あらすじ
まるで拾った宝くじが当たったように不運な一日は、一本の電話ではじまった。私立探偵の沢崎は依頼人からの電話を受け、目白の邸宅へと愛車を走らせた。だが、そこで彼は自分が思いもかけぬ誘拐事件に巻き込まれていることを知る……緻密なストーリー展開と強烈なサスペンスで読書界を瞠目させた直木賞受賞作。
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第102回直木賞受賞作。チャンドラーの多大な影響を受ける作者のハードボイルド調ミステリー。母親の行動には違和感が残るがそれをおいても落ち着いた渋い文章と魅力的なキャラクター、そして最後の謎解きが見事でミステリーファンには外せない一冊!
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原尞氏の作品は、デビューから2023年に亡くなるまで長編5作、短編集1作のみ。
今回、数十年ぶりに読み直し、味を噛み締めながら楽しんでいます。
時系列に従うと次は短編集『天使たちの探偵』、1990年の作品です。とても楽しみ。
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この2週間、ハードボイルド小説を立て続けに3冊読みました。
本家チャンドラー「ロング・グッドバイ」、それに日本のチャンドラーと言われている
原尞の「私が殺した少女」と「愚か者死すべし」です。
3冊とも文章が簡潔で大変読みやすかった。
個人的には「私が殺した少女」が一番面白かった。
その中の一件を紹介しましょう。
『私はパッケージを破ってタバコを一本抜き取ると、
フィルターをちぎり取って火をつけた。
二人は、それを不思議な儀式でも見物するかのよう目つきで見ていた。』
これら小説はこのタバコを吸ったときのように、すうーと一気に文章が入ってくる。
フィルターやパイプをつけて吸った時のように屈折して喉に入ってこない。
ハードボイルドとは堅く茹でた卵のこと、でも続けざまに3冊も読むと
私の頭の中は、「スクランブル・エッグ」になりそうです。
彼は作品のほとんどを一人称で書いている。
これは素晴らしい事だと思います。
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沢崎探偵シリーズ第二作。
この作品は読んだことがある気がした。
シリーズものは最初から読むことにしているので、
なぜ1作目を読まずに2作目を読んだのかは全く覚えていない。
覚えていないと言えば、ほとんど内容も覚えていなかった。
幸運と言うべきか。
ハードボイルドに不可欠なもの、主人公の生き様、に加えるとすれば、
都会的雰囲気、としたい。
それは、LAでもNYでも東京でも良いはず。
ただ、新宿では鮫が泳いでいるらしいが、
東京は現実であるがゆえに、虚構の舞台にはなりにくい。
ただ、この作品の中の東京は、現実ではない。
ブルーバードが走り、喫茶店で呼び出しがかかり、第一勧業銀行がある東京。
懐かしいというには、多分、自分は若すぎる。
覚えていたのは、結末。
うろ覚えながらそれを覚えていたから、
誘拐の身代金の運搬に失敗するという、
息が詰まる展開に耐えられた。
面白かった。
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真相に近づいたかと思ったら離れたりまた近づいたり、というミステリー小説としての面白さも抜群だが、そもそもの文章力のレベルが非常に高く、一文一文にセンスが溢れていてさすが原尞だとおもった。
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"渡辺探偵事務所に所属?する沢崎という名の探偵を主人公としたシリーズもの第二譚。
この探偵との、腐れ縁である渡辺探偵事務所を立ち上げた渡辺氏と彼が起こした事件に大きくかかわった新宿西署の錦織刑事とのやり取りが、面白いと感じて、シリーズを読破しようとたくらんでいる。
この作品は直木賞を受賞しているらしい。
この文庫本の「あとがきに代えて」も粋な読み物になっている。
作者と登場人物が直接対峙する物語。
このシリーズ本は、「そして夜は甦る」が410ページ、本書が431ページあり、読み始めるのに気合を入れたくなるくらいの長編小説。
