白尾悠のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
偶然なのだけれど、ここのところ、差別問題と料理の本を立て続けに読んでしまった。この本は1990年代後半にアメリカの大学に留学した日本人が主人公。得意だったはずの英語もネイティブの前では片言でしか話せない。周囲の日本人は元々帰国子女だったりしてネイティブ並みの発音。疎外感で鬱々と過ごしている。共感するところも多いのだけれど、彼女が英語に出来ずに内心で毒ずく場面はちょっと苦手。でもこれは最初だけで、学内でサード・キッチンというマイノリティのための場所を見つけて、友人が増えてくる。一方で差別という問題に向き合わざるを得ない状況になる。言葉にならないモヤモヤを、きちんと文章にしてくれる本。
-
Posted by ブクログ
アメリカ留学で様々な事に気づく物語
以下、公式のあらすじ
-------------------
都立高校を卒業しアメリカ留学した尚美は拙い英語のせいで孤独な日々。どん底に現れた美味しくてあたたかい食事と人種も性別もバラバラの学生たちが、彼女を変えていき……感動の青春成長譚!
-------------------
理想的本箱「人にやさしくなりたい時に読む本」で紹介されていた本
あと、読書会でも紹介されたので、何かと記憶に残っている
加藤尚美は都立高校を卒業し、アメリカに留学している大学生
父を亡くした母子家庭で、経済的に裕福ではないが、山村久子という高齢の女性からの支援を受け -
Posted by ブクログ
心地よい暮らしを作るために住人が協働するコミュニティ型マンション、ココ・アパートメント。
それぞれの居室はあるが、共有するリビングは当番制で掃除をしたり、定期的に食事当番が皆に食事を振る舞ったり。季節毎のイベントもあったりと。
なんて楽しそう!だけど人見知りの私には無理無理‥‥と思ってしまいます。
でも若者達のシェアハウスと違って(若者のシェアハウスが如何なるものかも良く分かっていませんが‥‥)ここに住む人達は訳あってここに辿り着いた人達。そんな人達の連作短編集です。
老若男女、様々な人が暮らしています。一人暮らしだったり、家族と一緒だったり、同棲するカップルだったり。
正直、若者の話の時は、 -
Posted by ブクログ
海外に留学している日本人女子が語る物語。
「サードキッチン」とは、差別や貧困など、何らかの問題を抱えた留学生たちが利用できる、安心できる居場所としてのキッチン。
なかなか海外の大学になじめず、言葉の壁から生じる様々な障壁や差別を日々感じながら勉学に打ち込む主人公が、サードキッチンと出会い、世界の扉を開いていく。
日常に潜む潜在的な差別や偏見について、考えさせられる内容。
そして英語がネイティブのように話せないことで感じるもどかしさや孤独感、そして起きてしまう差別についても考えることができた。
「差別を受けたり弱者であることを理由に、逆にマジョリティをサードキッチンから排除して、被害者づらするこ -
Posted by ブクログ
ネタバレ読書をしていると、不思議な縁を感じるときがある。意識せず続くときは続くというか、「水車小屋のネネ」に続いてこの本を読むという縁。生きづらくなった環境を飛び出して、新しい生活の場を描く小説を立て続けに読むという縁。
というか、俺はどうにも、近隣の人々が助け合って生きていくという物語が好きなんだということなんだろう。東京バンドワゴンもおけら長屋も宇江佐真理等の市井人情モノも、俺の好きな小説たちは、自助と公助、「奪い合えば半分以下だが分け合えば倍以上」の思想に溢れたものが多い。
成功人生のレールに乗るために勉強も学生生活を上手く生き抜く高校生から、父子母子家庭、発達障害をもった兄弟を育てる一家、 -
Posted by ブクログ
ネタバレどの話も終わるたびにほっと優しい気持ちになれる作品でした。
人に干渉されることを煩わしく思う時もあるけれど、自分が困った時に助けてくれるのは自分以外の誰か。人との関わりをほどよく保てるココ・アパートメント、私も住んでみたいなと思いました。
時が経ち、ココ・アパートメントを出て行く人がいてもまた遊びに来れる関係性も素敵だなとも思いました。子供でも大人でも、住んでいる場所以外に行く場所があるのは、救いです。
ちょっと家に帰りたくないなって思う時に、安心して行ける場所があるのは素晴らしいことだと思います。
章ごとに話の主役は変わるけれど、他の話でそれぞれの進捗もしれるのが面白かったです。
どれも未 -
Posted by ブクログ
ネタバレゴールドサンセットがすごく良かったので、白尾悠の過去作を読んでみようと手に取った1冊。いや、これもまた凄かった。
あしながおじさんの現代(というても1998年)版、女子一人でアメリカの大学に留学した主人公のナオミ。幼いころに父親を亡くした彼女の家は決して裕福ではないが、正体を母しか知らない謎の援助者のおかげで留学資金を調達できた。条件は一つ「学園生活の手紙を定期的に送ること」
この設定であれば、そりゃもう外国で色んな友人を作って揉めたり仲直りしたり、恋したり挫折したり、青春学園モンの楽しいヤツ…って思うやん。その金八感や裏切られるから。
ダイバーなんとかとかLGBTQとか価値観の多様性と -
Posted by ブクログ
この本の存在はNHKの本の紹介番組で知った。
読んでみて、ありありとウン十年前の留学時代に感じた記憶が読みがえって来た。
何度「チャイニーズ!」っと遠くから叫ばれた事だろう。
土曜日の、まだ街が起きだす準備をしている静けさに包まれている朝に、街の中心を突っ切り駅へ向かう道で、私は顔面に黒い色の皮膚を持つ人に唾をかけられたのだ。
一瞬、何が起こったのかを脳が理解する事が出来ない…息も出来ない…
近くのスタバの入り口を叩き、顔を洗わせて欲しいと懇願する自分がいた。
怒りより驚きが、何度顔を洗っても落ちない唾の感覚が残る。
こんなに露骨にも差別とはこの世に存在するものなのだ…
あの日の事は一 -
Posted by ブクログ
人は、何かを理解しようとする時、
自分の知っている既存の知識や常識の枠で
ものを捉えようとする。
それは自然なことに思えるけれど、
それゆえに、決めつけや差別を無意識にしてしまっていることに気づかないこともある。
自分の価値観や考え方は、変わるものであり、育てるものだと思う。
未知の人、もの、ことに出会った時には、まずはよく観察し受け入れることから始めたい。
それは学習と同じだと思う。
あらゆる差別やマイノリティに対する考え方が発信される世の中において、だんだんと身動きが取りにくい感覚に陥ることがある。
時に、過剰な理解や配慮に感じることがあるけれど、『それは過剰じゃないか、』という部分は