あらすじ
見えるものだけが、すべてじゃない。
ムーミントロールは、冬眠中に、たった一人で起きてしまいました。まったく知らない世界が広がっていて、しかもだれひとり心を開いてくれないことに落ち込みますが……?
うつくしい冬の情景、おしゃまさんの含蓄ある言葉、ムーミントロールの心の変化など、名作と評される1冊です。
1964年に翻訳出版されてから、55年もの間愛され続けてきた「ムーミン」の物語。大人気のキャラクター「ムーミン」は、この全集が原典となっており、今なおその魅力は増すばかりです。
この度、今の時代により読みやすくするべく、改訂を行いました。
初めての方も、ムーミンのことなら何でもご存じの方も、楽しんでいただける[新版]として、順次刊行して参ります。
1現代的な表現、言い回しに整え、読みやすく
2クリアなさし絵に全点さしかえ
3原語最終版に基づき、より細部にこだわった表現に
4フィンランド最新刊と共通のカバーデザイン
こどもから大人も楽しめる、大注目のシリーズです!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
「これで、ぜんぶ経験したんだ。一年を。冬さえも」ムーミントロールは、つぶやきました。
「ぼくは、一年を通して生きぬいた、最初のムーミントロールなんだ」
毎年11月から4月まで冬眠をするムーミンが、新年が明けてすぐに目覚めてしまう今作。
一番好きなムーミンかもしれない。これから後のシリーズで更新されるかも知れないけれど。
ムーミンは冬の間も起きているトゥーティッキに出会い、同じく目が覚めて元気モリモリのミィに会い。
そして、冬の中でしか生きられない生き物たちに出会う。この「冬の中でしか生きられない」という表現が好きだった。冬の中でしか生きられない生き物たちもとても好きだ。
冬の中でも強かに生きているものは確かにいて、彼らにスポットライトの当たっていく話だった。
フィンランドの冬は長く、暗いのだろう。その中で少しずつお日様が見えてくる喜び。そして一年を生き抜いた達成感。
ムーミンはただムーミンのままで冬を越すことができた。そんなお話だった。
「どんなことでも、自分で見つけださなきゃいけないものよ。そうして自分ひとりで、それを乗りこえるんだわ」
トゥーティッキのこの言葉が好きだ。自分で見つけて、自分で乗り越えなくてはないけない。
冬。暗く長い冬。このタイミングでこの本に出会えて良かったな。
そして、春に目覚めたムーミンママの優しさよ。確か、私の記憶違いでなければこの話はトーベが母を亡くした後に書かれたはず。
「ママ!ぼく、とってもとっても、ママが大好きだよ」
ムーミンの言葉がとても印象的だった。
Posted by ブクログ
冬眠からはやく目覚めてしまったムーミントロール。寂しくなって、モランのせいにしたり(こういうときのモランの立ち位置がおもしろい)、ミイの変わらないおてんばさにほっこりしたり。
雪に感動して、ふゆもいいなと思ったら、吹雪にあって腹が立ってどなりつけてやろうかとおもったり、吹雪のはしくれになって身を任せて楽しんだり。ふゆを過ごすムーミンの心情が細かく書かれていて、いつも出てくる家族や仲間たちが出てこない分、小さな冒険家ムーミントロールがとてもかわいかった。
Posted by ブクログ
「いや、そんなことだめさ。自分の力で、のびのびさせてやるのがいいんだよ。この芽も、すこしはくるしいことにあうほうが、しっかりすると、ぼくはおもうな。」
冬を迎えたムーミン谷の中で、冬眠から何故か目覚めたムーミン。初めての冬という季節、その厳しさに挫けそうになりながらも、さまざまな人達と交流し成長していきます。ムーミンの成長を描くとともに、欠点を持ったキャラクター達がお互いを助け合い、受け入れ合う描写は、読んでいる私達に暖かな気持ちをもたらしてくれます。
また、ムーミン谷での冬の描写が具体的で面白く、冬に読む物語としてとてもピッタリだな、と感じました。
ラストでのおしゃまさんのオルガンの音色が響く中、ムーミンがあれほど嫌っていた冬に思いを馳せるシーンは、読者の我々に素晴らしい余韻を与えてくれるものです。
本当に素晴らしい物語でした。また来年、読み返してみようかな。
Posted by ブクログ
