井上智洋のレビュー一覧
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経済には興味があり、新聞やネット記事を読んだり、経済関係の本も読んだりしているので、それなりに知っているつもりだったが、まだまだ教えられることがあった。
著者は、どちらかと言えばMMTに賛同している人なので、説明の軸もそちらの側に立った記述となっている。そして、MMTは胡散臭いと思っていた自分だったが、決してそうではないことが学びだった。
優しく書いていることが、かえってまどろこしいところはあるが、総じて経済の入門書としては良いと思う。特に資本主義の課題や望ましい国家のシステムを個人的な意見としてだが踏み込み、それが自分の思いとベクトルが合っていると感じた。 -
Posted by ブクログ
ベーシックインカム(BI)の必要性について、述べている本。私はこの著者と考えが近いのだと思う。
自身がリバタリアンほど過度な自由を尊重してるかとは認識していないものの、本書にあるように、儒教的エートス vs リバタリアニズムという対立軸を設けると、リバタリアンなんだろうなと。
本書は2018年に書かれたものの、今や生成AIが人口に膾炙し、事務から知的労働の多くが必要なくなる未来が見えてきた。労働がないだけの未来はディストピアでも、そこにBIのような最低限のお金を分配する社会保障があれば、ユートピアに近いかもしれない。
私も著者が言うように、精神疾患で働けない人から労働意欲のない人、ギャンブル依存症まで全ては環境要因や遺伝で決まっていると考えている。要するに、全ては運で、成功も失敗もたまたまにしか過ぎないと考えている。
であれば、自分がいつ失敗側につくかもわからないし、等しく最低限の生活ができるようにしたほうが良いのでは?と考えるのは別におかしくない。
BIが広まらないのは、財源論の話もあるものの、怠け者は悪とか怠惰な人が増えるみたいな感情面の話も多いだろうなと。 -
Posted by ブクログ
経済学の入門書(簡易な言葉に入換バージョン)
国やお金の仕組みを100人の村と言うかたちでわかりやすくしたもの。
「お金とは何なのか?」
「国というものは何のためにあるのか?」
「税は財源ではない」
「大事なのはお金の数字の大きさではなく、人や技術や実物的なモノであること」
税金によりお金が価値を持つ(租税貨幣論)p43
「国には財政的制約はないが、実物的制約はある」(機能的財政論)p115
お金とは人間と言う群れを効率よく強くするための便利な道具 p276
ギリシャ危機 p81、ハイパーインフレ p154、サブプライムローン p154、リーマンショック、ロシア危機 p255
などの原因を知ることが出来た。以前であれば見向きもしなかったことだが、資産形成の一貫として経済に触れられたのはメリットだったかなと思う。 -
Posted by ブクログ
本書を読みながら、人工知能(AI)について一つの整理を行いたい。
特に、2016年当時のAIに対する考え方を振り返ることは、その背景を理解する上で重要である。本書の副題「2030年雇用大崩壊」が示すように、その頃はAIによる大失業の可能性が多く議論されていた。当時のAIの進展状況を見ると、チェスや囲碁、将棋においてAIが勝利を収める時期であった。チェスに関しては1997年にDeep Blueが勝利し、囲碁と将棋に関しては2017年にAIが人間に勝った。
ここで重要な概念の一つは「技術的失業」である。この概念について、著者は特に興味深く述べている。イノベーションは省力化を促進し、その結果として人員削減が生じる傾向がある。
歴史的には、イギリスにおいてラッダイト運動という労働者の抗議運動が起こった。ケインズは1930年のエッセイ『孫の世代に可能性を』の中で、「技術的失業」という言葉を初めて用い、省力化に伴う失業のリスクを指摘した。
また、カーツワイルはシンギュラリティの到来を予見しており、遺伝子工学、ナノテクノロジー、ロボット工学のGNA革命が引き起こすとした。カーツワイルは人間の意識のアップロード、すなわちマインドアップローディングが2030年代には実現する可能性を示唆している。カーツワイルによればに、肉体の死後も精神がコンピュータ上で生き続けることになる。
著者は、2045年のシンギュラリティよりも前倒しされた2030年頃に、AIが人間の知能に追いつき、ホワイトカラーの事務職や医師、弁護士などの専門職も失業の危機に瀕するという。その結果、人口の最大9割が仕事を失う可能性が示されている。労働の種類別に見れば、最初に影響を受けるのは肉体労働と事務労働、その次に頭脳労働であるとされる。この時点ではディープラーニングが始まっているものの、生成型AIは当時未だ実装されていなかった。
著者は、AIは人間の知能に追いつくものの、「すべて」ではなく、「大部分」の知能を獲得すると述べている。シンギュラリティの到来の特徴を次の四つに整理している。
① AIが人間の知性を超えること。
② AIが自己増殖を可能にし、「知能爆発」が起きること。
③ AIが人類に代わり世界の覇権を握ること。
④ 人間とコンピュータの融合により、ポストヒューマンの実現。
これらを実現するためのアプローチとして、「特徴表現獲得の壁」や「言語の壁」を超えるために、「全能アーキテクチャ」が提唱されている。これは、以下のような構造を持つ。
① 脳はモジュールに分割可能である。
