原リョウのレビュー一覧
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▼再読・・・・か、再再読か(笑)。
原りょうさんの、遺作。探偵沢崎シリーズ最終作(別に何も完結していないけど)。
舞台は2010年から2011年で、小説上梓が2018年。
▼とある金融会社と暴力団の繋がりが、殺人に繋がり、私立探偵・沢崎が巻き込まれる・・・・というような段取りなんですが、当然ながらこのシリーズは、
<段取りだけ聞いても全く面白そうに思えない>
<段取り的に言うと、キモなことが意外と分からないまま平気で終わる>
この話も、犯罪の動機とか手段とか、そのあたりはよくわかりません(笑)。
良く分からないまま終わります(笑)。
▼このシリーズの大いなる魅力は、レギュラーの素敵な面々と沢崎のやりとりなんですが、第1作(1988)から、実に設定上22年が経過しています。第1作でチンピラだった男が、中年男になって親の介護をしていたりする。そのあたりの味わいが極上です。一方で、沢崎さんはなんと、いまだに携帯電話を持っていない。スマホではないですよ。携帯を持っていないのです。携帯を持っていない探偵・・・。ただ、沢崎さんにとっては、伝言サービスのおねえさんとのやりとりが必須だから、仕方がない(笑)。
そのあたり、ほとんどもう、大気圏を突破してファンタジーの領域に突入した極上のハードボイルド。スルメか昆布か沢崎か、という味の渋さと奥深さ。3年もすれば、またきっと再読します。なにしろ、ミステリーとしての段取りは物凄く複雑なうえに説明が不足していて、よく訳が分からない。分からないから覚えられない。すぐに忘れるから、再読すると、ほぼ七割がたドキドキして楽しめてしまうのです。
実に小説らしい小説です。大好きです。
ある意味、今、日本人に親しみのある小説家で言うと、村上春樹さんがいちばん近いと思います。村上さんの長編も、「なにがどうして起こったか」なんて、絶対だれも分からないでしょう?きっと書いてる本人も「分って」はいないでしょうから(笑)。
でも、おもしろい。
分かるか分からないかよりも、面白いか面白くないか、ですよね。
▼おおまかな備忘録(ネタバレあります)
・金融会社の支店長・望月という中年男性が、沢崎を訪れ
・赤坂の料亭の女将のなんとかさんの、信用調査を依頼
・ところがそのなんとかさんは死んでいた。妹さんが継いでいた。混乱。
・望月さんに会いに職場に行ったら、強盗と出くわす。さらに、支店長であるはずの望月さんが失踪している。
・さらに、そこで海津という好青年と知り合う。さらに、結局強盗は金庫を開けられなかった。警察が金庫を開けたら、帳簿に無い現金が数億円あった。
・海津青年は、助手っぽくなる。沢崎に、「僕の父親では?」と問う。なんだけど、あちこちでそう言っていることが分かる。実際、父親は分からない。
・望月の別宅のマンションで、暴力団関係の死体が発見される。
・望月の家族への取材などで、潜伏先をさぐる。
・望月はやがて自首してくる。恐らく暴力団の裏資金の洗浄とかしてた。
・だがその望月は、沢崎の依頼人の望月ではなかった。依頼人は「望月の名前を騙った誰か」だった。
・その誰か、が、料亭の女将の線から(だった気がする)とある金持ちに特定される。先代の女将と、悲恋の間柄だった若死にした画家の物語。
・その「誰か」さんが、悪人ではなく、海津青年の実の父親であることが分かる。
・しばらくして、沢崎は新しい西新宿の事務所に転居しているが、2011年3月11日、東日本大震災に襲われる。 -
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【900冊目記念レビュー】誘拐されたヴァイオリンの天才少女を探せ! ハードボイルドの名作シリーズ、第102回直木賞受賞作
■あらすじ
私立探偵沢崎のもとに依頼の電話が入る。依頼人の自宅に行くと、いきなり誘拐犯の扱いを受けてしまう。事情を聞くと、依頼人の娘であるヴァイオリンの天才少女が誘拐されてしまったというのだ。
警察から犯人扱いをされる沢崎だったが、続けて犯人から身代金の運搬を指示されてしまう。図らずも誘拐事件に巻き込まれてしまった沢崎は…
■きっと読みたくなるレビュー
900冊目のキリ番記念に読んだのは、骨太な私立探偵小説、ハードボイルドの名作。第102回直木賞受賞作です。