14年ぶりの新作が発表されている。文庫本を順番に購入して読み進めたい。14年目の新作、その本までたどり着けるか・・・"
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「そして夜は蘇る」に続く探偵・沢崎シリーズ第2作目。 日常の些細な出来事から生じてしまった殺人事件。間接的に事件に関わっていた少年・慶彦の葛藤と、それを知った沢崎の普段は見せない言動の描写がこの作品に温かみを与えているように感じた。 東野圭吾の「真夏の方程式」を思い出すような作品だった。
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久しぶりにじっくりとサスペンスを堪能しました。
ハードボイルドミステリーでしょうか。
感傷や恐怖の感情に流されない探偵・沢崎が誘拐殺人事件の犯人を追います。
将来を嘱望されたヴァイオリンの天才少女が誘拐される。要求された身代金は6千万円。
沢崎は、その身代金の受け渡しに 巻き込まれてしまう。
身代金受け渡しに失敗した彼は、彼女の生存に責任を感じながらも、冷静に犯人を絞り込む。多くの関係者が絡み、ストーリーが緻密で繊細。
結末には、違和感が残りますが、関わった人達の心情を描きながら核心に近づく魅力的な作品でした。
作家原尞氏も直木賞受賞の本作も 全くノーマークでした。本とコさんご紹介、的確で素敵なレビューありがとうございました。
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前から読んでみたかった探偵沢崎シリーズです。
登場人物のだーれも携帯を持っていない、そんな時代の話。
本作で沢崎氏は、誘拐事件に巻き込まれて右往左往させられるのですが、
電話で連絡をとる場面が多々あって、それが全部公衆電話で、沢崎氏は
テレカにすら、なんとなく拒否感を持ってて。
どうしても、今読むと陳腐なかんじは否めない。中途半端な時代ものみたいで。
今更ながら携帯電話の起こした変化の凄まじさを実感します。
そんで、ハードボイルドですよ。探偵っすよ。今読むと陳腐なところもあるけど、
文句なしにカッコいいんですよね。酒と煙草と車。
探偵って、警察からも依頼人からも、いいように利用されたり
スケープゴートにされたり、めっちゃ弱い立場なんだけど、沢崎氏は矜持を失わず
警察に脅されようがヤクザに邪魔されようが、殴られ蹴られされても自分の進むべき方向を見失わないんです。んで、彼の日常は一切、語られない。心情も、思いも。
タフでなければ生きていけない。
おすすめです。古いですけど。
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今月4日、作家の原寮さんが逝去されました。2018年発表の『それまでの明日』しか読んだことがなく‥、えっ、これがまさかの遺作!
本作は、1989年刊行の直木賞・ファルコン賞W受賞作品です。優れたハードボイルドという証なんでしょうね。
本書は、探偵の沢崎がシリーズ化された第2作とのことで、沢崎が「私」という一人称で語る、ヴァイオリンの天少女の誘拐事件を軸にした物語です。
なるほど、沢崎の特定の感情に流されず、強靭で時に冷酷な言動の描写や、天候、実在の街並み、家屋周辺や室内に至る詳細な表現から〝硬派〟という印象を受けます。
読み手は、探偵である沢崎視点で事件と様々なエピソードに触れ、緻密な新展開が続くスピード感があり、飽きさせません。
誘拐犯は誰? 事件の真相は? と最後のギリギリまで焦らされながら、突然解決に向かう終末の展開に‥。ん? (読み手の私は)沢崎に置いてかれた? と若干の「狐騙されモード」もありました。
タイトル『私が殺した少女』の「私」に、いろんな人を当てはめられる意味合いを感じ、そこにも著者のねらいがあったのかなと考えました。
巻末の(あとがきに代えてー敗者の文学)「ある男の身許調査」、原尞さんによる「私がはじめて原尞に会ったとき〜」で始まる文章は、寡作である著者の半生を語るもので興味深かったです。
心よりご冥福をお祈り致します。 合掌‥
Posted by ブクログ
チャンドラーに耽溺したと作者が言うように、まさにフィリップマーロウのごときハードボイルドな探偵沢崎の物語。
