ポールアルテのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
バラバラ死体と密室殺人。このネタだけで中篇ミステリが二作完成する。それをひとつの長編として世に送り出した作者の構成力には素直に感心せざるを得ない。トリックも特に目新しいわけではなく、犯人も推理可能。部分的には平均レベルなのだが、ひとつの作品として見たときの完成度がずば抜けているのだ。パズルのピースがレドンナム村へ集まり、そこで事件が始まり探偵が登場する──よくある事件のアプローチもアルテにかかると吸引力は倍増。繋ぎ目がなくシンプルでスムーズで飽きがこない。お馴染みの怪奇趣味やラストのプチ爆弾(?)など、スパイスの調合も完璧。似て非なるネタのコラボに成功した海外本格の秀作。
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Posted by ブクログ
フランス人作家ポール・アルテの1987年のデビュー作。
フレンチなのにノワールではなく本格ミステリーなのは、本人がジョン・ディクスン・カーのファンだから。
洋館、屋根裏部屋、夜響く足音、奇術師、密室殺人、
……怪しげな霊媒師の女
私にとって、どれも江戸川乱歩の香り漂うものばかり。
こんな古風なムードでありながら、起きる事件はハチャメチャ。
いつものように犯人のめぼしをつけようとしても、そのあとすぐゴチャゴチャにされてしまう。
なぜこんな展開なのかは、読み進めるとわかるのだが、ネタバレなので✖
実際あのまま終わっていたら、「なんじゃこれ!」に……危ないところでした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ前半と後半の繋ぎが無理やりに感じられた。
別々の本にした方がよかった。
前半の雰囲気は好きだった。
語り部の正体については予想してなかった人物だったので、新鮮な驚きをもって次に読み進める事ができた。
犯人(1人目)が殺戮に至る経緯や心の動きは、この枚数では表現できておらず、不自然さしか感じなかった。
被害者が即あんな犯罪を犯す人格に変貌する訳ないじゃん、としか思えない。
また、この本の主役といえる犯人の方は、経歴などで途中から分かっていたが、そのサイコな心理を追う物語にするのか、パズラーの要素を追求するのか、どちらかに振った方が良かったのではないか。どちらも中途半端になってしまった印象しかない