始まっていきなり面白い。依頼人から呼び出されたと思ったら、あっという間に事件に巻き込まれる。ドタバタ劇から主要人物の背景説明が一気になされ、探偵フェーズに入っていく。もう物語なら抜け出せず、最後まで一気読みですよ。
なんつっても主人公である沢崎がカッコいいすね~ 令和の時代だと絶滅してそうな男くさい男、相手が警察だろうが暴力団だろうが決して負けず、自身の考えを貫いてゆく。そんな彼もかつて仲間との間でとある出来事があり、心の傷を抱えている。
もはや精神力だけで私立探偵を続けているようにも見えてきますね。依頼人のため、真相を導くため、無骨でクールにひとつひとつ丁寧に捜査を進めていくのです。他の登場人物たちも人間臭くっていいすね。特に刑事やヤクザたち、いかにもプライドの塊って感じで最高に好きです。
またストーリーも秀逸ですよね。ひたすら人探しになりがちな私立探偵小説ですが、いろんなイベントが差し込まれて読み手を飽きさせない。
中盤、身代金を追って、とある老婆を尾行する一幕があるんですが、どうなることやとドキドキハラハラの緊迫感に潰されそうになる。さらにこの局面では、驚きの真相が待ち受けており、読者はすっと足をすくわれるのです。こういった工夫された展開が素晴らしいんすよ、もう安心して楽しめますよね。
物語が終盤になると、いよいよ真相が浮き彫りになってくるんですが… 果たして大金の使い道は何だったのか? この誘拐事件は何だったのか? 本作におけるコアとなる謎については、なかなかの強烈な事実が提示されます。人それぞれ様々な想いや背景があるのはわかるけど、犠牲者は声をあげることができないことを忘れてはいけません。
ハードボイルドとしても、ミステリーとしても楽しめる名作でしたね~。読み終わったあと、じっくりと余韻に浸ってしまう作品でした。原尞先生の沢崎シリーズ、まだまだ読み残してるので、ゆったりまったり読みたいなーと思いました。
■ぜっさん推しポイント
本作の強みは「古めかしさ」ですね。何でもクラシックの良さってのがあって、眺めていると味わい深く吸い込まれてしまうような、あの感覚です。
沢崎の目線で物語が語られてゆくのですが、ひとつひとつの行動が良く言えばシブイ、悪く言えば古臭い。ビル窓ごしにブラインドを開け、夕焼けが広がる街並みを眺めて思いをはせるなんざ、今どきキザすぎて誰もやりません。でもそれを沢崎がやると、とてつもなくカッコイイんすよ。往年の石原裕次郎を思い出しちゃいました。 -
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デビュー作にしてこのクオリティ。
この原尞氏はまさにチャンドラーの正統なる後継者だ。
物語の導入部にある大富豪更科の邸への訪問は正にチャンドラーのマーロウシリーズ第1長編の『大いなる眠り』へのオマージュそのものだ。そして冒頭と終盤に現れるあの男は『長いお別れ』のテリー・レノックスだろう。
こういう舞台設定からして、チャンドラーを愛する者としては(自分のことをチャンドラリアンとまで評するほど、私はまだ判っていない)胸がくすぐられる思いがする。
さらに加えてプロットにはロスマク的家庭の悲劇も加味されている。権力に溺れゆく人々の狂った歯車がぎしぎしと音を立てて、沢崎によって一つ一つ解体されていく。
そして登場人物たち。
悪友ともいうべき新宿署の錦織、「カイフ」とだけ名乗って去っていった男、渦中の更科一家はもとより、中盤以降事件の焦点となる都知事の向坂、その弟で俳優の向坂晃司。特に向坂知事はその描写からして現都知事の石原慎太郎をモデルにしているとしか思えない。この作品当時、まだ新宿都庁は出来ておらず、当然の如く都知事も違う。
まるで原氏はこうなる事を予見していたかのようだ。
しかし正直に云えば、双子の兄弟でありながらある事情で苗字が違う仰木弁護士、失踪した佐伯を密かに慕う辰巳玲子、失踪した男の世話をしていた海部雅美などの登場頻度の少ない脇役の方が妙に印象に残った。
とどめはかつての沢崎のパートナーだった渡辺。手紙のみの登場をしなかった彼が今後シリーズにどのように関わってくるか、興味深い。
しかし何と云っても圧倒的存在感を放つのが主人公である探偵沢崎だ。
その他者の侵入を容易に許さぬ姿勢、上下関係や権力者特有の主従関係など全く意に介さず、どんな相手にも自分の態度を崩さず対面する男。背伸びせず、粋がりもせず、かといって卑屈にもならない。読者の眼の前にいつの間にかあるイメージが上がっていく。
しかし、気付いたであろうか?