厳しいフィンランドの冬のなかで、孤独に耐えながら他の生き物と関わって成長していくムーミンがとても愛おしい。冬は意地悪で悪いやつで、春は冬から助けてくれるものだと思っていたけど違っていた、冬と春は地続きだったんだ、というフレーズが、とても好き。そうなんだよね。生きていると、全く違うと思っていたものが、実は繋がってて、あまり違わないことに気づいたりするんだよね。父親と母親が、万能じゃなくて自分と同じ人間なんだと気がつくみたいな。
大切にしたい言葉がたくさん出てきた。
また読みたいと思った。
Posted by ブクログ
ムーミンの冬って冬眠してるんじゃね?って思ってたけど、確かに始めは冬眠してた。月の光で起きてしまったムーミンは初めての冬を経験する。
いつもより人(?)も少ないし、雪一面で寂しくて寒くてムーミンは孤独感を感じる。でもそんな中おしゃまさんとかミイとかと一緒に春を待っていくお話。
ムーミンはどっちかっていうと冬どうしようって感じだったけど、おしゃまさんとかミイがあまりにも呑気すぎてそんな気抜いてもいいんだって思った。読んでて楽しかった。
Posted by ブクログ
冬の暗く静かな雰囲気から春を迎える喜びに移る流れが、すごくよかった。1日1章大切に読んだ。
特に響いたのは5章の元気なヘムレンさんを、なぜか好きになれないムーミントロールの気持ち。
個性豊かなキャラクターも物語の魅力だ。
2021.1.16
Posted by ブクログ
いつもは冬眠しているはずなのに、なぜか冬眠から覚めて眠れなくなってしまったムーミンのお話。食べ物がなくなって別の谷から次々やってきた人?たちの世話を焼くムーミンがすごい、と思った。私だったらどうするだろう。そして、目覚めたママの言葉が素晴らしすぎる。女神かよ…。フィンランドの人ってみんなこんな性格?そんな馬鹿な…と思いながら読み終えました。
Posted by ブクログ
これまでのシリーズで感じた小さなお話に次々と飛んでいくことによるおもしろさと読みにくさはこの巻では控えめで、冬眠から目覚めてしまったムーミントロールが初めての冬を乗り越える様子が一貫した物語として描かれている。
冬の情景に不安と恐怖しか持たないムーミントロールに対して、起きてすぐから雪滑りを楽しみむちびのミーがとてもかわいらしい。
ムーミントロールは奇妙な冬の住民との交流を通して、春が訪れる頃には、起きてきたムーミンママに甘えながらもなにかしてあげなくちゃと思うほどに成長しています。
Posted by ブクログ
シリーズここまで読んできて、「ムーミン谷の冬」が一番好きだ。寒く暗く長い冬と春の訪れの描写が美しい。ムーミントロールの成長、トゥーティッキの優しさ、ちびのミイのカッコよさが心地よかった。ご先祖さま・めそめそ君・サロメちゃん・とんがりねずみ等辛い冬を身を潜めて生きてるところにも共感する。最後、春の訪れとムーミンママの寛容で終わるのも素敵。
Posted by ブクログ
知らない世界で自分の目だけが醒めるなんて、想像しただけで恐ろしい。お子ちゃまだと思ってたムーミントロールの、外に踏み出す一歩が逞しい。
日頃何か物足りなそうな彼が、1人ぼっちで冬を乗り越えていく姿に、人の成長には孤独で何かと向き合う経験が必要なのだと思える。
これまで描いてきた世界の危機や冒険を差し置いて、しんとした季節のど真ん中を過ごすことに、真の大人の階段を持ってくる。筆者のセンスが好きだ。
未知にそっと踏み出す好奇心、嫌いな物のいなし方。ちょっとしたことで苦手も乗り越えられちゃったり。派手な勇ましさとは違う。しかし生きる上で毎日出会う、小さな石ころの蹴飛ばし方を教える、大人には内緒の冒険譚だ。
この冬の長さ、暗さ、孤独感には地域性もあるだろう。どこの誰でもない、彼女だから書ける物語。その特別感にも胸が躍る。
お馴染みのキャラクターも少なくて、ムーミン谷はすっかりよそ行き顔だ。ミイがいて懐かしい気持ちになるが、寂しがる様子は全くなくて、孤独を分かち合う隙は一分もない笑。呆れるくらい彼女らしい。
読者も一抹の淋しさを覚えながら、ムーミントロールとこの冬を乗り越える。読み終わったら少し、人生が明るく見える。まぁなんだ、これもアリかな、なんて。
Posted by ブクログ
新年をすぎたばかりの春はまだまだ遠いある晩、雪にうずまったムーミン屋敷では
月あかりにムーミントロールが目を覚ましてしまったのです。
「ママ、起きてよ!
