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月明かりに淡く浮かんだのは蹲る父と、鼻の脇に大きなほくろのある男。あのときは、幼子の見間違いと誰も相手にしなかったが……。建具職人の弥兵衛はなぜ刺し殺され、敵はなぜ逃げおおせたのか。月夜の晩から十一年後、敵は江戸に舞い戻る。惨劇の記憶が弥兵衛をめぐる人々の消せない過去をあぶり出し、娘を殺された慶次郎の古傷もうずく。シリーズ初長篇。
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Posted by ブクログ
慶次郎シリーズとしては13冊目にして、初の長編。 長く続いてきたシリーズの中で構築されてきた、人間関係や空気感などを踏まえた上で、 ようやく今回、改めて初篇である「その夜の雪」に立ち返るような物語でした。 幼少時に目の前で父を殺された息子・弥吉が江戸に戻ってきた事をきっかけに、 一時は止まったは...続きを読むずの歯車が噛み合わないままぎしぎしと回り出し、再び悲しい連鎖を呼び起こしていく。 特別、誰が悪い訳じゃない。 この物語に心底からの悪人は誰ひとりとしておらず、 ただ巡り合わせが悪く、時折ふと魔が差した事がそれぞれにあっただけだ。 もう少し我慢が利いたなら、 もう少し勇気があったなら、 もう少し人の気持ちまで考えられたなら… それらは、ほんの小さな迷いや欲。 普段なら何の事もないはずなのに、運悪く重なって転がって、 気が付いた時には手が付けられなくなっていた。 …時代小説として江戸を舞台に描かれているが、 この物語の持つテーマそのものは、現代にもひしひしと訴えかけるものがある。 "みんな一生月明かりの中にいて、夜目遠目でごまかされていりゃ幸せなんだよ。" それでも人は夜の中、ひとりではいられない。 誰かの姿が見えたなら、駆け寄って近くで見て触れたいと願う。 たとえ裏切られ落胆し、傷ついたとしても、人はまた手を伸ばさずにはいられない。 だから、いつまでも幸せを探し続けている… 久しぶりの慶次郎シリーズでしたが、 胸の奥にじわじわと染み込んでいく筆致は相変わらず素晴らしいものでした。 激しさがなく淡々としている分、読後の反芻がいつまでも続きます。 人であることの切なさに満ちた一冊です。
20130824 江戸時代の月九恋物語。展開が早過ぎて着いていけないところがあるがドラマとしては飽きさせないで良いのかも。
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月明かり―慶次郎縁側日記―
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