秦建日子のレビュー一覧
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死んでもいい命・・・ではない。「殺してもいい命」だ。
この違いは大きい。
雪平は驚くほどに孤独だ。穿った見方をすれば孤独であろうとしているようにさえ見える。
共に行動することが多い安藤は、雪平を理解しようとしている。
何があっても最後まで雪平について行こうと決めているし、守ろうと考えている。
けれど、安藤の決心は雪平の心の奥底までは届かない。
本当の意味で雪平を動かすことができるのは、ただひとり。
愛娘の美央だけなのだろう。
だから雪平は怯えてしまう。
母親であることが許されるのかと、美央の言動のひとつひとつに反応してしまう。
大切だからこそ、美央と向き合うときの雪平はひどく臆病になる。
犯人は雪平の心理をよく掴んでいたのだと思う。
身勝手極まりない動機だったが、切実な思いがそこに存在したことは確かだろう。
「ストーカーで構わない・・・」と言い切った犯人。
雪平の気持ちを気遣うこともなく、一切を切り捨てている。
大切なのは自分が必要としている、それだけなのだ。
世界はまさに自分を中心に回っている。
そして、それが許されると思い込んでいる。
冒頭の殺人事件の被害者が佐藤和夫だったことに驚いた。
「えっ??なんで??」
ドラマの影響だろうけれど、香川さんが暗い河原に倒れているようすが浮かんできてしまった。
いきなりの展開で、グッと物語に引き込まれてしまった。
それにしても、美央は本当に過酷な運命を背負っている。 -
Posted by ブクログ
前作の「推理小説」は「アンフェア」というドラマになった。
原作である「推理小説」は第4話までに消化され、その後の展開は完全なオリジナルとなっている。
したがってドラマでは死亡したはずのキャラクターが、この「アンフェアな月」では生きて物語を続けている。
こんなはずじゃなかった・・・母となったとき、そんなふうに思うことがあるのだろうか。
思うようにならない育児、容赦なく背負わなければならない責任。
何しろ、世話をしなければすぐに死んでしまうような脆い命が相手なのだ。
突然に告知されるタイムリミットのある命。
いつかは必ず誰でも死ぬ。でも、それはきっとまだずっと先の話で、明日も明後日も同じような日が続くと根拠もなく信じている。
自分の人生を振り返ったとき、何ひとつ後悔しない人もいるだろう。
たとえ思い残すことが何もなかったとしても、やはり目の前に迫る死はけっして愉快なものではないはずだ。
安易に「死ぬのなんて怖くない」という。
簡単に他人に対して「死ね、死んでしまえ」という。
それは死が遠い存在だからこそ言えることだ。
いま生きている時間とはまったく違う世界に、死は存在する。
人生の最後を純粋無垢な存在と過ごした犯人。
彼にとってその時間はどんなものだったのだろう。
充実した、幸せなひとときだったら・・・と思う。 -
Posted by ブクログ
猟奇的殺人事件が起こり、世間がその真相に右往左往する中、警察と主要出版社に「推理小説・上巻」とかかれた原稿が届く。そこに書かれた内容は、犯人のみ知ることの出来る詳細と、さらなる殺人予告。次々と主観の変わる展開の中で、あなたは犯人を見つけることが出来るだろうか。
なーんて、勿体つけて内容を書きましたが・・・この本を「ミステリ」として読んではいけません!! もし「ミステリ」として読んだ場合の評価は★×2個ですから。では、どのように楽しむと良いのか。答えは「ドラマを見る感覚」です。
構成は全7章で、「第一章 アンフェアなはじまり」に始まり「最終章 おそらくは、納得のいかないラスト」にて完結。作者自身の考えは知りませんが「ミステリ」として読んだ場合は本当に納得いかないラストになってしまいますよ・・・(みのもんた風)でもね。そうじゃないのよ奥さん。これを連続ドラマとして考えてみてよ。毎週、絶対に続きが気になるでしょ? ね? この作品はね。そんな作品なのよ。うんうん。ほら。わかったんなら、早く書店に急がなくちゃ。