② 各モジュールは機械学習器で構成されている。
③ それらが組み合わさることで、機能と知性が創発的に現れる。
しかし、「生命の壁」が依然として克服の難しい課題として存在している。AIは創造的な仕事を成し得るのか、意識を持つことは可能か、また、AIに責任を負わせるべきかといった問いも投げかけられている。
全脳エミュレーションは個人の脳の「コピー」を作成し、意識の再現を試みるものであり、これに対して全脳アーキテクチャは人間のような汎用知能を持つAIの構築を目指すものである。双方の違いは明確である。
AIは、バッハと同じような曲や模倣された曲も作ることができる。特に、既存の音楽理論の枠を超え、複雑な対位法や無限の変奏、高速に生成される新たな構造を持つ音楽を創出できる可能性がある。大量の音楽データから、人間が気付かないパターンや組み合わせを発見し、新しい音楽ジャンルや概念を超えた「新たな響き」を生み出すことも現実的となるだろう。バッハの音楽の精神性や時代を超えた感動、人間が持つ「深み」をAIが超えることができるかについては、今後の課題である。
感覚の「通用性」がAIにとって得られるかも重要なポイントだ。AIはあくまで「作曲を支援する強力なツール」かつ、「人間が気付いていない音楽の可能性を探るアシスタント」としての役割を果たすと考えられる。しかし、意味のある飛躍的なアイデアや心地よくて革新的なメロディは、AIにとっては生み出しにくい部分である。そこをいかにブレークスルーできるかが重要な課題である。
また、イノベーションと経済成長に関して、蒸気機関による第一次産業革命、内燃機関と電気モータによる第二次産業革命、パソコンやインターネットによる第三次産業革命を経て、2030年代の汎用AI・全脳アーキテクチャによる第四次革命が予見される。そして、「生命の壁」をどう克服するかが大きなテーマとなる。
AIは生産効率を飛躍的に向上させ、人間の労働の大部分を代替し、経済構造を根本から変革する。経済学の立場からは、技術進歩は持続的な経済成長をもたらすとされるが、その一方で、AIによる技術的失業も懸念される。労働移動には時間がかかり、移動先の仕事が見つからないことが原因で失業が生じると考えられる。これに対処するためには、金融政策としてマネーストックを増やし、失業の緩和を図る必要がある。
労働の中でも、クリエイティブ系(C)、マネジメント系(M)、ホスピタリティ系(H)の仕事はAI時代に残存しやすいとされる。これらは他者との感覚的な交流や感性の通用性を必要とし、それが生き残るポイントとなる。2015年の就業者は約6400万人であるが、その中でCMHに従事する人は約2000万人であった。そして、AI時代においては、この代わりに必要とされる人員は半分の1000万人程度に激減すると予測される。これにより、「純粋機械化経済」へと移行し、最終的には人間の労働が不要となる脱労働化社会へと進むことになる。
ポール・クルーグマンは、「長い目で見れば、人間のすることを機械がすべてこなせるようになる。しかし、その頃には、この問題を考えるのも機械になっている」という。
これに対し、著者は、AIによる大量の雇用喪失に対処し、社会の持続を図るために、社会保障をベーシックインカムに一本化し、すべての人に年齢に関わらず一律の生活保障を支給すべきだと提案している。これは、失業や所得格差といった社会問題の解決策としても一つのアプローチといえる。
以上のように、本書はAIと経済の未来について、多角的かつ深い考察を行っており、今後の技術革新と社会の在り方を考える上で重要な示唆を与えている。著者がいう2030年雇用大崩壊は、あと5年だ。日本政府は、時給を上げるというが、失業者が増大する可能性もある。 -
Posted by ブクログ
▼何かの本で、おススメになっているのを覚えていて、読んでみました。「東大生」に付加価値を付けたタイトルは今一つ品が無いなあとは思いますが、好きな本でした。
▼ずっといわゆる文系・文科系の割り切りで過ごしてきてしまったので、大人になってから、「経済の仕組み」に興味が出てきても、何を読んでいいか分からず。たまにそれらしい本を手に取っても、正直全然腑に落ちない経験ばかりでした。この一冊は、タイトルほど「面白いほどわかった!」でも無く、それなりに難しかったですが(笑)、それでもだいぶ、腹に落ちました。スバラシイ。
▼好感を持ったのは。結局、経済の仕組みをなんのために理解するか。あるいは経済の複雑な仕組みはなんのためにあり、また何のためにあるべきか。そういう、言ってみれば哲学的なというか、モラルや理想論の領域に後半は入りますが、それが良かったです。
▼結局、たれでも濡れ手に粟で不労所得(に近いもの)があれば嬉しい。一握りの「楽に稼げる階層」に近づきたい。そういう気持ちは本能かと思いますが、そういうことばかり全員がやっていたら、ひとりひとりが、幸せに生きるために必要な衣食住のなどのインフラやサービスを「生産」する人が減っていく。そうすると、結局最後は、「楽に稼げる階層」の人たちの中でも一部の人は「安全とか安心とか満足感とか」そういうものを削ぎ落されて行ってしまう。結局は、「楽に設ける近道無し」という気持ちで働いた分の収入で「幸せだと感じる暮らし」を営めることがいちばんなんだなあ。そういう、ぐるりと回ってありきたりな場所に戻ってくる。戻ってくるのだけど、以前よりも確信が持てる。そういう意味で素敵な読書でした。