秦建日子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ただ単に山を舞台にした小説を読みたくて、行き当たった作品だったが、2012年に放送されたドラマのノベライズだった。
全然知らずに読み始めたが、実際にボランティアで作っている「診療班」をベースに描かれていると言うことで、作品自体すごく良かった。今まで山岳救助隊の話などがほとんどだったので、高地での医療の難しさなど、初めて知ることもたくさんあったし、医療ものなのだけど、描いているのが脚本家でもある作者なのもあって、文章も読みやすい。
ドラマは全く観ていないので、よく分からないが、ドラマで描かれるより前の昭和47年、「山で亡くなる人の命を一人でも救いたい」と言う強い思いを抱いた山荘のスタッフが診療所 -
Posted by ブクログ
死んでもいい命・・・ではない。「殺してもいい命」だ。
この違いは大きい。
雪平は驚くほどに孤独だ。穿った見方をすれば孤独であろうとしているようにさえ見える。
共に行動することが多い安藤は、雪平を理解しようとしている。
何があっても最後まで雪平について行こうと決めているし、守ろうと考えている。
けれど、安藤の決心は雪平の心の奥底までは届かない。
本当の意味で雪平を動かすことができるのは、ただひとり。
愛娘の美央だけなのだろう。
だから雪平は怯えてしまう。
母親であることが許されるのかと、美央の言動のひとつひとつに反応してしまう。
大切だからこそ、美央と向き合うときの雪平はひどく臆病になる。
犯人