あらすじ
少林塾にはいった弥太郎は、後藤象二郎と知り合う。後に龍馬と「船中八策」を練り上げたあの後藤である。このコネで土佐商会の主任、長崎留守居役に抜擢され、明治維新以降は海運業をはじめた弥太郎、政府高官や外国人をカネと女の接待漬けにして強引に商売を広げる。西南の役では巨利を手にし、ついに日本の船の8割を手中にするまでに。西郷隆盛、井上馨、木戸孝允、桐野利秋ら精鋭きらめく群像劇において、岩崎弥太郎は何を演じたのか。一代で財を築いた、ど迫力人生!
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
下巻は、主に明治初期の政治、経済、振興財閥などについて成り立ちや事件について記述している。
弥太郎は明治新政府の保護のもと海運業界の覇者と成り、着々と個人の資産を増やしていった。
後藤象二郎から任された土佐商会をもとに自分の商売の基礎を築き、やがて土佐藩から独立し、三菱商会を立ち上げた。
三菱商会は完全に弥太郎個人の資産で成り立ち、そのワンマン経営により、外国資本との競争、官営事業との競争に勝ち、その資産力は明治政府も太刀打ちできない膨大なものとなった。
三菱はその強大な資産力によって、海運業において独占的な立場を利用し利益を貪っていた。同業他社がつぎつぎに潰れるなか、三井物産は三菱に対抗しようとして半官半民の郵便蒸汽船会社を設立したが太刀打ち出来なかった。
三菱は海運業の他にも、鉱山業、製造業などへ手を広げていった。
三菱の鉱山での描写に以下のような記述がある。
鉱山での鉱夫が足りなくなると騙して連れてきた。
少しでも休んでいるものは棍棒でぶん殴り、反抗すれば鉱夫を梁に吊るして棍棒で殴打した。
コレラが流行ったときは、発病して一日経った者は浜辺の焼場に送って、大鉄板に載せられ、生きたまま五十人まとめて焼かれた。
当時の三菱鉱山は、今では考えられない事が起こっていたようだ。
なりふり構わない、弥太郎のワンマン経営は、経営の危機を何度か乗り越え、強大なものに成っていった。
明治が生んだ経済界の怪物といえる人物の生涯と絡めて、その政局や周りの人物との係わりを含めて表した本著書は大変面白かった。
Posted by ブクログ
今まで読んだ歴史小説はたいてい、面白くするために脚色することが多い気がするが、この本は違う。非常に冷静に書かれている。岩崎弥太郎。三菱を作ったすごい人(偉い人)くらいにしか思ってなかったが、なかなかどうして。この本を読むとイメージががらっと変わる。一読する価値あり。
Posted by ブクログ
弥太郎を中心に綺羅星の如き幕末の英雄たちを描く後編。
筆者は史学教授の肩書もある為、情報が緻密で生々しく、面白い。読んでるだけで歴史の勉強になる。
特徴として、幕末の英雄たちを史学者の視点で冷静に見てるのが面白い。裏金は渡す、女は抱く、要らなくなったら斬る、とやりたい放題で、手前の保身しか考えていない連中ばかり。勝海舟や坂本龍馬ですらそんな感じで描かれているものの、ふと考えると、江戸末期のルールも何もあったもんじゃない時代なら、それも当たり前かも…と考えさせられた。
とりあえず、弥太郎は接待しまくるクソ野郎として描かれているものの成功しているが、成功していない三橋くんとの対照が印象的。