北原亞以子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
あの児玉清が「・・・読み終えたあとのあの爽やかな心地よさといったら、・・・何と表現したらいいのか・・・。恰も香しき母のにおいに満ち溢れた布団の中にもぐりこんだときのような幸福感とでもいうのか・・・」と絶賛した「深川澪通り木戸番小屋」シリーズの第5作。
舞台となっている、将軍のお膝元の江戸は独り者の多い単身者の町であり、単身者世帯の急増している現代とも、シンクロしているといえようか。
しかし、決定的に違うのは人々の交流があり、人情に溢れた、誰にとっても住みよい街であったようだ。
笑兵衛とお捨の夫婦がいるこの街に、住んでみたいと思わない読者はいないのでは。 -
Posted by ブクログ
慶次郎シリーズとしては13冊目にして、初の長編。
長く続いてきたシリーズの中で構築されてきた、人間関係や空気感などを踏まえた上で、
ようやく今回、改めて初篇である「その夜の雪」に立ち返るような物語でした。
幼少時に目の前で父を殺された息子・弥吉が江戸に戻ってきた事をきっかけに、
一時は止まったはずの歯車が噛み合わないままぎしぎしと回り出し、再び悲しい連鎖を呼び起こしていく。
特別、誰が悪い訳じゃない。
この物語に心底からの悪人は誰ひとりとしておらず、
ただ巡り合わせが悪く、時折ふと魔が差した事がそれぞれにあっただけだ。
もう少し我慢が利いたなら、
もう少し勇気があったなら、
もう少し人の