與那覇潤のレビュー一覧
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今改めて読むと、まさにグローバル化の波の激しさを思い語らせる本である。
高校の日本史や世界史で暗記させられた「近世」が、もはやグローバル化が激しい今のご時世は、時代的に世界で最も「近世」のグローバル化を実現した中国の宋の時代に非常に同じものであり、そのような宋朝の時代に、個人の移動や経済的な自由・平等(ここでは機会の平等の話であって、結果の平等の話ではない)により実力主義が激しい社会状況を「中国化」と称し、世界は歴史的に「中国化」と反「中国化」(本書では「江戸化」)との抗争の歴史を歩んできたと分析する。
詳細は読めば分かるが、特に高校の世界史や日本史の知識がなくても、平易に概説しているの -
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面白かった。
まずはタイトルを見て「『中国化』ってどういうこと?」ってなるけど、そのあたりは冒頭で説明されていて納得。ある意味「釣り」ですね(笑)
つまり、刺激的なタイトルだけど、その実、そこにイデオロギー的な意味はなく純粋に歴史の本。
感想を一言で済ませるのは難しいんだけど、とりあえず、大きく印象に残ったことだけ。
西洋の産業革命以前、中国が圧倒的に先進国であったというのは、中高で習った世界史の一般常識的には意外ではあったものの、かなり分かりやすく説明されていたので納得感がある。現代中国に関してふにおちる点も幾つかあり、なるほど、という感じ。
法の支配や基本的人権、議会制民主主義という -
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与那覇潤『史論の復権』
中身は面白かったがタイトルが頂けない。
「史論の復権」と聞いて読みたくなるのは「史論」を知っていて、その衰退を嘆いている人だけ。私はと言えば、史論という言葉は聞いたことはあるし何となくぼんやり意味はわかる(ような気がする)けどまったく思い入れはない、という状態。同じ著者の『中国化する日本』が面白かったからタイトルにはまったくひかれなかったけど手にとった。
で、読んでみたら、うん面白い。
そこで私もタイトルを考えてみた。
『歴史の先生、他流試合をする』
『歴史、というメガネ』
『歴史とは、過去ではなく現在を学ぶ学問です〜七つの対話〜』
どうでしょうね。でも、著者の輿那覇 -
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昨年の小坂井敏晶『社会心理学講義』に引き続き、今年も人生観がひっくり返るような衝撃を社会科学の研究から受けることになった。輿那覇潤『中国化する日本』。
不惑を越えたというのに、これだけ揺さぶられるということを、まずは喜んでおきたい。
さて。本書の残念な点は、口が悪いこと。
タイトルもそれで損している。中身を読めば中国化とは何であって何でないかは書いてあるが、タイトルから受ける印象は「日本もこれから中国のように劣化する」とか、「中国に経済的に圧倒されその軍門に下ることになる」とか、粗雑な嫌韓反中本と変わらない。実際にはまったく違うのに。タイトルと口の悪さのせいで、本当に本書が読まれるべき人に届 -
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在野の経済学者、池田信夫さんとネット歴史論壇の旗手、与那覇潤さんの知的刺激あふれる対談集。
この本を読んだ後には、司馬史観で「お前も大志を抱いて励め」と諭す上司に一言いいたくてしょうがなくなるかもw
曰く、「明治維新後、西欧化を図り、わが国は世界に類を見ない高度成長を遂げた」という歴史の通説は幻想であり、実は日本がいまだに江戸時代から進歩していないというのが、両者の共通認識。
全国300もの藩が別々に法律や武力を保持し、ムラ社会の掟で問題解決するシステムが、内向きで縦割りの社会構造を生み、全体戦略や強いリーダーが現れない原因を作り出したのだと指摘する。 -
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最近、お気に入りの著者の本。
「中国」といっても最近のGNP2位の共産党支配の中国でなく、宋代に完成した自由経済/能力主義のことで、日本は幾度もこの体制に近づくチャンスがありながら江戸化=統制経済/封建制を繰り返し、21世紀の今また、「中国化」に抗いつつも近づいているというフレームワークが面白い。
平清盛、足利義満、織田信長、坂本龍馬と自由経済に変革するリーダーは時代時代にいたが、いずれも志なかばに終わっている。
今も岩盤規制を打ち壊すと、時の政権は勇ましいが、実はこの国は1000年の昔から自由で優勝劣敗がはっきりする社会なんて望んでないのかもしれない。 -