文中、沢崎の人と成りを表した描写など一切ないことを。原は沢崎の台詞と仕草、動きだけで読者にそれぞれの沢崎像を作らせているのだ。この筆致の凄さは並々ならぬものがある。
さらに文章。チャンドラーの正統なる後継者と先に述べたが、その文章はチャンドラーの諸作に見られるような大仰な比喩が頻出するわけでもなく、きざったらしい台詞が出てくるわけでもなく、派手派手しいわけではない。
しかし、この本にはノートに書き写しておきたい美文に溢れている。
真似したい減らず口がある。
かつてチャンドラーを読んでいた時に駆られた、「私もこんな文章で物語が書きたい」と思わせる雰囲気がある。
日常特に感慨もなく見ている風景が語る人によってこれほど印象深く描写されるのか、そう気づかされる事しばしばだった。
そしてやはり古典は読むべきである。
名作ならば尚更だ。
この沢崎シリーズを十二分に楽しむためにもやはりチャンドラーの諸作、少なくとも全ての長編には当たるべきだろう。そしてそうした私は正解だったと今更ながらに気付かされた。
今夜の酒はきっと美味いに違いない。 -
購入済み
探偵 沢崎シリーズ最後の作品
「愚か者死すべし」から約13年という歳月は私自身の環境や価値観に大きな変化を及ぼしてたようで、本巻が私が購入した沢崎シリーズ最初で最後の電子書籍となったこと、そして、本巻を読んでもなんら心が動かさることがなかったことは、私に少なからず驚きの感情を与えた。
本作が良作であることは疑いようもなく、これはもしかすると、私自身が沢崎と同年齢に達したことで良くも悪くも価値観が少しずつ変わってしまったからなのかもしれない。
いづれにせよ、一つの作品が終わったという事実を受け止めて残りの人生を見つめていきたい。
また、大変遅くなりましたが、
原先生のご冥福をお祈りいたします。 -
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▼原りょうさん(りょうという漢字は変換できない・・・)のエッセイ集。原りょうさん、は、1988年に40代でデビューして、2018年に最後の作品を上梓された小説家です。2023年に他界。ハードボイルド・ミステリー、 あるいは ハードボイルド探偵小説、とでも言うべき「ジャンル作家」さん。
…というよりも、30年の活動歴で、
・沢崎、という名前の私立探偵が一人称で活躍する「探偵・沢崎シリーズ」。文庫本1冊程度の長編小説5冊、短編小説集1冊
しか、書いてないんです。寡作の人です。つまり、30年で文庫本6冊。
▼この6冊が、個人的には大大好きです。著者自身も認めている通り、アメリカの作家レイモンド・チャンドラーの書いた「私立探偵フィリップ・マーロウ・シリーズ」を強く意識した作りになっています。(チャンドラーも、ほとんどこのシリーズしか書いていない寡作の人でした)
▼平たく言えば真似をしている、とも言えるんですが、そんな浅いレベルでは無くて、つまりはオモシロいのです。「似ているかどうか」ぢゃなくて「面白いかどうか」です。
▼そんな原さんが、唯一「沢崎シリーズ」以外に書籍として残しているのが、
「ハードボイルド」「ミステリオーソ」という2冊のエッセイ集。本書が何故か未読だったので、購入。
▼この本は原さんが地方紙に連載したコラムみたいなもので、ネタはほぼ、自伝や自分の好みの、あるいはかつて好きだった、小説、音楽、映画についてでした。オモシロかった。
(原さんはどうやら北九州?福岡?あたりのご出身で、一時期は東京で過ごされていたのですが、作家デビュー前から地元で暮らしていて、その後もずっと地元で暮らされていたようです)
▼もともと、「僕の好きな小説家さんだなあ」というのは当然思っていたのですが(だからこのエッセイも読んだ)、読んでびっくり。もともと<作家になる前はプロのジャズ・ピアニスト>だということは知っていたのですが。
<ジャズ・映画・ちょっと落語・好きな小説たち>という原さんの語る内容が、実に気持ち悪いくらい、「あー、自分も好きだなあ」というものばかりで(笑)。まあそりゃ、この人が面白いと思って書いた小説は、自分は好きなはずだわ。と、納得。
近年読んでなかったので、再読しようかなあと思いました。
▼巻末の方で付録的に、
<50代くらい?の原さんが、九州地方都市で、老若男女の地元の完全なるアマチュアの方々と、ジャズバンドを結成して練習に励む>
という挑戦?の顛末記があります。
これが独立した読み物としても大変にオモシロかった。音を楽しむ、音楽というものの剥き身なヨロコビみたいなものを、プロの演奏家として酸いも甘いも知り抜いた著者が、慎重に愛情をもって書いておられる感じ。 -
Posted by ブクログ
読み始めて以前に読んだ事が有るのを思い出した。
幸い読んだと言う記憶は有るが結末やストーリーは、殆ど覚えていなかった。
原りょうの小説を最初に読んだのも、この「愚か者死すべし」だった。この小説で原りょうを知り、他の作品も読み始めた。
読んだのは何年も前で、その時に読んだ本は無くしてしまい、読んだ事も忘れていた。
もう一つ思い出した事が、生前の母に、この小説を読むことを勧めて、母が面白かったと言っていた。
母が元気だった頃、よく本を読んでいた。
元気だった頃の母を思い出した。
原りょうの沢崎シリーズは、どれも傑作だ。もっと沢山、作品を書いて欲しかったな。合掌