僕の大好きなファンタジー飯テロ小説の第3弾。
今回は月でひっそりと生きていた『黒の神』が、ひょんなことから『異世界食堂ねこや』に現れ、そこで食べた『チキンカレー』のおいしさに虜になり、このチキンカレーを毎週食べる為だけに美しき少女姿のウエイトレスとなって働き始めるというところから始まる。
本シリーズはまさに『息抜き読書』の見本となるべきライトノベルだろう。
そこには「陰謀」も「殺戮」も「流血」も「裏切り」も何もなく、この『異世界食堂ねこや』に訪れるエルフやドワーフ、リザードマンなどファンタジー小説ではお馴染みのクリーチャー達の誰もが仲良く笑顔となり、彼らが美味しい料理に心を躍らせる情景を読者はただひたすら愉しむだけ・・・というあまりにも単純だが、その分、心をほっと深呼吸させることができる小説なのだ。
今回のエピソードでは『とん汁ふたたび』が良かった。
大嵐に巻き込まれ無人島に流れ着いてしまった船乗り達の一行。3日間その島に釘付けとなり、新人船乗りの一人が、食べ物を探すために島内を放浪している途中に突然現れたた『異世界食堂ねこや』の扉。
そこに転がり込んだ腹を空かせた新人船乗りがねこやの店主から無料でふるまわれたとん汁の美味しそうなこと(笑)。
ちょっとその場面を引用する。
『見たことも無い、茶色いその汁は、塩辛い醤とわずかに森賢人(えるふ)豆の味がする。(この味付けも見事だし、具も美味い)その汁に具として入っているのは、豚の肉と、数々の野菜。
豚の肉は汁の主な具材らしく薄く切り、脂身が残った状態で入っている。
肉そのものの美味さもさることながら豚の脂の旨みが汁に溶け出していて、やや塩気が強い汁を柔らかくしている。
また、具も良い。
よく煮込まれたおらにえは甘く、薄く小さく切ったかりゅうとやおおねが汁をたっぷりと吸っていて、噛み締めるたびに中に溜め込んだ汁気を吐き出す。
また、一緒に入っている、ホクホクとした淡い黄色の野菜もまた、口の中で崩れて、口の中に仄かな温かみを残し、四角く切られた白い何かは柔らかくて食べやすい。
汁を一口吸って、次に握り飯を食う。
塩気の強い汁と、少し冷めてるとはいえ甘く炊き上げられて握られた上質のメシの組み合わせ。
それは深く満足を覚えさせる味で、手が止まらない。』
もう、ひたすら
おいしそう~
という感想しかでない(笑)。
僕たちには、「とん汁」なんてごく普通の食べ物だけど、味噌汁を見たことも聞いたこともない人が、これを初めて食べたらそりゃ、不思議に感じるだろうし、ものすごく美味しいと思うんだろう。
暖かいとん汁とおにぎり。もう、最高だ。
こういう感覚って「まさに日本人に生まれて良かった~」ってな感じだろう。
1巻のレビューでも書いたけど、この小説独特の言い回しと異世界の別名表現される食物の名前を読んで
ん?これなんのことだ?
と想像するのがまた良いのだ。
この謎解き(そんな大層なことではないがw)によって、さらに脳内で美味そうなとん汁のイメージが脳内で再生されるという『文字からの情報』と『脳内で再構成される情報』のダブルアタックによる飯テロ効果が凄まじいのだ。
ちなみに、無粋を承知でさきほど引用した部分に書かれている謎の食物の単語を通常の僕らの言葉でちょっと翻訳してみると
『塩辛い醤とわずかに森賢人(えるふ)豆の味』→味噌と大豆
『おらにえ』→たまねぎ
『かりゅうと』→にんじん
『おおね』→大根
『淡い黄色の野菜』→じゃがいも
『四角く切られた白い何か』→豆腐
ということになる。
この小説にでてくる摩訶不思議なネーミングの食物を僕らの知っている日本語に当てはめる。
これを想像するのがまた愉しいのだ。
しかも同じ『じゃがいも』でも、異世界内の地方によって名前がことなる。例えば、ある帝国では『じゃがいも』は『ダンシャクの実』と呼ばれているのだ。
もう、この本のレビューを書いているとお腹が空いて仕方がない。
早く、ご飯の時間にならないかな~。