選択の間違い、イディオム、構文のまずい訳し方など、翻訳者が最低限心得ておきたいこと
2 翻訳に必要な文化背景:歴史、習慣、風俗などについてのさまざまな調査をした上でさらに推理をすることが必要
3 実践的翻訳講座:「表現の翻訳」とはどういうことか。長めの英文を使った翻訳過程を実況中継的に
<目次より>
慣用句は時に破壊力のある地雷となる
謎の人物が出て来たらディケンズを当たれ!
翻訳で失われるものは意味だけではない
なぜカウボーイは独立分詞構文で描かれたのか?
【著者プロフィール】宮脇 孝雄:
翻訳家・随筆家。40年以上にわたり、ミステリ『死の蔵書』や文学作品『異邦人たちの慰め』など多様なジャンルの作品を手掛けてきた。翻訳に関するエッセイをはじめ、料理や英米文学・ミステリに関するエッセイ、評論も多い。現在、(株)日本ユニ・エージェンシーで翻訳教室を開講、専修大学で非常勤講師を務める。
主著:『翻訳の基本』『続・翻訳の基本』『英和翻訳基本事典』(研究社)
主訳書:『死の蔵書』『幻の特装本』『異邦人たちの慰め』(早川書房)、『ジーン・ウルフの記念日の本』『ソルトマーシュの殺人』(国書刊行会)
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Posted by ブクログ
読みにくい翻訳の本はあるけど、なんとなく把握できるので、あまり気にしてこなかった。
翻訳の趣味を始めて、この本を手に取り、面白かった。
誤訳の指摘も痛快。
全く逆の意味になってるものとか、原文のニュアンスを台無しにしているものとか。
その人の知識と力量が出てしまいますね。
Posted by ブクログ
先日、「誤訳も芸のうち」などと悪びれもせず堂々と言い切っている某翻訳家の本を読んだら、解釈と訳があまりにも気持ち悪くて大変にストレスがたまった。(「超訳」は芸のうちかもしれないと思うけど、誤訳は誤訳だろ、と言いたい。まあそのタイトルの本は読んでないけど)
とにかく「口直ししたい!」との思いから、宮脇氏のこの本を、砂漠で水を求める遭難者のような激しい渇望感で手にしました。
すばらしくおもしろかったです!!
宮脇氏の本の中で、一番おもしろかった。
口直しどころか、すごく幸せな気分になりました。というのも、全ページから、著者が読書や文学、もっと言えば、「知識そのもの」をいかに尊び愛しているかが伝わってきます。翻訳や英文解釈という技術的な解説もその愛がベースにあるので、表面的に終わらず奥深く掘り下げていて、そしてとってもおもしろい。
また、この本は「語学好きのためのブックガイド」的側面もあって、そのラインナップが浅学な私などは聞いたこともないような本ばかりで、しかも全部おもしろそう。
なんてことだ、全部は買えないし、読めない! どうしよう!なんて困ってしまう。
一番印象に残ったのは次の部分。
「イギリスの小説は、一見深刻そうな純文学でも、えぐいミステリでも、だいたいユーモア小説だと思っておけば間違いない。少なくとも、翻訳者から見れば、そういうことである」
初めて英語の小説を英語のままで読んだとき、一番に感じたのが、「英語の表現って、いつもどこかしらちょっとユーモラスなんだな」ということ。私が英語の文章を読むのが好きなのも、理由はそこなんだと言ってもいいかもしれない。
日本語という言語にはやや薄めの特性だからか、英語圏の人とのちょっとした会話においてもその違いを感じます。同じことを言うのにも、英語はクスっとくるような言い方をするというか。(日本語は逆に「しみじみとした表現」が得意だと思う)
英文のおかしみが、翻訳で消えてしまう実例、「語順を変えるだけで、原文の味わいを損ねることがある」(held at bayの章)などは、特に興味深かったです。
Posted by ブクログ
翻訳ミステリー好きの人や、日常で英語と関わる機会が多い人にはとても面白い一冊。翻訳者の頭の中が覗けて、どんな本を読んでいるかも紹介してあって興味深い。英語が出来るだけでは訳せない翻訳の奥深さが面白かった。
Posted by ブクログ
翻訳ものが大好きなので、このタイプの本も大好きです。
個人的には誤訳も何のその、気にならないタイプですが、確かに時々読みにくい翻訳があるなあ、と思っていたことに対して、回答を得たように思います。スッキリ。
翻訳から、いろんな雑学に発展する感じで、とてもおもしろいです。
残念なのは、引き合いに出されている本がどの本なのか、全部はわからないこと。繰り返します。ザンネン。
ですが、アベラールとエロイーズとグレアムグリーンの評伝は読んでみようと思いました(笑)
