森山至貴のレビュー一覧
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こういうずるい言葉がある、そしてそれはこういう理由でずるい、というだけでなく、
そのような言葉に対して、どのような反応をしたらよいか、まで入っていてとても面白かったです。
しかも、理想論はXXだけれど、それだと現実的でないからXXではどうでしょう、といった形で実践できそうなところも良かった。
人にバイアスを持って接さないように、自分の言動で人を型にはめたりしないように気をつけている私ですが、そんな私でも「これこういう理由で良くないんだ」とハッとさせられるものもありました。
男性である筆者さんがこのような本を書くことについて「当事者じゃないのに」という批判も覚悟の上のことだったのかな、と思います。
またこのような問題を指摘する側には常に、「そういう自分はどうなの」という批判もつきものかと思います。
その上でこの本を出版された筆者に、ありがとう、と伝えたいです。
私が覚えておきたいな、と思うのは
▼女性ならではの視点
「女性ならではの視点」を期待されるとき、女性は知らず知らずのうちに個人ではなく「女性の代表」として発言したりアイデアを提供したりすることがもめられること。だから、そういう場合は「プロジェクトに女性が少ないことに危機感を持って招集したが、女性を代表する必要はないので個人の意見を積極的に行って欲しい」などのフォローができるとよいということ。
▼女を捨てているね
メイクをしない女性に対するこのような発言に対しての筆者の回答案は
①「そのくらいのことで女を捨てられるならむしろ楽だったんだけどね」としんみり語って「女性はメイクをすべし」というルールのしんどさそのものを会話の主題とする
②「本当にそれで女じゃなくなるものなの?」と正面から聞き返すのもあり…
特に②に関して、このような自分と違う意見が出てきたら、正面から聞き返して、言葉の裏に潜む相手の考え方を炙り出してまずはそれを相手に認識してもらう、というのもありだなと思いました
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Posted by ブクログ
性に関する議論は、概念の分類や問題の背景、新たな課題などが入り組んでいるため、一見するととても難解な分野であるように思える。一方で、一定の理解を示すことが求められているようにも思える分野である。だからなのか、差別をしていないことを標榜するための無知な「LGBT」言説があふれている。
本書は「何が偏見なのか自分はわかっていないかもしれない」という不安を抱えた人の、「もっときちんと知りたい」という欲求にまさに答えてくれる。バトラーを読んで挫折しかけていた私にとっては、本当にありがたかった。読みやすい。
今後、巻末の読書案内にたくさん助けられると思う。
クィア・スタディーズに入門することはできない、なぜならクィア・スタディーズの内実をどこかに位置づけることこそが、先人達が批判してきたことだからだ。 -
Posted by ブクログ
第四章のトランスジェンダーの言説史の整理が特に自分にとり啓蒙的だった。単に広義トランスジェンダー(トランスセクシュアル、狭義トランスジェンダー、トランスヴェスタイト(異性装)に3区分される)を学べるだけでなく、その区分がジェンダー研究の中でいかに進展していったかを追うことは、自分自身のフェミニズム/ジェンダー論/クィアスタディーズに対する学習不足の部分……すなわち性指向と性自認の絡み合いに関する部分……をなぞり直す役に立った。第四章の概念整理をもとに同性愛の話や「オネエ」の話をみかえすと、色んな見落としをしていたことに気付かされた。
後半のクィアスタディーズ概念紹介や研究論文紹介も手堅く、硬質なLGBT議論を一冊入手したいという人には安心して薦められる本である。
ただし、半陰陽やアセクシュアルなどの議論はあまりないため、事典的な利用を期待するべきではない。あくまでこの種の議論を、初歩的なところでミスらないためのあんちょことして読んでいくことが期待される。 -
Posted by ブクログ
人は無意識に色々な偏見を持っていて、それを周囲に押しつけて責任を逃れたり、そういう言動をゆるして傷ついてしまいがちである。本書はそれらの身近な事例を一つ一つ挙げてその構造と理由を明らかにし、対処法を示してくれている。
難しいなと思った点が1つ。本書は徹頭徹尾、偏見や責任逃れや同調圧力がいかに間違っているかを伝え、それらに負けかけている人を根拠をもって励まそうとする著者の強い意志で貫かれている。そのため、そうした許されざるべき行動を取る人や風潮が単純な悪として表現されがちになってしまっている。
とはいえ、偏見を持っている人にも理由があるかも...という話を始めてしまったら、この本の伝えたいことがぼやけてしまう。
読む側がよく考えながら読むことでこの本の価値は倍になるのかもしれない。 -
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彼女をフェミニストにしたものはなにか。
幼い頃に田舎の封建的な暮らしで経験した家父長制の抑圧であり、
「よのなか」から女の子の身体に向けられる視線であり、
それらによる個人的な傷つき体験の数々かもしれない。
あるいは不自由極まりない、
毎月の大量出血や痛みでままならない身体そのものかもしれない。
あるいはプリキュアであり、侍女の物語であり、
マッドマックス怒りのデス・ロードやアナと雪の女王であり、
レディー・ガガや(G)I-DLEかもしれない。
そしてもちろん、私かもしれない。
『あなたのフェミはどこから?』 / 平凡社
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あなたの"フェミ”はいつ、どこから始まりましたか?
