原リョウのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ沢崎探偵シリーズ第二作。
この作品は読んだことがある気がした。
シリーズものは最初から読むことにしているので、
なぜ1作目を読まずに2作目を読んだのかは全く覚えていない。
覚えていないと言えば、ほとんど内容も覚えていなかった。
幸運と言うべきか。
ハードボイルドに不可欠なもの、主人公の生き様、に加えるとすれば、
都会的雰囲気、としたい。
それは、LAでもNYでも東京でも良いはず。
ただ、新宿では鮫が泳いでいるらしいが、
東京は現実であるがゆえに、虚構の舞台にはなりにくい。
ただ、この作品の中の東京は、現実ではない。
ブルーバードが走り、喫茶店で呼び出しがかかり、第一勧業銀行がある東京。
懐かしいというには、多分、自分は若すぎる。
覚えていたのは、結末。
うろ覚えながらそれを覚えていたから、
誘拐の身代金の運搬に失敗するという、
息が詰まる展開に耐えられた。
面白かった。 -
Posted by ブクログ
ネットで見かけて。
とくにハードボイルドが好きな訳ではないと思う。
暴力にも、カーチェイスにも、銃撃戦にも、ましてや美女にも
興味はない。
ただそれらを含んでいても含んでいなくても、
心魅かれるものがあるとすれば、
それは、多分、男の「強がり」なのだと思う。
「美学」とも「やせがまん」とか、
呼びたい人は呼べばいい。
誰にも、何にも囚われないおのれ一人の哲学だけで生き、
障害に対してそれを貫く強さ。
そういう意味では、
金も名も求めず自分の技だけを追求する「職人」に似ているのかもしれない。
謎解きも面白かったし、
どう見ても実在の政治家と俳優の兄弟をモデルとした登場人物は、
都知事となることを予言していて驚いた。
そして、
国鉄も、電話応答サービスも、喫煙者までもが懐かしい。 -
Posted by ブクログ
大晦日からの数日の出来事を描いた、沢崎さんという探偵が主人公のハードボイルドミステリー。いくつもの犯罪が交錯する中、真相に迫っていく。
この『愚か者死すべし』は前作から9年の歳月がたって発表されている。2004年11月に発売されている。長い間ファンは待ち続けないといけない。
でも、待ったかいがあった。面白い作品に仕上がっている。でも、長いなぁ~
本作品の続編、『それまでの明日』は2018年に発売された。14年ぶりになる。この作品を読み終わってしまうと、また10年待たねば新作を読めないと思うと、今から五年後に読んでみてた方が、次作を待つストレスは軽減されるかもしれない? -
Posted by ブクログ
【密霧の先に】私立探偵として生計を立てる沢崎は、消えたルポライターの捜索依頼を受ける。佐伯と名乗るその男は、妻との離婚を目前に控えて忽然と姿を消してしまったのだが、沢崎は彼がある特ダネを追っていたことを知り......。著者は、本作で山本周五郎賞を受賞している原尞。
緻密なミステリーラインが魅力的なことはもちろんのこと、沢崎を中心に広がるこの世界観がたまらない作品。ジャンルに落とし込めばハードボイルドということになると思うのですが、この渋い小説世界にどっぷりと身を浸したくなる一冊でした。
〜彼らはいつも肝腎なことを見落とす。真実を伝えると言うが、所詮はその程度のことだった。〜
沢崎シリーズは全巻読むことになりそう☆5つ -
Posted by ブクログ
渡辺探偵事務所に勤務する沢崎が主人公のシリーズ、長編3冊目。
今回も、沢崎探偵の事実を積み上げていく捜査を共に歩み、時に痛い目にあいながらも、持てる駒の中から次の一歩を踏み出す。
本書は今までの文庫本の中でも特に分厚いページ数があり、読み始める勇気を奮い起して読み始めたが、気が付くとあと数ページとなるほど時を忘れて読みふけてしまう作品になっている。
作者である原さんは、綿密な下調べを行うためか、作品の発表までに時間がかかる。本作は前作から5年後に発表されたものだとあとがきにある。新作として待ちわびるリアルタイムで過ごした人たちは、辛抱強く待ち続けるしかない。
『愚か者死すべし』が次に発表された作品。『さらば長き眠り』(本書)からどれくらいの歳月が流れて発表されたのだろう。今の私はふらりと書店に行けば購入することができる。なんと幸せなことだろう。 -
Posted by ブクログ
前作「天使たちの探偵」(短編集)から5年ぶりに上梓された本作!
いや~~よかった!!