人の望むように動くのを嫌う偏屈で厄介な私立探偵として動きながら、人情を見せたり人間らしく弱ったりする様は魅力がある。
沢崎の魅力だけのみならず、事件の真相も二転三転しはっとする終わりを迎えるストーリーテリングは見事。
Posted by ブクログ
私立探偵って大変だなあと思う。
依頼人の勝手な依頼を、仕事だからと受け入れ、警察に目の敵にされたとしても、弱音を吐くことはできない。
あくまでも守秘義務を貫くストイックが要求される。
というわけで、どこまでも巻き込まれていく主人公の沢崎は、依頼人から請け負った仕事をこなすうちに、誘拐事件の真相にたどり着く。
が、実行犯から事件の真相へたどりつく部分が、飛び過ぎて置いていかれる。
どうしてその真相にたどり着いたのか、そのとっかかりがどうにも納得できなかった。
とはいえ、被害者がいたいけな少女であることに加え、結構残虐な事件だったので、沢崎がどう解決するつもりなのか、彼の行動から目が離せなかったのは事実。
最後の最後。
この事件の真相を解明した沢崎のセリフが刺さる。
「家族を守ると言うが、(中略)一番苦しめているのは、(中略)つまりはあなた自身ではないのですか」
家族の問題って、突き詰めればそういうことなのかもしれない。
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探偵 沢崎シリーズ 第二弾 長編小説。
誘拐された少女の身代金受け渡し依頼を引き受けてしまう沢崎だが、その身代金を奪われてしまう。
誘拐された少女のおじから、自分の子供達がこの事件に係わっていないかを調べて欲しいと依頼がある。
その依頼を引き受け調べていくうちにだんだんと犯人が絞られていく。
探偵沢崎がかっこよく、事件そのものは推理小説風だがそれほど複雑でもなく、「探偵がかっこいい小説」くらいの感じで読み進めていたのだが、最後の最後にさすがこのミスの1位を獲得しただけのどんでん返しにビックリさせられた。
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20年位前発売時に読んだが、今回再読。
日本のハードボイルドの傑作といわれているの作品の一つ。
確かに文体や会話、表現方法にその特徴がよく出ている。ちうかフィリップ・マーロウそのものだろう。
解決編がラストほんのわずかで、ミステリーとしては伏線もろくに貼っていない。あくまでも沢崎という探偵の生きざまを楽しむ小説。
ハードボイルドらしく、所々に名文句が挟まる。
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14年ぶりの新刊を読む前に予習。30年前の作品ながらそれほど違和感はない。昭和の匂いを強く残す車、電話、煙草等の使われ方や、機知に富んだセリフに何度もニンマリさせられた。
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憧れのマキコさんが勧めてくれたこの寡作の小説家は、なんと高校の先輩でした。そして、私の好きなジョージさんが、この先輩のことを「日本にもこんなハードボイルドが書ける人がいるんだと思ったよね」なんてかっこいいこと言ってました。確かにおもしろかったし、読み応えあったけど、怖かったわ。
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結末から言うと、なんで最初に救急車呼ばなかったの?と言う……蓋を開ければ単純な事故だったのになぁぁ~~て思った。それに付き合わされ巻き込まれた探偵サンが気の毒で。。前回よりは、しっかり!読めた。沢崎は依頼人にも誰にも容赦ないくらいのクールな人間なのね。また、そこが魅力なんだけど。え?という驚きはなかったけど、本当に細かく細かく書かれてる作品。『さらば、長き……』を続けて読みます。
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依頼の電話があって出かけたのに、警察に囲まれた。
初っ端からすごい疑いをかけられています。
協力するか否かの選択も、したくないものがありますが
料金を説明して仕事とするのがすごいというか…w
身代金の受け渡し、入った邪魔に、呼び出し電話。