文筆家、写真家、彫刻家、翻訳家、編集者、
ライター、演出家、イラストレーター、学者、
ソーシャルワーカー、精神科医など19人が、
個人的でありながらも共通する体験でもあり、
連帯する基盤ともなるフェミニズムとの出会いを綴る。
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些細なことも含めて、生きづらさを感じることは多々ある。
その正体がちょっと分かった気がした。
全てではないけど、私が女性だからという理由で生きづらさを感じていることもあるなあと再認識できた。
自分の友達や子供がジェンダーを理由に生きづらさを感じないでほしいし、
自分も「知らず知らずのうちに」「悪気なく」「良かれと思って」誰かを傷つけたくはないなと思えた。
#あなたのフェミはどこから #フェミニズム #平凡社
#読書記録 #読書感想文 -
Posted by ブクログ
学部生のときに読んで以来、7〜8年ぶりに読んだことになるのだが、当時とは、かなり解像度が上がったのは、曲がりなりにも勉強してきたからだと思うので、自分で自分を褒めたくなった。内容以前に、本の構成が、一つの研究領域を外観するのに必要な学問史、分析概念の解説、具体的な分析対象の分析になっていて、筆者の言葉で言えば「あんちょこ」になっていたことが分かった。それが分かるくらいには、「学問」のディシプリンというものの大まかな捉えができるようになってきたことだと思って、少し嬉しい。
それを踏まえて、「クィア・スタディーズ」という研究領域が、特定の研究対象や方法論を指すのではなく、本書で言うところの三つの視座から現象を捉えようとする営みだという説明は、非常に分かりやすい。
①「差異に基づく連帯の志向」
②「否定的な価値づけの積極的な引き受けによる価値転倒」
③「アイデンティティの両義性や流動性に対する着目」
こうした観点から、「同性婚」や「性同一性障害」といった、性にまつわる諸々の出来事の意味や価値を検討していくことが、「クィア・スタディーズ」なのであるということが、具体的実践を含めて、すごく腑に落ちた。
ただ、著者が社会学者であることもあって、社会運動や社会学的な分析の指針としては、分かる一方で、他の領域では、どういうことをしているのだろうかというところまでは、分からなかった。ここの部分は、巻末に読書案内がされているので、それを読んでいこうという感じになる。
自分は、特に文学と教育を専門にしているが、文学における「クィア批評」といったものが、①〜③のような観点から、テクストをどうするものなのかは、いまいち想像がつきづらい。本書で解説されているようなセクシュアル・マイノリティを描いた作品を高く評価することなのか? その描かれ方を批判的に評価することなのか? あるいは、そのテクストの社会的な影響を考察することなのか?
こうしたことは、クィア批評がやっていることの一つだけれども、いまいち、実際にテクストを分析するイメージが、社会問題を分析するイメージから湧きづらいようにも思う。このあたりのことは、改めて勉強し直したいと思わせられる本だった。
妹が森山ゼミ出身であることもあって、全く知らない人なのだが、なんとなく親近感が湧く。同著者は、『あなたを閉じ込めるずるい言葉』という、自分が普段相手にしている中高生でも読める極めて教育的な本も書いている。今回、改めて勉強したクィア・スタディーズの専門的な知見が、日常会話の中に潜む差別の分析に、どのように生かされているのかを、改めて読み直してみたいとも思うところである。
とにかく、良質な入門書。興味がある人、ではなくて、誰にでも一度は読んでもらいたい。 -
Posted by ブクログ
日常に潜む「ずるい言葉」とその解説、その言葉を言われた時の切り替えす言葉が書かれた本。
言葉の中に潜む一見見逃されがちな言葉でも、実は人を傷つけていたりいやな気分させている。差別や偏見、上の人間からの圧力など、悪意がなければ、意図がなければその言葉を言ってもいいのか?それはその人の中のエゴでしかなく、相手のことを考えていない、言葉の裏やどう感じるか、分析ができていないからこそ人間関係の軋轢が生まれてしまうのではないかと思いました。
今回の本のタイトルでもある「10代から知っておきたい」という言葉にもある通り、社会へ出ることが少ない10代の方々にこそ是非読んでほしいと思いました。言葉の一つ一つを詳しく解説しているので新しい視点と知見を得ることができると思います。
言葉として細かい表現と、論理的な思考を求められるところが多いと思うので、何度も繰り返し読むことをお勧めします。 -
Posted by ブクログ
フェミニズムとの付き合い方は、人によってさまざまだ。人によって千差万別のフェミニズムが存在すると言っても過言ではない。
能町さんの寄稿が読みたくて手に取った本だが、他の方の文章も読み応えがあった。
高嶋鈴さんの、男性の先輩とのエピソードは、よくあることだよねと思いつつ、その強烈な傷つきにもまた共感できて、世の中に蔓延る不条理を少しでもマシにするために、理論を学び、語る技術を身につけねばと、決意を新たにする彼女の姿に、自分もぼんやりしてちゃいけないなぁという気持ちにさせられた。
人それぞれのフェミニズムだが、出会いのきっかけとして、ベル・ブックスの『フェミニズムはみんなのもの』とジュディス・バトラーの『ジェンダー・トラブル』を挙げている人が多く、自分も読んでみなくてはと思った。
私にとって、つねにフェミニストでいることは結構しんどいことだ。少しの諦めと多くの怠惰から、楽なほうへと傾いていってしまうことも多々ある。正直なところ、高嶋さんを絶望させた先輩のように、「私はこのままでいいんだけどな…」と思うこともないわけではない。だが、そのときの自分が、権威を笠に着て弱者を抑圧する側に回っていないかということを、つねに点検しないといけない。
松本事件や中居事件を見ると、怒れる気持ちはまだまだ持ち合わせているし、世界はまだまだ「このままでいい」状態になってはいない。だからこそ、自分は「そっち側」にならないように、まだまだ踏ん張っていかないといけない。