もうウルウルして「沢崎、おかえり~」なんて思いながら読んでしまいましたよん。
本書の冒頭からもおわかりでしょうが、沢崎自身、400日ぶりに東京へ戻り、探偵業に復活します。
あいかわらずのチャンドラー口調、健在でした。
時々、推理小説ファンでトリックとかを重視する人だったら怒るかもしれない部分がありますが、それは~あなた!沢崎だから許されるんですよん。
その部分っていうのは突然、沢崎が何も前触れなしにピタリと本当のことを当ててしまうところなんですけど。
本書もなんともいえない暗い余韻がありました。
これまた素敵なところでもあるんですけどね。
沢崎も言っておりますが、「何故」と思い、答えをみつけたら、もっと「何故」がでてくるものなんでしょうね~、人生って。
よく、ハードボイルドはちょっと・・・っていう御仁をお見かけしますが、原氏作品はハードボイルド入門者にもぴったりだと思います。
もちろんできれば最初の「そして夜は甦る」から読んでください。
絶対、お気に入りの1冊になるはず!
おまけの文庫化にあたりの書下ろしが後書きの後ろにでているのですが、これがまたいいんですよん。
もう原氏って素敵すぎ!!(笑)
沢崎ファンとして、本書の最後の部分にはまたまた感動してしまいました。
「そして夜は甦る」から続いている謎な部分の解答がでております。
だから「沢崎シリーズ第一期完結」と言われるのでしょう。 -
Posted by ブクログ
西新宿の私立探偵・沢崎が主人公。実はシリーズもので、本作の1年前に出た『そして夜が甦る』が1作目。作中にも、前作をうかがわせる記述がところどころにあるのだが、ストーリー的には前作を読んでいないとわからないことはないと思われる。
探偵・沢崎のもとに依頼の電話が入る。行方不明の家族を探す依頼だったが、「依頼人」宅に行ってみると、すでに警察がいて、沢崎は誘拐犯の一味と疑われる。わけがわからないまま、彼は少女誘拐事件に巻き込まれ、「犯人」の指示で身代金受け渡し役を引き受ける羽目になる。あちらこちらと振り回されて、挙句に殴られ、身代金を奪われる。
少女はバイオリンの名手で、将来を期待されていた。その家庭にはなかなか複雑な事情があった。警察からの犯人の一味ではないかとの疑いが晴れぬまま、沢崎は少女の叔父の依頼で、さらに事件の背景に迫っていくことになる。
果たして少女は無事なのか。男のような女のような声の「誘拐犯」は誰なのか。
最後に沢崎が突き止める「真相」とは。
ストーリーはかなり練られたもののように感じるが、それよりも文体が特徴的である。冒頭近くの
まるで拾った宝くじが当たったように不運な一日は、一本の電話ではじまった。
というのがすでになかなかすごい。幾分、シニカルでしかし自虐が過ぎるわけではない文体が、作品全体の空気をどこかさらりとしたものにしている。個人的にはところどころ凝りすぎで若干鼻につくのだが、ベタつかない点は美点である。
沢崎は、引用文に違わず、誘拐犯と疑われたりぶん殴られたりと散々な目に遭うし、犠牲者の描写もそれは凄惨なのだが、全体として硬質で都会的。
最終的に沢崎がたどり着く「真犯人」には、私としては少々違和感があるが、見事なタイトル回収、ということになるのだろう。
巻末のあとがき代わりの「ある男の身許調査」によれば、著者の経歴はなかなか異色なようである。さまざま蓄積された「教養」が文体の背後にあることがうかがえる。バーテンダーが『白痴』というタイトルの本を読んでいるのが見え、沢崎がチップを渡しつつ「『悪霊』も読みたまえ」というと、バーテンが礼を言いつつ「失礼ですがこれは坂口安吾ですので・・・」と返すエピソードが個人的お気に入りである。
沢崎が乗るブルーバード。身代金受け渡しのために使用されるあちらこちらの公衆電話。両切のタバコ。バーや喫茶店。重病の暴力団幹部とその用心棒。
さまざまな「小道具」が作品の雰囲気づくりに一役買っているのだが、実はかなり「時代」に依存しているものであったりする。本作発表は平成元年だが、多分に昭和の香りがする。西新宿という、都会だけれどハイソではない舞台でそれらが映える。
本書の著者はもう亡くなっているので、新作は望めないが、果たして令和の時代のハードボイルドというのはどういうものになるのだろう。公衆電話で探偵が右往左往させられることもないし、タバコをぷかぷか吸ったりできないし、泥酔して暴力沙汰もまずいし、反社勢力を登場させるのも、LGBTQを揶揄するのも慎重を要するだろう。おんぼろのブルーバードを爆走させて無断駐車もできないだろうなぁ・・・。
それでも探偵はクールに都会的でいられるものなのか。それはそれでちょっと読んでみたいような気もする。