トーベ・ヤンソンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
"家庭生活の中には、ときおりムーミンパパの気にくわないものがありました。今のようにときどき、家族たちが思いやりのないことをやるのです。こんなに長いこと、パパといっしょに住んでいるくせにね。"
読むのに時間がかかった……!!!
ある日、ムーミンパパはムーミン谷の暮らしから抜け出るべく、ママとムーミントロール、養女のミィを連れて灯台のある島に行く。
今ある環境を丸ごと変えないと人生がうまくいかなくなってしまうのではないか。そんな不安が詰まった作品だった。
読むのには時間がかかったけれど、トーベが書きたかったのはこの話じゃないのかな。
ムーミン谷を離れて家族の生活は一変する。魚ばかりの毎日。花の咲かない島。
そんな中、ムーミンはうみうまと出会い、しかもあのモランと少しずつ距離を縮めていく。
ムーミントロールがムーミントロールだけの時間と場所と秘密を持つようになる。
そして、ムーミンママも少しずつ自分を納得させてく。ムーミンパパも、怒ったり悔しがったりした海に対して「好きだ」というようになる。
"「おまえさんはあらゆる方法でわれわれを苦しめた。でも、うまくいかなかったよな。われわれはなんとかかんとか切りぬけてきた。裏をかいてやったんだ。それが気にくわないんだろ。どうだね。それでもわれわれは建設をつづけるよ。
ところで公正にいうならば、ウイスキーの箱をとどけてくれたのは、ありがたかったね。
なぜそんなことをしたか、気づいてるさ。負けかたを知っているからだよ。そうだろ?しかし、だからといって、島にそのしかえしをしようというのは、ひきょうじゃないか。こんなことをいうのも、つまりはーーおまえさんが好きだからだぜ」"
あれだけ海や、そこでの生活の中で「あるべき父親像」に執着したムーミンパパがこれまで悶々と考えるのは、それだけ周りの人やものや自然が好きだからなんだろうなと思う。
最後はムーミンシリーズらしく、灯台にあかりが灯る。
ちょっとの期間暮らしを変えたムーミン一家はちょっとだけ変わって、そしてまたムーミン一家らしく生きていくのかもしれない。
次の「ムーミン谷の十一月」が小説のシリーズとしてはラスト。ムーミンたちと離れがたいなぁ。 -
Posted by ブクログ
セリフの言葉づかいが可愛らしくて心地よい。
作者の感性もさることながら、訳者の解釈も素晴らしいのでしょう。
特にムーミンママの言動には感激。
子供を危険な冒険に、平気な顔で送り出したと思ったら、内心はしっかりと親らしく、心配して、ジタバタしている様子から、干渉ではない、寄り添うような愛情が感じられました。
あとがきで作者の幼少期の家庭環境について知り、作者がこのような世界を描ける理由がわかった気がしました。
自分を含め、「イラつく」「ウザい」といった言葉が当たり前に行き交う我が家だけど、この本を読んでホッと一息つく事が出来ました。
自分ももう少しやさしくなりたいな、と思わせてくれるような、大切な一冊になりました。 -
Posted by ブクログ
知らない世界で自分の目だけが醒めるなんて、想像しただけで恐ろしい。お子ちゃまだと思ってたムーミントロールの、外に踏み出す一歩が逞しい。
日頃何か物足りなそうな彼が、1人ぼっちで冬を乗り越えていく姿に、人の成長には孤独で何かと向き合う経験が必要なのだと思える。
これまで描いてきた世界の危機や冒険を差し置いて、しんとした季節のど真ん中を過ごすことに、真の大人の階段を持ってくる。筆者のセンスが好きだ。
未知にそっと踏み出す好奇心、嫌いな物のいなし方。ちょっとしたことで苦手も乗り越えられちゃったり。派手な勇ましさとは違う。しかし生きる上で毎日出会う、小さな石ころの蹴飛ばし方を教える、大人には内緒の冒険譚だ。
この冬の長さ、暗さ、孤独感には地域性もあるだろう。どこの誰でもない、彼女だから書ける物語。その特別感にも胸が躍る。
お馴染みのキャラクターも少なくて、ムーミン谷はすっかりよそ行き顔だ。ミイがいて懐かしい気持ちになるが、寂しがる様子は全くなくて、孤独を分かち合う隙は一分もない笑。呆れるくらい彼女らしい。
読者も一抹の淋しさを覚えながら、ムーミントロールとこの冬を乗り越える。読み終わったら少し、人生が明るく見える。まぁなんだ、これもアリかな、なんて。 -
Posted by ブクログ
ここまで読んでシリーズ挫折ってあるある?
私はそうだった。
子どもにはパパの語り口調って面白くないし、時々挟まる親子とスニフのやりとりもあまりハマらない。
大人になって読むと、結構面白かった!
子どもの頃はパパの自惚れや大人に反抗するところが、クラスにいたら痛い奴だという印象で、自分がそうできない妬みもあってか全く好感が持てなかった。
今ではそういう子ども心が理解できるし、頑張れそして色々学ぶのだ、と上から目線で物語を楽しむことができる。
子どもに話を聞かせたがるパパに対しても、まだ子供っぽさところが残る男性だと、少し可愛いとさえ思える。
仲間たちも魅力的だ。子ども世代より可愛らしい?少しのんびりしていて、ムーミンパパや小学生の自分はイラついただろうが、自分らしさを貫いているのが良いと今では思える。
そして結局なるようになる結末。それでいい。
改めて読んで、がっつり大人向けだなと感じた。
幼少期にシリーズ読破を挫折した人には、ぜひこの物語をお勧めしたい。 -
Posted by ブクログ
冬が近づくと『ムーミン谷の十一月』が読みたくなり、夏が近づくとこの本が読みたくなります。
火を吹く山は暴れるし、洪水の大波がムーミン谷におしよせて、すべてのものを水びたしにしてしまいました。
でも、ムーミンパパは面白がるし、ムーミントロールはスリルを感じるし、ムーミンママはウキウキするし。。。
あなたたちの感覚、どうなってるの?
わたし(みのり)は短い一文一文をたどって、ムーミン谷の世界に戻っていきます。
ただいま、今年も来たよ♪
こっちの世界もいろいろあったよ。。。
年々、作者の評伝などを読んで、わたしの読書は育っていっているのですが、子どもの頃、最初に作品を読んだ時のピュアな嗅覚はページを開くと甦ってきます。幸せな瞬間です♡
長く生きてきたけど、その分楽しめてるわ、ありがとね♡
今年も夏がやってきます。 -
Posted by ブクログ
"「彗星って、ひとりぼっちでほんとにさびしいんだろうな」
「うん、そうだよ。人間も、みんなにこわがられるようになるど、あんなふうにひとりになってしまうのさ」"
ムーミンシリーズをちゃんと読んだことがなかったので読んでいこうと思う。
今回は作者のトーベさんが出版した順に刊行された版を読んでいく。第一作目がこの「ムーミン谷の彗星」だ。
ムーミンとスニフが地球に迫る彗星の謎を突き止めるために旅に出て、途中スナフキンやスノークやスノークのお嬢さんに出会いながら冒険するというストーリー。彗星がムーミン谷に衝突するのかどうかがわからず終盤までハラハラした。
海の描写がとても素敵だった。命あるもの、希望の湧くところとして海が描かれている気がする。海が戻ってくることが安心材料であり、それを目指してムーミンたちは冒険をする。
誰しもムーミン谷のような安全基地を心の中に抱えていて、そこを目指して行けば良いというお話なのかなと思った。お話を書きたいという純粋な感情が生んだ物語のように思えた。
第二巻以降も楽しみ。