與那覇潤のレビュー一覧
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『エマニュエル・トッド』
(2022年現在、今後の世界情勢について)私は歴史家が本職。でも歴史の話はまったく役立たず。なぜなら、私たちが経験しているのは、まったく新しい何かだから。
歴史と違う点
・20世紀初めは各国人口増加したが、今は中国も含め減少する見通し
・冷戦時は、ロシアとNATOが直接対決したことはないが、ウクライナ戦争は、核使用が現実味を帯びるロシア対NATOの本物の戦争
・プーチンは独裁者だと言うが、ヒトラーや、ムッソリーニ、スターリンと違いイデオロギーが無い折衷的で多様な独裁者
・各国国民は超個人主義になった。それはロシア国民も同じ。だから国家間の経済紛争や戦争が行っているのに -
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ネタバレ4名の著名な知識人へのインタビューと、それを踏まえた日本の知識人による論評という構成。日本の知識人の方々は、確り自身の意見を述べていて好感が持てた。
また4名のインタビューの中では、ミラノビッチ氏の話が面白かった。
曰く、エレファントカーブを見ると、程度の差こそあれ、あらゆる人々がグローバリゼーションを通じて所得が増加していることがわかる。また、グローバリゼーションに反発するのは、相対的に恩恵の少ない先進国の中産階級だけで、国内政策での対応が可能である。
そう考えると、保護貿易的な政策で中産階級を保護するより、再配分や成長産業への労働力移動を通じた、グローバリゼーションに抗わない政策の方 -
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46
北朝鮮拉致問題の謝罪→加害者の日本、被害者のアジアの対立が必ずしもそうではなくなった
→対北強硬論の安倍晋三が人気に
46
被害者性の椅子取りゲーム
51
ごっこの世界
知識人ごっこの終わり→ひろゆき台頭?
92
新型うつ病に対して
112
大学教員の在り方の変化(大学院重点化)
118
フロイト精神分析は自我を想定
精神病理学は自我を想定しない(統合失調症)
121
ハイデガー
存在者(≒モノ)と存在それ自体(≒機能)を媒介する「現存在」(存在の現れる現場)
→人間中心主義的な解釈
→フランスの実存主義
125
戦後直後にマルクス主義が流行した理由=無謀な戦争をしたのかを分析的に語る -
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近世(初期近代、early modern)の中国に注目する
近世は日本史だけではない
世界ではじめに近世に入ったのは「宋朝の中国」
ヨーロッパの近代啓蒙主義は、宋朝の近世儒学のリメイクとして考えられる
ルネサンスの三大発明はどれも宋代中国の発明
→どうして近代には西洋が中国を追い越し、産業革命は起きたのか?
→どうして近代化・西洋化が捗っていなかったはずの中国が大国に返り咲いたのか?
どうして先進国だった中国は、人権意識や議会政治だけはいつまでも育たないのか?
【1】
冷戦後
・一極支配
・自由(機会の平等)の名の下に平等(結果の平等)が蔑ろにされる=自由競争
内藤湖南「宋代以降近世説 -
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躁鬱病の当事者の與那覇潤先生(元県立大准教授)と精神科医の対談
■第8章 辞めたら人生終わりなの? p215
斎藤
・SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)による改善率は80%と高いが、寛解率は40%しかない
・成人の患者にとってのSSRIは、良くも悪くも一貫して「軽い薬」症状を緩和してはくれるが、それだけで治し切れるものではない。
・英米型のうつ病治療は、患者の人間性にはさほど注目せず、純粋に症状だけで分類して病名を特定する。DSMは極めて操作主義的(手順を重視)【人格に注目しメランコリ親和型など分類した、従来のドイツ型と異なるアプローチ -
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うつとなってから現在(?)までの変遷を通じ、知性について考える内容。
「中国化する日本」の論理整理がキャッチーかつ要約力溢れていたのを契機に著者に関心を強めたところ、現在に至るまでにキャリアを含めた紆余曲折があったことを知り、やや野次馬根性もあって本書を手に取った。
過渡期の病状で執筆されたとのことで、荒削りな印象はあるものの、関心領域の整理力要約力はやはり健在。歴史学よりも広範な、しかしspecificな領域を対象とした見取り図を示しながら、やや行儀の良い論旨で結ばれている。以後の著作のプロトタイプ的な面も他評者から指摘されているので、他の著作も読んでみたくなった。
うつやその克服に関 -
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著者の患った「躁うつ病」は能力の下がる病であるという。しかしそうしたつまずきを経て、これまで自分が信じてきた前提を根底から問い直すのは知性を働かせる行為だ。著者に見えて来たことは「能力は個人の所有物ではない」ということなんだろうか。
その上で「共産主義」を「共存主義」と訳し直し、緩やかな連帯を模索していく。
共存主義には共産主義のような力強さ(良くも悪くも)はない。けれども「言語」の力でまとめられた異なる集団はかつてのソ連の様に瓦解していくのかもしれず、それに対して共存主義には弱者に寄り添う良識のようなものを感じた。
世界が政治的、経済的に行き詰まるなか、つまはじきにされた人々が知性を働かせて -
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『平成史』を読んで、興味を持った與那覇さんの著作。インタビュー、書評、時評を集めたものなので、歴史学界隈の人々や状況への怒りのような通底するものはあるものの、一冊の本として一貫したロジックは薄い。一方で、公開された文章の集まりから、鬱病から回復し、教員職を辞して学会から距離を取り、文筆家としてポジションを確立しようとある意味踠いている様子はよくわかる。歴史学の業界からは相当に煩さく思われているのではないかと思うのだが、こと「歴史学」に関しては、単なる古文書の解読に過ぎない実証主義を批判し、歴史学を現在の社会や個人の行動において過去の学びから何を提示すべきかを問う学問であるべきと著者は規定する。
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対談であるからこその、面白さと受け入れやすさがあったのかな、と思う。大学、大学院なんて承認ビジネスと同じようなものでもはや意味はないという與那覇氏に対して、「いや、そこまで自虐的にならなくても」と斎藤氏が苦笑して応じるような、ね。與那覇氏の発言はなるほどとうなずきながら進んでいると、いつのまにかちょっと引いてしまうくらい攻撃的になっていることがあり、ちょっと怖いんだよね。斎藤氏がそこをうまく、方向転換したり、和らげてくれていたんじゃないかと思う。「え?それはどういうことですか?」と疑問を提示して、それを受けて與那覇氏がもう少しわかりやすく説明したり、話を展開してくれるのも良かったと思う。
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