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橋下さんは、民主主義者ではなく、徳治主義者。
「専制者が民意を吸い上げて、代わりに執行してあげる」という中国的な民主主義。「決定できる民主主義」は、西洋ではなく、中国的な民主主義。
与那覇氏の「ブロン」(日本と中国の双方の特徴が混じった結果、両者の欠陥を兼ね備えた体制になること)。星新一の掌編が語源で、「ブドウのように小さな実がメロンのように少ししかならない果物」の意。
人間関係の形態的にはネットワーク状になっていて、その点では「中国的」なのだけど、意思決定が全会一致的という意味では、江戸時代の村落コミュニティまんまのエートスが残っている。
科挙官僚というのは皇帝が絶対権力をもって命令する -
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タイトルから安直に想像していた内容より2段も3段も深い掘り出し物。著者のことは知らなかったが,学者としての著作を読んでみようと思わされた。
文体が独特。分かりやすさを求めているとは本人の弁だが,アカデミックな文章と思って読むと違和感があるが,薄っぺらいビジネス書とも違う。語り口はちくまプリマーで,もっと内容が濃い,という感じか。個人的には全く新しい文体と感じた。
積ん読になっている東畑開人との対談も含まれており,読みたくなった。千葉雅也はイメージとして好きではないのだが,違う一面が見られたような気がする。
「リモートのほうが,たとえばカウンセラーが暴言やセクハラをしかけてきたら電源を切れば -
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ネタバレ『江藤淳と加藤典洋 戦後史を歩きなおす』與那覇潤
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毎晩寝る前に映画を観るのを習慣にしていたのだが、昨日はなんだか、読書をしようという気になった。
昼間に本棚の整理をしたからだ。
本棚の整理をして、本当に今読みたい本だけのコーナーを、一番見えやすいところに作った。そうすると、本がどうしても読みたくなった。
読書をすることが、何かを学ぶための、手段となってしまうことが、多くなってしまったのは、いつからだろうか。学習参考書を購入する子ども時代からの心の癖であろうと思う。
そうではなく、読書をすること、そのこと自体が目的であるような、本当に没頭するように読めたらいい。
本棚を整理 -
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<目次>
第1章 なぜボードゲームに注目するか~「ブーム」の理由と現在地
第2章 ボードゲームをどう楽しむのか~有識者6名とのプレイング
第3章 どんな未来をボードゲームは開くか~「遊戯<ゆげ>するケア」の可能性
第4章 ボードゲームはなにを私に考えさえたか~リワークデイケアでの体験から
第5章 ボードゲームはどこまで世界を掘り下げるか~「えっ?」と驚くテーマの作品たち
<内容>
最近はやりのボードゲーム。教え子の卒業生たちもときどき集まってやっているようだ。この本は、ある意味ボードゲームを大上段から論じている。やや仰々しいが、その楽しさも垣間見えるし、最後に初心者への購入術も載っ -
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ネタバレ『元』歴史学者、と與那覇潤氏は名乗る。
重度の双極性障害のため休職を余儀なくし、今まで『知』という自身の生きる力、そして生活する上での能力が病気によって奪われ、そしていかにして取り戻していったかの記録である。
『言語』に比重を置いてきた彼が、『身体』に意識を向けることで回復していく。
…回復は少し語弊がある。きっと回復はしない。病気を通して社会を見る目も自身の弱さも知り、元には戻ることはない。ただ、それは悪いことではない。
氏が平成の世について感じたこと、天皇制について、政治について、ケアについて、大学についてなど、思考していることはバラバラとしており、病気についても同じトーンで書かれている -
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世界の頭のいい人たちからコンパクトに要点教えてもらおう!という、ある意味とても今っぽい本。中公新書で出た企画が成功したので、後追いという印象もある。
後追いとはいえ、世界は変わっており、最新の状態を前提にスピーディに新書化してるので、つまらないということはない。
今回はコロナとウクライナを前提に話している。
複数の人が話し、それをまた複数の人が感想を言う二重構造で議論が深まっていて良い。
学ぶとは考える体験であり、時間がかかるためデジタル化やコスパとは相容れないないという言葉は印象的。
多元的に考えるという言葉一つでも、人によって表現が違い、印象も変わる。
読後は「もっと本を読もう、ネットは減