南條範夫のレビュー一覧
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寛永六年(1630年頃)に行われ、あまりに悲惨な内容のため後に開催事実が隠滅されたとしている、架空の「駿河城御前試合」十一戦+後日談一戦の全十二話の短編集。
多くは、「絶対無敵の技を身に着けた」ものの戦いで、現実とは離れているものの、その技を身に着けるに至る時代設定にあったエピソード(多くは女性がらみ)や、全体通しての古風な表現から、「歴史ものを読んでいる」感が高かった。
特に「身替り試合」が、全体と同じ悲劇話しながらも喜劇要素があったり、また、そもそも道場剣法と戦技との差異という、この本の中ではリアリティのあるベースであったことなどから、もっとも面白かった。
全体的に短くまとめられた話の中で、第十一戦はずいぶん冗長に感じた。また、その後の顛末を描く第十二話は、今までの悲惨を総括するために強引に話を進めているように感じ(急に出てきた「車大膳」って・・)、私にとってはかえって興醒めだった。
全体通しては面白かったが、著者の別作品を近日に読みたい、と思うほどではなかった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレシグルイの原作と聞いて読んでみた。
わずか40ページ足らずの1章「無明逆流れ」が、該当する部位のようだ。
だいぶすっきりと話がまとまっていて、虎眼先生は健康だし伊良子はただの色男みたいな感じだった。
それでもやはりあの異様な剣の構えはそのままで、文章においても奇怪な雰囲気が存分に伝わってくる。
御前試合11番ということで一つ一つの話は短いけれど、その他の章に関してもドロドロした女絡みの愛憎が物語を引き立てる。
句点がくどいほど多用されていたのは少し気になりつつ、読みやすいとは思った。
思っていたよりもずっと救いのない結末だったな… 。
美人に斬りつけられるのが気持ち良すぎて、とか。
とどめの一手を峰打ちにしていたはずなのに、とか。
けっこう皮肉な展開が多く、
しかも女に惑わされ道を踏み外す男も多くて「やめろー」と言いたくなる。
「無残卜伝流」から「剣士凡て~」にかけては、
ラストスパートともいえる見事に無残な展開が押し寄せてきて、最後は「ほぅ」っと溜息をついて本を閉じることになった。
藤木さん報われなさすぎ。 -
Posted by ブクログ
<全15巻:全編への感想です 原作読破済み>
シリーズ途中で原作小説を読み、大筋にのみ乗っ取り、キャラクター像や登場キャラクター、エピソードは山口氏(以下「作者」)の独自創作・改変が予想以上に多いことを知り、納得しつつも改めて驚きました。
狂気の暴君・大納言忠長が駿河城にて主催した真剣御前試合。その第一試合に登場した二人の剣士は、片や全盲、片や隻腕という異様な取り合わせ。
二人の一見奇矯な剣法がぶつかり合おうとするシーンから一転、その因縁が1から語られ、最後は試合の決着がついて終わります。
残酷物の傑作として知られた原作に劣らず、(もう表紙からして)血と内臓、不条理と狂気の応酬。迫力は素晴らしく、特に序盤の吸引力は流石と評するしかありません。
ただ途中から、作者の魅力である描線が細く、コントラストも弱めになって(というか最終的なクリーンナップを行っていないデジタル処理に見える部分も)行くのが個人的に残念。絵柄が研ぎ澄まされていったとも言えるのでしょうが、鮮明かつねっとりとした線のほうが好きでした。
また改変・オリジナル部分もあまりにもエキセントリックなところが多く、正直中盤以降口飽きする感は否めませんでした。
ここは原作既読かどうかによって大きく異なるでしょうが、虎眼先生をあそこまでエキセントリックで痴呆がかった老醜の剣客(それでも腕は確かという怖さはそれはそれでよかったんですが)として描く必要はあったのかなど、疑問に思う部分も読み進むにつれて増えてきました。
