光原百合のレビュー一覧
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不思議な力に満ちた、瀬戸内海にほど近い山に囲まれた町、潮ノ道。
小さな奇跡に溢れるこの町は、人間でないものも呼び寄せたり、本来力を持たないものにも力を与える。
読んでいるだけで、素敵な町だなと心底惚れこんでしまうような町でした。
引き寄せられるように集まってくる個性的な面々もいいですね。
もちろん、一番の主軸はこの連作短編集すべてに登場する、お寺の住職、了斎でしょうか。気のおけないおじいさんながら、不思議な町にぴったりな人物です。もはや何が普通なのかわからなくなってしまうくらい、気付けばこの町の空気に馴染んできます。
どこか夢のような、美しい情景がまた特徴的です。
見えない海の上を渡る船や、四季折々を映し出す動く絵画、そして短編のタイトルもまたセンスがよくて美しい。
「桜絵師」
「写想家」
「旅の編み人」など…
思わず、読んでみたくなりませんか?
一番好きなのは「ピアニシモより小さな祈り」
きっと自分の心の底に、想いが形になってほしい、誰かにきちんと届いてほしい、という気持ちがあるのでしょうね。
人を、物を大切にして、それに応えてくれる関係が築ける。そのことがどれだけ素晴らしいことか改めて感じさせる1冊でした。
初読みの作家さんですが、読めてよかったです。
静かで美しい物語でした。 -
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ネタバレ働く女性アンソロジー、第二弾。
今回は、下記のラインナップ。
スイミングインストラクターが主役の「ジャグジー・トーク」…こうやって言い合える同期がいるのは良いよね。いるだけで大分気分が楽になる。
社会保険労務士が主役の「五度目の春のヒヨコ」…これ良かったな。ミステリーっぽい雰囲気もあり、飽きのこない展開の仕方だった。丹羽さんが良いね。かっこいい。あんな女性近くにいたら良いね。
宅配ピザ店店長が主役の「晴れのちバイトくん」…マネージャーとして働く女性って多いと思う。私の親友もショップの店長やってるし。管理する立場ならではの悩みは必ず存在する。そんな女性に、あるある!と共感してもらえるであろう作品。
遺品整理会社社員主役の「心の隙間を灯で埋めて」…このお話も好きです。こういう仕事をテーマにした小説、初めて読んだ。肩身を狭くし、周りの目を気にして、どういう風に思われてるんだろう?って不安に感じながら毎日働いている人も、たくさんいると思う。でも、終盤のように、実は思い過ごして、自分は必要って思ってもらえてたんだ、と気づくことも。この女性の行く末、続編があれば是非読みたいな。きっと明るい道が開けているはず。
コミュニティFMパーソナリティーの「黄昏飛行」…うって変わって少しコメディタッチな作品。上司との淡い恋愛模様がちょっぴり。そして自分の意思で突き進む主人公が潔かった。
OL主役の「ヘブンリーシンフォニー」…少しファンタジー要素のある作品。せっかく普通のOLが主役なんだから、設定もここはすっごい普通の日常を描くっていうのもアリだったのでは?と思ってしまった。 -
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「潮ノ道」という瀬戸内海に面した町を舞台にした和風ファンタジー。
ほどよくリアルで懐かしいような田舎町の描写と、ちょっと不思議な出来事が自然に溶け合っています。
好きになりました。
「帰去来の井戸」
地元の大学に通う由宇は、伯母の七重の店「雁木亭」という店を時々手伝っている。
店の裏には井戸があり、その水を飲むと必ず町にまた戻れるという言い伝えがあった…
「天の音、地の声」
小学4年の美咲は、持福寺の住職の了斎に頼まれて、劇団「天音」の役者サクヤを迎えに行く。
わずか数人でやっている劇団だが、口コミでけっこう人気がある。彼らのしていることとは…幽霊屋敷と騒がれている古い建物で、美咲は、一端をかいま見ることに。
「扉守」
「セルベル」という雑貨屋に入ってきた少女・雪乃には、何かが取り憑いていた。
セルベルの主人の青年が、実は扉守という役目をしていた。
「桜絵師」
持福寺の了斎のもとを訪れた絵師・行雲が広げていた絵。
高校生の早紀は、描かれた桜が次第に増えていくのを見て、美しい絵の中に入りたいと思う。
「写想家」
人の思いを写す写真家。
違う人生を送る女友達が、ある日抱いた思いは…
「旅の編み人」
ピンク色の翼を持つ何かが、羽ばたいて窓の外へ消えた。
何でも編むという女性のバッグから飛び出したそれは?
「ピアニシモより小さな祈り」
静音は地元で勤めているが、神崎零のピアノコンサートをボランティアで手伝ううちに、ほとんど仕切るようになった。
零には調律師の柊も同行して、コンビで行動している。
静音の家には昔から、鳴らないピアノがあった。
何度張り直しても、音を立てて壊れる…
すねているピアノをなだめると言われ、連弾の練習を始める静音だったが…?
瑠璃山、黒曜山、白珠山という三つの山がすぐ海まで迫っていて、細い道が入り組んだ坂をなす町というのが素敵です。
作者は尾道出身なんですね。
2006年から9年にかけて書かれた連作短編集です。 -
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第1回広島本大賞受賞作ということで購入。装丁も内容に合わせて幻想的で綺麗。
内容としては尾道をモデルにした「潮ノ道」という昔の面影が残る街を舞台にしたファンタジー。
ファンタジーなんだけど、モデルとなった尾道にも、こんな不思議なことがあっても別に不自然ではないと思わせるような雰囲気があります。きっとこの街だからこそ成り立つ物語なのでしょう。
読んでいて気になる広島弁もなかったし(たまに変な言い回しや時代的に誰も使っていないような広島弁で書かれた作品もあるけれど…この作品は気にならなかった)、ファンタジーが平気な人なら楽しめると思います。
個人的にすきなのは「天の音、地の声」「桜絵師」。 -
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「最後のおたより」がテーマの短編集。
半分近くが初めて読む作家さんでした。
「おたより」と言ってもパッとイメージする「紙の手紙」ばかりじゃない。その形は本当にさまざまで、次はどんな“おたより”ストーリーなのか楽しみに少しずつ読み進めました。
特に好きだったのは、
「もうひとつある 鷲宮家四訓」大崎梢
「猫への遺言」柴田よしき
「そのハッカーの名は」福田和代
家訓の謎が気になって引き込まれたもの、
夫の猫に宛てた手紙から愛情を感じたもの、
ちょっと異色でミステリーっぽい雰囲気のもの、
趣向は異なりますが、どれもラストは優しく、晴れ晴れとした気持ちになりました。
矢崎存美さん「たからのちず」は、祖母との思い出に寂しくも懐かしい気持ちになった。
同じテーマなのに切り口がいろいろあって、楽しめました。
「最後」というワードで瀬尾まいこさんの短編集「おしまいのデート」が思い浮かびました。
心を温めてくれる優しい読み心地の短編集で、お気に入りの1冊。