あからさまな罠もあり、どうなってこうなるのか。
容疑者多数に、首を突っ込んでくる兄も。
背負うには辛すぎる真実が分かった時
おろしていいというのに、ほっとします。
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作家がお亡くなりになったというニュースを聞いて再読。
チャンドラーにあまり通じていないので、それらしいのか判断できかねるんですが、オチへの流れがちょっと慌ただしいというか推理モノとしては弱いのかなぁという感じが。
でもそういうのではなく探偵につきまとう雰囲気が重要というかもしれませぬ。
ただ当たり前ですけど昭和・平成の始め感がすごい、この作品のテイストを良くも悪くも決定している気がしますなぁ。
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バイオリンの天才少女身代金誘拐事件に巻き込まれた私立探偵 警察や暴力団にも物怖じしない沢崎がかっこいい 昭和の匂い漂うキャラクター ブルーバードの連呼 公衆電話 そして煙草の吸いすぎ! 結末はどんでん返し的な やり切れない家族だなぁと
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前作に続いて実にハードボイルドで、前作よりもドライブが増してエンタメ力アップしている。
書き出しから実にハードボイルド。
「夏の初めの昼下がり頃だった。(中略)道路は混まず、外気はさわやかで、ブルーバードはいつになく快調だった。私のツキもそこまでだった。まるで拾った宝くじが当たったように不運な一日は、その電話で始まったのだ」
いきなり展開される誘拐事件。続々と登場する容疑者たち。しかし真相は、思わぬ方向から明らかになって…。名品。
Posted by ブクログ
通勤の電車内で読んでいるので時間は少し掛かったが、読み始めると次が気になっていたのでそれなりに面白かったのだろう。
途中探偵の物言いや行動が気になってきたので、もういいかと読むのを止めようかとも思ったが、読み続けられたのは最後のどんでん返しを期待したからだ。
でも何となく予想できちゃったんだよな。
Posted by ブクログ
1人の娘が誘拐され、犯人は身代金を要求。犯人は、その引き渡し人に探偵である沢崎を指名。沢崎は身代金の運搬役に指名され、犯人の命令に駆けずり回されるが、思わぬ邪魔により、失敗。
その後、少女は遺体で発見される。
以後、様々な謎が明らかになり、最後にはどんな結末になるのか。読み始めると、量は多いが止まらない一冊。
いわば、大どんでん返しの一冊だが、その仕方に少し違和感。なるほどなーで、終わってしまうのがちょっと残念だった。大どんでん返しのストーリーは好きだが、こういう系だと。もう少しハラハラドキドキ感が欲しかった気もする。
Posted by ブクログ
誘拐事件に巻き込まれる探偵物語なり。
テンポがよくて、話の進め方がうまいので
一気に読めた。読み物としてはかなり面白いと思う。
しっかし、なんでブルーバード連呼すんだろ。
「車」でよくね?
Posted by ブクログ
一部で大人気のハードボイルド作家、原?の直木賞受賞作。
探偵「沢崎」が活躍する著者の2作目。
友人の勧めにより読んでみる事に。
内容は、ある誘拐事件の容疑者と疑われてしまった沢崎が
その事件に深く関わっていきながら
真実に辿り着く…という、いわば普通の探偵物ミステリー。
ただし最後に思い切ったどんでん返し有り。
じゃあ何が面白いのかというと、沢崎というキャラクターである。
渋い。言葉の選び方が面白い。
「さすが探偵」と思わせる落ち着きと、スリリングな展開の中での
本気の沢崎がカッコイイ。
この作品自体が書かれたのが古いのか、
敢えて少し古い時代設定をしているのかよくわからないが、
描写に古めかしい部分があるのは事実。そこが気になる時もある。
(サッカーボーイがダービー云々…って、わかる人しかわからないだろうし)
しかし、そこはそういう時代の物語だと割り切れば良いであろう。
伏線の張り方、登場人物の個性、セリフ回しなど
非常に洗練された小説である。
しかし物語全体としては至って普通。王道。
ワクワクして読み進めるというよりかは、落ち着いて読める作品かと。