特に別エピソードである「がま剣法」から屈木を出演させる意味と意義が今一つ伝わらない感じでした。
その辺りの中盤のダレと、原作の行間を補強するのはいいのですが、これ必要だったのかな?というエピソード群が残念。
全体で7~8巻ぐらいにまとまっていれば文句なしの名作だったかもしれません。
ラストは十分に残酷な原作に輪をかけて過酷です。これは悪くなかったし着地点として評価したいと思います。
ただ、この御前試合の真の残酷さ、そして呆然とするほどの無意味さはやはり、原作のラストにこそあると考えます。ぜひ原作小説も併せて読んで楽しんでいただきたいですね。
最後に「無明逆流れ編・完」とあるのは、機会があればほかの章も漫画にしたいという作者の大望なのでしょうか。
この作品以降、作者の魅力であった「テンポの良さ」が失われた感(完結後に執筆・連載中の「エグゾスカル零」でも顕著)が強いのが残念。単なる作風の変化と受け取るべきなのでしょうか、ちょっと今は判断できません。
駿河城御前試合・無明逆流れのエピソードは、その鮮烈さと残酷さゆえに、年代を問わずクリエイターの完成に響くところがあるのでしょう。
この物語をカバーした映画や漫画は他にもいろいろとあるので、読み比べてみるととても面白いです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレかつて駿河城(駿府城)徳川忠長公の御前で催されたとされる、漫画「シグルイ」の原作である「無明逆流れ」を含む真剣勝負11試合を描いた短編集。
武技を究めたる剣気盛んな剣士が対峙すれば、血沸き肉踊り、互いの奥義の交錯の果てに残るは血煙と血だまりに浮かぶ酸鼻極まる骸のみ。
鍛錬に心血を注ぐ屈強な剣士たちがたった数ページで凄惨に破壊される様はとても暴力的であり、最後まで徹底した容赦のなさは
登場人物たち武芸者が封建社会の駒であり君主の娯楽の一部でしかない悲惨さを強調します。
登場人物たちは破滅的な結末を演出するがために個性豊かで多種多様な剣術とドラマを持つ魅力的なキャラクターとして描かれているのです。
あまり人に薦められる作品ではありませんがとても刺激的で面白い作品でした。
登場人物の中では「被虐の受太刀」に登場する美形の対手(男女問わず)に斬り付けられるのが性癖のド変態剣士が印象に残っています。 -
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江戸時代の講談寛永御前試合の原型になったといわれる、「徳川忠長公秘書」を基に駿河御前試合を描いた作品。
駿河御前試合に出場する11組22人の剣士たちの凄惨な闘いを12の短編で綴る。
江戸時代の初期、駿河の国に冷酷な君主徳川忠長あり。
将軍家の次男でありながら、密かに天下を狙っていた。
天下に号令せん日を望んで名だたる豪傑たちを集めていたが、あるとき余興に真剣での御前試合を思いつく。
様々な遺恨をもった十一組の剣士たちが繰り広げる血の饗宴。
読みどころは、人間離れした剣士たちの卓越した技!
一瞬にして抜く、斬る、鞘に戻すといった目にも止まらぬ技の応酬に慄然となった!
また、十一組の試合が全てに闘うに至った経緯から試合に勝たなければならない理由がはっきりしており、叙情感たっぷりの展開。
特に面白かったのが、どMな剣士が主人公の「被虐の太刀」。
美しい青年・女性に斬られることで快楽が極度に高まるという天才剣士が巻き起こす泥沼劇。
どんな剣の使い手にも勝る腕を持ちながら、美しい男女に斬られことを楽しむあまり、血みどろになりながら斬られ続ける下りは爆笑でした。
全編を通して飽きのこない小説でしたし、笑いと凄惨な描写のコントラストが非常に上手いと思いました。
予想以上に楽しめたのと、南條範夫という作家ともっと早く出会っておけばよかったと、いい意味での後悔をさせてくれた作品でした。
男女の粘着質なドラマとサムライが好きな方にはオススメしたい一冊です。