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Posted by ブクログ
原りょうが亡くなったことを先日知って、そういえばまだ読んでない最後の一冊があったなと本棚の奥から引っ張り出してきた。学生の頃日本のハードボイルドはほとんど読まなかったのだが、それもつまらぬバイオレンスや無駄なアクション、カッコつけるだけのシーンやセリフ、私が読んだのはそんな話ばかりで日本人に期待するのは無理だと考えていたときに彗星の如く現れたのが原りょうだったのだ。
そしてあまりの遅筆ぶりに最後の一冊を取っておいたのだ。それがこれ。私立探偵の沢崎に依頼してきたのは金融会社の支店長。融資先の料亭の女将の身辺調査を頼まれたのだが、女将は既に亡くなっていた。支店長に会いに行くと、そこに強盗が押入り…。更に依頼人は行方不明に。話はどんどん展開していく。原りょうの面白さは、ヒューマンドラマ的な一面にある。登場人物のやるせない人生に共感してしまうのはその文章力にある。沢崎も50歳を過ぎ、息子のような海津と出会い、謎の依頼人と語りあう。もうそのあたりまで行くとトリックや犯人は誰かなどどうでも良くなって、ただ登場人物たちの人生に共感し涙するのだ。そしてそんな素敵な小説を書いてくれて作者のご冥福を祈るのである。
Posted by ブクログ
原尞『それまでの明日』ハヤカワ文庫。
私立探偵・沢崎シリーズの第6作。もはや続篇は無いだろうというくらい前作の刊行から長い年月が過ぎている。読み始めて、そうだ沢崎という探偵が主人公で元パートナーの渡辺から引き継ぐ形で探偵事務所を続けていたんだ、などと本筋から外れた些細なことを思い出した。
今や古典とも言われるようなスタイルのハードボイルド小説。著者がこのスタイルを頑なに守っているのが嬉しい。複数の登場人物の思惑や欲望が複雑に絡み合い、単純な事件を一層複雑怪奇な事件に仕立て上げるのだが、探偵の沢崎はその一つ一つを解きほぐすように真実に迫る。久し振りにハードボイルド小説というスタイルで感情を揺さぶられるような素晴らしいストーリーを堪能した。
或る日、興信所からの下請け調査中の私立探偵・沢崎の元を金融会社の支店長・望月皓一が訪れ、融資予定の料亭の女将の身辺調査を依頼する。しかし、沢崎が望月なる男と会うのはこれが最初で最後だった……
という淡々としながらもリズミカルな滑り出しだけで、充分に事件を予感させる。
その後のリーダビリティあふれるストーリーは読んでのお楽しみ。一つだけ明かすなら、この物語は2011年3月11日の14時46分で終わることだけを書き添えておきたい。
文庫版に「著者あとがき」を収録。
本作のような、私立探偵と馴染みの警察に暴力団、同業の探偵が登場するという設定は、関川夏央と谷口ジローの傑作『事件屋稼業』にも似ている。探偵が軽口を叩きながらも事件を解決してしまう辺りも『事件屋稼業』を彷彿とさせる。いずれ、遠い昔となった昭和の時代を感じさせる設定である。
本体価格900円
★★★★★
Posted by ブクログ
▼再読・・・・か、再再読か(笑)。
原りょうさんの、遺作。探偵沢崎シリーズ最終作(別に何も完結していないけど)。
舞台は2010年から2011年で、小説上梓が2018年。
▼とある金融会社と暴力団の繋がりが、殺人に繋がり、私立探偵・沢崎が巻き込まれる・・・・というような段取りなんですが、当然ながらこのシリーズは、
<段取りだけ聞いても全く面白そうに思えない>
<段取り的に言うと、キモなことが意外と分からないまま平気で終わる>
この話も、犯罪の動機とか手段とか、そのあたりはよくわかりません(笑)。
良く分からないまま終わります(笑)。
▼このシリーズの大いなる魅力は、レギュラーの素敵な面々と沢崎のやりとりなんですが、第1作(1988)から、実に設定上22年が経過しています。第1作でチンピラだった男が、中年男になって親の介護をしていたりする。そのあたりの味わいが極上です。一方で、沢崎さんはなんと、いまだに携帯電話を持っていない。スマホではないですよ。携帯を持っていないのです。携帯を持っていない探偵・・・。ただ、沢崎さんにとっては、伝言サービスのおねえさんとのやりとりが必須だから、仕方がない(笑)。
そのあたり、ほとんどもう、大気圏を突破してファンタジーの領域に突入した極上のハードボイルド。スルメか昆布か沢崎か、という味の渋さと奥深さ。3年もすれば、またきっと再読します。なにしろ、ミステリーとしての段取りは物凄く複雑なうえに説明が不足していて、よく訳が分からない。分からないから覚えられない。すぐに忘れるから、再読すると、ほぼ七割がたドキドキして楽しめてしまうのです。
実に小説らしい小説です。大好きです。
ある意味、今、日本人に親しみのある小説家で言うと、村上春樹さんがいちばん近いと思います。村上さんの長編も、「なにがどうして起こったか」なんて、絶対だれも分からないでしょう?きっと書いてる本人も「分って」はいないでしょうから(笑)。
でも、おもしろい。
分かるか分からないかよりも、面白いか面白くないか、ですよね。
▼おおまかな備忘録(ネタバレあります)
・金融会社の支店長・望月という中年男性が、沢崎を訪れ
・赤坂の料亭の女将のなんとかさんの、信用調査を依頼
・ところがそのなんとかさんは死んでいた。妹さんが継いでいた。混乱。
・望月さんに会いに職場に行ったら、強盗と出くわす。さらに、支店長であるはずの望月さんが失踪している。
・さらに、そこで海津という好青年と知り合う。さらに、結局強盗は金庫を開けられなかった。警察が金庫を開けたら、帳簿に無い現金が数億円あった。
・海津青年は、助手っぽくなる。沢崎に、「僕の父親では?」と問う。なんだけど、あちこちでそう言っていることが分かる。実際、父親は分からない。
・望月の別宅のマンションで、暴力団関係の死体が発見される。
・望月の家族への取材などで、潜伏先をさぐる。
・望月はやがて自首してくる。恐らく暴力団の裏資金の洗浄とかしてた。
・だがその望月は、沢崎の依頼人の望月ではなかった。依頼人は「望月の名前を騙った誰か」だった。
・その誰か、が、料亭の女将の線から(だった気がする)とある金持ちに特定される。先代の女将と、悲恋の間柄だった若死にした画家の物語。
・その「誰か」さんが、悪人ではなく、海津青年の実の父親であることが分かる。
・しばらくして、沢崎は新しい西新宿の事務所に転居しているが、2011年3月11日、東日本大震災に襲われる。
探偵 沢崎シリーズ最後の作品
「愚か者死すべし」から約13年という歳月は私自身の環境や価値観に大きな変化を及ぼしてたようで、本巻が私が購入した沢崎シリーズ最初で最後の電子書籍となったこと、そして、本巻を読んでもなんら心が動かさることがなかったことは、私に少なからず驚きの感情を与えた。
本作が良作であることは疑いようもなく、これはもしかすると、私自身が沢崎と同年齢に達したことで良くも悪くも価値観が少しずつ変わってしまったからなのかもしれない。
いづれにせよ、一つの作品が終わったという事実を受け止めて残りの人生を見つめていきたい。
また、大変遅くなりましたが、
原先生のご冥福をお祈りいたします。
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