そしてまた死ぬまでに読みきれないほど、読みたい本ができてしまいました…
Posted by ブクログ
翻訳者の苦労が実例と共に説明されていて面白い。
英語を更に知ることもできて参考になる。
コンマ1つでそこまで意味が変わるとは意識していなかった。例えばEats, Shoots & Leavesについて。
『コンマが入っているので、「食べて、撃って、去る」だが、コンマがなければ、Eats Shoots & Leaves で、「(笹の)若枝と葉っぱを食べる」というパンダの話になる。』
書内で紹介されている書籍も面白そうなものがある。
Posted by ブクログ
翻訳ものの小説を読んでいて、何度か読み返す箇所が出てくることがある。あれ、これってどういう意味… よくわかんない… こんなことになる度に、ああ自分は読書好きなのに、なんて理解力がないんだ、こんなとこでつまづいてるのは自分だけに違いない!と思っていた。
だけど、この本を読んで、自分のせいじゃないこともあるのかと安心した。この本は、マズイ翻訳もあるってことがたくさんの例で説明されている。そうだったのかー、翻訳が違っていたのね。にしても、外国語のエキスパートであり、文章書きのエキスパートでもある翻訳者の方が出した本に、翻訳のミスがあるなんて誰が思うだろうか。私は全く思ってなかった。
翻訳本に関しては、賛否両論あるのも何度も目にしてきたが、そんなのは表現方法の違いだと思ってきた。でももしかしたら人にとっては許せない誤訳があるのかも… そして私が読んできた翻訳小説にも誤訳があったのかも…とちょっぴり切なくなった。
でも、外国語の優れた物語をこうやって私が楽しめてるのも、翻訳者様のおかげです。これから私も原文で読めるように頑張ります。
Posted by ブクログ
趣味で翻訳やってるけれど、いつも苦労をしている。でも、これを読んでると、本職の方でも普通に誤訳しまくりでそのまま出版もされていたりするから本当に翻訳は難しいと思う。
まぁ、誤訳のレベルが違うんだろうけどねw
翻訳のコツや、間違えやすい翻訳、翻訳を知るにはアメリカ英語ではなくイギリス英語を知らないとダメな点や、英和辞書よりも英英辞書、いろんなノウハウを知る事が出来た。
なにより翻訳のノウハウよりは、翻訳がいかに難しいかを今更思い知る。
そして、文学者が書いた英語ならまだしも、一般人が書いた英文なんか、誤字脱字だらけで文法もなっていない、それを翻訳するとなるとそれ以上の翻訳地獄が待っていそうだと。
サクッと読める本なので、翻訳に携わる事がある人は一度は目を通してみると面白いかもね。
Posted by ブクログ
英語や翻訳には余り興味はないが、知らない世界で何かを得られるかと思い読んでみた。
いろいろと苦労やこだわりがあり、翻訳に興味があるひとには面白いのではないかと思う。
個人的に翻訳を深掘りしていこうとは思わなかったけれども、新しい視点を得ることができて参考になった。
Posted by ブクログ
「翻訳地獄」なんていうからどれだけ恐ろしいことが書かれているんだろうと恐る恐る読み進めて行ったが(笑)
時に面白おかしく、時に厳しく、これまでの翻訳作品やご自身の翻訳についての考えを書かれていて、多方面から翻訳について考えてみる良い機会となった。
紹介されている様々な種類の本も大変興味深い。是非とも読んでみたいと思う。
Posted by ブクログ
本の紹介を交えながら翻訳のことを書いているエッセイ集。
「翻訳本は読みにくい」と思ったことが過去にある。誤訳だったり訳す順番だったりを工夫すると随分と読みやすくなるんだなと感心した。
「ミステリーを訳すなら原文で最低でも何十冊、できれば百冊読んでる必要がある」といった趣旨のことが書いてあり翻訳ってスタートに立つまでも大変なんだなと思った。
あとはイギリスに関する話が面白かった。イギリスではセーターのことをジャンパーという、とか。
この著者が訳した本読んでみたい。
Posted by ブクログ
「作家が選んだ文体の特徴を日本語に訳すのが翻訳者の仕事」
英語が苦手な私は集中力続かなくて流し読み。それでも気になるトピックはいくつかあった。
ユーモアやウイットを訳すのが難しいのはなんとなく知ってるよ。説明されないとわからないけど、知ると面白いね。
そして、ドアの開け方はミステリ翻訳の重要なポイントらしい。
そういえば、翻訳できない言葉を集めた本があったな。そちらも読んでみたい。
いずれにせよ、翻訳者の皆様、たくさんの作品を日本語で届けていただきありがとうございますm(_ _)m