世界中が、どこかへ行っちゃったよ」
はじめてみる雪。冬の生き物たち。
ひとりぼっちが寂しくて、スナフキンに会いに行くのだと外へ飛び出します。
海辺では、素敵なシッポの子りすがふとんを探して、チビのミイを起こしてしまいました。
ミイのことはご心配なく、あっという間に冬と友だちになりましたから。(ママの大切な薔薇の模様のコーヒーポットカバーと銀のおぼんで、そり遊びを楽しんでる)
水浴び小屋では冬のとんがりネズミたちとトゥーティッキが冬を生活しています。
冬のムーミン谷には知らないことばかり。雪は下から生えてくるのだと思ったら、空から降ってくるのですね!
不思議な白いうまや、氷姫。
冬には冬の生き物たちがたくさん生きているのです。
少しずつお日様が顔を出し始めると目覚めてしまった人たちが、食べ物を求めてムーミン谷へやってきます。
ムーミンはちゃんとお客様をもてなすことが出来るのでしょうか…
ここでは、ご先祖さまや、それはかわいいちいさなクニットのサロメちゃん、スキーがお得意の陽気なヘムレンなどおかしな人たちと出会い、ムーミンはまた心をかきみだされます。
でも大丈夫、冬を知らなかったあのムーミンよりはちゃんと成長していましたよ。
最後はおてんばミイのせいで、生まれて初めてかぜをひいてしまいます。
でも大丈夫、ムーミンのクシャミに目覚めるのはもちろんあの人なんですから。
ネタバレなんですが、大好きなこのセリフだけ書きとめておきます。
「人生ってほんとにおもしろいものよね。銀のおぼんの使い方は一つきりだとみんなが信じてきたのに、ぜんぜんべつの、ずっといい使い方があったのね。それから、みんなに『そんなにたくさんジャムを作って、どうするの?』なんていわれたけど、ちゃんとぜんぶ食べてもらえたんだわ」
ムーミンがちゃんとお客さんのお世話をしてくれたおかげで、わたしはどこへ行ってもはずかしい思いをしないでいられるわ。
なんて言ってしまうママ。
いつでもやっぱりママが最高。ママは私の理想の人だぁ。
今回も石橋を叩いて渡る派のムーミンと、最強の女の子ミイの対比がたまらなくおもしろい。
Posted by ブクログ
冬眠中にただひとり起きてしまったムーミンの冒険。シリーズで唯一冬のムーミン谷を描いていて、フィンランドの素敵な冬も感じられて良かった。オーロラ、人生で1回くらいは生で見たい。はじめて見る雪の世界で、ムーミントロールが出会う自分のしっぽが世界一すばらしいと思っているりす、ムーミントロールのご先祖さまや、水小屋に住んでいるおしゃまさんなど新キャラクター達も個性豊かで楽しいお話だった。